シニア級〇年目のライスと朴念仁系お兄さまと時々同期や後輩の話   作:ブルーペッパー

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お久しぶりです。
あーでもないこーでもないと書き直してたら遅くなりました。

とりあえず生存報告も兼ねて一話だけ更新です。



72話 投票と抽選会

「負けたーー! もー悔しい!!」

 

 確定した着順板を見たトウカイテイオーが膝から崩れ落ちた。

 

「喧しい。二着なんだから、お前も有記念出られるだろ」

「そういう問題じゃないの! ブライアンも前哨戦だとしても負けたくないでしょ!」

「む……」

「ははは、一本取られたなブライアン。……さてテイオー、そしてライスシャワー」

 

 息も整ったところで、シンボリルドルフが言葉を紡ぐ。

 

「まずはおめでとう。見事な走り、言い訳などなく完敗だ。名だたるレジェンドたちを退け、君たち二人がドリームトロフィーからの代表としてどうか本番でも全力を尽くしてほしい」

「会長さん……! あ、ありがとうございます!」

「任せてよね! カイチョーの分も盛り上げて見せるからさ! ……あ、ついでにブライアンの分も!」

「……余計なお世話だ」

「ライスも! 今回は負けたけど、有記念じゃこうはいかないからね!」

「ライスだって、次はもっと頑張るからね!」

 

 トウカイテイオーが差し出した手をライスシャワーがしっかりと握る。

 次走への意気込みは客席にもしっかり届き、より一層歓声が沸く。

 

 有記念出走の席は、残り十。

 

 

 ◆

 

 

 ドリームステップレースから数日後、有記念出走者を決めるファン投票の結果発表の日が来た。

 そのせいかトレセン学園にはソワソワした落ち着かない空気が蔓延していた。その空気はマルカブの部室にもあって、

 

「うーん……むーん……トレーナーさん、結果発表はまだデスか!?」

「発表時間が来ていないからまだだよ」

「エル、少し落ち着きましょう」

「グラスだって気になってるクセにー!」

 

 エルが指さす先、グラスの手元にもスマホがあった。今は画面が暗転しているが、ついさっきURAの公式ページを確認しているのをみんな知っている。

 

「気にするなとは言っていません。落ち着きましょうと言っているんです」

「トレーナーさん、ああ言ってますけど自分の順位が想像より低かったらすっごい気にしマスよ!」

「エ~ル~!?」

「なんか懐かしいやり取りだ」

「あ……あの~」

 

 取っ組み合いを始める二人を尻目に、デジタルが手を上げた。

 

「お二人はどうしてそんなに投票結果を気にするんです? いえ、あたしも気にはなりますが、その……先輩たちは心配しなくとも出走できますよね?」

「そんなこと分かってマス!」

 

 URAが今年の有に用意したファン投票枠は九。一位から九位のウマ娘が出走可能だ。

 とはいえ、例年人気上位の全員出るわけではないので残りはレースの実績で決まる。

 エルとグラスはその活躍から投票でも実績でも出走は確実だ。

 なので、

 

「エルが気にしてるのはデジタルとドトウの順位デス!」

「え?」

「へ!?」

 

 二人の口からなんで、どうして、と疑問の視線が私の方に向いた。

 

「実は登録だけはしていたんだ」

 

 目を見開き、声にならない悲鳴を上げる二人。それを塗りつぶすように先に端末から音が鳴る。

 表示された通知にはファン投票の結果についての文字。開いて見れば、思わず口元が緩んだ。

 

「こんな結果だけど、どうする?」

 

 順位と名前を見て、今度こそ感嘆と悲鳴が上がった。

 

 ◆

 

 有のファン投票。その結果は即座にレースメディアが報じ、SNSのアカウントにも投稿された。

順位ウマ娘名階級
エルコンドルパサーシニア
スペシャルウィークシニア
グラスワンダーシニア
サクラバクシンオーシニア
セイウンスカイシニア
キングヘイローシニア
アドマイヤベガクラシック
ナリタトップロードクラシック
テイエムオペラオークラシック
10メイショウドトウクラシック

