ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
「だから・・・で、こう・・・」
「なるほど・・・やはり封印外世界の技術は・・・」
新生ホームの作業室で、イサミがアスフィに"
いわゆる四次元バッグの類で、12立方フィート(60センチx60センチx90センチ)までのものを収容することが出来る。大きさは小ぶりの背負い袋にもかかわらず、リリがヘスティア・ファミリア入団前に使っていた巨大バックパック以上のものを運ぶことが出来る。
今までの面子には最低一人一つは配布していたが、新入団員達のために急遽大量生産する必要があり、ついでにアスフィにも製法を教えているところであった。
もっともアスフィはイサミのように魔道具を作ることが出来ず、魔力を秘めたドロップアイテムを必要とするため、どちらかというと今やっているのは開発作業に近い。
「ブライトドッグのドロップアイテムを使ってみたらどうでしょう?」
「どうでしょう? 14階層で産出する
「あれがありましたか。しかしそうなるとこっちの方の処理作業が・・・」
額を寄せ合って話しあう二人。
一見いちゃついてるようにも見えるが、二人とも真剣な顔で没入している。
お互いを意識したりとか、頬を染めたりとか、甘い雰囲気を出したりとか、指先が触れあって慌てて手を引くとか、そうした通常の逢瀬にありそうなあれこれは全くない。
アスフィの元主神が見たら「変わらないねえ」と溜息をついただろう。
『で、何かと思えばこの世界の素材で"
「す、すいません・・・」
アスフィが怯えたように首をすくめる。
突貫作業で修理が完了した人造迷宮15階層あたり。
死霊王ダイダロスの個室で二人は部屋の主と顔を合わせていた。
「ダイダロスさんならその手の研究に手をつけたことがあるのでは?」
『まあ、無くはないがな』
死霊王が椅子に座り直し、宙を仰ぐ。
『興味深い研究ではあったが当時は何かと忙しくてな。さして深入りも出来なかった。ダンジョンの探索自体も今に比べると全く進んでいなかったしな・・・』
当時を振り返るように、遠い目をする死霊王。
まあ彼の目は干からびた眼窩の奥であるから、本当にそうかどうかはわからないが。
「でしょうねえ」
こちらも感慨を込めてイサミ。
人間としての工匠ダイダロスの業績について述べた本はギルドの図書室に何冊もあったが、バベル、ギルド本部、ダイダロス通り、闘技場、冒険者墓地、そしてこのオラリオそのもののグランドデザインと、建築関係だけでも枚挙にいとまがない。
「とはいえ、さして深入りも出来なかった、はご謙遜だと思いますが」
それらに加えて今一般に流通している《鍛冶》アビリティによる武具製作技術の大半、魔道具の四割ほどはダイダロスの考案になるものである。
ポーション、エリクサーの製作技術の確立なども彼の業績であるとされていて、この方面でも不動の業績を打ち立てた偉人である事は間違いない。
『トリルの技法をこちらのそれに落とし込んだものが大半よ。こちらではマジックアイテムの技術がまったくと言っていいほど存在しなかったからな。つまらん仕事だったわ』
(割と芸術家肌だからなあ、この人・・・)
新しいものを作ること、機能性と芸術性を併せ持つ一品を作る事に快感を感じる人間からすれば、既存の技術のフォーマット変更など本当にただの作業であったのだろう。
逆に実用性一点張りで、そうした地道な作業を全く苦にしないのがフェルズだ。このあたりは
その一方で己の魔道具技術を開陳することはなく、自分で使うだけしか作らなかったのは、開発した技術が戦争を激化させてしまった後悔によるものか。
全てが試行錯誤だったオラリオ黎明期と現代とほぼ変わらない500年前という状況の違いはあるが、フェルズが一般の魔道具製作者として全く名を残していないのはそう言ったあれこれもあったかもしれない。
内心で肩をすくめるが表に出すことはなく、イサミが言葉を重ねる。
「この機にもう一度本気で研究に打ち込んでみませんか?
当時は発見されてなかったドロップアイテムや鉱石、植物。それに自分で言うのも何ですが腕利きの
もう一度やり直してみるだけの価値はあると思いますが」
『ふむ・・・』
顎をつまんだ死霊王が視線をアスフィにやった。
『確かにな。貴様はもちろんだが、その娘がいるのは大きい』
「え、私ですか!?」
これまで死霊王の存在に萎縮していたアスフィがびっくりした顔になる。
「私などイサミ君やダイダロスさんに比べれば・・・」
『下手な謙遜はよせ。儂にせよそやつにせよ、元々ある技術を習得してそれを別の形に落とし込んでいるに過ぎん。だが貴様は全く新しいものを数多作り出してみせた。
その閃き、発想、それらを実現する技術。こと魔道具製作のセンスに関してはわしらを遥かに凌ぐ天才と認めてやろう』
「あ、ありがとうございます・・・」
伝説の大工匠から手放しの称賛を受け、ひたすら恐縮するアスフィ。イサミもうむうむと頷いている。
現存のアイテムの四割を世に出したのが死霊王ダイダロスなら、五割を創造したのが【
活躍分野の広い死霊王やイサミに比べて魔道具に集中しているとは言え、死霊王の称賛は掛け値なしの真実である。
『じゃがそう言う事なら少し待て』
そう言うと、死霊王は手のひらの上に乗る程の水晶玉を取り出すと、何やら念じる。
ややあって、扉をノックする音が聞こえた。
『入れ』
「失礼します、ダイダロス様」
入って来たのはおよそこの場所には似つかわしくない男だった。
血色の良い小太りの若いヒューマンで、にこにこと笑みを浮かべている。
『儂の眷族で二人しかいない【神秘】アビリティ持ちの一人じゃ。Lv.は3止まりじゃが、発想がいい。そう言う事であればこやつにも手伝わせるとしよう』
「コーカロスです、よろしくお願いします。いやあ、【
人のよさげな笑みを浮かべつつ、頭を下げるコーカロス。
戸惑ったようにアスフィが礼を返した。
「は、はい、よろしくお願いします。・・・吸血鬼の方ですか?」
「眷族と言うんだからそうでしょうね――スキンタイプの魔道具か? 外見を変えるのと同時に日光を遮る効果もあると見たが」
「凄い! 一目でわかるんだ! さすがは【
コーカロスが子供のようにはしゃぐ。
どうやら吸血鬼なのはともかく、外見通りの性格ではあるらしい。
苦笑しつつ、握手を交わす。
『この四人であれば随分と研究もはかどるじゃろう――先に言っておくが、研究の産物が利益に繋がるようならそれは折半じゃからな』
「世知辛いですねえ」
『人造迷宮はもう少し拡張する必要がある。金はいくらあっても足りんのだ』
「おっしゃるとおりで」
肩をすくめながらも三人の顔を見渡すイサミ。
(確かにこの面子なら随分と面白いことが出来そうだ)
満足げにイサミは頷いた。
「それはそれとして、まずこの世界の素材で"
「あ、それ昔やった事ありますよ。34階層の
「「『何ーっ!?』」」