ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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瞬間作者の脳内に流れ出した「Baba Yetu」――!


23-02 「大技術者イサミ」

「ファミリアの人員を、大々的に募集しようと思う!」

「えっ!?」

 

 オラリオが地上に帰還してから数日、まだ旧本拠地から引っ越しする前に夕食の席でヘスティアが宣言した。ベルを始めとする何人かは驚きの声を上げ、反対にイサミやアスフィなどは納得したように頷く。

 

「確かにいいタイミングですね。ここのところのあれこれで俺達も随分名を挙げましたし、実質ロキとフレイヤに次ぐ第三勢力と言っていいでしょう」

「ガネーシャは団長(シャクティ)がランクアップしたらしいが、それでもLv.6一人だからなあ」

 

 シャーナが現所属に抜かれてしまった古巣を嘆いて溜息をつく。

 

「できれば《戦争遊戯》の後に募集したかったんだけど、色々あっただろう?

 それで、だ」

「?」

 

 ヘスティアがイサミに視線をやる。

 

「イサミ君も今度こそは新しい本拠地(ホーム)に引っ越しするのに異は唱えないだろうね?」

「ああまあそれは」

 

 苦笑する。この紐女神は、以前イサミがこの廃教会地下の本拠地にこだわって引っ越しを拒んだのを随分と根に持っていたらしい。

 

「はいはい、今回は反対しませんよ。アスフィさん、リリ。神様とも相談して、商会を当たって手頃な土地を捜して下さい」

「わかりましたが、土地ですか?」

「建物はぼろかろうと何だろうとどうにでもなりますので」

「わかりました」

 

 アスフィとリリが頷く。

 新生ヘスティア・ファミリアで交渉ごとに長けているのはこの二人とイサミ。

 現状ではアスフィが番頭で、その助手がリリという具合だった。

 

「たぶん建て直す事になるでしょうけど、何か要望があるならどうぞ。みんなも何か言うなら今のうちだぞ」

 

 にやり、と笑みを浮かべて周囲を見渡すと、次々に周囲から声が上がる。

 

「お風呂が欲しいです! 大きくてゆったりつかれる奴!」

「レーテーはねえ、みんなでご飯食べられる大きな食堂が欲しいな!」

「水泳の練習が出来る池とか作れねえか? やっぱり水のエリアがあるみたいだし、覚えておく必要があるだろ。あと酒蔵とホームバー」

「贅沢は言いませんので書庫があれば・・・」

「あ、兄さんそれ僕も欲しい」

「遊戯室! バニー姿でスリードラゴン・アンティのディーラーとかやりたい!」

「男女別の大浴場と厨房と書庫、鍛冶場と作業室は言われなくても作るから安心しろ。

 しかしため池か、確かに必要になるかも知れないな」

 

 口々に要望を出す仲間達を見やり、イサミは楽しそうにメモをとった。

 

 

 

「ここですか」

「はい、ヘスティア様にはもうOKを頂いてます。いささか割高でしたが・・・」

「問題ありません。十分許容範囲でしょう」

 

 アスフィ達の見つけて来た物件は廃教会と同じ第七街区にあった。大通りからやや離れてはいるが、ほぼ真南に「豊穣の女主人」亭、北に五分か十分も歩けばギルド本部やヘファイストス・ファミリアの北西支店がある。

 しかもかなりバベルに近いとなれば紛れもなく高級地であった。

 

 広さもかなりのもので、アポロン・ファミリアの本拠地より一回り広かった。

 ただし建物は幽霊屋敷とは言わないまでもかなり朽ちており、そのままでは住めそうにない。

 

「問題ありませんよ。それじゃ支払いを済ませてきて下さい。その後ホームに」

「わかりました」

 

 

 

 アスフィ達がホームに戻ると、居間で団員たちが頭を寄せ合っていた。

 テーブルの上には何枚かの建築図面。それが明らかにたった今購入した土地に建てるためのものだと気付いて、アスフィとリリが目をみはる。

 

「・・・この短い時間でもう図面を引いたのですか!? 普通なら図面だけで数日はかかるでしょうに」

「大体は前もって考えておきましたからね。後は微調整だけですよ。取りあえずは二百人くらい収容できる箱を作りましょう。いいですよね、神様?」

「そこまでは来ないと思うけど・・・まあ大きめに作っておいて損はないね! それでオッケーだよ!」

「はぁ・・・」

 

 呆れたように眉を寄せるアスフィだったが、すぐにまだ認識が甘かったと知る事になる。

 

 

 

「"奇跡(ミラクル)""奇跡(ミラクル)""奇跡(ミラクル)""奇跡(ミラクル)"・・・」

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 一同は呆然としてその様を眺めていた。

 全員で新ホーム建設予定地に来ると、イサミの最初の「力ある言葉」でまず建築物が跡形もなく消えた。

 続けて地面からニョキニョキと新しい石壁が生え、柱が立ち、屋根になり、ひさしや玄関の階段が生まれる。

 更に荒れ放題だった庭園が綺麗に刈り込まれ、美しい庭の姿を取り戻す。

 ものの十分ほどでそこには美麗な装飾を施された白大理石の城館が姿を現していた。

 

