「あのさー、ちょっと聞きたい事あるんだけど聞いても良い?」
「あ、えと、俺?」
「イエス! あ、俺大鴉八咫。よろしくな~」
「尾白猿夫だよ。よろしく」
相澤に早くしろと言われたにも関わらず、軽薄半分飄々半分なキャラクターを演じている大鴉は尾白に話しかけていた。
「そのさ、体操服とか制服の時尻尾ってどうなってんのかなって思って。穴開いてんの?」
話しかけるネタにしたのは、クラスの中でも尾白だけが持つ尻尾という特徴だ。更衣の最中でも話しかけやすいネタと言えばそれぐらいだろう。いきなり自己紹介を始めるのはむしろ不自然で、相手からすれば多少不躾に見えることはあるものの“好奇心”というのは会話を、ひいては関係を始める鍵となるものなのである。もっともこの場合は、周りの空気があまり読めていないというキャラを周囲に知らしめる意味があってのものであるのだが。
大鴉の問いかけに対して、尾白は苦笑しながらも返してくれる。
「お店とかだと尻尾用に調整してくれるよ。穴を開けて尻尾のすぐ下でボタンで止める感じの。体操服とか制服も全部そんな感じかな」
「なーるほど。店でも対応してくれるのね」
「めちゃくちゃ多いってわけでもないけど俺みたいに尻尾生えてる人はそれなりにいるしね。多分そういうマニュアルがあるんじゃないかな」
へー、ありがと、っと気を抜けた返事を返しつつ、着替え終えた大鴉はそのまま尾白を待つ。
「着替え終わった?」
「え? もしかして待ってくれてたのか?」
「まだ友達1人もいなくてさ。話しかけちゃったし、お一人目にどうかなと思って。これでも勇気出して話しかけてんのよ」
「そういうことか。なら俺からもお願いするよ。俺もまだ友達いなかったし」
胸の内を打ち明けた大鴉に、尾白も肯定を返してくれる。こういうところで内心を見せておくと相手は警戒しづらいのだ。
「いきなり体操服って何があるんだろうな」
「体力測定とかじゃね? 入学してすぐに体操服って言ったらさ。それかプロヒーローの先生とガチで鬼ごっことか?」
「え゛。そんなことするの!?」
「なはは、ジョーダンよジョーダン。けど真面目に体力測定だと思うぜー」
そんな話をしつつ、クラスメイトに遅れないように早足で2人は相澤の待つグラウンドへと向かった。
グラウンドにつくともうほとんどクラスメイトは揃っており、全員揃ったところで相澤はけだるげに説明を始める。
「個性の把握テストをやる」
「個性の把握テスト!?」
「せ、先生! 入学式とかガイダンスは!?」
「まだ入学式もやってねーぜ!」
相澤の言葉にクラスメイトがヘラヘラとした大鴉は『惜しい!』と指を鳴らす。
「入学式しないのか……」
「ヒーロー目指すならそんな悠長なことやってる時間無いよ。雄英は自由な校風が売り文句だがそれは
呆然と呟いた尾白の言葉に応えるタイミングで、相澤は説明を続ける。
「中学の頃からやってるだろ? 個性禁止の体力テスト。まあそんな非合理的なものの代わりというわけではないけどもね。とりあえず見せたほうが早いか」
そう言った相澤は、入試で一番の成績を収めた爆豪を呼ぶ。
「中学のときソフトボール投げ何mだった?」
「67m」
「じゃあこれ投げてみろ。ソフトボール投げだ。ただし個性の使用は自由でな」
個性の使用は自由。その相澤の言葉に、クラスメイトにどよめきが走る。
「な、もしかして俺の予想あたってない?」
「あ、ああ、たしかに当たってた、のかな?」
「やりい」
呑気に話しているのは大鴉ぐらいなもので、その間に相澤から指示を受けた爆豪はソフトボール投げ用の白線で作られた円内に入っていた。そしてそのままボールを投げる構えを作り、思いっきり投げ飛ばす。更に、投げる瞬間に手のひらを爆発させてボールに勢いを加える。
「死ねえぇ!!」
「物騒すぎるでしょ」
思い切りが良すぎるほどに物騒な爆豪の掛け声に思わず大鴉が突っ込むと、それを隣で聞いていた尾白が耐えきれないとばかりに吹き出した。短い会話ではあるが、尾白に対しては派手に騒ぐのはむしろ距離が出来てしまう行為だと気づいての行動である。
