ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
『アアアアアアアアアアアアアッ!』
絶叫と共に、イサミに向けられたのと同じ数の触手がアイズに射出される。
「わっ、重っ!?」
「何これ・・・っ! やっぱり、もっと重い武器にして貰うんだったっ!」
アマゾネス姉妹がその内二本を弾きつつも悲鳴を上げる。
シャーナやレーテー、その他の前衛組も同じようなものだ。
「ふんっっっっ!」
だが、その中で一人、ドワーフの老雄が気を吐いた。
射出される触手を、巨大戦斧が真っ向から迎え撃つ。
「ふんんんぬっ!」
『!』
振り下ろした戦斧の刃にぶつかり、巨大触手がそれ自身の勢いで「ひらき」にされていく。
あっという間にその勢いが止まり、縦割りにされた触手は力なく地面に垂れた。
「どうした貴様らぁ! 普段威勢が良いのは口だけかっ! しゃきっとせんかい、しゃきっとぉ!」
「・・・ちっ! てめえに言われるまでもねえんだよ、ジジイっ!」
「ふふ、ご老体にそこまで言われては、それがしも奮起せざるをえんのう!」
発憤した前衛組と共に触手の攻撃圏内に突入しつつ、フィンが苦笑した。
「やれやれ、そう言うのは僕の仕事なのになあ。お株を奪われたよ」
「なあに、たまにはよかろうが?」
「まあね」
呵々大笑するドワーフの剛戦士とともに、長槍を担いだフィンは地を駆ける。
既に前衛達の先頭、アイズとベートは堕ちた精霊と接触していた。
「くっ!」
「ちっ、固ぇ・・・!」
だが、巨大な盾のごとき花弁は二人の攻撃を阻む。
ベートの炎を込めた蹴りは焦げ目を付けるにとどまり、アイズの風ですら一刀両断とは行かない。
だが。
「どいたどいたどいたぁーっ!」
「うぉっ!?」
「どっせいっっっっっっっ!」
気合い一閃。跳躍し、体ごと突っ込んで来たティオナの
そう、
相手が芋虫でないと見るや、このアマゾネス姉妹の妹は不壊属性の大剣ではなく、愛用の超重武器を持ちだして来たのだ。
「あんたね、こいつの体液も溶解液だったらどうするつもりだったのよ・・・」
「その時はその時!」
姉が呆れた顔を見せている間にも、ほつれた花弁から前衛達が飛び込んでいく。
堕ちた精霊も、下半身の触手でそれに対応する一方、自分の喉元のイサミを両手で何とか引きはがそうとする。
だが巨大な両手で引きちぎるにはロープは余りに細く、首に食い込みすぎている。
ロープ自体も鋼線を織り込んだ、冒険者御用達の特製品。
それを十重二十重にも束ねれば、イサミの体を引っ張った程度でちぎれるものではない。
そして呪文やマジックアイテムの効果を封じても、イサミの体は耐久力だけならば圧倒的。
堕ちた精霊とはいえ、自分の体を傷つけない程度の攻撃で殺したりちぎったりできるほどやわではない。
そして下半身を攻める前衛達も奮戦している。
風を纏った長剣が、長槍が、大戦斧が、斧槍が、大双刃が、炎を纏った蹴りが、大太刀が、大剣が、二丁大戦斧が。
次々と堕ちた精霊の下半身に食い込み、触手を断つ。
僅かずつではあるが、冒険者達の攻撃は確実に堕ちた精霊の身を削っていく。
それらを一掃できるはずの魔法は、喉元にへばりついたやたらに頑丈な人間によって封じられ。
『ラァァー!』
悲鳴とも思えるかのような堕ちた精霊の絶叫。
それに応えるかのように、堕ちた精霊の後方、60階層へ続くと思われる階段から現れる、大量の芋虫と食人花。
「総員後退! イサミ君はそのままで!」
ちらりと上方を見た後、フィンが指示を飛ばす。