14 アグネスデジタル クラシック

 

 その結果に、ある者は歓喜し、ある者は嘆息した。

 

「三位……エルやスペちゃんに及ばず、三位……!」

「じゅ、十分スゴイですって!」

「宝塚記念覇者なのに……私もジャパンカップ勝っているのに……!」

「ん~先輩たちを抑えて黄金世代がウノ・ドス・トレス! まさに時代の中心は私たち! その中でも~? やっぱりエルがナンバーワン!」

「…………」

「グ、グラス先輩がもの凄い形相にぃぃ……!」

「もうエルさん、煽らないの!」

 

 そして各陣営は出走の可否を定めていく。

 

「応援いただいたファンの皆様には申し訳ありませんが、有記念には出走しません」

 

 怪我からの回復が間に合わないことを理由に回避を発表したアドマイヤベガ。その空いた枠を登録していた他のウマ娘たちが抽選で争い、ついに決定した。

 ファン投票の結果から、

1 エルコンドルパサー

2 スペシャルウィーク

3 グラスワンダー

4 サクラバクシンオー

5 セイウンスカイ

6 キングヘイロー

7 ナリタトップロード

8 テイエムオペラオー

 海外からの参戦枠として、

9 モンジュー

10リガントーナ

11サイレンススズカ

12ミホノブルボン

 ドリームトロフィーからの参戦が、

13ライスシャワー

14トウカイテイオー

 そして最後、抽選をくぐり抜けたのが

15メイショウドトウ

16アグネスデジタル

 

 計十六名、ロンシャンでの鷹の一声で決まった最強決定戦への出走者が出揃った。

 

 

 ◆

 

 有記念といえばトゥインクルシリーズを締めくくる年末のレースだが、レース本番以外も注目されるものがある。

 一つはファン投票。レースを見ている者たちが出走者を決めるというだけあって例年盛り上がる。

 そしてもう一つ。陣営揃い踏みで行われる枠順抽選会であった。

 

「お、そっちは大所帯だな」

 

 会場に入って早速、スピカのトレーナーと鉢合わせした。珍しく身だしなみを整えた彼の後ろには勝負服姿のスペシャルウィークにサイレンススズカ、そしてトウカイテイオーがいた。

 当然、私の周りにもライスにグラス、エルとデジタルとドトウがいる。スピカのトレーナーの言う通り、今回マルカブは最も多くのウマ娘を出走させた陣営となっていた。

 自然と会場内の視線も多く集まる。

 

「マルカブとは色々あったが……本当に色々あったが、今回は勝たせてもらうぜ」

「いいえ、勝つのはマルカブです」

 

 ウマ娘たちに代わってトレーナー間での宣戦布告。ライスたちも互いに因縁ある相手と火花を散らしていた。

 用意された席に着くまでに同じようなやりとりを各陣営とすることになる。

 黒岩トレーナーとミホノブルボン。サクラバクシンオー、セイウンスカイにキングヘイロー、チーム・リギルとテイエムオペラオー。海外から参戦のリガントーナとモンジュー。

 調子はどう?

 楽しませてね。

 今度こそ勝つ。

 言葉は違えど、誰もが同じことを告げてきて、こちらも返す。

 そして抽選会が始まった。

 

 司会進行の挨拶から始まり、出走ウマ娘たちの紹介───エルは特に凱旋門賞制覇の功績を取り上げられた───そして枠順抽選の方法が説明される。

 

『こちらに箱を二つ用意しております。中にはそれぞれボールが入っておりまして、片方には出走ウマ娘の名前が書かれたものが、もう片方に枠番号が書かれたものが入っております。

 最初にウマ娘の名前が入っている方を引き、名前を読み上げます。呼ばれた方はステージまで来ていただき、枠番号が入った箱を引いていただきます』

 