爆豪の手から放たれたボールははるか遠くまで飛んでいった。そしてそれを手元の計器で確認した相澤が、モニターを生徒の方へと示す。
「705.2メートル。これが今の爆豪の最大限だ。全員、まずは自分の最大限を知れ」
「なにこれ! すっげー面白そうじゃん!」
「“個性”使って良いんだ! 流石ヒーロー科!」
「個性使って本気でやれるなんて熱いぜ!」
これからする『個性把握テスト』にはしゃぐ生徒たち。それに対して相澤がポツリと呟く。
「面白そう、ね」
「あーらら」
相澤の逆鱗に触れたかと大鴉が声を漏らす中、相澤は言葉を続ける。
「ヒーローになるための3年間、そんな腹積もりで過ごす来でいるのか? なら、トータル成績最下位の者は見込み無しとして除籍処分とする。これで少しはやる気が出るだろ」
一瞬の沈黙。そして爆発。相澤の言葉に対して反対するもの、唖然とするもの。それをまともに受け入れた、あるいは受け流したのは数名のみである。
「そんなこと、して良いのか……」
「しょーがないんじゃない?」
「え?」
思わずといった様子で呟いた尾白は、隣から帰ってきた返答に目を見開いた。
「しょうがない、って……」
「まー高校とはいえ一応ヒーロー科だからさ。遊ぶつもりで居られたら困るんじゃねえの先生達も」
俺でも困るわあ、と言った大鴉の言葉を補足するように、相澤は生徒たちの反対の声を黙らせるための言葉を発する。
「生徒の進退すらも教師の自由。ようこそ雄英ヒーロー科へ」
「そんな、最下位はいきなり除籍って……! いくらなんでも理不尽過ぎる! まだ初日ですよ!?」
そう反論してみせた少女の言葉に、相澤は淡々と返す。
「自然災害、大事故、身勝手な
相澤の言葉に、ざわついていた空気が引き締まる。最下位に対する除籍宣告という脅しと、その後の理由付け。その二つで相澤は、クラスの空気を変えたのだ。
相澤の出した指示に従って、生徒たちはそれぞれテストへと動き始める。20人という適度な人数とあって全員で最初から種目をこなしていくことになり、いまだろくに覚えていない出席番号順にテストを行っていく。
「いやー、全然数字出ないのな。みんな凄いねほんと」
ふざけたように後から来た尾白に話しかける大鴉は、この個性把握テストで出来ることというのは実は全くない。
理由は単純、個性の活かしどころが無いのだ。それは一種目目の50メートル走だけでなく、それに続く握力、持久走、反復横跳びなどでも一緒だった。
「大鴉の個性って、なんなんだ?」
目立った記録を残していない大鴉に、尾白は興味を持ってそう尋ねる。特に悪い意味ではなく、単純に気になったのだ。
「鴉と意思疎通ができる」
「え? それだけ?」
「シンプルでしょ? 俺の個性なんてそんなもんなのよ。だからこのテストはどれもきついんだよね」
嘘は言っていない。意思疎通の形態については言っていないし、話せる鴉が野生の鳥だとも言っていない。ただ本当に、意思疎通が出来るだけなのだ。
「尾白は尻尾関連だよな?」
「あ、ごめん。うん、俺の個性はこの尻尾。俺も大分シンプルだから、出来ること少ないんだよね。ていうか失礼な反応だったね、ほんとごめん……」
大鴉の個性に対する反応が失言だったと慌てる尾白をなだめて大鴉は笑う。
「そんじゃ、シンプルな個性同士頑張りますか」
「だね」
そんな話をしていると、後ろから勢いよく話しかけてくる者がいた。
「何話してんの? あ、俺上鳴電気、個性は帯電、よろしくな!」
視線を向けた2人に、金髪に黒のメッシュの入った男子生徒は名前を名乗る。コミュニケーション能力が高いのだろう。
「俺大鴉八咫。個性は鴉と意思疎通出来ること。よろしくなー」
「俺は尾白猿夫だよ。個性は見ての通り尻尾があって自由に動かせること、ぐらいかな」
「え、もしかして2人とも俺と同じ?」
「同じ?」
