で、俺が生まれたってわけ。   作:あかう

20 / 43
 ツクヨミ君人気ですね〜。
 日本神話の神々のトップ層は羅畏也さんに気にいられているのが何人かいるので今後出るかも!


苦労人、そして同情

 八雲紫は疲れていた。

 理由は勿論、羅畏也である。今回は地面の強度を書き換えて畑が耕せなくなったのだ。曰く「地面の強度上げればあんまり壊さないと思った」

 気を遣ってくれるようになったのは成長したと言えるが、空回りした上でさらにとんでもないダメージを胃に与えてくる。マジでもうやめてほしい。

 そんな中、とある山の山頂に最近よく見る男がいた。羅畏也の後片付けをいつもしている可哀想な人だ。

 

 ──話しかけてようかしら。

 

「あの……」

「うおっ!!」

 

 ……随分と過剰に反応されたわね……

 

「驚かせてごめんなさい。私は此処の支配者をしている八雲紫よ」 

「あ、ああ、そうか……よかった……僕はツクヨミ、一応月の神をやっているよ」

 

(月の神? じゃあなんで此処に……羅畏也様(あのバカ)ね)

 紫は月の出来事については恨んでいないどころか、月が半分程度吹き飛んだ事に対して同情すらしていた。そんな吹き飛ばされた月……の神がこんな所に居る理由は、羅畏也の破壊後を奇声を上げながら修復している姿を見ていると一つしか考えつかなかった。

 

「そうでしたかこれは大変失礼致しましたわ……此処に居る原因は羅畏也様、ですわよね?」

「…………ああ」

「…………随分とご苦労なされているようで……」

 

「本当だよ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「ッッッ!」

 

 耳が壊れる! なんて声量……! 

 

「本当に、本当にそうだよ! なんでこんな! なんでこんな何時(いつ)も何時も何時も何時も何時も何時も! 僕が何したって言うんだ! 何で何時も僕なんだ! アイツ自分で直せるだろうが! 自分でやれよ! ってかそもそも何で毎回毎回ぶっ壊すんだ! しかも毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回! 規模がデカいんだよ!! そして何時も何で月なんだよ! 何で僕の星を! 毎回! おかしい! 絶対におかしい! 何で僕が責任取るんだ! 姉さん(アマテラス)は知らん顔してるし! クソガキ(スサノオ)は好き勝手にやってるし! 分かってくれるのが何で悪神(アマツミカボシ)なんだよ! それに! 何で! 僕が毎回謝りに行かなくちゃいけないんだよマジで! あのボケ(羅畏也)が大陸ぶっ飛ばした時も僕が大体直したし! その上! 大陸中の神々の所に行かなくちゃ行けなかったんだぞ! 遠いんだよ! オリュンポスも! アースガルドも! あああァァァァァァァアアアアアアア!! もう嫌だ! もう嫌だァァァ!! 何で僕がァ! 何で僕がァァァァァァァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!! プギブジャァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 …………マジ? 

 それは流石にヤバいわねぇ…

 なんか私の苦労がちっぽけのものに見えてくるわ……事実格が違いすぎる…

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ」

「えっと……大変……でしたね」

「うん……」

 

 本当に可哀想ね……

 

「あの……どうやら最近は羅畏也様もあまり破壊しないように気は付けているらしいので……破壊が起こりにくいルールも制定しましたし……」

「ッ!!! 本当!?」

「え、ええ」

「うわアアアアアアアアアアアアアアアアア! ヤタアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 すごい喜びようね……本当に可哀想……。

 

「月に逃げれなかったのですか?」

「うん……何回かは逃げたんだけどね? アルテミスちゃんに追い出されるし、姉さんには連れ戻されるし……」

「ああ……」

 

 逃げ場がないのね……本当に……。

 

「元気……出してください。これ、今人間の里で売られている薬で……胃痛に良く効くんです」

「ああ……有難う……傷ついてもないのに痛むからどうしようもなかったんだ……なんも起きてない時もいつ起こるか心配で心配で……」

 

