日陰者の鴉   作:アママサ二次創作

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6.暗躍

 雄英バリア破壊の翌日。早速トレーニングルームに行くという尾白の誘いを一時間程度だけ付き合って帰宅した大鴉は、自宅で複数人ぶんの料理を用意していた。

 

 唐揚げとポテトサラダ。それに時期外れのクリームシチューは今日訪れてくる知人の好物だ。

 

 ある程度用意が整ったところでチャイムが鳴らされ、インターホンで応じると一人目が来ていた。

 

『来たぞ、開けてくれ』

「はいはい。ちょっと待って」

 

 ドアを開けると、黒い髪をしたコートをまとった男が立っている。大きなマスクとタートルネックで目より下が完全に隠れていてその顔ははっきりとは見えないが、大鴉はその人物をよく知っていた。

 

「いらっしゃい」

「おう、久しぶりだな」

 

 靴を脱ぎながら答えた男を待たず、大鴉は料理の続きに戻る。やがてリビングまで来た男は、慣れ親しんだ場所のようにソファーにどかりと座り込んだ。

 

「2年ぶりぐらいだっけ?」

「ああ、そんぐらいだな。長かった」

「特機だろ? そりゃあ訓練も厳しくなるだろ。公安の中でもあそこは特に異質だからねえ」

「はっ。その訓練をガキの頃からやってるのは誰だよ」

「俺はちゃんと加減してもらってたからな。特機の水準でやったのなんてまだそんな長くない」

 

 料理の続きをしながら話していた大鴉は、揚がった唐揚げを数個皿に盛る。

 

「お酒飲む? ビールとワインぐらいならあるけど。後何があったかな」

「……じゃあビールをくれ」

 

 少し悩んでから答えた男性に、大鴉は冷蔵庫から出した缶のビールと、揚がったばかりの唐揚げをつまみとして出した。

 

「サンキュ」

「飯自体はもうちょっとだ」

「はいよ」

 

 そう話していると、男が机の上に放り出していた端末が振動して着信を知らせる。マナーモードにしているのは職業上の癖だった。

 

「ついたって?」

「ああ」

 

 答えた直後になるチャイムに、男が立ち上がってモニターで応答することなく直接玄関へと向かう。その間に大鴉は2周目の唐揚げを皿に盛り、完成したポテトサラダも大皿のままテーブルに出しておく。後はシチューとご飯を各人で注げば完成だ。

 

「いらっしゃい」

「おう、邪魔するぜ」

 

 戻ってきたマスクの男の後に続いて、中年の男性が入ってくる。年の頃は40を越えている程度だが、短く切りそろえられた髪と精悍な顔つきのおかげで若々しく見える。

 

「そろそろ出来るから座っといて」

「いや、そん前に」

 

 入ってすぐにソファーに座り込んだマスクの男と違って二人目はそのまままっすぐ進み、リビングの一角に設けられた神棚へと足を進めた。そしてそのまま、正式な作法に則って参拝をする。嬉しげなカラスの鳴く声を聞いた大鴉は、3人の分のご飯とシチューを注ぐとともに、小皿でもって神前にも料理を備えておく。

 

「まだやってんのか?」

「お前がしてないことに驚きだよ俺は。そのへんの神社ならともかくここはわかんだろ?」

「別に実在するからって敬わなきゃいけねえわけでも無いだろうが」

「お前言っとくけど、八咫烏が心広くなかったら祟られてるからなそれ」

「あーはいはい。悪いね八咫烏さん。俺は敬ってなくて」

 

 面倒くさそうなマスクの男の言葉に、今度は大鴉の耳だけでなく室内にカラスの鳴き声が響いた。

 

「青矢は敬って無くても認めてるからいいってさ」

「ほんと心広いな」

 

 そのやり取りに満足した青矢と言われたマスクの男性は、ビールの缶を開けるとそれを神棚の前に供える。あんな言い方をしているとはいえ、青矢もまた八咫烏に対しては尊敬の念を抱いている。だがそれは一般的な神に向けたそれではなく、一人の友に向けたものであって。だからこそ普通に参拝するようなことはしないのだ。

 

「準備出来たぞ」

「はいはいっと。お、今日もシチューあんのか!」

「安静さん来る時は毎回用意してるだろ。クリームコロッケとかは無理だから」

「やー、愛してるぞ八咫」

「はいはい」

 

 女性がその顔で囁かれたら惚れてしまいそうなことを口にする安静だが、大鴉は慣れたもので適当に返す。その言葉が嘘というわけではないのだが、こうも連発されると返しにも困るし慣れるのだ。

 

「あれ、青矢まだその火傷治して無かったの」

「ん? あー治さねえことにしたんだよこれは」

「そっか」

 