「テストにあんまり個性行かせない、よな?」
そう尋ねてくる上鳴の言葉に、尾白と大鴉はコクリと頷く。
「良かった同じ人いたー……。ロボット相手とかなら放電すればすむけど体力測定は無理だよな」
個性がうまくいかせないと文句を言う上鳴だが、実際はそう全力で不満に思っているというわけもなく、出来うる限りで全力を出していた。彼も除籍は嫌なので。それに最初の爆豪を見ていると、相性の良い個性を持っている生徒は大幅に得点を伸ばせるというのもわかってしまうのだ。なおさら頑張らねばならないという気分になる。
そんな話をしながら順調に種目をこなし、ソフトボール投げも3人は終えた。
「尻尾で重心が変わってもあんま飛距離変わらないのな」
「まあね。手足が残ってるところに5本目が生えてきたようなものだから大きくバランスは変わらないんだ」
「足の先っぽとかに生えてくれたら良いのにな」
「いやそれは無いだろ」
「無いね」
まじ? なんて、穏やかな会話をしている3人。そんな会話をしながらもそれぞれに他のクラスメイトの記録へも目をやっているのだが、中でも大鴉はクラスメイトの個性とその可能性を暴こうと脳みそをフル回転させていた。この観察はもはや癖のようなものである。
(あの紅白男は氷を出せるのか。起点は右手右足……多分右半身なんだろうか。あるいは右利きだからそっちだけなのか。ポニーテールの背が高い人は色々作れる感じか。欲しいだろうな。あっちの服しか見えない人はそもそも透明なタイプか。透過率屈折率は弄れるんだろうか)
個性というのは千差万別。似たような個性でも働きかけている部分が違ったりプロセスが違ったりと、全く同じものは殆ど無い。だからこそ他人の個性も気になるというもので。
「大鴉、あの緑の髪の人、個性使ってたか?」
「緑谷ね。いやー、俺もどーんな個性なのか気になってるんだよね。もしかして精神干渉系とかで俺みたいにテストで使いづらいんじゃない?」
そんな中でやはり目立つのは、個性を全く使っていない大鴉と緑谷であろう。個性の使い道が少ないという意味で言えば耳たぶからイヤホンジャックが垂れている少女や透明な少女もそうなのだろうが、彼女らはその見た目で個性がどんな系統なのかがわかる。それに対して2人は、まだ一切個性らしきものを見せていないのだ。
「俺もさっきからめっちゃ見られてる気がするんだよなあ」
「まあ、大体クラス替えした後とかこんな感じだよね」
ちらちらと視線を感じるとぼやく大鴉に尾白は苦笑を返す。学校において新しい集団になったとき互いの個性に興味を持つのは現代の常であるし、特に尾白は目立つ尻尾だけあって触らせて欲しいという要望を受けることも多かったのでそういう視線には慣れているのだ。
「──ったりめーだ! 無個性のザコだぞ!」
「無個性!? 彼が入試で何をしたのか知らないのか!?」
少し離れたところから聞こえてきたその声に、2人は揃ってそちらへと視線をやる。どうやら眼鏡の騒がしい少年と爆豪がなにやら言い合っているらしかった。
「無個性?」
「あー……爆豪はそう思ってんのね」
「どういうこと?」
2人が話している間にも、ボール投げ用のサークルに入った緑谷は大きく振りかぶる。そして放たれたボールは、普通に投げられたように飛び、身体能力だけで投げた大鴉よりも短い距離に落ちる。
「まったく、つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴でも合格できてしまう」
「消した……! あのゴーグル、見ただけで人の“個性”を抹消する“抹消”ヒーロー、イレイザーヘッド!!」
ずっと黙って測定を見ていた相澤が、なにやら髪を逆立たせて緑谷へと近づいていく。
「個性を、抹消?」
「ってことはやっぱり個性があるってことだな」
個性を自分の意思で制御出来ない。それを看破した相澤が緑谷に詰め寄る様子を生徒たちは沈黙して見守る。
少しして相澤が髪を戻して緑谷から離れ、緑谷は第2投を振りかぶる。そして。
