玉衡の元から逃亡したら千岩軍が追いかけて来ていた件について 作:久遠とわ
実は本来なら、大雑把ですが一気にファルカとディルックの関係の話や、ファルカ達VSアビス教団戦(規模的には前哨戦)、そしてレザーがファルカから大剣と鉤爪が渡されるシーン、そしてレザーが神の目を手に入れる直前のシーンを描いた上で投稿する予定だったのですが、途中まで描いていて急展開になりすぎると思ったことや説明が不足しているのではないかと思ったこと、また展開上を考慮した結果、それなら最初から対アビス教団戦までをじっくりと書いた方が良いと考え、ここまでで投稿することとしました。
それに合わせ、前回はレザー視点だったのが、今回はファルカ視点を中心に物語が進行しています。
尚、今回は本編で主にオリジナル設定や要素、またネタバレが発揮しております。
そして後書きにておいてもネタバレや考察ネタが発揮され、そこで久しぶりに軽く少し解説(主にディルック、またガイアを中心に)を行いたいと思います。
「ディルック!!お前…っ!!」
「…ファルカ大団長」
アビスの使徒を始めとするアビス教団、そしてガイアがアビス教団のスパイであったという事が発覚し動揺していたファルカは、そこに現れたディルックの姿を見て更に信じられないというような表情を浮かべる。対するディルックは表情を一切変えることなくファルカをチラリと見ると、すぐに視線をアビス教団の方に視線を戻した。
「…おまえだったのか」
ファルカはそう呟きながら、ディルックの姿をまじまじと見つめた。
闇夜の英雄。
それはモンドを守る為に人知れずモンドの闇夜の中を暗躍し続けていた正体不明の人物の事であり、長い間西風騎士団がこの人物を探し続けてきたのだが結局見つけたり、その正体を明かす事が出来なかった人物だ。モンドを守る西風騎士団にとって、その人物の活動は利するものであるものではあるものの、その者の活動を認めてしまえば騎士団が独立した武装勢力の存在を認めるという事に繋がりかねない。
その事から、騎士団はその人物の正体を突き止めようとしたが、結局のところ西風騎士団の調査で分かったのは、闇夜の英雄は神の目を操る事ができる人物であること、また活動範囲はモンド城内やモンド城周辺ではなく清泉町やアカツキワイナリー等といったモンド領全域であるという事だけであった。
「…ディルック」
だがファルカにとってまさかその闇夜の英雄、その人物がこの男、ディルック・ラグヴィンドであったという事は衝撃的であった。
「…いや、そうだな」
そして数多の疑問がファルカの頭の中に湧いてきたが、すぐにその疑問が解決できたのか、納得したような顔つきになった。確かにそうだ。ディルックしかありえないはずだ。何故今まで気づかなかったんだろう。とでも言うように。そして、ファルカは今までの事。初めて会った時の事から今までのディルック、そして今は亡き彼についての事を思い出す。
クリプス。ファルカの友人の一人であり、実の息子のディルックと養子であるガイアの父であった男。子供の頃のクリプスの息子であるディルックは、遊び心のある子どもだったガイアに対し、ディルックは父から好きなようにしていいと言われると、困惑で硬直してしまうほど真面目な子どもで、幼い頃から自分を厳しく律する子どもであった。
「…」
そしてあの頃の子供は、神の目を持たない父親とは違い、最年少で神の目を発現させたことにより、父であるクリプスの希望で西風騎士団に入団、父親を敬愛する騎士の少年となっていた。そうして、西風騎士団に所属した彼は数え切れないほどの任務と見回りの中で、情熱を燃やしながら西風騎士団の責務を果たし続け、どんなに大変な任務でも、騎士の気概と熱意は色あせず、どんなに難しい挑戦や厳しい任務を前にしても、鋭い剣のように最前線で活躍し続けた結果、少年のディルックは騎兵隊隊長となっていた。
「…っ」
しかしある日、ディルックが成人を迎えたその日。西風騎士団にとある一報が入った。
それは、恐ろしい魔物、魔龍がディルックとクリプスの馬車達を襲ったということであった。それはあまりにも突然で、西風騎士団に連絡する余裕や応援を要請する余力すらなく、そして強大過ぎる魔物を前にして、若き騎兵隊隊長であったディルックにはなす術がなかったということであった。
そうしてそれを見ていたクリプス、神に認められなかったあの男、騎士になれなかったあの男が、見たことのない不吉で邪な力、かなり後になって判明したがスネージナヤの“邪眼”という物を操り、魔龍を倒したとの事であった。
そしてその直後、クリプスの身体に異変が起こり、その邪眼という邪な力が徐々にクリプスの身体を蝕んでいき、クリプスは猛烈に悶え苦しみ始めたとの事。そうしてクリプスが地獄のような苦しみに悶え苦しむ中、ディルックは邪眼の反動に苦しむ父の心を救うため、最も敬愛していた父を自らの手で殺害を決意してしまったとの事。
そしてようやく近くにいた西風騎士団の巡回していた騎士達が、救援でその現場に辿り着いた時には、全ての事が事切れており、クリプスは涙を流していたディルックの腕の中で静かに息を引き取っていたというのが結末であった。
「…っ!!」
ファルカはもう思い出したくない光景を思い出してしまったかのように、歯ぎしりをした。
あの日、ディルックが騎士団を辞める為に大団長室にやって来た時の、ディルックの姿。かつての穏やかで慎ましく明るい性格でありながらも、情熱に満ち溢れ責務を果たさんとしてきた男から、自分の色々な感情を抑圧して生きる事になってしまい、暗くなってしまった男に変わり果ててしまった姿になってしまったディルックの姿を。
「っ!!」
その時の事をファルカは思い浮かべて拳を強く握りしめる。
そうしてその後に、当時の督察長であったイロックという男がディルックに事件の隠蔽を命じたこと、それが元でディルックの騎士団への信頼が崩れて騎士団を去った事、そしてイロックが裏切り者として騎士団を粛清された後も、リサやジンといったような努力家を評価しつつも、それでも騎士団という組織そのものには、少なからず恨みを抱き続けている事を思い返した。
「…はぁ、はぁ、はぁ」
ファルカは今更そんな事を思い出した事に苛立ちを覚えながらも、冷静になろうと呼吸を整えた。そうして、いつの間にか自分の隣に立つディルックを見つめる。
「…」
ディルックは、隣に立つファルカの方を振り向くことなく、じっとアビス教団の連中の方へと視線を向けたままだ。その姿からは、モンドの人々の平和や日常を守るためにアビス教団に執着し続け、アビスが企てた悪事は、決して見逃さないというような執念のようなものが感じられた。それはまるで、アビス教団と戦い、モンドやモンドの人々を守り続ける、それこそが今の彼の生きる理由で、為さなければならないことなのだと、そう言わんばかりの気迫や雰囲気ですらでもあった。
「…ディルック」
ファルカはディルックのその様子に、思わず呟いた。
俺の隣にかつていたあの少年、あの頃の情熱に満ち溢れ責務を果たさんとしてきた西風騎士団の騎兵隊隊長のディルック・ラグヴィンドが立っている。その事実に、ファルカはどこか懐かしさを感じてしまう。
そして、それと同時にもう一つの懐かしさを感じる。隣に立つディルックの立ち姿。服装や横顔は違うものの、それでも何故かあの男、ファルカの友人でありディルックの父である、今は亡きクリプスの面影が重なって見えてくるのだ。
