ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
これはまだイサミ達が日本で暮らしていたときのお話。
「メシが出来たぞー。取りに来い欠食児童ども!」
フロア丸ごとを貸し切って根城にしている短期賃貸のマンションの、各室のドアをゴンゴンと叩いて回る。
六畳一間キッチントイレ付きの狭いマンションであるから、30人近い人数を一度に収納できる食堂スペースはない。
もっともこの世界ではリド達の"
「おーう」
「はーい!」
「待ってました!」
それぞれに返事が返ってきて扉が開く。
リドや桜花、ヘファイストスの鍛冶師たちがうきうきと出て来た。
「いやあ、こっちに来てから飯がうまくて困らない!」
「ほんとにな!」
「クラネルさんが出してくれてた料理って、こっちの世界の料理だったんだなー」
そんな会話を交わすのは桜花やヘファイストスの鍛冶師、ロキ・ファミリアのサポーターたち。
イサミの料理スキルは現代日本の基準で見てもトップクラス、普通に店を出して大繁盛させられるレベルだ。
材料も魔法で現代日本レベルのものを用意できるのだ、それはレベルが違って当然だろう。
「俺だけじゃなくてタケミカヅチの女衆や、うちのリリも頑張ってるんだからその辺感謝の念を忘れるなよー」
「「「うーっす」」」
適当に気のない返事を返す野郎ども。
丁度顔を出した千草が、顔を赤くしてすぐ引っ込んでしまった事に桜花は気付かなかった。
タケミカヅチはそろそろ自分の派閥の首領に天罰を下すべきであろう。
「ふー、食った食った」
「お、桜花、お行儀悪い・・・」
寝る部屋は別々であるが、食事は同じ卓を囲んで食べるタケミカヅチ・ファミリアの面々。
狭いと言っても六畳はあるし、寝るならともかく食事をとる分には問題ない。
当番である桜花が洗い物を終えて戻ってくると、迷宮では鉢金を愛用しているサポーター・・・卜伝が熱心にスマホをいじっていた。
「飽きないな。そんなに面白いか?」
「男には退けない時があるんだよ、桜花・・・よっしゃキターっ!」
「なんだなんだ・・・えええええええええええええっ!?」
一方こちらも同様に同じ部屋で食事をとっているヘスティア・ファミリア。
人数は六人(+フィギュアサイズになった紐神)と変わらないながら、とにかくでかいのが二人いるので随分と狭苦しく感じる。
それはそれとしてタケミカヅチの所と同様洗い物を終えて、食後のお茶を楽しんでいたところ。
「くくくくくくくくくくくクラネルッ! これはなんだっ!?」
「ぬおっ?!」
「あれー、桜花ちゃんだ。どうしたの?」
顔色を変えて駆け込んできたのは桜花だった。後ろにはタケミカヅチの他の面々も続いている。
「どうしたもこうしたもない! これを見ろっ!」
桜花が突きつけてきたのはスマートフォン。
その画面に表示されているのは古代日本風の剣を持った、露出度の高い黒髪の麗人。
表示は「SSR 雷剣烈姫タケミカヅチ」。
「え? ええええ!?」
「何これ、タケがかわいい女の子になってる?!」
「あー、こういうあれか・・・」
イサミが苦笑する。
「知っているのかクラネル?!」
「まあなんだ、タケミカヅチ様の名前だけ借りて作ったキャラだよ。実質名前以外お前らの主神とは関係ない」
「・・・なんだとっ!」
それで収まるかと思いきや、桜花が今度は憤怒の形相になる。
「ふざけるなっ! タケミカヅチ様の名前を勝手に使った上に女にするだと!? 無礼にもほどがある!」
「まあまあ・・・こっちに神様はいないから、架空の存在としか思われてないんだよ。
目の前にいる人間にそう言う事をしたら確かにひどい話だが・・・」
ナマモノと呼ばれるジャンルに生息する異星人達を思い浮かべつつイサミは遠い目になる。
「そうか、オラリオだと神様はナマモノジャンルなんだな・・・」
「ナマモノって何だい、イサミ君?」
「多分知らない方がいいと思いますよ神様・・・」
「まあまあ、こっちの世界じゃそう言うもんだからさ」
「そうだよ、世界が違えば流儀も違うんだし、悪意がある訳じゃないから・・・」
「うぬぬぬぬ」
ソシャゲをいじっていた当人である卜伝を始め、タケミカヅチ・ファミリアの面々もフォローに回る。どうにか収まりそうだと苦笑したイサミだったが、ふとその目が女体化タケミカヅチの表示されたスマホに吸い寄せられた。
ちょんちょんといじってから顔を上げる。
「・・・おい、これ回したの誰だ」
「俺ですけど、どうかしたんですかクラネルさん・・・あの、なんか目が怖いんすけど」
「これはこのタケミカヅチ目当てで回したのか?」
「ええまあ。中々出ずに苦労しまし――」
「チェストォォォォッ!」
「ぶぐっ!?」
ナタのような手刀が卜伝を畳に沈めた。
「な、何するんすかクラネルさん!?」
「やかましい、そこに直れ! 天井なしピックアップなしのガチャを特定キャラ目当てで回すんじゃねえっ!
