ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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祝・ダンまちアニメ四期開始!


10-2 キスミーベイベー

 しばしの後、フリュネはとりあえずイサミ達と一緒に51階層まで潜る事になった。

 装備は身の回り品や現金と一緒に、先ほど既に"回収"してきてある。

 サイズ調整や偽装も最早手慣れたものだ。

 

「どんどん変な方向に向かってないか、おまえ」

「・・・まあ、魔術師(ウィザード)ですから」

 

 実際高レベルの魔術師(ウィザード)というのは、あらゆるD&Dクラスの中でもトップクラスの万能ツール(マクガイバー)なのである。

 閑話休題(それはさておき)

 

 イサミが仕立て直したフルプレートを装備したフリュネの姿は、アマゾネスというよりも見目麗しき女騎士であった。

 色も、かつての濁った赤から鮮やかな真紅に変わっている。

 ぱっと見でかつての彼女と同一人物とわかる人間もいないだろう。

 装備の様子を確かめていたフリュネに、イサミが洒落たデザインの女物帽子を差し出す。

 

「ほれ、フリュネ。これをかぶれ」

「? 何これ?」

「"変装帽子(ハット・オブ・ディスガイズ)"。お前イシュタル・ファミリアに怪しまれてるだろうし、変装しておかないとな」

 

 かぶって念じるだけで、無制限に"幻像変装(ディスガイズ・セルフ)"呪文の効果を受けられるアイテムである。

 D&Dのマジックアイテムとしてはかなり安価なものではあるが、効果が便利なので高レベルの冒険者もよく使う。

 

 兜を取ったフリュネがかぶると身長が30cmほど低くなり、髪は灰色に、肌の色も白くなり、狼の耳と尻尾が生えてきた。

 フルプレートも体に合わせて縮んでおり、洒落た女物帽子はいつの間にか左のこめかみの髪をまとめるバレッタに姿を変えている。

 

「うおっ!」

「凄いですね・・・これがイサミ様の言ってた変身魔法ですか」

「いや、こいつはただの幻影。リリの魔法と大差ない。特に念じなければ、その狼人の姿になる・・・けど、あくまで見せかけだけだ。

 接触したりすると身長差で違和感を出るから、変装してる間は控えるように」

「接触?」

 

 フリュネが可愛く首をかしげる。

 

「抱きついたりするなってこと」

「・・・だめ?」

「だめ」

 

 指をくわえて上目遣いになるフリュネにちょっと心動かされつつ、きっぱり言い渡すイサミ。

 

「・・・はーい」

 

 しゅん、とするフリュネに一同が苦笑する。

 先ほど判明したのだが、幼女化したフリュネは抱きつき魔のキス魔であった。

 ここ一時間程の間に、ヘスティア・ファミリアの面々は全員が被害者リストに名を連ねている。

 特にイサミ以外の小さくて可愛い子達(フリュネ視点)がお気に入りのようであった。

 そこで、あ、と何かに気づいたようにヘスティアが口を開く。

 

「今更だけど、フリュネくんは名前そのままでいいのかい?」

「そう言えばそうですね。えーと、フリュネ・・・リューネ・・・ネサレテ・・・サレ・・・レテ・・・レーテーでいいか?」

 

 こくこく、とフリュネ改めレーテーが頷く。

 レーテー、ギリシャ神話でその水を飲むと全ての記憶を失う忘却の川の名前である。

 悪い思い出を忘れてやり直そうとする彼女にはふさわしい名前かもしれないと、イサミは思った。

 

「よし、じゃあレーテー。改めてよろしくな」

「うん! ・・・あのね、あのね」

「なんだ?」

「もういっぺん、名前呼んで」

 

 照れながら言う巨躯のアマゾネス。

 

「・・・? レーテー?」

「もういっぺん」

「レーテー」

「もういっぺん!」

「レーテー!」

 

 何が嬉しいのか、きゃあきゃあと喜ぶレーテー。

 イサミがぽりぽりと頬をかいた。

 

「うーむ・・・」

「えへへー。イサミちゃん、大好き!」

「こら、抱きつくな! キスするな!」

 

 

 

 レーテーの魔手から"自由移動の指輪"の力で逃れ、息を整える。

 彼女も満足したのか話題を変えてきた。

 

「それにしても、ヘスティア・ファミリアって全然名前聞かなかったけどすごいねぇ。

 四人しかいないのに上級冒険者が三人もいるなんてぇ」

「あー、ランクアップしてるのはシャーナだけで、俺とベルはレベル1だぞ」

「うそぉ! イサミちゃんもベルちゃんも、絶対レベル2かそれ以上でしょお?!」

 

 目を丸くするレーテー。

 イサミがため息をついた。

 

 剣姫との特訓を経て、ベルのステイタスもレベル2に上昇したばかりの冒険者に匹敵するレベルにまで達している。

 ステイタスに「S」がいくつ並んでいるか、最早数えるのも面倒になる程だ。

 

 イサミに、シャーナに、そして誰よりアイズに徹底的にしごかれ続けたことが最大の要因だが、"ヒューワードの(ヒューワーズ・)便利な背負い袋(ハンディ・ハヴァサック)"によって一日中迷宮に潜っていられる事、複数のモンスターを素早く屠れる速射魔法の存在も大きい。

 

「まぁそのへんは余りよそに漏らさないように」

「はーい」

 

 精神が幼女化してもその辺はわかっているのか、素直に頷くレーテー。

 

(まあ、考えてみればその辺を利用して勢力伸ばしたのがイシュタル・ファミリアだしな・・・)

 

 そんな事を考えつつ周囲を見渡す。

 四人とも装備を整え、準備は出来ていた。

 

「おーし、準備は出来たな。それじゃ行くぞ」

「うん、早く行こう、兄さん!」

「なんだ、やる気満々だな」

 

 アイズとの特訓で得たものを試してみたいのだろう、高揚する弟の頭をくしゃりとなぜる。

 

「ベルは調子に乗りやすいからな。リリ、お目付役頼むぞ」

「お任せ下さい、イサミ様。ベル様はわたしがお守りして見せます」

「むー」

「わはははは! 弟の面倒も大変だな、イサミ?」

 

 信用してよ、とむくれるベル、大笑いするシャーナ。

 それらをほほえましく見ていたヘスティアの手元で、不意にぱきり、と。カップの取っ手が壊れた。

 

「・・・・・・・・・・!」

 

 得体の知れない悪い予感。慄然とするヘスティアが口を開こうとして――

 

「"簡易修理(メンディング)"」

 

 気づいたイサミが素早く手をかざして呪文を発動する。

 ヘスティアが眼をぱちくりさせたときには、カップは元通りになっていた。

 

 見上げるヘスティアにイサミは指一本、くちびるの前に立てる。

 出発前に不吉は禁物であると言いたいのだろう。

 ことに、生死を賭けた迷宮探索ともなれば。

 ヘスティアは逡巡し・・・その口から出てきたのは無難な言葉だった。

 

「それじゃ行ってらっしゃい・・・みんな、気をつけてくれよ。特にベルくん」

「もう、神様まで! わかってますよ!」

「だといいんだがな、ん?」

「それでは行って参ります、ヘスティア様」

 

 シャーナにいじられてムキになるベル。

 丁寧に挨拶を返すリリ。手を振るイサミとレーテー。

 言いしれぬ不安を抱えつつ、ダンジョンに向かう彼らを見守ることしかヘスティアには出来なかった。




フリュネ・ジャミールは死んだんだ
いくら呼んでも帰っては来ないんだ
もう本編設定は終わって、君も巨女萌えに目覚める時なんだ
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