ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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8-9 おそらくはそれさえも平穏な日々

 それからしばらくは、概ね何事も無く過ぎた。

 ベルはアイズと特訓を重ね、オッタルは17階層でミノタウロスを鍛えた。

 

 イサミとシャーナは52階層へのアタックを中断し、49階層と51階層での稼ぎに徹した。

 もっともこの階層まで来るとシャーナですら攻撃面では力不足であり、初日以降は大盾を構えての盾役に専念するようになっている。

 

 レフィーヤがフィルヴィスと再会して稽古をつけて貰い、イサミがホールケーキを(色々詫びとして)エイナの所に持って行った。

 アイズとベルがヘスティアの屋台に立ち寄って一騒動起きたり、軽い嫉妬に襲われたフレイヤの手のものによって警告の襲撃を受けたり、ディオニュソスがヘルメスに絡まれたり・・・。

 

 そんな中、イサミは再び夢を見た。

 

 

 

 「敵」は倒された。

 「敵」の信徒もあらゆる神々の信者達によって駆逐され、大神殿は崩壊した。

 

 だが「敵」は原初にして根源の存在故に、滅ぼす事はできなかった。

 そこである世界の神々全てがその力を結集し、その身を捧げる事を決意した。

 

 「敵」は封印され、全ての世界は再び存在を許された。

 しばしの間は・・・。

 

 

 

 イサミは目を覚ました。

 自室の石天井を見上げ、黙考する。

 

 その「敵」が自分の戦う相手なのか。

 神々が力を結集した世界がここなのか。

 考えても答えは出なかった。

 

 

 

 52階層へのアタックに失敗してから八日目、ベルとアイズの特訓が終わった日。

 深層からの帰りにイサミとシャーナは見た。

 偉丈夫の猪人が、同じく規格外に巨大なフルプレートの女戦士をはじめとしたアマゾネスの一団に取り囲まれて戦う場面を。

 

 思わず足を止めた二人は、繰り広げられる戦いを一心不乱に観察する。

 深層、未到達領域一歩手前での戦いを繰り広げてきたイサミ達の目から見ても、格の一つ違う戦い。

 

「あれひょっとして・・・」

「ああ・・・"猛者(おうじゃ)"オッタルだ・・・!」

 

 攻め手側は頭が異常に大きな、大戦斧を両手に振るう巨躯の戦士が頭一つ飛び抜けている。

 とは言え残りのアマゾネス達もおそらくはシャーナと互角。

 そしてそのような集団を相手にして都市最強の冒険者"頂天"オッタルは一歩も引いていない。

 

「でもおかしいぜ。土偶みたいなあいつはイシュタル・ファミリアの"男殺し(アンドロクトノス)"だろうが、まだLv.5のはずだ。いくらなんでも強すぎる!」

「強化魔法・・・? あの光の粒?」

 

 よく見ると、"男殺し(アンドロクトノス)"フリュネ・ジャミールを筆頭としたアマゾネス達は、全身に光の粒を帯びている。

 イサミの魔力視覚は、その光粒からきわめて強力な魔力を感知していた。

 D&Dの分類で言えば変成術。生物や物質を変質させたり、強化したりする種類の魔力だ。

 

「彼女たちの後ろのあのカーゴ・・・あれ怪しくありませんか?」

「・・・確かにな」

 

 アマゾネス達の中で数人が攻撃に加わらず、後方に控えて移動式の物資運搬用カーゴを守っている。

 人ひとりがすっぽり入りそうなそれは、異次元の戦いを繰り広げているルームの中で不気味な沈黙を保っている。

 

 やがて戦いの趨勢が少しずつ傾き始めた。

 多対一の不利な状況でありながらオッタルが一人また一人とアマゾネス達を倒していき、サポーターの回復も間に合わなくなっていく。

 

 機を見るに敏なのかリーダーとおぼしき巨女が撤退命令を出し、けが人を回収して素早く退却する。

 オッタルもそれを追わなかった。

 

 剣を収めぬままじろり、とその視線がイサミ達の方向を向く。

 以前フィンに看破されかけた事を思い出し、イサミが素早く音を立てずに"上位不可視化(スペリア―・インヴィジビリティ)"を自分とシャーナにかける。

 

 しばらくじっとしているとやがて"猛者(おうじゃ)"は剣を収め、きびすを返してその場を立ち去った。

 戻ってこない事を確認し、"上位不可視化"を解除してため息をつく。

 

「はーっ・・・・・・・・・」

「心臓に悪いぜ、おい・・・こっちゃ透明になってるってのによ・・・」

「フィン・ディムナもそうでしたけど、本物の一流ってのはシャレになりませんねえ・・・」

 

 二人もまた、再び風になってその場を去った。

 オッタルがこの一週間何を鍛えていたのか、そしてこの階層に何を運び、盗まれたか、そして盗んだ者達がどうなったか、知る事もなく。

 

 そしてリリを付け狙っていたソーマ・ファミリアの冒険者、カヌゥ達三名の消息はこの夜を境にぷっつり途切れることになる。

 ミノタウロスの目撃情報と共に。

 

 

 

「くんくん。くんくん」

 

 その夜。

 

「くんくん。くんくん」

 

 夜更かしのヘスティアも眠る深夜。

 ヘスティア・ファミリアのホームである廃教会がかすかに揺れた。

 

(・・・"警報(アラーム)"呪文に反応?)

 

 隠し部屋でマジックアイテムを作っていたイサミが、異常を感じてふと手を止める。

 次の瞬間、轟音と共に廃教会の地上から地下につながる隠し扉が破られた。

 

 咄嗟に杖を掴み、隠し扉から飛び出す。

 

「おう、何だ一体・・・」

 

 僅かに遅れて飛び出してきたシャーナの言葉が途中で途切れた。

 イサミの暗視視覚に捉えられたその影は。

 

「ゲゲゲゲゲッ! 見ぃつけたぁ、アタイ好みのイイ男ォォォッッッ!」

 

 さしものイサミの顔から血の気が引いた。

 巨大な頭、ずんぐりとした胴体、筋骨隆々の太く短い手足。

 

 イシュタルファミリアの第一級冒険者、Lv.5、"男殺し(アンドロクトノス)"フリュネ・ジャミールだった。




 フリュネって、絶対外見のイメージもとは「ジャングルの王者ターちゃん」のヂェーンだと思う(ぉ
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