しかも有料石がクッソ高いじゃねーかっ!? 10連五千円って『源神』や『競馬娘』でもそこまでいかねえぞっ!
いや競馬娘は単価以上に重ねなきゃ死ねる仕様の方が問題だが・・・ともかく10連1700円で一枚あれば仕事が出来る『運命大命』を見習えッ!!!!」
調べたガチャ履歴には2000回近い結果が表示されていた。10連五千円、つまり一回500円のガチャを2000回であるから・・・
「ひゃ、ひゃくまんえん!?」
「え、これ金かかるんすか?!」
「かかるんだよっ! わからずに回してたのかおまえはっ!」
頭を抱えるイサミ。
ウィッシュで現代日本の基本的知識はインストールしたはずだが、細かいところで抜けがあったらしい。
「す、すんません・・・」
「いざとなったらウィッシュで資金調達も考えておかないとな・・・いやその前に、改めて注意事項の周知か・・・」
溜息をつくイサミ、身を縮こまらせる卜伝。
なお現代日本を離れた後、サーバに接続できない事に気付いた彼が絶望のズンドコに叩き落とされるまで後一週間。
「・・・一応聞くが、お前達もネットでバカスカ金使ったりしてないよな?」
「れ、レーテーはお菓子買ってるくらいだよぉ?」
「どんなお菓子だ?」
「えーと、『幸せの粉』ってやつ・・・二万円くらい使っちゃったけど・・・」
「あれかよ。まあそれくらいならいいけど・・・気に入ったのか?」
レーテーの顔がぱあっと明るくなる。
「うん! アレ食べてるとね、ハッピーでハピハピ☆って気分になれるの!」
「そ、そうか・・・」
満面の笑みでレーテー。ちょっと目が逝っちゃってる気がしたのでそれ以上は突っ込まないことにする。
続いて命がおずおずと手を上げた。
「その、『はいしんさーびす』というので『れんあいどらま』というのをいくつか・・・」
「そっちか・・・いくつ見た?」
「二ヶ月無料というプランですので大丈夫かと思います」
「よし合格!」
満足げに頷くイサミ。命がほっとした顔になった。
取りあえずその場ではそれ以上問題は見つからず、お開きになった。
エロサイトを巡回しててスマホをフリーズさせたヘファイストスの鍛冶師や、通販で高い酒を注文しまくったロキ・ファミリアのサポーター達とゲドの事を知って頭を抱えるのはまた別の話である。
そして時は流れて現在、ヘスティア・ファミリア新ホーム「竈火の館」。
「あれ? コーカロスさん、どうしたんです?」
「いやあ、向こうの世界で手に入れてさ。騙し騙し使ってたんだけどついに動かなくなって・・・どうにかならないかな?」
小太りで血色の良い吸血鬼が持って来たのはノートパソコンと発電機、どう見ても子供がプレイしちゃいけない絵柄がプリントされた銀色に光る円盤の山。
「おまえもかーっ!」
思わず天を仰いで絶叫するイサミであった。
10連五千円というのは実在したガチャ価格だそうです。
なお特定ピックアップなしのガチャだと、有名どころでToLoveるソシャゲの最高レアが0.00083%(1/120481)という鬼畜の数字だったとか。
>ハピ粉
レーテーにハピハピ☆言わせたかっただけです。
なお部屋の割り振りは
イサミとベル(とフィギュア紐神)
シャーナとレーテー
リリ、春姫
桜花、景清、卜伝(タケミカヅチの男モブ)
命、千草、飛鳥(タケミカヅチの女モブ)
ロキのサポーター二人とゲド
ヴェルフとヘファイストスの上級鍛冶師二人
ティオネと椿
リューとアスフィ
リド達異端児五人
となっております。これで多分正しいはず。