「SMASH!!」
叫びとともに、凄まじい勢いで緑谷の手元からボールが放たれる。わずかではあるが、近くにいた相澤のところまで風圧が届いているほどだ。
(すげえな。これがオールマイトの……身体が出来上がったらもっと破壊力が増すんだろうな)
「わーお……すんごいね?」
「増強型だね。それにしても、なんで先生は止めたんだろう」
「やっとヒーローらしい記録が出たよー」
「すっげー!めっちゃパワーあるじゃん!」
「どーいうことだデク!!」
それを見ていた殆どの生徒が感嘆を示す中、爆豪だけは、緑谷へと向かって詰め寄っていった。そしてそれを相澤の操る包帯のような何かで捕縛され、動きを止められる。
「大鴉、さっきの……」
「さっきの?」
「爆豪はそう思ってるのか、みたいなこと言ってたよな?」
「ああ、言ったかな多分」
尋常ではない怒りようの爆豪に流石に違和感を覚えた尾白が、何か知っている様子の大鴉に声をかける。それに答えたとほとんど同時に、大鴉は後ろから衝撃を受けてたたらを踏んだ。
「なあっ!?」
「……おい」
「おい、何やってんだよ!」
たたらを踏んで痛そうにしている大鴉の代わりに隣にいた尾白が文句を言うが、眉をこれでもかと言うぐらいにしかめた爆豪はそれを無視して大鴉に問いかける。
「てめえ……なんか知ってんのか」
「なんかって何よ」
「とぼけんなクソが! 無個性だっつって──!」
「はいどうどう向こうで話そうか。ごめんな尾白、こいつ興奮しちゃって」
「あ、うん」
怒っている爆豪を宥めるように見せかけて大鴉は少し離れたところまで歩いて行く。相澤がちらりと視線をよこしてきたが、2人ともボール投げは終わっていることもあってひとまずは見逃してくれたようだ。
「んで、話ってなにさ?」
「んであの野郎は個性を持ってんだ! 無個性だったろうが! ついこの間まで道端の石っころだったやつが……!」
「あ、やっぱりそれなのね」
ふーん、と大鴉は呑気に声を上げる。
「俺はヒーロー科に受かった時点で、『個性があるんだろうな』って思ったけどね。緑谷の中学の感じからして、個性無しで頑張れるほど気合入ってないでしょ」
「無個性だったろうが! なんで持ってんだ!」
「それは俺も知らねえよ」
嘘だ。本当は大鴉は知っている。その監視もまた、大鴉が雄英に入学した理由の1つである。
何を、とは今は言わないが、1つ言うとすれば、お天道様の下であんな隠したいような話をしないでもらいたいものである。もっともそのおかげで、大鴉としては上に報告を上げれたのだが。
「でも現に今持ってんじゃん。ってことはなんかの理由でそうなってんだって思うしかねえの」
「……理由ってなんだよ」
そんなことまで問いかけてくる爆豪に、よほど精神的にダメージを受けているんだろうと大鴉は内心ため息をつく。もっともそれを表には出さないが。
「そりゃあ知らないけど、個性は発現してたけどこれまで発動条件が満たせてなかったとか、新しく発現したとか、実は緑谷の個性じゃなくて他の人の個性で身体能力強化してもらってるとか色々あんだろ? それか俺みたいに隠してたとかさ。まあ俺は積極的に言わなかっただけだけど。緑谷は自分から無個性だって言ってたしそれで苦しんでたから隠してたってのはないんじゃない?」
「……クソが……!」
実際のところは、3つ目以外は全てありえないことであるらしい。大鴉からの報告を受けて他の調査方法に長けている者が調べたところ、緑谷は足の小指の関節が1つ多い、つまりは『個性を持たない人種』であることが判明している。
だから真実は3つ目、のその更に奥。
『個性そのものが誰かから与えられた』というところにあるわけだが。
そこに爆豪に気づかれるわけにはいかないので、あえてそれらしい理由を並べたのである。
「まーったく爆豪はさー、へーんなとこ気にするよな。気がでけえのか小せえのか」
「ああ゛!? 誰の気が小せえって!?」