「…クリプス」
「!?…ファルカ団長?」
ファルカはふと無意識のうちに、かつて友人であったクリプスの名を呼んでいた。
その声に反応して、隣のディルックが少し驚いた表情でこちらを振り返る。
「あ、いやすまない。つい…な…」
ディルックの反応を見て我に返ったファルカは、咄嵯に謝罪の言葉を口にする。
「…」
ディルックは何も言わず、ただ黙ってファルカの顔を見る。その瞳から、何かしら思うところがあるのかが見て取れた。
「…ディルック、成長したな」
ファルカはディルックにそう言葉にする。
「…ありがとうございます、ファルカ団長」
そしてディルックもファルカの言葉に対して、感謝の気持ちを伝える。
「…ディルック、今まで本当にすまなかった。俺は、お前に何もしてやれなかった」
しかし、次の瞬間には、ファルカの口から謝罪と後悔するような言葉が漏れた。
「…大団長。僕はあなたに感謝している」
ディルックは、目の前にいるアビス教団の者達の動きに警戒しながらもファルカに口を開く。
「…僕は父上の期待に応える為に西風騎士団に入団した。そこで僕にとってかけがえのない多くのものを手に入れることが出来た。それはそこで知った知り合い達や友人達と言った今でも続く人と人を繋ぐ絆という大切な宝物、また西風騎士団の様々な任務や活動を通じて得られた技術や知見、多くの経験だ。それに_」
ディルックはそこまでを言いきると視線だけファルカの方に向ける。
「_僕が身に着けてきた技術や知見とそれらの経験。それらを活かしてモンドから長い間離れていた時、僕があの日からずっと考えていた答えを得る為に七国を巡る旅をしてきた時の事、その旅を通じて更なる経験や知見を得ることが出来た。そして、それらを得られたことによって、今僕は、モンドでアビス教団やファデュイと言った悪意ある者達のモンドに対する暗躍や謀略を阻止し続けることが出来ている。…これら全ては西風騎士団で得られたことによるものだ」
「…」
ディルックの言葉にファルカは深く聞き入っていた。
確かにディルックがモンドに戻ってきてから、ここ最近のモンドは比較的平和になっていた。そしてそれは、ディルックが闇夜の英雄としてモンドを守り続けていたと言うことだが、その根底には騎士団にいた頃からの人脈やモンドの人々との繋がり、そして騎士団で培ってきた戦闘技術や知識が土台にあってこそ実現出来ていたものだったのだ。そして、それを理解したファルカは感慨深い表情を浮かべた。
「…そして、そんな僕をここまで導いてくれたのは、今は亡き父上であるクリプス、そして西風騎士団の大団長のファルカ、貴方のおかげだ…だから、礼を言わせて欲しい」
ディルックは、そう言って少しだけ頭を下げた。
「…そうか」
その姿を見てファルカは頷く。
父を亡くしたディルックは騎士団から退団し、そして自分が抱いた疑問の答えを求める為に西風騎士団が守護するモンドから異国の地を渡り歩いてきた。その間に、ディルックの人生を更に大きく変えるような出来事や出会いがあり、それによって彼は更に変わったのだ。
「…」
ディルックは視線をファルカからアビス教団に戻す。彼は騎士団を退団し恨みを抱き続けてはいるようだが、西風騎士として、一人の騎士としての誇りは忘れていないようで、今のディルックは騎士団の頃の格好や姿はしていないものの、今のディルックの姿勢や態度から、騎士団に所属していた頃の彼を彷彿とさせるような雰囲気をファルカは感じた。
「…ほぉ、西風騎士団の大団長と闇夜の英雄との間に、そのような過去があったとは。実に興味深い話だ」
そして二人の話を黙って聞き入っていたアビスの使徒は、興味深げに口を開いた。
「……」
その言葉を聞いたディルックは、少し不機嫌そうな表情になる。
「…使徒様。これは少々想定外ではありませんか?」
アビスの使徒の斜め横に浮いていたアビスの氷の魔術師が声を出す。
「そうだな。…この場に裏切り者とそれの救援として西風騎士団の隊長格一人、多くても二人程度とその隊長や隊長達が引き連れた隊員達がやって来ることを想定はしていたが…まさか、そうではなくこの場に裏切り者に、救援として西風騎士団の大団長本人、そして我々の活動を妨げてきた闇夜の英雄本人までもが、揃って現れるとは思っていなかった…何故だ?…許容範囲内ではあるが」
アビスの使徒はそう言うと、この場にいるファルカとガイア、そしてディルックを順に見ていく。
動揺は見られないものの、目の前にいるのはたったの3人とはいえ、それでもなぜこの場にアビス教団の大きな妨げになってきた程の実力者達がこの場に現れたのか分からず、様々な可能性を考えたもののそれでもどれもが納得できず、少なからずアビスの使徒にとっては正体が分からない不安みたいなものが心の奥底にあった。
「…ふんっ」
だが、それでも彼の心の中には余裕のようなものはあった。
それは、目の前の相手は確かに自分達の活動を妨害してきた者達ではあるのだが、それでも所詮は人間。七神やその眷属などではない。ここには自分達、アビスの使徒やアビスの魔術師達、それに選りすぐりのヒルチャールの王達や随伴するヒルチャール暴徒がいるのだ。想定とは異なるため、多少は手こずるし時間もかかるかもしれないが、それでも確実に殺せると考えていた。それに例え本命の裏切り者であるガイアを殺せなかったとしても、西風騎士団の頂点に立つ大団長であるファルカ、もしくはモンドを守り続けた闇夜の英雄であるディルック、そのどちらかを殺せるだけでも、モンドにとっては大打撃に成り得る。その為、アビスの使徒やアビスの魔術師達は、その3人の内の誰を殺したとしても十分な戦果は得られると踏んでいたので、彼らはそこまで焦るようなことはなかった。
「…随分と僕達の事を舐めているようだな」
しかし、ディルックは目の前にいるアビス教団の者達が自分を見下しているように見えて苛立つ。
「…おい、ディルック。落ち着け」
そして隣に立つファルカは、目の前に佇むアビス教団達を警戒しつつも、苛立つディルックを宥める。
「…すまない、少し取り乱した」
「気にするな、ディルック。それよりも少し気になったんだが良いか?」
ディルックはファルカの指摘に落ち着きを取り戻す。
「ああ」
「ディルック、お前はどうしてここに俺やガイア、そしてアビス教団がいると分かったんだ?」
「あぁ、それか…」
ファルカはディルックに尋ねる。
ファルカがディルックに尋ねたのは、ディルックが何故、自分の居場所がわかったのかと言うことであった。そしてディルックは、その問いに対して少し言い淀んだが、すぐにファルカに答えた。
「それは僕の持つ情報網、そして"彼"がもたらしてくれた情報やそれを元にした彼の考察や推測によって導き出された答えだ」
「…ほぉ、お前自身が持つ情報網。それに"あんちゃん"がもたらしてくれた情報にあんちゃんの情報や推察……ね。…ははは、お前の情報網、そして相変わらずあんちゃんは凄いな。お前はあの長旅でそんなものまで得ていたとはな。それにあんちゃんも本当に何でも知ってるな。本当、どうやったらそんなに色々と知れるものなんだかな」
ファルカは、ディルックの言葉に驚きながらも、ディルック自身の情報網、そして友人でもある『彼』について考えた。
