ビワハヤヒデの話し方とか違和感なければいいのですが…(ビワハヤヒデ未所持)
あと他の方で同じようなの書いてる方いて被ってたらごめんなさい。
日本ダービー。最も歴史と伝統、そして栄誉のあるこのレースには一生に一度しか出走することが叶わない。
それはとても残酷なことだ。今まで多くの名ウマ娘がそのレースに出走し、勝利と敗北の涙を流して、蹄跡を残してきた。
それはウマ娘の歴史の一頁。私の愛バもまた、この日歴史の一頁を彩る一役を担うことになった。
「ウイニングチケットが先頭で今、ゴール!!」
第60回日本ダービー。その栄冠を手にしたのはウイニングチケット。
ダービーに憧れ、ダービーを目指して走り続けたウマ娘。いつも元気いっぱいで、私の愛バのビワハヤヒデ、そしてナリタタイシンと並んでBNWと呼ばれている少女。
チーケーゾー! チーケーゾー!
スタンドから勝者を讃えるコールが響き渡る。
ウイニングチケットはスタンドに向けて手を振り返し、その声に応えた。
ビワハヤヒデとナリタタイシンがウイニングチケットの下へと歩いていく。
その顔に後悔はない。全力の末に、ビワハヤヒデもナリタタイシンも敗れたのだ。3人は如何とか言葉を交わしていた。
そろそろ、迎えに行こう。
私はそう思ってトレーナー席から立ち上がり、地下バ道へと歩いていった。
地下バ道ではウマ娘たちが一人、また一人とターフから歩いて来ていた。
彼女たちは一様にトレーナーに支えられて涙を流していた。一生に一度の大舞台。多くの夢がそこにはあった。そしてその夢を叶えられるのはたった1人。
17人は夢破れる。いや、彼女たちだけではない。このレースに出走すら叶わなかった数多のウマ娘たちの夢が既に破れている。
私は一人地下バ道の壁に背中をつけて彼女を待った。
程なくしてナリタタイシンが、そしてその後ろに着くようにビワハヤヒデがこちらへと歩いて来た。
外ではウイニングチケットの勝利インタビューが行われていた。
「お疲れ様。ハヤヒデ」
「ああ。負けてしまったよトレーナー君」
「そうだな」
返す言葉がなかった。
「どこが間違っていたのかな?君の目には私の勝利の方程式はどう映っていたのかな?」
「君の作戦は決して間違っていない。ウイニングチケットが土壇場で方程式を上回った。それだけだよ」
「トレーナー君」
聞き慣れた声。けれどその声には隠しきれない悔しさが溢れていた。
「何だい?ハヤヒデ」
「全力を出して、後悔はない。けれど、悔しいよ」
震えた声音で、彼女はその一言を絞り出した。
大人びて見えても、彼女だってまだ学生だ。一生に一度の大舞台。たった一度のチャンスを、彼女は目前で逃したのだから。
私は手にしていたタオルを彼女の頭に被せた。
「今は泣けばいい。悔しいのは当たり前のことだよ。それだけ君は努力して来たんだから」
「うぅぅ……あぁぁぁぁ」
声を潜めて、けれどはっきりと私に聞こえるくらいの嗚咽を上げてビワハヤヒデは泣いた。
親友であるウイニングチケットを祝福する気持ちは本物だろう。
けれどそれ以上に、ビワハヤヒデだって勝ちたかったのだ。
そんなビワハヤヒデの頭を、私は撫で続けた。
どれだけそうしていただろう。1時間かもしれない、一瞬かもしれない。よく覚えていない。けれど、
「ハヤヒデ」
「落ち着いたよ。ありがとう、トレーナー君」
「いいさ。泣きたい時は泣けばいい。でもこれで終わりじゃないのはわかるよね?」
「無論だ。クラシックはまだ続く。次こそは私が」
クラシック三冠。最後の冠。10月下旬に行われる菊花賞。
必ずその冠を掴むと、ハヤヒデは静かに闘志を燃やした。
それを見て私は少しだけ心の中で笑みを浮かべた。
「この夏が勝負になる。君の敗因を洗い直し、練習メニューを組み直す。私は必ず、君を菊花賞ウマ娘にしてみせるよ」
「ああ。よろしく頼む。トレーナー君」
敗北から学ぶものは必ず強くなる。ビワハヤヒデというウマ娘はこの日、自分の殻を一段破って大きくなった。
「誰の頭が大きいって?」
「言ってない言ってない」
心の声を聞き取ったビワハヤヒデに、私は今度こそ笑みを浮かべるのだった。