 枠順の言葉に各陣営、特にトレーナーたちが反応する。有記念はスタートしてすぐコーナーが来るというコース形態から内枠が有利とされている。

 逃げや先行を得意するウマ娘にはできる限り内枠に入って欲しいというのがトレーナーたちの想いだろう。

 

『そして、引く順番となるウマ娘側のボールを引いてもらうのは……こちらの方です!』

 

 最初の抽選はプロモーターとして呼ばれたゲストがすることが多い。その年に活躍した他のスポーツ選手だったり、話題になった俳優や歌手が来ることが多いのだが、ステージの隅からいそいそと出てきたのは見慣れたウマ娘だった。

 

『ど、どうも~なんでかこんな大役を仰せつかりました、ナイスネイチャでーす……』

「よ! ナイスねーちゃん!」

『ナイスネ!イ!チャ! あ~も~なんかテイオーとこのやり取りするの久しぶりだよ……ってすみませんいきなりコントしちゃって!』

『いえいえむしろ期待通りと言いますか……さて、会場やウェブ中継でご覧のレースファンの皆様にはいらないかもしれませんが、今回のプロモーターであるナイスネイチャさんについて紹介させていただきます。

 チーム・カノープスに所属してトゥインクルシリーズにデビュー。クラシック級では小倉記念、京都新聞杯を含めた四連勝で菊花賞に出走。その後も鳴尾記念などGⅡを二勝するなど最前線で長く走り続けました。

 特に有名なのは有記念への三年連続出走でしょう!』

『いや~出せていただいたのは光栄ですけど、よくて三着止まりでしたし、ファン投票してくれたみんなには申し訳ないなーなんて……というかあの時一緒に走ってた連中が今年も出てるってのが驚きですよ!

 あ! 笑うなあんたのことだよテイオー! あとライス!』

『ファンにも仲間にも愛されたナイスネイチャさん。トゥインクルシリーズを引退後はトレセン学園のサポート学科へ転科され、トレーナー資格を目指すと同時にURAの広報役としてファンとレースを繋ぐ橋渡し役を努められております』

『まだ職員見習いですけどねー。トレーナーの勉強も難しくて……いやーウチのトレーナー凄い人だったんだなって認識改めましたよ!』

 

 ナイスネイチャとのトークを一通りしたところで、ついに抽選の時が来た。

 

『では、まず一人目……参ります!』

 

 てりゃ! と気合の声とともにナイスネイチャが箱に手を入れ、出す。掴まれたボールに書いてあるのは、

 

『エルコンドルパサー! 今回の有記念の火付け役! 凱旋門賞を制した怪鳥が一番手です!』

「イエース! さあ行きマスよトレーナーさん!」

「え?」

 

 飛び上がるように駆けだすエルに手を取られ、一緒にステージの上まで連れていかれる。

 台本に無い流れに、進行役が苦笑いしながらマイクをエルに向けた。

 

『改めまして、凱旋門賞制覇おめでとうございます』

「ありがとうございマース!」

『この枠がいいな、というようなものはありますか?』

「エルが一番! 引くのも一番! だったら枠は一番デース!」

 

 大ぶりなエルの動きに会場から笑いが湧く。しかし実際、先行を得意とするエルには内枠が合っているだろう。

 

『では早速、枠順の抽選をお願いします』

「はい! ……うーん、これ!」

 

 引き抜かれた手が掴んだボールに書かれた数字は───

 

 16

 

『崩れ落ちるエルコンドルパサー! 大本命、一発目から大外8枠16番を引き当ててしまいました!』

 

 進行役のテンションが高い。会場からもさっきとは違う意味で笑いと拍手が起きている。特にスピカ、笑い過ぎだぞ。

 

「あ、あの~一回目なので引き直しとかできマス?」

『大外引いた方は皆そう言いますね。ですがダメです』

「あうぅ」

『さあネイチャさん、次の方をお願いします!』

 