「…僕の情報網はともかくとして、彼に関しては、今の彼が取り巻かれている特殊で複雑な状況や立場を考えれば、彼は様々な情報を持ち合わせていても不思議ではないと思う。…言うなれば、今の彼にはありとあらゆる情報が彼の元に結集してくる立場。それに彼の持つ元々の交流関係の広さ。そして彼自身が自覚しきれていない今の彼が持ってしまっている、周囲へと放っている様々なあらゆることに対する影響力。…これら全てを相乗して考慮すれば、それは当然のことだと思うが」
ディルックは呆れたような、そして少し不安げながらも強い意思を込めながらファルカに告げる。それを例えるなら、制御不能に陥りつつある強大な力を前にし、どうにもならないかもしれないが、為すべき事を為すためにどうにもならなかったとしても、なんとかしなければならない、そう思っているようなそんな感じであった。
「…確かに、そうだな」
ファルカはディルックの意見を聞いて、納得するかのように呟く。
「…今回、彼が僕やファルカにもたらしてくれた情報。もしかしたら彼は、今回は”ファデュイ”から仕入れて、それを僕やファルカに流したのかもしれない」
「は?“ファデュイ”だと?…おいおい、なんだそれ?全く、改めてあんちゃんは、とんでもない奴らと繋がりがあるんだな。……いや、どちらかと言えばファデュイの方から一方的にあんちゃんに興味を持っているってところか?」
ファルカは、ディルックの発言を受けて笑う。
「…まぁ、間違いというわけではないな。かなり前、彼が僕の店に飲みに来た時、『集中力が途切れたから少しだけ職場から抜け出し、街を歩いて散歩していたら知り合いにあったんだ。そしてその知り合いに、スネージナヤ料理を誘われて興味半分に答えたら、そのままスネージナヤまで拉致られ、スネージナヤで色んなものを食べて昼食を取って、いざそのまま璃月まで送ってもらって職場に戻ろうとしたら、そのタイミングでそいつが“スネージナヤパレス”から呼び出しを受けたせいで、そいつがそこの用件が終わるまでかなり待たされたんだ。そうして職場に帰ったら、戻るのが予定よりも遅かったのと自分が居ない間に急ぎめの臨時の仕事が入ったようなんだ。しかもその仕事は自分の確認も必要なものがあったり、刻晴や甘雨は自分の意見も欲しかったせいで想像以上に仕事が滞ってしまっていたんだ。そうしてようやくスネージナヤから帰ったら、それが原因で刻晴に滅茶苦茶怒られて、甘雨に無茶苦茶文句言われて、とにかく本当に大変だったんだ。それにその後の二人の機嫌を直すのも大変だったんだし』と愚痴っていたからな」
「…あんちゃん。肝が据わりすぎじゃないか?……というか、何やってるんだ?」
ディルックは呆れながら自分が知る限りの事を話し、ファルカは思わずツッコミを入れる。
「そんな事を言われても知らないな。ただ言えるのは今の彼は七星のリーダーである”天権”の直属の部下から、彼女の命令で”玉衡”の直属の部下に変わった事で、彼自身の周囲の影響力が削がれるどころか、以前よりも遥かに強くなっていることだろうな。…今では天権の元にいた頃よりも、ある程度自由に動けるようになった。彼女が彼をそうさせた意図や理由はわからないが、その事によって彼自身の今までとりづらかった‘独断行動‘をしやすくなったと言える。そしてそれや他の事も相まって彼の様々な影響力が、それがより強大になりつつある」
ディルックはそう言うと目を細める。それは友人である彼への警戒心であり、そしてその友に対する心配や懸念によるものであった。
「…それこそ、間違えてしまったとしても、決して彼を敵に回してはならないと思えるくらいにな。今の彼が敵になることはないとは思うが、彼自身のそれ。彼のその力はもしかしたら、ファデュイの意思決定すらにも関与し、多少ではあるものの、それでもファデュイの意志や行動を左右できる程になっているのではないかと思う。…もはや、彼の発した一言や彼自身の言動によっては、ファデュイの先遣隊や部隊が行動を開始したり、最悪”執行官”が何らかの行動を開始する可能性も否定しきる事ができない…以前の彼が仕事として行った、璃月にいる璃月港で暗躍していたとある宝盗団の一味やそれに関与していた者達や関係者に対する報復や一掃、そして捕縛する“仕事”の時のように。…それを表立って行う事も出来ないし、千岩軍を大勢それに投入することが出来ないし、また“彼”一人ではどうしようもできない規模であるが故__」
ディルックはそこで言葉を区切る。それはまるで、その先に言う言葉を口にする事を躊躇うかのように。だがその直後、ディルックは目を細めると同時にその先の言葉を紡いだ。
「__その仕事を終わらせるために彼の‘独断行動‘によって引き起こされた結果の内の一つ、『璃月に点在していたファデュイの先遣隊達や複数の実働隊、そしてそれに呼応するかのように数人の執行官達までもが一斉に彼らに牙を向けた』時のように…。だが逆に言えば、彼の振る舞いによってファデュイの活動や行動を抑制したり制限を掛けられ、上手く行けば抑止する事も可能かもしれない。…だからこそ気を付けなければならない」
ディルックは真剣な表情を浮かべながら、ファルカに語った。
「…"あんちゃん"、それに"彼"だと?」
二人の話を聞いていたアビスの使徒は首を傾げる。今までディルックとファルカが話していた内容に何か思うところが有ったのか、アビスの使徒は口元に手を当てて、考え込むように呟く。
「『西風騎士団大団長』との知り合い?…」
「『闇夜の英雄』に情報を流した人物?……」
「それに『ファデュイ』と関係がある…だと?」
「璃月七星の『天権』と『玉衡』の直属の部下だって…?」
そしてアビスの魔術師達も、ディルックとファルカの話を聞いてそれぞれ反応する。
「…大団長の言う"あんちゃん"、そして闇夜の英雄が言う"彼"…いや、まさか…」
アビスの使徒はそう言いながら、空を見上げる。まるで空から監視されているかのように感じたからであろう。だが、当然ながらそこには誰もいない。
「…ちっ」
そしてアビスの使徒は不快気に舌打ちをする。それはディルックとファルカの言葉に、自分が先ほど思い浮かべた可能性の中の一つが再び浮かび上がり、しかもその可能性、アビスの使徒やこの場にいるアビス教団にとっては一番避けたかった可能性が事実である確率が高まったからだ。
「…まぁ、いいだろう」
アビスの使徒は自分の中でそう結論付ける。それは、ディルックとファルカの言葉から導き出した答えに対して、その答えが正しいかどうかを確かめる手段はないし、万が一にもその可能性が真実であった場合、最悪の場合、目的であったガイアの抹殺、もしくは目的を変更してガイアの代わりにファルカかディルックの始末するという事に、多大な支障を及ぼして今回の計画を破綻させる危険性があると考えたからでもある。仮にそれが本等であれば、今の自分達ではどうすることもできない。ならば、そのような事を考える必要すらないと。
「…使徒様、どうなされますか?」
「…もしかしたら、これは罠という可能性も否定できません」
アビスの氷の魔術師とアビスの雷の魔術師が、アビスの使徒に問いかける。
「…確かにそうだ。だが、我々のやるべき事は変わらない」
アビスの使徒はそう言って、アビスの魔術師達に視線を向ける。
「我々の目的、目標はただ一つ。後続する今後の計画実行のため、実行の妨げとなる存在を未然に排除する事。即ち、前段階として邪魔になるであろう者達を、計画の中核となる例の作戦行動が本格的に開始する前に可能な限り排除することだ」