喉元のイサミが親指を立てて見せたのに頷き、他の仲間達と共に一目散に駆ける。
堕ちた精霊も追撃しようとするが、下半身はずたずただ。
数本の触手を射出するのが精一杯で、それらも全てしんがりのアイズとガレスによって阻まれる。
『ラァァァァァアァ!』
不快感を感じながらも、周囲を芋虫型と食人花で固め、どことなく安堵の気配を見せる堕ちた精霊。
はや50m程彼方に駆け去ったフィン達を見て――彼らは逃げたのではなく、本当にただ後ろに移動しただけなのだと、彼女は悟った。
「【至れ紅蓮の剣、無慈悲の猛火、汝は業火の化身なり】」
迷宮都市最強の大魔導士――イサミを含めても一撃の威力ではなお――【
「【ことごとくを一掃し、この戦乱に幕引きを。焼き尽くせスルトの剣、我が名はアールヴ!】」
その全力を込めた、最強最大の殲滅攻撃魔法。
「【レア・ラーヴァテイン】!」
地獄の業火が再び世界を焼き尽くす。
紅蓮に染まる59階層。
無数とも思える芋虫型食人花の全てを瞬時に焼き尽くし、天井の岩すらもガラス状に溶融させる。
その中心にいる堕ちた精霊とて無事では済まない。
花弁を閉じ完全防御しようとする。だがそれはハイ・エルフの王女の魔力を余りにも軽んじた行為。
一枚の破れ目、それを見逃すほど都市最強の魔法は甘くはない。
『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!』
破れ目から入り込んだ炎が、防御の内側を存分に焼き尽くす。
悲鳴は爆炎の轟音にかき消された。
持続時間を終え、爆炎が消失する。
十枚の花弁全てを焼き尽くされ、炭化しつつも辛うじて原形をとどめた巨大な上半身が残った。
アンティマジック・フィールドの効果範囲内だった顔と肩、乳房の上半分だけが冗談のように綺麗に残っている。
ぼきり、と音がした。
炭化した胴が半ばから折れ、無事だった胸から上が地に落ちる。
焼き尽くされ、ガラス状になった大地に、緑色の
「よっしゃあっ!」
「よーし、とどめだーっ!」
歓声が上がる。
痛みに顔をしかめつつ、喉元のイサミもまたニヤリと笑ったその瞬間。
その「声」が響いた。
――またあなたたちなの? ここでこの子を潰されるわけにはいかないのよねえ。
「!」
「!?」
「その声は・・・!」
イサミ、シャーナ、レーテーの顔色が変わる。
同時に無数の金属製のとげがイサミの全身を切り裂いた。
「がっ・・・」
体を縛っていたロープもろともにズタズタにされ、地面に落下する。
白い肌、赤銅色の髪、青い瞳、赤いくちびる。
美の女神にも劣らぬ、しかし本能的な恐怖をかき立てる美貌。
「グラ・・シアッ!」
九層地獄の統治者アスモデウスの娘にして第六層の君主、魔姫グラシアの
この世界において強化種と融合している彼女は、純粋な戦闘力においてはオリジナルすら遥かに凌駕する。
「お久しぶり・・・でもないかしらね。まったく、ちょっと目を離した隙にやってくれたわね」
「ダンジョンに潜るのが俺たちの仕事でね。悪く思わないで欲しいな」
減らず口を叩きながらも、素早く呪文を唱えてアンティマジック・フィールドを解除する。
堕ちた精霊の攻撃で、死にはしないまでも右足は股関節が外れ、左足は膝から下が丸ごと砕けている。
反魔法力場の中では移動も治療もままならない以上、他に選択肢は無かった。
アンティマジック・フィールドを解除したイサミが、不死鳥のマントの力で飛行し、離脱する。
それを笑顔で見送ったグラシアは堕ちた精霊を見下ろし、イサミが張り付いていた喉元に降下する。
そして次の瞬間、その下半身を堕ちた精霊の胸元に埋めた。