 スタッフに促されて席に戻る。テンションガタ落ちのエルに慰めの言葉をかけようとしたところで、ナイスネイチャが次の抽選者を引いた。

 

『グラスワンダーさん! チーム・マルカブから連続しての抽選です!』

「立て続けで申し訳ありませんが、トレーナーさんお願いしますね?」

「え?」

 

 グラスがスッと手の甲を差し出してきた。意図が読めずグラスの顔と手を交互に見ていると、

 

「エスコートしてください。エルとはステージまで行ったんですから、私も」

「いや、さっきのをエスコートと言うのは」

「お願いしますね?」

「はい……」

 

 圧が強まったので、抵抗はやめてグラスの手を取る。戻って来たばかりの順路を再び進む。……これは、あと三周することになるのか。

 

「さっきぶりですね、マルカブのトレーナーさん。グラスも、今更だけどジャパンカップおめでとう」

「ありがとうございますネイチャさん」

『エルコンドルパサーさんに続いての抽選ですが、希望の枠はあるでしょうか?』

「差しのレースが得意なのでここじゃないとってこだわりはないですが、まあ内枠にこしたことはないですね」

「早速大外が消えたので楽な気持ちで引けます」

「親友が刺してきマース!!」

 

 笑い声の中、グラスが箱からボールを引く。

 番号は───

 

 15

 

『天を仰いだグラスワンダー! なんとチーム・マルカブ、外枠を連続で引いてしまいました』

「エルのことイジるからバチがあたったデース!」

「いやー盛り上げてくれますなあ」

「実はここまでリハーサルだったりしませんか?」

『外枠引いた方は皆そう言うんですよね』

 

 席にお戻りください、と言われてしまった。

 その後もナイスネイチャがウマ娘を引き、呼ばれた陣営が枠を決めていく。

 

 トウカイテイオー  4番

 キングヘイロー   9番

 テイエムオペラオー 3番

 ナリタトップロード 2番

 モンジュー     5番

 スペシャルウィーク 6番

 メイショウドトウ 10番

 アグネスデジタル  8番

 ミホノブルボン  12番

 サクラバクシンオー13番

 セイウンスカイ   7番

 リガントーナ   14番

 

 そしてライスとサイレンススズカを残すのみとなった。実質、次に呼ばれる陣営が引くのが最後の抽選となる。

 

「最後は……ライスシャワー!」

「! おにいさま」

「ああ、行こうか」

 

 今日五回目になる登壇を進行役にイジられつつ、ライスが箱に手を入れる。

 残った枠は最内の1番とドトウとミホノブルボンに挟まれた11番だ。ライスの脚質的にも、サイレンススズカが入る枠を考えても最内が望ましい。

 

『引きました! 書いてあるのは───1番! ライスシャワー、最後最後に残っていた絶好枠を引き当てました!』

「や……やったぁ!!」

「よかった、ライス……!」

 

 飛び跳ねて喜ぶライスに顔がほころぶ。

 自動で枠が決まったサイレンススズカとスピカのトレーナー、そして他のウマ娘たちも続いてくる。

 全員が決まった枠順の通りに並び、記者陣がシャッター音の雨が鳴り響いた。

 

 

 

ウマ娘名階級
ライスシャワードリームトロフィー
ナリタトップロードクラシック
テイエムオペラオークラシック
トウカイテイオードリームトロフィー
モンジュークラシック(欧州)
スペシャルウィークシニア
セイウンスカイシニア
アグネスデジタルクラシック
キングヘイローシニア
10メイショウドトウクラシック
11サイレンススズカシニア(米国)
12ミホノブルボンシニア(欧州)
13サクラバクシンオーシニア
14リガントーナシニア(欧州)
15グラスワンダーシニア
16エルコンドルパサーシニア

 

 

 

 





抽選順と枠順はフリーの抽選ソフト使いました。
なのでエルとグラスの連続大外はマジな運です。あとライスの一枠一番も。

また期間空けてしまいますが、本当にもう少しで完結なので気長にお待ちください。
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