アビスの使徒はそう言うと、再びディルックとファルカ、そしてガイアに視線を向ける。
「…さて、改めて問おう。ガイア・アルベリヒ。お前はどうする?我らの元に戻り、再び我らと共に歩んでいくのか?それともそこの西風騎士団の大団長と闇夜の英雄と共にここで死んで、お前の全てを終わりにするのか?」
アビスの使徒はそう言って、再び問いかけてくる。
「…………」
ガイアはアビスの使徒からの問いに、無言で返す。その瞳には相変わらず、何の色も映っていないように見える。
「…」
「…」
ファルカはガイアがどういう返答をするのか、じっと見つめる。そしてその隣にいるディルックも同じように黙って腕を組みながら、彼の様子を見ていた。
「…そうだな」
ガイアの口から言葉が漏れる。それはアビスの使徒の質問に対する答え。その回答。
「…ははっ、あははははは!」
その瞬間、ガイアは笑い出す。まるで馬鹿馬鹿しいとでも言わんばかりに。
「…ははは!おいおい、笑わせてくれるぜ!!ははは!!」
「…」
「…」
ガイアはよっぽど面白かったのか腹をかかえて笑う。その様子にディルックとファルカは、ただガイアのその様子を見つめていた。
「…」
そしてアビスの使徒も、そんなガイアの様子を見て、沈黙する。
「はーっはは……いや、すまないな」
ガイアはひとしきり笑った後、目尻に涙を浮かべながらアビスの使徒に謝罪の言葉を述べる。
「…ふんっ、どうでもいい。それで、お前の答えは何なんだ?」
「あぁ、そんな事は決まっているじゃないか。…俺は、”面白い”方を選ぶ」
ガイアは遂にアビスの使徒の問いに答える。
「…ははっ、だからな」
ガイアはそう言うと歩き出す。
「なっ!?」
「…」
ファルカは目を見開き、ディルックは無表情のまま、それぞれ反応を見せる。何故なら、ガイアが向かった先はアビスの使徒達のいる方向だったから。
「…」
アビスの使徒は自分の元に歩いてくるガイアをじっと見つめる。
「……ほぉ、それがお前の選択か?」
「あぁ、そうだ」
そしてガイアがアビスの使徒の前に立ち、アビスの使徒がガイアに言葉を投げると、ガイアははっきりとした声で返事をした。
「ははっ、いやはや、普通なら“そっち側”に付いて”事に当たる”のが定石だが、俺としては”こっち側”に付いて“事に当たる”方が面白いと考えた」
ガイアはそう言いながら、後ろを振り返ってファルカとディルックをチラッと見てから、再びアビスの使徒を見つめる。
「…?」
ガイアに見つめられているアビスの使徒は、ガイアの言葉に少し違和感を覚える。
「ははは、つまり、だ」
ガイアはそう言うと、口角を上げて不敵に笑う。
「…この瞬間、お前は永遠を手にする」
「ぐっ!?」
刹那、ガイアはそう呟きながら腕を振るう。すると、自身の氷元素の力を行使されたせいか、ガイアの周囲に多数の氷の塊がガイアの身を回るかのように浮遊しながら出現し、それらがアビスの使徒に襲い、ガイアからの突然の攻撃を受けたアビスの使徒は対処できずに、そのまま攻撃を受けながら後方へと退避した。
「使徒様!?」
「くそっ!?」
「ガイアァ!!貴様ぁ!!」
「このっ!!裏切り者がぁ!!」
アビスの使徒を攻撃されたのを見たアビスのそれぞれの魔術師達は、アビスの雷と氷の魔術師がアビスの使徒を守るかのようにガイアとアビスの使徒との間に割って入り、アビスの水の魔術師とアビスの炎の魔術師が即座にガイアに攻撃を仕掛け、ガイアに向けて複数の水球や火球を生み出してそれを全てガイアに向けて一斉に放った。
「おっと、っ、よっ。ははは、そんなに慌てるなって」
そして、ガイアはアビスの水の魔術師と炎の魔術師が次々と放った攻撃を軽々と避けていく。
「「ブオォッッ!!オァァァッ!!」」
「おっと、あぁ、こりゃあ、本格的に始まったな。いやはや、これは中々」
アビスの使徒に付き従うかのように横に立っていたヒルチャール・岩兜の王と雷兜の王の両王が雄たけびを上げながら力むと同時に、自身の身体の中にあった強大なそれぞれの岩元素エネルギーと雷元素エネルギーを放出される。そして次の瞬間には、それぞれ堅牢のように黄金に輝くトパーズのような光と、最勝の証であるかのように強烈で深く濃い紫色の稲光のような色のアメシストが放つような光がそれぞれの身体から放たれ、王者としてのオーラを放ちながら、ガイアを見下ろす。対するガイアは、ヒルチャールの王者が放つオーラに若干の気圧されながらも、余裕な笑みを浮かべていた。
「「オォォッ!!」」
そして、2体のヒルチャールの王はガイアを叩き潰すかのようにその場を跳んで巨体を宙に浮かばせて、そのままガイアめがけて落下していく。
「ふっ、っ!!ははは、流石はヒルチャールの王だ」
ガイアは冷静に、しかし楽しそうな声を出しながら、迫りくるアビスの王者の攻撃やその余波である岩元素エネルギーや雷元素エネルギーの衝撃波に巻き込まれないように距離を取る。
「「ブフォッ!!」」
「「ボフォォッ!!」」
「っ!!っぅ!!おいおい、今度はお前らか。っぅ!!」
だが、その次の瞬間にはヒルチャール・岩兜の王と雷兜の王の斜め後ろに従者のように控えていたそれぞれ大楯を持ったヒルチャール暴徒が2体と巨大な斧を手にしたヒルチャール暴徒がガイアの元に踊り出てきた。
「ブフォッ!!ボフォッ!!」
「っ!!っぅ!!おとなしくしやがれ!!」
「ボフゥォッ!!」
「ブフォッ!!」
「っ!?っぅ!?想像以上にやるな!!お前達は!!」
ガイアはヒルチャール暴徒達の攻撃を躱しながら時折反撃していく。
だが斧を手にしたヒルチャール暴徒の攻撃をガイアが躱すと同時に、そのままカウンターの要領で攻撃を仕掛けようとしたら、大楯を手にしたヒルチャール暴徒が仲間のその斧を手にしたヒルチャール暴徒を守るかのように前に出て防がれ、また更にはガイアの真横からもう一体の斧を手にしたヒルチャール暴徒がガイアに向けて勢いよく斧を振り下ろしてきた。それに対してガイアは、バックステップをしながらヒルチャール暴徒達の連撃を回避していきつつ、まさかのヒルチャール暴徒達が見せつけてきたそれぞれの連携やチームワークに感心を抱いていた。
「ボッフォォッ!!」
「っ!?今度はお前か!?」
そして今度は、ガイアの目の前にヒルチャール・岩兜の王が現れそのまま拳をガイアに向けて振り下ろそうとした。
その時であった。
「烈炎!!__一切を焼尽せよっ!!」
「ボッフォッ!?」
「おっと!?…ははは」
とある男の声が響き渡ると同時に、ヒルチャール・岩兜とガイアに割り込むかのように赤黒い焔の鳥が飛来し、それによりヒルチャール・岩兜の王に回避を強いられたことにより、ガイアへの攻撃が妨げられた。
「へっ!はぁっ!てあっ!」
「ボッフォ!?」
「ブフォッ!?」
「おぉ、ははは」
そして、ガイアを取り囲んで包囲していたヒルチャール暴徒達に対して、その声の主の男が自身の大剣を豪快に振るうことで、ヒルチャール暴徒達に圧力を与え、それと同時にヒルチャール暴徒達を怯ませることで、僅かであるがヒルチャール暴徒達の包囲網が崩れる。
「…やっぱり無事だったな」
「おいおい、その言い方はないだろう?助かったぜ、ディルック」
「…ふんっ」
そしてその声の主であるディルックは、僅かに崩れたヒルチャール暴徒達の包囲網を突破し、ガイアの傍に近寄り皮肉げに声を掛け、ガイアはその言葉に苦笑いを浮かべた。
「ボフッ!!ボッフォ!!」