「!?」
『ア・・・ガアアアアアアアアアアアアッッッ!』
はっきりと、苦悶の悲鳴を上げる堕ちた精霊。
上半身だけとなったその体が震え始める。
「ごめんなさいね。でも、ここであなたに消えられると、今までの苦労が水の泡だから。
結構苦労したのよ? あなたをここまで育てるのに」
いつの間にか、グラシアは裸身となっていた。
体は髪と同じ赤銅色に染まり、腰までうずめたその結節点から、じわり、と同じ赤銅色が堕ちた精霊の体に広がり始める。
「さあ、あなたも力を貸しなさい! ここでこのまま死なせたくはないでしょう!」
グラシアが叫ぶと同時に、地面から無数の触手が飛び出し、堕ちた精霊の体に突き刺さった。
胸像だけとなった巨体が再生・・・否、増殖を始める。
「な・・・何だありゃ!?」
堕ちた精霊から30m程の距離でイサミと合流し、エリクサーで治療を補助しながらシャーナが脂汗をにじませる。
堕ちた精霊の体は増殖を続け、既に最初の大きさすら上回るサイズになっていた。
「わからないが・・・あの地下からの触手。あれがあの精霊に力を与えているようにも見えるね」
フィンの額にも冷や汗がにじんでいる。
その言葉の通り、精霊に突き刺さった触手は脈打ち、栄養を送る葉脈か血管のようにも見える。
と、その脈が止まった。
突き刺さった緑色の触手が黒く変色し、ボロボロと崩れ落ちる。
おぞましき巨体が再び産声を上げた。
『Laaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!』
「うっ・・・!」
「くっ!」
大音響に耳を押さえる冒険者達。
女神のごとき女体型は肌も髪も赤銅色となり、腰まで再生している。
だがそれ以外は、何もかもが元のそれとは似ても似つかぬものと成り果てていた。
右腕の先には口と10の眼柄を持った巨大な眼球。中央の目は固く閉じられている。
左腕の肘から先は、牙を剥きだし、何本もの長い触手を持った巨大な芋虫。
腰から下はカンブリア紀の深海魚のような、鱗とヒレと触手を持ったクリーチャー。
ビホルダー。キャリオンクロウラー。アボレス。
今まで戦ってきた怪物達を取り込んだおぞましき融合体。
融合寄生を行う堕ちた精霊の性質からして、形だけをコピーしたとは考えにくかった。
実際に、融合精霊の下半身は床から僅かに浮いている。
アボレスの持つ空中浮遊の能力を用いてると考えるべきだった。
「でかい・・・!」
そして何より、融合精霊は巨大だった。
10mを越える上半身に、20m近いアボレスの下半身。
宙に浮いていることもあって、感覚としては37階層のウダイオスよりも大きい。
「
「なんだ、何か言ったか?」
「いや、田舎のほうの怪物の話に似たようなのがあってな」
トーリック・クリーチャーとは、名前の通りセントール(ケンタウロス)のように、人型生物の上半身と四本脚(あるいはそれ以上)のクリーチャーをつなげたモンスターである。
堕ちた精霊の上半身をアボレスにつなげた様はそう見えなくもないが、両手に他のクリーチャーを接合するようなゲテモノには流石に心当たりがなかった。
素直に、あの堕ちた精霊の融合寄生能力によるものだと考えた方が妥当だろう。
DAIC●Nマク□スとは後に某アニメスタジオを結成する連中が作った同人フィルムに出てくる宇宙戦艦ロボです。
1200mの戦艦ロボが両腕に海賊船アルカDィア号と宇宙戦艦Yマトを装着していたので、ワンカットながら強烈な印象を残しました。
というか実際にマク□ス描いてた人間が描かされたと言うからたちが悪いw