ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
黒の戦士の持つ《魔導士退治》特技は、間合いの中にいる敵が呪文などを発動しようとしたら即座に割り込んで一撃を食らわすことができる。
そして剣の持つ解呪の魔力が、発動しようとしていた魔力を霧散させる。
それがイサミの呪文を完封したからくり。
だがイサミが拳を握った瞬間、付け入れる隙は完全に消えていた。
「・・・なるほど、"
あれだな。ドワーフやノームのクレリックが時々使う、盾で呪文発動を守る技法だ」
「正解」
《発動を守る盾》特技。
《魔導士退治》の効果を防ぐほぼ唯一の手段である。
通常
つまりそれは、黒の戦士の行動も大きく制限されると言うこと。
イサミの呪文発動を妨害しようとすれば、発動の瞬間にあわせて攻撃を"待機"しなくてはならない。
自分から積極的に攻撃することはできなくなるのだ。
「これで俺が"
「そうだな」
頷く黒ひげの巨漢。
ちなみにテレポートの呪文が使えないのに何故"
空間に穴を開けて転移を行うテレポートと違い現実を改変して「この場所にいた」事にできるので、原理的に空間をいじる必要がないのである。
「だが俺たちが移動しても、あんたはすぐに追いかけてくる。何せ同じ階層だ。あんただったら五分くらいで来かねない。
それでベルを助けるのを妨害されでもしたら本末転倒だ」
「だろうな」
再び巨漢が頷く。
剣を突きつけているその表情にはむしろ楽しそうな風情すらある。
「で、どうするつもりだ、お前さんは?」
「だからさ。お互い納得の行く話をしようじゃないか」
にやり、と。もう一度イサミが笑った。
一分後、首筋に後ろから剣を突きつけて/突きつけられて早足に歩く男とイサミの姿があった。
レーテーは困ったような顔で、シャーナは露骨なあきれ顔でその後ろに続いている。
「いいのかよ、これ?」
「いいんだよ。俺たちはベルの所に行ける、おっさんは上役に言い訳が立つ。利害の一致だ」
「上役って訳じゃ無いんだがな・・・まあ似たようなもんか」
早足と言っても化け物二人のペースにあわせてであるから、そこらの上級冒険者の全力疾走より遥かに早い。
シャーナはほとんど全力疾走であるし、レーテーも小走りの域は越えている。
ベルのいるルームに着くまで三分とはかかるまい。
ミノタウロスとおぼしき咆哮と、武器を打ち合わせる音がかすかに聞こえてきた。
南北と西に延びるT字路。
ベルのいる筈のルームに続くそこで、四人は足を止めた。
四人とは反対側から走ってきた白金の剣士――アイズ・ヴァレンシュタインもまた。
「・・・どういう、ことですか?」
右手に油断無く愛剣を構えつつ、アイズが問う。
黒の巨漢の力量を見抜いたか、その額にはうっすらと汗がにじんでいた。
「その、だな。話すとちとややこしいんだが・・・」
「アイズーッ!」
少女の後方から、駆ける足音と彼女を呼ぶ声。
フィン、リヴェリア、ティオナ、ティオネ、ベート。
ロキ・ファミリアの一級冒険者達。
「このっ! 【
「よせっ!」
「ティオナ、だめっ!」
状況を見て取ったティオナが大双刃を振りかぶり、跳躍する。
イサミごとぶった切る勢いの彼女をイサミとアイズが止めようとするより早く、イサミの背後から黒い剣が一閃する。
「え・・・きゃあっ!」
「うおっ!」
「きゃっ!」
鈍い音と共に、大双刃がティオナの手から離れてティオナの前方、巨漢の後ろに飛んだ。
驚きの声を上げてシャーナとレーテーが飛来する巨大な鉄塊から身をかわす。
まさに振り下ろそうとしたその瞬間得物をはじき飛ばされ、ティオナはバランスを崩してイサミの右脇に転がった。
「っったぁ~~!」
「馬鹿っ! このおっさんに手を出すな!」
「おっさん言うなよ・・・いや、おっさんだけどなあ」
ぼやく黒の戦士をよそに、リヴェリアを除く残りのロキ・ファミリアの面々の顔色が一斉に変わる。
「どうした、おまえたち?」
「ああ、君にはわからないか。あれはね――」
「あの虎縞野郎だよ! あの虎縞野郎が使ったカウンター技と一緒だ!」
「!?」
リヴェリアの顔色も変わった。
再び剣を突きつけられたイサミに、そしてその後ろの黒ひげの巨漢に視線をやる。
フィンが親指を口元に持って行きながら、片目をつぶってたずねる。
「何やら取り込み中のようだが・・・君らは何か関係があるのかい?」
「まあ、関係あると言えばあるな。あの酒場の前でこいつが使ったのと、今俺が使ったのは紛れもなく同じ技だからな。だが一緒にされたんじゃあ心外だね――何せ俺が"
「っ・・・!」
イサミが絶句した。
「その風貌にその技量、
「おい、どういうことだ。知ってるのか?」
シャーナが戸惑ったように黒い巨漢とイサミを交互に見上げる。
「ああ。ロビラー卿・・・と言っても知らないだろうがな」
D&D最強の戦士。
道を究めた達人超人といえば九割九分まで魔術師か僧侶といったスペルユーザーである世界において、ほぼ唯一純戦士でありながらその域に達した男。
邪神や世界最強の魔術師と剣一本で渡り合う、正真正銘の怪物。
最強の魔術師モルデンカイネンと共にあまたの冒険をくぐり抜け、国を落とし、邪神に深手を負わせ、その後裏切って邪悪な大魔導士レアリーに忠誠を誓い、また裏切った男。
(レベルは・・・媒体によって結構ばらつきがあったような)
D&Dでは時折あることだが、有名人や魔王などは文献によって設定されたデータに食い違いがあることがある。
ロビラーもその例に漏れないが、こちらのレベルに換算すれば最低でも7。最悪9にも達する。
(せめてエピックレベルハンドブックのデータ・・・レベル8相当でとどまっていてほしいところだが・・・)
嘆息するイサミをどう見たのか、後ろの黒い戦士――改め、ロビラーがにやにやしながらつっつく。
「おう、それで弟の所へ行かなくていいのかよ?」
「行くさ。行かいでか。
・・・そう言うわけで、今俺はこのおっさんの人質って事になってるから、手を出さないでくれると助かる。ベルを助けてもダメらしい」
言うなり、「早足」で歩き始める。無論、ロビラーも遅れずに。
「あ、待ちやがれ!」
「・・・」
叫ぶベートや戸惑う面々をよそに、無言のままアイズが追随する。それにベートとフィン、リヴェリアも続いた。
二人の速度に目を丸くするティオナに、レーテーがひょい、という感じで彼女の大双刃を手渡した。
「はい、ティオナちゃん、これぇ」
「あ、うん、ありがと。・・・お姉さん誰? ヘスティア・ファミリアのひと?」
「私? レーテーって言うの。ファミリアは秘密ぅ」
にこにこと笑う狼人女性に、「ふーん」と首をかしげるティオナ。
「何してるの! 置いてくわよ!」
「わかってる!」
叫ぶとティオナはレーテー、シャーナと共に駆け出した。
厳密に言うと高レベル戦士系はザクネイフィン・ドゥアーデン(ダークエルフ物語で有名なドリッズト・ドゥアーデンの父。ファイター24)もいるのですが、
作品に登場した時点で亡くなってる&生ける死者となった後に消滅してるので、多分現状ではロビラー卿がオンリーワンだと思います。
私が知らないだけで他にいたらごめんなさい。