 あ、なんか涙が……

 

「君とは何だか仲良く出来そうな気がするよ」

「奇遇ですね……私もです」

 

 本当に。

 

「この際ですし羅畏也被害者の会でも設立しますか?」

「ああ、もうあるよ……。殆どの神々が加入してるよ……こんな事にならないように定期的に顔出させるようにようにしてたのに*1……」

 

 そうなのね……何やらかしたのかしら。

 

「昔に羅畏也様は何をされていたんですか?」

「ああ、それはね──────

 

 

 ────────────────

 

 予想以上に酷かった。

 

 まず熱線による熱風により南の果ての大氷塊を溶かし日本と大陸を分断した上で、大陸、周辺海域を蒸発させ、発生した大雨で大陸を一つ沈め、日本の山を平らにし、事あるごとに月を、たまに太陽を消し飛ばしていたらしい。

 その時に大体の人間────月の民含む──と、生物が死んだらしいが、カミムスビ、ガイア、デメテル、ブラフマー、イザナミ、ハデス、アヌビスと言った生、死を司る神々が協力して生き返したようだ。そして流石にこれ以上はヤバいと判断した別天津神様が神格と名を与える事を許可したとの事。

 

 とんでもなく強いと言うことは身に染みて分かっていたつもりだったけどもっとヤバかったわね。

 そんなの龍神も手も足も出ないに決まってるわよ。しかもツクヨミ様の話だと「世界ごと消し飛ばしてないだけまだ手加減していた」ですって? 

 アレで? アレで本当に手加減しているの? ……何? 「その気になれば光速超える」? 「質量が無限になる」?いや流石に………でも出来そうね羅畏也様なら……

 

 幻想郷……大丈夫かしら……ウッ……胃が……頭が……

 

「…………ところでさ、もしかして君……僕が色々直してるの見てた?」

「ええと……はい」

「…………どうなってた?」

「え?」

 

(質問の意図が分からないわね……どういうこと?)

 

「えっと、客観的に見て僕はどんな感じだった?」

「え、ああ」

 

(なるほど……でも……それは……)

 

「……やっぱり狂ってた?」

「………………はい」

「そっかあ……実は修復してる間の記憶が無くて……」

 

(やはり神とは人とあまり変わらないのかしら。辛すぎる現実から狂うことで逃避する……神ですら狂う程ってどれだけ……)

 

「あ、じゃあ私はそろそろ……」

「あ、そう?」

「……強く生きて……いや頑張って下さい……」

「うん……」

 

 そう言うと紫はスキマに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………入る直前に響いた爆音は気のせいだ。絶対そうだ。そうに決まっている。悲鳴なんかも全然聞いていない。鶏を絞め殺したような声など聞いていない。

 

 

 ……‥……………………………………………………………………寝よう。

 

*1
4話参照




 ギャグ漫画とかにおける次話に何もかも直ってる現象。
 この世界ではそれは全てツクヨミが引き受けている……。
 ちなみに大陸の神々は羅畏也に関わりたくないが、放っておくと世界がやばい時はなんとかしてくれます。

 それと高天原内羅畏也被害ランキングは
 一位ツクヨミ   →言わずもがな。
 二位山幸彦    →山を殆ど壊されたため。
 三位アマテラス  →何度か太陽を破壊されたため(スーリヤ、アポロン、ラー、ツクヨミ等と協力し即座に修復していた模様)それと後処理。
 四位カミムスビ  →羅畏也が怪物だった時に既存の霊力を殆ど奪われ、霊力を生み出すはずの生物が殆ど殺されたので、生き返すために必要な霊力を生み出さなければならなくなったため。
 五位ワダツミ   →海が蒸発したりしたため。
 六位海幸彦    →同上。
 七位スサノオ   →パシリにされていたため。
 八位ウマシアシカビヒコヂ→生命という生命を殺されたため。
 ⑨位タカミムスビ →同上。

 です!8、⑨位は「自分の苦労を水の泡にされたから」ランクインしてます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。