「ほーらそういうとこ。自分で自分はすげーやつだってわかってんのに周りと比較するでしょ。自分に絶対の自信が無いんだよ。無いのにあろうとしてるからすーぐキレたりビビったりすることになんの」
「ビビっとるわけねえだろうが!!」
「あ、次俺の番だわ、行ってくるな」
「おいっ!! ……クソがぁ!!」
言いたいだけ言って去っていった大鴉に爆豪は怨嗟の声を漏らすがそれを更に誰かにはぶつけることは出来ず。苛立ちを隠せずに周囲に遠巻きにされていたが、爆豪にはそれを気にする余裕は無かった。
「もう話終わったのか?」
「ん、おまたせー。それで、なんか話そうとしてたよな?」
自分の番の測定を終わらせて尾白の隣に戻ってきた大鴉がそう問いかけると、尾白は先程の発言の意味について問いかけてくる。
「あー、それね」
「話してきたってことは、何か知ってるんだろ?」
「まー、そりゃね。うん。緑谷さ、中学で『無個性だ』って結構いじめられてたのよね」
「……えっ?」
こともなげに話し始めた大鴉の言葉の内容に、尾白は呆けた声を漏らす。
「だから個性があるのに爆豪は信じられない、ってなってる感じ。俺はヒーロー科にいる時点でなんかの理由で実は個性があるんだろうなって思ってるからそんな驚かなかったけど」
「昔は無個性だったってこと?」
「それか、無個性のフリをしてたか、だけどね。まあ中学から見てきて、あいつが嘘ついてる方だとは思えないかな。なんか理由があって実は個性があったって事になったんだと思うよ。昔からあったけど気づけてなかったとか」
釈然としないながらも尾白は一応の納得を示してくれる。本来個性とは4歳までに発現するものであり。それ以降の発現例もあるが、中学生でというのは、調べて数例あるかどうかなのではないだろうか。そのあたりは大鴉は調べてないのでわからないが。そもそも個性は未だに未知のものなので、それっぽい理由はいくらでも考えられるのである。
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緑谷の大投擲と爆豪の暴走後も個性把握テストは進み、全種目が終わって結果が開示される。
「ちなみに除籍は嘘な。君らの最大限を引き出すための合理的虚偽ってやつだ」
結果を示しながらの言葉にクラスメイトの大半は悲鳴のような声を上げる。特に自分の順位に自信が無かったものは裏切られた気分だろう。
「お、ドベじゃないー。身体鍛えといて良かった」
「個性使ってないのに高いな。俺ももっと頑張らないと」
大鴉と尾白もそれぞれ自分の順位を探す。結局最下位除籍は無かったが、順位が高いというのはそれだけで嬉しいことである。
「テストは以上。教室にカリキュラム等の書類があるから目を通しておけ。緑谷は保健室。明日以降も授業はあるから完全に治してもらえ。あと大鴉はこの後俺のところに来い」
「えー!? お説教スカ!?」
「違う。良いから来るように。以上、解散」
騒ぐ大鴉を一顧だにせず相澤は解散を告げる。
「ど、どんまい?」
「こんな善良な生徒を捕まえてどうしようってんだ」
「善良って、何だったかな」
若干遠い目をした尾白と別れ、大鴉は相澤のところへ行く。
「何っすか」
「その話し方は俺の前でもか」
「そりゃあずっとキープしないと!」
素で話したことのある相澤は大鴉の話し方に違和感を覚えつつ、要件を切り出す。
「お前何か知っているみたいだったが、緑谷の個性は昔からああなのか?」
「いや、全然。てか緑谷は元々無個性だって中学とかでもいじめられてたぐらいなんで」
「無個性?」
「おかしいっすよね。だからずっと隠してたのか、なんか発動条件を満たしてなかったのかなって思ってるんすけど」
大鴉の説明に、相澤は少し考え込む。
「……その場合、どんな発動条件が想定できる?」
「明らかパワー系だし、今の緑谷の身体能力か筋トレとかの動作かなって。中学のときヒョロっヒョロだったのに受験期にだんだん体格が良くなってく感じだったんで」
