ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
一方、同時刻のロキ・ファミリア。
食堂で隣り合ったティオナが、アイズに今日のことを話していた。
「それでさー、"
その小人族のサポーターちゃんに売却も手伝ってもらってさー。
何より弟くん、英雄譚にすっごく詳しくてさー。
話が弾んで・・・アイズ? どうしたの? 何か機嫌悪い?」
「・・・別に」
そう言いつつ不機嫌な表情を崩さないアイズに、これはロキの罰ゲームでよほどろくでもない命令をされたかと考えるティオナ。
普段が普段だけに、ベルと仲良くなったのに焼き餅を焼いているとは思いつかない。
もっとも焼き餅を焼いている当人も、それが嫉妬であるとは気づきもしていなかったりするが。
「うお、【剣姫】?!」
「さっきから誰か待ってんのかな・・・」
翌日の夕刻。
「バベル」の一階、迷宮への入り口にアイズ・ヴァレンシュタインの姿があった。
入り口の柱の影に隠れながら、探索帰りの冒険者達を次々と吐き出す入り口をちらちらとうかがうその姿は不審者以外の何者でもない。
やがて目当ての人間を見つけたのか、柱の影を出て一直線に歩き出す。
その歩みの先には、白髪頭の少年冒険者がいた。
「ヴァ、ヴァレンシュタインさんっ!?」
探索を終えてローギアに落ち着いていたベルの心拍が、一瞬にしてトップに入る。
見事に紅潮した顔に、ずい、とアイズの顔が近づけられた。
「ふぁ、ふぁっ・・・!?」
「偶然・・・」
「え?」
「偶然、だね・・・ここで会うのは」
「え? あ、はい、そうですねっ!」
どこが偶然だ白々しいとリリは思ったが、見事にのぼせているベルと偶然であることを強調しようと必死のアイズは気づかない。
「これはその、偶然だから・・・」
「は、はい、偶然ですねっ!」
一方でアイズとベルの会話は早くも座礁しつつあった。
ベルとの会話を楽しそうに吹聴するティオナに居ても立ってもいられず、とにかく
「ぐ・・・偶然だね!」
「そ、そうですね!」
結局、アイズの額に汗が浮かび始めたところで、リリが二人を引っ張ってとりあえずその場を離れたのであった。
「で、【剣姫】に特訓を受けることになったって?」
「は、はい、すいません。シャーナさんに稽古をつけて貰っているのに・・・」
「謝るこたーねえさ。稽古相手としちゃ、【剣姫】のほうがそりゃ上等に決まってる。ま、せいぜい揉まれて・・・」
「許さーんっ!」
「ひっ!?」
シャーナは全く気にしていないが、一方で収まらないのがヘスティアである。
眼と口を限界まで開き、黒いツインテールがうねうねと波打つ。
神の怒りの前には、ベルなどおびえる哀れな子ウサギにしか過ぎない。
「ステイタスは! ステイタスは教えてないんだろうね?!」
「は、はい、教えてません!」
「となると成長速度に目をつけられたか・・・まぁ確かに強化種なんかを倒したりしたら・・・ブツブツ・・・」
「あ、あの、神様・・・?」
おそるおそるお伺いを立てようとするベルに再びうがーっ、と吼えるヘスティア。
「ひいっ?!」
「とにかく! すぐに縁を切るんだっ! お互いのファミリアのためにもそれが一番なんだっ!」
「そんなぁ・・・」
救いを求めて周囲を見回すものの、シャーナは肩をすくめるのみ、リリはヘスティア程ではないがやはり不機嫌そうな表情で。苦笑いをこぼしつつイサミが動いた。
「神様、そう言わないで認めて上げてくださいよ。Lv.6の冒険者に直接師事できるなんて、滅多にないチャンスなんですよ? 強くなれる機会を棒に振るなんてもったいない」
「それはそうかもしれないが、よそのファミリアと・・・」
「神様」
「なんだい? 言っておくけど、たとえ君とベルくんのお願いでもこればかりは・・・」
イサミがにっこりと、太い笑みを浮かべる。
「認めてくれなきゃ、神様のお小遣いは全カットです」
「のぉぉぉぉぉっ!?」
一転して崖っぷちに追い詰められたヘスティアが、盛大にのけぞる。
数歩たたらを踏み、辛うじてロリ紐女神はその場に踏みとどまった。
今度は逆にヘスティアが味方を探して周囲を見渡すが、シャーナはやはり肩をすくめるのみ。
リリも複雑そうな顔をしているが、まだ意見できるような立場ではない。
ベルは言わずもがなだ。
「しゅ、主神たるボクに対して・・・」
「このファミリアの収入のほとんどを叩き出してるのは俺ですよ? できないとでも?」
イサミの笑顔は、いつの間にか素晴らしく邪悪なものに変わっていた。
「君って奴は・・・! いや、そもそも君は誰の味方だい?!」
「愚問ですなあ。俺はいついかなる時もベルの味方ですよ!」
「ぐはぁっ!」
「か、神様ーっ?!」
きっぱりと断言され、ヘスティアが膝から崩れ落ちる。
何よりも雄弁な圧力に、彼女の抵抗の意志は完膚無きまでにへし折られたのだった。
「・・・ひょっとしてイサミ様って、ベル様には凄く甘いんですか?」
「まあ、控えめに言っても兄馬鹿だな」
「うるさいだまれそこ」
「まぁそんな事よりベル、渡したアイテムはどうだった?」
「ええと、"
"
ワンドは比較的低レベルの呪文一つを蓄える呪文デバイス――魔剣のようなものである。
スタッフはその高級版で、複数の呪文を使い分けることが出来る。
スクロールは一回限りの使い捨てだ。
なお前者3つは魔術師呪文が込められており、"万能治療"は僧侶の、"樹皮の肌"は
「ふむ・・・やっぱり"
じゃあ"
どうにもこうにもならないときだけ使うんだぞ」
「え・・・いいの?」
眼をぱちくりさせるベル。
イサミはため息をついた。
「まあそれは思わないでもないが・・・逃げるときにはこれほど便利な呪文もそうないからな」
壁を作れば敵を分断できるし、単純に通路を塞いで追ってこれなくすることも出来る。
ベルではまだ使いこなせないだろうが、戦場をコントロールできる壁の魔法は、使い方を知ればきわめて強力な呪文の一つである。
加えて敵を倒す呪文ではないため、ベルの成長には悪影響を与えないだろうという判断であった。
「それとこいつもだ」
そう言ってイサミが渡したのはこぶし大の無骨な自然石。
「これは?」
「
正確に言えば、この片割れのこの石を持ってる相手にだな」
そう言うイサミの手には、ベルが受け取ったのと全く同じ大きさ、形の石がある。
「へー・・・」
「あくまで非常用だから、余りほいほい使うなよ。俺は魔法で同じ事が出来るからそうでもないけど」
「うん、わかった」
素直に頷くベルが、思い出したように首をかしげた。
「そう言えば兄さん。エイナさんの方はなんだったの?」
「あー、ちょっと俺のレベル登録のことで問題がな。まあ、もう終わった話だ」
「ふーん」
紐神白ウィニーの「