 青矢がマスクを取り服の襟元を下ろすと、そこからはケロイド状の火傷痕が見える。覗くとかいうレベルではなく、マスクで隠れていた部分のほとんどが古くなったケロイドで覆われているのだが。

 

 普通の人間が見たら腰を抜かしそうな恐ろしい形相にも見えるが、それに慣れている他の2人はそれ以上に反応を示さず、席について手を合わせた。

 

「お、腕上げたな」

「毎回言ってるだろそれ。それに味付けはノリだからな。美味しくなったり不味くなったりするぞ」

「……うめえ」

「そう言われると嬉しいな」

「なんで俺とこいつでそんな反応違うんだよ」

「重みが違うよな」

 

 淡々と返した大鴉の言葉に安静がガックリと沈むが、他の2人は食事の手を止めることはない。大鴉にとっては慣れたことであるし、青矢やそこまで周りを気にするタイプではないのだ。

 

「八咫、高校はどうだ?」

 

 気を取り直してシチューをご飯にかけて食べるという少々変わった食べ方をしながら聞いてくる安静に、大鴉も箸を止めることなく返す。今は離れているものの長い間一緒に暮らしてきて、このあたりはもう慣れたものだ。

 

「まあ普通に楽しいよ。面白いし」

「お前もう高校の年か。どこだ?」

「うん。雄英のヒーロー科に通ってる」

 

 大鴉の言葉に、青矢の箸がピクリと揺れた。だがそれ以上に動揺を見せることなく唐揚げをつまむ。

 

「へえ……」

「楽しいよ。ヒーロー目指してる人いっぱいいるし」

「人の傷えぐって楽しいのかてめえは」

「今更傷になってるぐらいなら職場変えた方が良いんじゃないかなって。今から目指せば?」

 

 青矢の過去を知っていて、その上で繰り返す大鴉に青矢は嫌そうな顔とともに突っ込むものの、大鴉からは辛辣な言葉が返ってくる。

 

「……目指さねえよ。つかそれならうちに入れてないだろ」

「まあな」

 

 もう終わった話だと返す青矢に、それを知っていてちょっかいをかけただけの大鴉は軽く肩を竦めるだけで答える。

 

「つーか、今なってもなれなくても、俺はどっちにしろ満足出来ねえよ」

「1位じゃないから?」

「なったところでだ。あいつに対して因縁がある以上、もうあっちには関わらねえ方がいい」

「ふうん。寿命まで逃げ切れると良いな」

「さあな」

 

 外から見たら仲が良いのかとは思えないような会話だが、そもそも2人は互いに仲良しこよしとするような関係ではない。ただ2人とも同じ場所に拾われて、そこで育った。その関係がある以上、仲良くなくても関係は続くのだ。

 

 

******

 

 

 全員の食事も終わり、テレビを垂れ流したまま3人はリビングへと移動した。

 

「さてと。それじゃあ本題に入るか」

「つまり俺の料理は本題じゃなかったってことか」

「そういうことじゃねえからな!? 美味かったぜ!」

「はいはい」

「お前が言い出したのに対応冷たくないか?」

 

 馬鹿げた会話をしつつも、安静は机の上にいくつかの書類を出した。それを大鴉が手に取るのを見計らって、青矢が口を開く。

 

「裏に潜ることになった」

「なるほど? まあ訓練してたわけだしな。ヴィランか」

「ああ」

「連絡要員が俺ってことか?」

 

 今日の要件はあくまで仕事の話で、食事はそのついでのことだった。そしてその仕事は必然、表に出せないものになる。

 

「これ、内容少ねえな」

「詳しいことははっきりするまではお前には教えれないって言っただろ」

「はいはい、わかってるって。にしても少ないって話だ」

 

 青矢と安静は、所属は秘匿されているものの警察機関に属している。そのため任務にあたっては情報はしっかりと伝えられるし、いろいろな権限も与えられる。それに対して大鴉は、既に様々な調査をしているものの、年齢もあいまってまだ組織に正式に所属しているわけではない。そのため大鴉が協力することはあれど上から情報が降りてくることはあまりない、という契約で成り立っているのだ。それでも、大鴉の個性や能力の有用性もあって概要や任務に当たる者などそれなりの情報が伝えられるのだが。

 

 今回はそれが異常に少ないのだ。

 

「お前が送ってきた映像も含めてきな臭い案件が色々ある。青矢の任務はとりあえず裏社会に居場所をつくることだ。そこからどうするかはまた指示がある」

「そういうことか。どこがターゲットかはまだ、と」

「そういう形の捜査員も出されるが、裏社会での過去が無いのは不都合になることもあるからな。青矢にはそれをするだけの能力と覚悟があると考えられたわけだ」

「了解。で、俺は連絡員?」

 