「ボフォァッ!!」
「っ!?…あ」
「おっ!?…あ」
そして、そんなディルックとガイアに対して態勢を立て直した大楯を手にしたヒルチャール暴徒達はそれぞれ武器を構えて突進せんと力む。
だが、その刹那。
「はぁっ!!ふんっ!!ふっ!!どけぇっ!!」
「ボッフォッ!?ブフォッ!?」
「ボフォァッ!?ブフォァッ!?」
突如、大楯を手にしたヒルチャール暴徒達に対してファルカがディルックとガイアを守るように駆け出し、ヒルチャール暴徒達に大剣を振るった。
「ふっ!!はぁっ!!」
「ボフォァッ!?」
「ブフォァッ!?」
そして、ファルカは自身の大剣をまるで片手剣のように片手のみで巧みに操りながら、大楯を手にしていたヒルチャール暴徒達に斬りかかっていき、対するヒルチャール暴徒達も迫り来るファルカに対応すべく大楯を構えた。だが、ファルカの無駄のなく洗練された動きにより、その防御行動は意味を為さず、また元より大剣であるゆえの圧倒的な威力に加え、ファルカの片手剣のような扱いによる圧倒的な速さや変則的な攻撃の前にヒルチャール暴徒が手にする大楯に凄まじい衝撃が何度も走り、その衝撃に耐えきれなくなって体勢を崩してしまったところに、ファルカの渾身の一撃によって吹き飛ばされて地面に転がされたのであった。
「ボッフォォッ!!」
「ブッフォォッ!!」
だが、ファルカの一撃によって吹き飛ばされて地面に転がされていたヒルチャール暴徒は、地面を転がりながらもすぐさま体勢をを立て直してそのまま立ち上がりファルカを見据えて睨みつけるように顔を向けた。
「…っ、このヒルチャール暴徒。ただのヒルチャール暴徒というわけではないようだな」
ファルカは目の前でこのヒルチャール暴徒達が、地面を転がりながらもさりげなく受け身を取ってダメージを軽減していたことに気が付き、そのヒルチャール暴徒達の技量の高さ、そして目の前のヒルチャール暴徒達は普段西風騎士団が相手しているようなヒルチャール暴徒達とは格が違うことを察した。
「…ヒルチャール暴徒をあっさりと吹き飛ばし地面に転がすとは、やはり化け物だな」
「はっ、化け物とは酷い言われようだな。ならば、もっと数を揃えた方が良かったのではないか?」
ファルカは声の方のした方向に視線を向けてそう告げる。
「ふんっ、ここにいる我らは全て選りすぐりの精鋭達。いうなれば少数精鋭部隊と言ったところ。数など問題ではないし、選ばれなかったその他の者達も別行動で既に動いている」
「ほぉ、成る程な」
ファルカの視線の先にいたガイアの攻撃を受けたアビスの使徒は、何事もなかったかのように平然と立ち尽くしながらファルカにそう答え、ファルカはそんなアビスの使徒の言葉を聞いて、どうやら自分が今相手にしている者達は相当な実力者で間違いなかったことを理解しつつ、それでも尚余裕の表情を浮かべていた。
「…ガイア、すまなかった」
ファルカはちらっとガイアの方に目をやる。ファルカのその謝罪は、先程のガイアへのアビス教団の裏切りへの疑いに対するものであった。
「ははは、気にすんなってことよ」
ガイアは気楽に笑いながら、ファルカにそう答えた。
「あぁ、ありがとうな。ガイア」
ファルカは微笑んで感謝の意を伝えた。
「あぁ、大団長。それとディルック。俺のことを心配してくれたんだろう?ありがとな」
「ふんっ」
ガイアはファルカに続けてディルックにも礼を言う。
だが、ディルックは無愛想に鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。
「ははは、全くだな」
ガイアは苦笑を浮かべる。
「…ふんっ、愚かな。我らに刃向かった反逆者のガイアに、我らの活動を妨げてきた闇夜の英雄のディルック。そして我らアビス教団の宿敵とも言える西風騎士団の頂点に立つ男、西風騎士団大団長ファルカ。まさかお前達三人の方からわざわざこちらに向かってくるとはな……だが、これでもうお前達は逃げ場はない。大人しく首を差し出せ。さすれば苦痛を与えずに楽に殺してやる……さぁ、どうする?」
ヒルチャール暴徒や王達、そしてアビスの魔術師達を束ねていたアビスの使徒は、自分たちの包囲網の中心にいるファルカ達にそう言い放つ。
「ははっ、悪いがそれは無理な相談だな」
ガイアはアビスの使徒に向かって軽く笑い飛ばす。
「ふんっ、僕がここで死ぬだと?冗談は休み休み言え」
ガイアに続き、ディルックは鋭い眼光でアビスの使徒にそう言い放って睨みつけた。
「ほぉ、俺が、俺達がここで死ぬだと?…ははっ、俺達がこんな所で死ぬわけがないじゃないか!!ここには、西風騎士団の騎兵隊隊長のガイア、それに元西風騎士団の騎兵隊隊長で、今はモンドを守り続けているディルック、そして西風騎士団の大団長であるこの俺がここにいるのだからな!!」
「ふんっ、その通りだな」
「あぁ、確かにそうだな」
ファルカの叫びにディルックとガイアが同意する。
「ふむ、成る程。良いだろう…お前達」
アビスの使徒はそう言ってヒルチャール暴徒達や王達、アビスの魔術師達に目配せをする。
「「「「ボッフォォッ!!」」」」
「「ンォォ…!!」」
「はっ!!」
「仰せのままに!!」
「この時をずっと待っていた!!」
「ようやくだ!!」
ヒルチャール暴徒や王達、アビスの魔術師達はアビスの使徒の指示を受け、ヒルチャール暴徒達はそれぞれの武器を改めて構い直し、ヒルチャールの王達は更にそれぞれの元素エネルギーを全身に纏い、アビスの魔術師達はいつでもファルカ達を攻撃できるようにそれぞれの杖を握り締めて構えていた。
「さて、始めるとする前に…お前達に冥途の土産として、一つ教えておいてやろう」
アビスの使徒はそう言うと、自身の元素エネルギーを開放し始めたのか、彼の水元素のエネルギーによるものなのか両腕に水が纏わりはじめ、やがて纏わりついたそれの姿の形を変えると同時に、アビスの使徒の両腕に流動する水によって構成された二つの剣、一種の神々しい水色の光を灯した二本の聖剣みたいな光を放つ二つの剣のようなものが腕から現れた。
「ほぉ…はっ、俺は特に興味などないが、まぁいい。聞かせてもらおうか」
ファルカは解放したアビスの使徒の力に感心を抱き警戒しながらも、これからアビスの使徒が語る言葉を一字一句聞き逃さないように集中した。
「それはだな…全ては我らの邪魔をしないため、もうそろそろモンド城に潜入した他の者達や、モンド城外の近くで潜伏して待機しているもの、清泉町の近くで待機している者達、この場にいない全ての者達が一斉に動き出す時が来るということだ」
「っ!?」
「なんだと!?」
「なっ!?そ、それは!?」
アビスの使徒の言葉に、ファルカ達の背後にいたガイアとディルックは驚きの表情を浮かべ、同時にファルカも驚愕していた。
「ほう…なるほど、どうやらこの情報までは掴んではいなかったようだな…ふんっ」
アビスの使徒はファルカの反応を見て、まるで勝ち誇ったかのように嘲笑う。
「くそっ…っ!!…なんてことだ!!」
ファルカはチラッとレザーの方に一瞬だけ視線を向ける。だが、直ぐにレザーをこの事に巻き込む訳にはいかないと察し、ファルカはすぐに視線を戻した。
「ふんっ、無駄だ。既に遅い。そして今更気づいたところで、もはや何もかもが手遅れなのだ」
「ちっ……」
ファルカは悔しそうな顔を浮かべる。
「っ…」