「ほう。理由は?」
そう尋ねる相澤は、緑谷について気になりつつ大鴉についても試しているのだろう。
「いやまあシンプルにあのパワーにギリギリ耐える身体が出来たからパワーが使えるようになったんじゃないですかね。それまでは身体が壊れるどころか死にかねないからセーブがされてたみたいな。筋トレって言ったのは、トレーニングとかで発生したエネルギーを蓄積して解放する感じの個性もあり得ると想定した場合です。まあでも、これまで運動したかどうかによるのでなんともって感じだけど」
生徒達から遅れて校舎の方へとあるきつつ2人は話を続ける。
「緑谷についてはわかった」
「じゃあ──」
「後はお前についてだ」
すっと視線を鋭くした相澤の言葉に、大鴉は大げさに肩を揺らす。
「最大限を見極めろと言ったはずだが、お前まだ余裕があっただろ」
「……まあそりゃ、いくらかの競技でもうちょい良い記録は出せたと思いますよ。個性使って、ってことでしょ?」
「ああ」
相澤が時折自分の方を観察しているのに大鴉は気づいていた。気づいた上で、周囲の記録と比較して自分の身体能力だけの記録でも最下位になることは無いだろうと行動していたために、それについて問い詰められているのだろうと。予想は容易い。
「言っときますけど、全部本気でやりましたからね?」
「ならあれ以上は出来なかった、と」
「いや、そーいうわけでも。ちょっと訳ありなんですよねえ……」
「……はあ。お前が個性を秘密にしたいと言っていたのは知っているが、せめて教師には教えて欲しいもんだな」
相澤にそう言われて、そこまでを明かす分には問題ないと判断していた大鴉は簡潔に説明することにする。
「その、俺鴉と意思疎通なんですけど、ちょっと特殊な鴉とも意思疎通して話を聞いてもらうことが出来るんすよ」
「特殊な鴉?」
「そうっす。ただ俺の個性って基本『命令』じゃないんで、こういう場に呼んでも手伝ってくれ無さそうだし、なんとかなりそうなら呼ばなくていいかなって思ってたんで」
「……なるほどな。それ以上は、またいつか聞こう」
「助かりまっす! いやまあ言っても良いけど信じがたいでしょうし」
その後相澤から解散の許可を得た大鴉は、一足先に校舎へと向かった。途中で大柄なスーツを来た男とすれ違ったが、それも教師の一員だと知っているのでペコリと頭を下げるだけ下げて通り過ぎる。その頭上の木に止まっているカラスが視線をやってくるが、自分の方を見ないようにジェスチャーをしておいた。
はい。
……はい。
大鴉はすでに緑谷とオールマイトの秘密を知ってます。情報の伝達は一方通行じゃないんで。その辺にいるカラスがきになる情報があったら教えてくれるので、あんなところで“お話”してた2人の情報はすぐに大鴉に伝わって、その後常にみはられていた感じです。
あともう一点。現在A組は20人。この小説では、口田がいません。いても個性がかぶるので、場所を変わってもらうことにしました。
原作の描写、例えば体育祭なら緑谷が轟と決勝トーナメントで戦う試合を、主人公目線でリアルタイムで書くべきでしょうか。それとも、ダイジェストでどういうことがあって、主人公が何か気づいた事考えたことを軽く書けばいいでしょうか。どのあたりを本作に求められているのか知りたいです。というのも、体育祭を書いていて、主人公の試合よりも他の試合について尾白たちと話している場面が増えて書きづらいのでどうしたものかと。
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主人公周りだけでいい
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原作の内容を主人公目線で見たい
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主人公が何か気づきを得る場合など一部だけ