 任務の概要を何択理解した大鴉は、書類をおいて自分の仕事内容を尋ねる。こういうことは以前から何度かやっているのでもう慣れたものだ。

 

「お前というかカラスだな。今回は連絡員との接触も減らす。お前にはカラスの手配をやってもらいたい」

「なるほど。青矢に何匹かつかせとくか?」

「ああ。それと一応G-3を」

「了解だ」

 

 カラスを使った連絡方法として、基本は伝書鳩のように伝書カラスをするという方法がある。それを青矢の使いたいときに使えるように、5匹程度常に青矢から一定の距離、あるいは青矢が見える場所に置いておくというのが通常の手段だ。そのカラスは訓練されたカラスを使うので、不必要に青矢に接触したり、感づかれるようなことも滅多にない。合図に関しても、合図された後に近づくのではなく、青矢が捨てたゴミから連絡だけを抜き取って運ぶことなども出来る。

 

 それに加えて今回考えられたのがG-3。広範囲のカラスに対して青矢について伝えておき、青矢が何らかの手段でお付きのカラスから離れて移動した場合に位置情報を拾うというものだ。普通はここまでしないのだが、念には念をいれた方法である。

 

「顔写真は使って良いか?」

「問題ねえが、使ったらちゃんと焼けよ」

「わかってる」

 

 青矢から許可を得た大鴉は、普段使っているスマホで青矢の画像を撮影すると、すぐにそれをスマホのオンラインゲーム内に保存し、端末から削除した。

 

「ああ、そうかお前まだ端末支給されてなかったか」

「一般学生のスマホのセキュリティがガッチガチだったらおかしいだろ」

「まあな」

 

 普通に端末内に保存していない様子を見た安静が今思い出したように言うが、それは今更の話だ。そもそも大鴉同様に市井に潜っている安静の普段遣いの端末も同じようなものだろう。こればっかりは、どれだけ腕の良いハッカーがいてもどうにも出来ないのである。

 

「これ、良いか?」

「もう読み込んだ。大丈夫だ」

 

 書類を回収した青矢に大鴉がそう答えると、書類を持つ彼の手から青い炎が上がり、あっという間に書類を焼き尽くした。焼けた書類は、机の上に置かれた灰皿の中に静かに落ちる。

 

「室内で火い出すのやめてくれませんかねえ」

「制御ぐらい出来る」

「そういう問題じゃないんだが」

 

 青矢の答えにため息を吐いた大鴉は、再び端末を操作するとダウンロードされているソシャゲの1つを起動する。そしてフレンド欄から一人を呼び出すと、よろしくお願いしますと短くメッセージを送った。大鴉と書類上繋がっている警察組織の人間は安静ではなく、その相手にも念のため連絡しておく必要があったからだ。

 

「そろそろ行くか」

「はいよ」

 

 要件が終わったと立ち上がる安静と、それに従った青矢を見送るために大鴉も立ち上がる。

 

「外で会うことがあっても話しかけるなよ」

「わかってる」

 

 念を押すように言ってくる青矢にうなずき、彼らが出ていった後に扉に鍵をかける。急遽決まった訪問であったが、そういう場合は大抵何かしら用事があるもので今回もまさにそうだった。

 

「いやーな予感がするんだよなあ」

 

 ただただ調査をしていたいつもとは違い、自分が直接関わることになりそうな予感。ため息を吐く大鴉を慰めるように、頭の上にそっと僅かな重さがのる。

 

「大丈夫ですよ。自分で選んだ道なので。それに、知らないまま衝撃を受けるより、身構えたほうがはるかに楽だ」

 

 大鴉のその答えに満足げな鳴き声が響き、頭上の重さが消える。精神のプラスマイナスを感じることが出来る八咫烏が気にかけてくれたのだ。

 

「とりあえず洗い物しよ」

 

 気持ちを切り替えた大鴉は、カラス達への伝達を翌朝に決めて食事の後片付けへと向かった。




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原作の描写、例えば体育祭なら緑谷が轟と決勝トーナメントで戦う試合を、主人公目線でリアルタイムで書くべきでしょうか。それとも、ダイジェストでどういうことがあって、主人公が何か気づいた事考えたことを軽く書けばいいでしょうか。どのあたりを本作に求められているのか知りたいです。というのも、体育祭を書いていて、主人公の試合よりも他の試合について尾白たちと話している場面が増えて書きづらいのでどうしたものかと。

  • 主人公周りだけでいい
  • 原作の内容を主人公目線で見たい
  • 主人公が何か気づきを得る場合など一部だけ
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