そして、その事を聞いて知ってしまったレザーはファルカ達とモンド城の方にそれぞれ視線を向けて、不安な気持ちを抱いた。今の自分ではファルカ達を助けることなどできないし、かといって救援を呼ぶために、知り合った火花騎士のクレーや騎士見習いのノエルだけでは無理だと分かってしまう。そして何より、自分がモンド城に近づいた頃には、既にアビス教団が行動を起こしている可能性が高い。
「…さぁ、どうする?」
アビスの使徒はファルカ達に問いかける。
その時であった。
「…はぁ、本当に面倒くさいわね」
「っ!?」
「なにっ!?」
その時、この場にはあるはずのないとある女性の声が聞こえてきて、ファルカとアビスの使徒は驚いて声を上げて、そちらの方に視線を向けた。
「…君か」
「…おやおや、“ロサリア”じゃないか。まさかお前もこんな所に来るなんて…中々面白い事になって来たな」
ディルックとガイアは突然この場に現れたその人物に気づき、そう呟いた。
「「ブフォッ!!」」
「「ボフォッ!!」」
「「ンォォゥッ!!」」
ヒルチャール暴徒や王達は気だるげにこちらに歩いてくるその女性に警戒するかのように、それぞれ武器を構え直す。
「なんで?…女一人がどうしてこんな所に?」
「いや、待て。あの女が来た方向には我々の邪魔をしないために、多くのヒルチャール達を待機させていたはずだ。それなのに…」
「…あの女、まさかあの“処刑人”じゃ?」
「あぁ、あの女。あの“始末屋”かもしれない…」
ファルカ達を包囲していたアビスの魔術師達は、各々そう言いながら、自分達の目の前に現れた謎の女性が何者かを考察する。
「はぁ、生まれて初めて“残業”をする羽目になるなんて…ちっ、やっぱり“あいつ”の頼みなんて請け負うんじゃなかったわ」
その女性、背の高い成人女性で、幽霊のように淡いグレーの肌をし、前髪は濃い赤色で、後ろは短くカットされ、瞳は淡い赤紫色の女性。西風教会の聖職者であるシスターの服を身にまとい、その手にはその服装には似合わない槍を握り締めている、“ロサリア”が面倒くさそうに気だるげに呟きながら、ゆったりとした足取りでファルカ達の方に向かっていた。
「…ちっ、まさかここでもう一人現れるとは」
アビスの使徒は、この場に現れた4人目の存在に舌打ちをする。目の前の女性は格好こそ、西風教会のシスターの格好をしているが、彼女の瞳に宿していた強い意志が放つ力を感じ、また彼女の手にしている槍を見て、目の前の女性は少なくとも一般人という訳ではないし、むしろ彼女の歩く姿や身のこなしを見るに戦闘に長けている者であるとアビスの使徒は瞬時に判断し、どこまでの脅威になるかは未知数であるが、油断ならない相手であることを悟ったのだ。
「…ロサリア、どうしてここに?」
ファルカはアビスの魔術師やヒルチャール暴徒達の包囲網越しにいるロサリアに声をかける。
「…はぁ、そんなの決まっているでしょう?」
その声に反応するように、ファルカの方へ振り向くと、彼女は少し呆れたような表情を浮かべた。
「あいつに頼まれて貴方達を救援する為に、わざわざこんな所まで出向いて来たわけ。…それとあいつからファルカに、あなた宛てに『伝言』を預かっているわ」
「なに、伝言だと?」
「…」
「ほぉ、伝言ね」
ファルカは目の前のロサリアの言葉に首を傾け、ディルックとガイアは興味深そうな視線を送る。
「…」
そしてアビスの使徒も黙ってロサリアの方を見ていた。
「えぇ、あいつからの伝言。それは……」
「…それは?」
「…『ファルカ、‘追加徴収分’を計上した。モラを握りしめて待っていろ』…ですって」
「っ!?…本当か、それは!?」
「なっ!?…まさか、本当に!?」
ファルカは驚愕の表情を浮かべる。それと同時にアビスの使徒は焦りの色を隠せなかった。
ロサリアが放ったその言葉は、ファルカにとっては引き続き“彼”はこの件に関わっている事を意味しており、しかも彼が‘更なる何かしらの行動を起こしていた’ことを意味をしていた事。
そして、アビスの使徒にとってはこの瞬間、自分やこの場にいるアビス教団にとっては先ほど思い浮かべた‘一番避けたかった可能性’が、完全に現実味を帯びたものになってしまったからだ。
「…成程、そういう事か」
「…ははっ、敵を騙すにはまずは味方から、という事か」
ディルックとガイアはロサリアの伝えた彼の言葉を聞いて納得したように呟いた。
「ちっ、まさか本当に“奴”が干渉していたとは!!」
そしてこのロサリアの口から放たれた言葉を聞いていたアビスの使徒は、内心ではこの場ですぐにでもロサリアを始末したい衝動に駆られたが、今はそれよりも優先すべき事、多くの懸念事項が使徒の頭の中を駆け巡った。それは“奴”がどこまでこの件に介入しており、どこまで把握されているのか、また自分達が今回のモンドや西風騎士団に対して行った工作や今回の計画がどこまでバレてしまっているのかという可能性について。
「…ふぁ~」
ロサリアは気だるげに欠伸をする。
「…」
アビスの使徒は沈黙する。
アビスの使徒にとって、今のロサリアの背中や月光が彼女を照らす事によって生み出された影の中には、まるで黒と灰色の人の姿をした闇のようなものが潜んでいるように見え、その者の視線がまるで自分達を監視でもするかのように、こちらに向けられている気がしてならなかった。
「それと、『尚、内訳の代価は元々の情報料に加え、休暇時実働手当に夜間実働手当、危険手当に交渉代行手当、そして西風騎士団からの支援要請料』だったかしら、まぁ、内訳に関して詳しい事は直接あいつに聞きなさい」
「あんちゃん…嬉しいが、勘弁してくれ。本当にあんちゃんは容赦がないな…」
ロサリアはそう言って、ファルカは若干頭を抱えながら呟く。
「…因みに内訳に交渉代行手当や西風騎士団からの支援要請料ってあるが、あんちゃんは俺と別れてから一体何をしたんだ?」
「あいつなら最初に会った時、会って早々『ロサリア、モンド城の横門近くと船着き場の桟橋近くにそれぞれアビスの魔術師とヒルチャールの群れが、それともしかしたらちょうど神像の東側の城壁の外か城壁の上にアビスの魔術師とヒルチャール数体が潜んでいる筈だから、確認と本当に居た場合の処理頼んだ』って言ってそのまま走って行って、次に会った時には『冒険者協会のサイリュスさんに状況の説明を行って交渉し、サイリュスさんと共にキャサリンさんの元に行って、たまたまその場の近くにいた神の目を持っている冒険者協会では有力な人物である“ベネット”と“フィッシュル”に依頼を出して、それに近くを通りかかった知り合いの“モナ”に事情を説明して協力してもらって、彼らと他の冒険者や何人かの西風騎士を清泉町に向かわせて清泉町の周辺警戒や、万が一の際の防衛を頼み、そしてそのまま彼らの負担を減らす為に、キャサリンさんに【大至急!!モンド城・清泉町周辺のアビスの魔術師・ヒルチャール達の殲滅依頼】という緊急依頼を出してもらった』って言って、そのまま今度は『代理団長のジンさんの依頼で、もうそろそろ任務を終えて“ドーマンポート”から戻ってくる遊撃小隊の隊長のエウルアや遊撃小隊隊員のミカ達にこの状況を伝え、直ちにモンド城周辺にまで急行、並びにモンド城周辺に到着次第速やかに周辺に潜んでいるであろうヒルチャール達、またアビスの魔術師達の全てを排除せよという命令を伝達してきてくれと言われたんだ。そしてそれが終わった後には、速やかにモンド城周辺に戻って、そのまま我ら西風騎士団への上空支援をお願いしたいって言われた』って言ってたわよ。そうして彼は飛び上がる寸前で私に対して、『ファルカ達は奔狼領に隣接しているシードル湖寄りの高台にいるはずだから救援頼んだ』って言って、そのまま風に乗って空を飛んで行ったというわけ」