「なんて言うか・・・ほんとでたらめだなあ、君は・・・」

魔術師(ウィザード)ですから」

 

 にやっ、とイサミが笑った。

 

 レベル1+++・・・D&Dでいえば29レベルに達したイサミはエピック特技《呪文容量強化(インプルーブド・スペルキャパシティ)》と特技《呪文疑似能力化》によって"奇跡(ミラクル)"の呪文を無制限に使用することが出来る。

 一言で言えば、最高位のそれ(ウィッシュとか完全蘇生とか)以外の呪文を無限に使用できるという事に等しい。

 化け物じみた知力と《ドラゴン譲りの知識》特技でスパコンによるCADなみの設計能力を持つイサミが"石壁(ウォール・オブ・ストーン)"などの呪文の応用を使えば、この程度の事はたやすかった。

 

 なお全次元世界を見てもトップクラスである死霊王ダイダロスの建築能力が数字で言えばおおよそ40。イサミのそれは実に800に達する。

 館一つくらいの設計は一分とかからなかった。

 

「でもドアとか窓ガラスとかないよ、兄さん」

「あ、ほんとですね」

「そこはぬかりはないさ。さて、取り出したるこの竪琴(ライアー)。これをつま弾くとどうなるか・・・さてさてごろうじろ」

 

 古代ギリシャの吟遊詩人が持っていそうな小型の竪琴をイサミがつま弾き始める。

 

「?」

 

 しばらく何事かと見ていた一同だが、イサミは竪琴を弾くだけで何も起こらない。

 数分程経ってそれに気付いたのは、飽きて周囲を見渡していたダフネだった。

 

「え、あれ?」

「なに、ダフネちゃん・・・あっ!?」

 

 カサンドラが続いてそれに気づき、他の者も驚きの声を上げる。

 石の塊だった白大理石の館の窓に窓枠が生まれ、窓ガラスがそこにはまる。

 玄関にはチャイムが備わり、分厚い木製の扉が生まれる。

 

「凄い! 壁紙とか部屋の中にもドアが出来てるよ!」

「あーそっか、"建築の竪琴(ライアー・オブ・ビルディング)"ね?」

「ご名答」

 

 正解にたどり着いたのは、やはりD&D世界からの来訪者であるフェリスだった。

 "建築の竪琴(ライアー・オブ・ビルディング)"。名前の通り弾き続けることで家や石壁、堀など、好きな建築物を生み出す事ができる。

 その速度は、(日本人の感覚で)そこそこ大きな一軒家を造るのに30分。

 それでこの規模の館を造ると少々時間がかかりすぎるので、石造り部分だけをまず他の呪文で作って内装を"建築の竪琴(ライアー・オブ・ビルディング)"で補ったというわけだ。

 竪琴を弾きながらイサミが楽しげに語る。

 

「後は引っ越しと、新しい家具を揃えましょう。シャンデリアとか他の内装含めてゴブニュ・ファミリアあたりに頼めばいいかな?」

「では私が行ってきましょう。私の分の引っ越し作業は・・・」

「荷造りだけしといてくりゃいいですよ。タンスとかはそのままで。こっちは一時間かからないと思うから、棚やまとめた荷物に"物体縮小(シュリンク・アイテム)"かけて、後は運び込んでから元の大きさに戻せばいい」

「つくづく便利な奴だなお前・・・」

魔術師(ウィザード)ですから」

「わかりました、頑張ります!」

「レーテーもがんばるよー!」

 

 うむ、と力強くヘスティアが頷いた。

 

「こんな凄いホームが出来たんだ、きっと沢山の入団希望者が来るぞー!」

 

 腕組みをして胸を張る紐女神。

 募集の結果がどうなるかはまだ誰も知らない。

 




このSSではパスファインダールールを適用しておりますので、キャラクターは2レベルに1個の特技を習得できます。(D&D3.5だと3レベルに一つ)
なので29レベルだとキャラクターレベルで5つ、クラスレベルで3つのエピック特技を得られるわけですね。
で、特技《呪文疑似能力化》は本来の呪文レベル+8レベルのスロットを用意できればその呪文を無制限に使える特技なので、エピック特技《呪文容量強化》(使用できる呪文レベルに+1)を8つ取れば、最高の9レベル呪文であるミラクルを無制限に使用することが可能と。


"建築の竪琴(ライアー・オブ・ビルディング)"で内装をカバーできるかどうかは議論もあるところでしょうが、家具でなく家の一部(壁紙とか備え付けのロウソク立てとか窓とかドアとか)はおkと言うことにしてあります。
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