「おぉ、成る程な。流石、あんちゃんだ。完璧な仕事ぶりだな」
ロサリアの口から告げられた言葉にファルカは感嘆の声を上げる。
「な、何だと!?」
そしてアビスの使徒もロサリアの言葉を聞いて動揺を隠せずにいた。まさか、ここまで把握されていたとは予想外だったからだ。元々想定していたのは、最大でも裏切り者であるガイアにそれの救援として西風騎士団の隊長格二人程度とその隊長が率いる部隊がやって来ることは想定し、更にモンド城や清泉町での陽動により西風騎士団の注意を引き付けているので、それ以上の西風騎士団の増援を防ぐどころか、想定の最大にも及ばない数しか来ない、若しくは増援は来ないとまでと考えていたのだ。
「…ちっ」
アビスの使徒は小さく舌打ちをする。
だが、ロサリアの口から語られた内容によれば、それは完全にアビス教団側の誤算であった。数多くの誤算を生んでいたのは、この場に西風騎士団の大団長のファルカや闇夜の英雄のディルック、またロサリアという女が現れた事でも、西風騎士団や冒険者協会にバレたことでもない。
全てはこの場に自分達の行動を完全に把握しているであろう、“奴”というあの者の存在、あの者が干渉していた事であった。
「使徒様!?どうなされますか!?」
「これは完全に罠です!!」
「あの者が完全に干渉しています!!」
「使徒様!!ご指示を!!」
アビスの魔術師達が慌ただしく叫ぶ。
「…っ」
アビスの使徒は思考する。
今の状況は明らかに圧倒的にこちらが不利。西風騎士団や冒険者協会には奴のせいでこちらの存在と行動を既に知られてしまっている。奴によって陽動がバレたせいで、モンド城周辺や清泉町周辺にいる仲間のアビスの魔術師達やヒルチャール達は西風騎士団や冒険者協会の攻撃を受けたり、これから西風騎士団と冒険者協会の合同の討伐隊によって対処される。
その上で、この場所までロサリアという女がここまでやって来たという事は、奴によって自分たちの居場所を絞られているという事を意味し、下手すればこの場に西風騎士団の多数の救援部隊、若しくは西風騎士団と冒険者協会の人間達が多数やって来て、大挙押し寄せて自分たちの元に殺到してくるかもしれない。
ただでさえ、西風騎士団の大団長のファルカや闇夜の英雄のディルックといったモンドの守護者達とも言える強者達に加え、戦闘に長けている可能性が高いロサリアという女も居るのだ。裏切り者のガイアも合わせて、モンドのトップクラスの実力者とも言えるかもしれない4人とここにいる自分達、アビス教団側の戦力はこれでほぼ対等と言えるかもしれない。その状況下でそこに有力な西風騎士団の部隊や冒険者協会の人間達の増援が加われば、完全に自分達の負けが確定する。
「…そうだな」
アビスの使徒は決断したかのように頷き呟いた。
「目標を変更する。…我らの本来の目的は今後の計画の遂行のために、モンドに打撃を与える事。即ち、本来の目標は裏切り者である西風騎士団の騎兵隊隊長のガイアの抹殺を行う事で裏切り者の粛清と同時に西風騎士団の戦力の低下と士気低下を謀る事にあった。しかし現在の状況下では裏切り者の抹殺や代替として、この場にいる西風騎士団の大団長のファルカ、若しくは闇夜の英雄のディルックの始末の遂行を行える可能性は低いだろう。…故に当初の目的を変更し、目標を裏切り者のガイア、西風騎士団の大団長のファルカ、闇夜の英雄のディルック、またそれに加え“奴”がこちらに差し向けたロサリアの内の一人の誰かに重大な負傷を与えることで、その者が今後の行動を一切起こせない、若しくは起こせたとしても大幅な制約を与えることを目標とする」
アビスの使徒はアビスの魔術師達にそう言い放つ。
「なるほど…この内の誰かが今後一切の活動に支障をきたすようにすることで、我らアビス教団の脅威を低減させつつ、モンドに打撃を与えると……」
「つまり、命を奪うのではなくこの者達の片腕や片足、もしくは片目、または四肢のいずれかの機能停止による活動不能の状態に追い込む事が今回の目標にすると…」
アビスの氷の魔術師と雷の魔術師は納得したように頷いた。
「そういうことだ。それに、ほぼ確実に奴は、この辺りに我々がいることを把握している。ならば、我々がこのままここで留まり続けるのは危険だ。故に命を奪う事には拘らなくていい。我らの本来の目的はモンドに打撃を与える事。即ち、ここに居る有力者達の誰かに甚大な損害を与えられれば、それだけでも十分にモンドに打撃を加えられ、それと同時に我等の計画も順調に進むことになる」
「…はっ!!承知しました」
「…はっ!!了解しました」
アビスの水の魔術師と炎の魔術師は頷く。そしてアビスの魔術師達は一斉に包囲網の中心にいるガイアやディルックにファルカ、また包囲網の近くに立っていたロサリアの方に視線を向けた。
「「ボッフォォッ!!」」
「「ブッフォォッ!!」」
「「ンォォ…!!」」
そしてヒルチャール暴徒達やヒルチャールの王達もアビスの使徒の指示を聞き唸り声を上げながら、ガイア達やロサリアに攻撃を仕掛ける態勢に入る。
「…さぁ、始めよう。全ては…かつての我らの在りし日々の栄光を取り戻すため!!」
アビスの使徒はそう言うと腕から現れていた二本の水の剣を構えた。
「ほぉ、どうやら俺達をただでは見逃してくれないようだな」
「ふんっ、望むところだ。アビス教団」
そしてアビスの使徒達に応戦するようにガイアとディルックはそれぞれ片手剣と大剣を構え直した。
「はぁ、まさかこんなことになるなんて…もうさっさと終わらせましょう」
ロサリアも大きな溜め息をつきながら槍を振り回し、そして臨戦態勢に入る。
「…成程、今の状況下においてもアビス教団は一歩たりとも引く気はないと言う事か……良いだろう!!ならば、こちらも全力で相手をしようではないか!!」
そうしてファルカはそう叫ぶと大剣を片手で振り回し、そして大剣を地面に突き刺した。
「…レザー!!行けっ!!この場から離れろ!!」
「っ!!…分かった!!」
ファルカはレザーに指示を出し、この場から離れるように言い放つ。そしてファルカのそれを聞いたレザーは即座に察し、頷いて駆け出した。それはこの場がこれからアビス教団とファルカ達の死闘の舞台となる事、そしてそれにレザーが巻き込まれてほしくないというファルカの心遣いであった。
「はぁっ!!はぁっ!!はぁっ!!」
レザーは全速力で走る。
「「ブフォォッ!!」」
「「ボフォォッ!!」」
「震えなさい!」
「「ブオォッッ!!オァァァッ!!」」
「暁よ_ここに!!」
「覚悟しろ!!」
「死に晒せ!!」
「裏切り者め!!お前はここで終わりだ!!」
「死ねェェッ!!」
「ははは、風邪ひくなよ!!」
「浄化せよ!!アビスの潮鳴!!」
「はっ!!やるじゃねえか!!凍てつけっ!!」
レザーの真後ろでファルカ達とアビス教団の者達が激戦を繰り広げている音が聞こえてくる。それと共にレザーの身体中に冷気や炎気、また水気や雷気が襲いかかってくる。だが、それでもレザーは足を止めない。そしてレザーは走り続ける。
「ははっ!!ぁぁっ!!結氷の風っ!!」
「っ!?」
後ろでファルカの叫び声が聞こえると、レザーは同時に後方から強烈な冷気を肌で感じた。
「っ!!なっ!?」
レザーは後ろから感じた強烈な冷気に、思わず後ろを振り返り驚愕する。レザーの視線の先には白銀の氷霧が広がっており、真後ろで戦っている筈のアビス教団とファルカ達を視認することが出来なかったのであった。
次回は、ようやく「レザーの大剣と鉤爪、また神の目入手の過去エピソード、そしてアビスの魔術師達戦編の決着」です
また解説は下の方にありますが、今回の解説に関してはかなりの考察ネタ、またもしかしたら結構なネタバレに繋がりかねない情報がありますので、苦手な方はここでブラウザバックをすることを推奨します。
以上です、よろしくお願いします。
追記1
・誤字報告分を適用しました。(“円周率で猫好き”さん、ご報告ありがとうございました)
追記2
・文字間隔の調整を実施中…
→文字間隔の調整終了しました。
―――――
◎解説
・『ディルックの過去』並びに『ディルックの情報網』について。
『ディルックの過去』については主に彼のキャラストーリーや期間限定のイベント“残像暗戦”を参考に再構成を行いました。ディルックの経歴については大まかに言えば、幼少期、西風騎士団所属、父の死後に騎士団を辞めテイワット大陸の七国を巡って答え(父を死なせたあの力は何なのか)を探す一人旅、モンドに戻り「アカツキワイナリーのオーナー」兼「闇夜の英雄」という経歴でした。その中で西風騎士団を辞めるきっかけとなったクリプスの死ですが、ゲーム本編の方ではディルックの腕の中で死んだという事になっていますが、公式が出しているマンガの方(原神セレベンツ)では、ディルックがクリプスを苦しみから救うために殺めたという事になっているため(そのシーンはそう解釈しました)、その部分はゲームとマンガを融合させ今回のようになりました。
また『ディルックの情報網』についてですが、これはディルックのキャラストーリーにある、ファデュイの執行官との戦闘で生死をさまよっていた彼を助け出したのは「北大陸からきた地下情報網の観察者」、即ち“北大陸”にある『地下情報網』という組織になります。(尚、『地下情報網』という組織そのものに関して、また“北大陸”に関してはまだよくわからないことが多いため、ここでは大きく省きますが、現時点で言えることや分かっているのは、少なくとも『地下情報網』そのものは「モンドのために裏で暗躍し、場合によっては汚い事にも手を染てでも、モンドに害を為す存在は消す」組織であること、また“北大陸”に関しては少なくともモンドは北大陸に属しているという事くらいで、それはゲーム本編の“図鑑”の“地理誌”、“西風騎士団・図書館”にその記載があるという事くらいです。尚、“北大陸”があるのならば“南大陸”や“別大陸”があるのかに関しては、現時点では少なくとも自分が知る限りでは情報が無さすぎるため不明(もしくは見逃している可能性があり)、そのためノーコメントという事でお願いします)
彼はこの組織に加入・所属し、騎士団時代同様に活躍していく事で様々な情報を得ることができる立場につき、また彼の伝説任務やイベント時にもその組織と思われる手紙等のやり取りで情報を入手しているシーン(個人的な解釈です)がありました。そのため、本作品でのディルックの情報網はそれを指しつつ、また彼自身のアカツキワイナリーの情報網も指しています。(もしかしたら「地下情報網」と「アカツキワイナリーの情報網」は同一の可能性がありますが…)
・『ガイアのカーンルイアのスパイ」について
『ガイアのカーンルイアのスパイ』に関しては、まずこれはガイアのキャラストーリーや神の目に関する記載で記されており、またそれと同時に“モナ”のガイアへのコメント(「ガイア・アルベリヒですか?彼の『孔雀羽座』は高貴さを象徴すると同時に、『華麗なる隠蔽』を象徴するものです。彼は自分の過去を断ち切ったと思ってるらしいですけど。“運命の日が訪れた時、彼は、再び選択を迫られるでしょう”という台詞)により、ガイアはモンドとカーンルイア、どちらを取るかという選択を迫られるということから、少なくともガイアはモンド人ではなく、カーンルイア人であることが間違いないと思います。またガイアのカーンルイア人に関しては、この後の魔人任務や期間限定のイベントで更に明かされる(例えばなんでガイアは眼帯なのか、眼帯を付けることや片目を隠すことに何か理由や特別な意味があるのか(現時点ではノエルの台詞からあの眼帯はただの眼帯ではなく、特殊眼帯であることは分かりますが…)、またガイアの家族関係(取り合えず父もしくは祖父らしき人は出てきていますが…)はどうなっているのか等)と思うのでそこで新たな事も分かるかもしれません。
そして“スパイ”に関しても先ほど述べたキャラストーリーや神の目に関する記載にそのようなことがあったため、ガイアはスパイであるという結論になりましたが、個人的にはスパイというのは、カーンルイアからモンドに逃れるための表向きの名目上の理由ではないのかと考えています。どういうことかというと、ガイアのキャラストーリー4に「これはお前のチャンスだ。お前は我々の最後の希望だ」というガイアの父親のセリフがあり、このセリフを考えるにガイアは『“カーンルイア人”の生き残りだから希望』と言えるのか、『“アルベリヒ家”、もしくは“一族”の生き残りになるから希望』と言えるのかという事になり得ると考えます。
また一つ気になっている点があるのが、これは完全に考察ネタになってしまいますが、様々な人の考察を見たり、読んだりしていく中で気になったのが、ガイア・アルベリヒはもしかしたら、カーンルイアの“王族”、もしくは“王族に近しい関係者”という可能性があるのではないのかという事です。詳しい事はここでは述べませんが、根拠に乏しいですが確実に言える事として、ガイアの命ノ星座(因みに命ノ星座自体は、そのキャラの決定づけられた運命みたいなものです。モナのボイスのコメント(シェアしたい事)や期間限定のイベント“帰らぬ熄星”や“常夏!幻夜?奇想曲!(第二次金リンゴ群島)”でそれに関して少し取り扱っていた筈です。)1凸が「優れた血筋」であること、騎士団なのに通常攻撃が「西風剣術」じゃなくて「儀典の剣術」となっており、この事からガイアの身分は少なくともカーンルイアにおいて、ただの一般人や庶民という訳ではなさそうであることは伺う事ができます。
・『ロサリアの“処刑人”や“始末屋”』について
『ロサリアの“処刑人”や“始末屋”』に関しては、ロサリアは人知れぬ所で、モンドに訪れたものの中に怪しい者がいないか、そしてその者はモンドに害をなすか否かを見定めており、完全にその者はモンドに害を為すだけの存在であると判断した場合には、ロサリアは最終的にその者を消しています。そのため、一部の人達からは“処刑人”やら“始末屋”と呼ばれています。
尚、アビス教団が彼女を“処刑人”や“始末屋”だと呼んでいるのも、彼女の活動は主にファデュイや宝盗団の関係者が対象ですが、無論モンドに害を為しているアビス教団もその対象の中には入っており、既にロサリアによって仲間の何人かはやられているからです。
※尚、今回の考察や解説ではもしかしたら作者の知識不足や認識不足のせいでおかしくなっている所があるかもしれません。ですのでもしもありましたら、暖かい目で見ていただけると助かります。よろしくお願いします。