玉衡の元から逃亡したら千岩軍が追いかけて来ていた件について   作:久遠とわ

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2万字近くまで行ったので投稿。(安心してください。無事に終わりました)。

何とか、今月中に投稿出来て良かったです。

今回は前回の予告通り、「レザーの大剣と鉤爪、また神の目入手の過去エピソード、そしてアビスの魔術師達戦編の決着」です。

尚、今回はいつも通り本編で主にオリジナル設定や要素が発揮しています。

そして、後書きにて“神の目”についての解説や考察を行いたいと思います。


全てを思い出した時、狼少年の背中に“それ”が現れた件について

「…」

 

モンドの空を鮮やかなオレンジ色に染まり始め、一日が終わりを迎えようとしている頃のとある高台。

 

そこにレザーが一人、夕日を見上げながら立っていた。一人で黄昏ているかのように見えるが、レザーはとあることをずっと考えていた。

 

「…はぁ、今日も…か」

 

レザーはため息交じりに呟くと、レザーは視線を下に向ける。

 

その場所はファルカやディルック、ガイア、そして後から来たロサリア達が、ガイアの命を狙って現れたヒルチャール暴徒やヒルチャールの岩兜や雷兜の王達、そしてアビスの魔術師達や彼らを率いるアビスの使徒達、襲撃してきたアビス教団に応戦した場所だった。

その場所は前までは何もないただの平地のような場所であったが、今はその時の戦いによって地面が大きくえぐれており、戦いの激しさを物語っていた。

 

「…」

 

レザーは心配そうな表情を浮かべて、とある方向を見つめる。見つめた方向の先はモンド城。西風騎士団の本部がある場所だ。

 

 

あの日以降、レザーはファルカと会う事が出来ていない。

 

襲撃の翌日は清泉町やアカツキワイナリーの方では西風騎士団の騎士達や冒険者協会の人間達が慌ただしく動き回っており、とても騒然としていた。やはりその日のアビス教団の襲撃、アビス教団のトップ、もしくは幹部クラスであると思われるアビスの使徒がファルカ達の目の前に現れた事、そして西風騎士団の騎兵隊隊長であるガイアや西風騎士団の大団長であるファルカ達を襲撃した事で、大混乱に陥っていたのだ。

 

「…」

 

だがそれは仕方がない事だと、レザーは割り切っている。それにファルカは西風騎士団の頂点に立つ男である事から、あの日のようなアビス教団との激戦を繰り広げていたとしても。彼なら大丈夫だろうと思っているからだ。

 

しかしそれでもレザーは心配なのだ。あの日から一週間以上経つが、ファルカとは会えていない。おそらく襲撃を受けた事でその対応や調査などで忙しいのだろうとレザーは思っている。

 

「…はぁ」

(でも……)

 

レザーは再びため息をつく。レザーは心の中で思っていた。

 

___どうしても心配だ。ファルカに、会いたい……。

 

そう思った瞬間、レザーは視線を上げた。

 

その瞬間であった。

 

「よぉ、坊主」

 

「っ!?」

 

とある男の声が聞こえてきた事に、レザーは驚くように振り返る。

 

「ファルカ!?」

 

「ははは、こんな所にいたとわな…久しぶりだな、レザー。大体二週間か三週間ぐらい振りか?」

 

レザーは驚き、振り返るとそこにはレザーにとって待ち望んでいた人物がいた。

 

そこにいたのは待ち望んでいた西風騎士団の大団長であり、このモンドの平和を守る為に戦う騎士達の頂点にいる男、『ファルカ』であった。

 

「…ファルカ!!」

 

レザーは嬉しそうに大声を上げながら駆け寄り、そのまま勢いよく飛びついた。

 

「うおっと!」

 

ファルカはそんなレザーを受け止めると、レザーはそのままギュッと抱き着いてくる。

 

「良かった……!無事だったんだな……!」

 

「ははは!!俺があの程度で死ぬわけねぇーだろ!!…まあ、お前には迷惑かけたけどな。すまない、やらないといけない事が立て込んでしまってな……」

 

ファルカは申し訳なさそうに言うと、レザーは首を横に振る。

 

「いい……ただ、本当に、良かった……」

 

レザーは少し涙ぐむ。そんなレザーを見て、ファルカは片手でレザーの頭を優しく撫でる。

 

「おいおい、泣くんじゃねーよ……男が簡単に泣いて良いのか?ん~?ははは!!」

 

ファルカはからかう様に言いながら笑う。その姿はいつもの西風騎士団の大団長としての姿ではなく、一人の優しい父親のような姿だった。

 

「だって……心配だった……ごめん……」

 

「はは、ありがとよ」

 

ファルカはレザーの頭を優しくなでながら礼を言う。

 

「…ファルカ、それなんだ?」

 

ファルカになでられながらレザーはふと、ファルカの右手に持つ物に気付いた。

 

「ああ、これか。これは、“鉤爪”だ。レザー、お前の武器だ」

 

「鉤爪…?オレの、武器…?」

 

レザーはファルカの手に握られている鉄甲鉤のような武器、まるで狼の爪のように見えるそれを不思議そうに見つめる。

 

「はは、驚いた顔してるな。リサに相談して良かった。…それ以外にもこういうのもあるぞ」

 

ファルカは不思議そうにそれをじっと見るレザーに満足げな表情を浮かべる。そして背中に背負っていた物を取り出した。

 

「おお、…すごい」

 

レザーはそれを見て目を丸くする。それはかなり使い込まれていたのか、あちこちに傷があり、刃も多少はボロボロになっているものの、全体的には綺麗な形を保ち、切れ味の良さそうな大剣だった。

 

「だろ?こいつは昔、俺がまだ騎士団に入る前の間もない頃、俺が初めて手にした相棒だ。かつての俺、まだ西風騎士団に入る前の頃の俺はこれを使って来たんだ。今でも大切な思い出とも言える。……俺はこれらを、その鉤爪とこの大剣をレザー、お前にやろうと思う」

 

「なっ!?…あ、ありがとう」

 

ファルカはそう言いながら、レザーに鉤爪と自分の愛刀を渡そうとし、レザーは戸惑いながらもそれを受け取り、ずっしりとした重みを感じた。

 

「はは、戸惑った顔をしているな。無理もないがな……安心しろ。別に今すぐ使えと言うつもりはない。これから少しずつ慣れていけば良いさ。…だが」

ファルカは真剣な表情を浮かべる。

 

「レザー、いいか?よく聞け」

 

「……」

 

レザーはファルカのその雰囲気を感じ取り、思わず背筋を伸ばした。

 

「…レザー。あの日の、俺達とアビスの使徒率いるアビス教団との戦いの場にお前があの場にいて目撃してしまったことで、もしかしたら今後、何かしらの形でアビス教団がお前を狙ってくるかもしれない」

 

「え……!?」

 

レザーは驚いている様子だが、ファルカは続ける。

 

「そしてこのままではレザー、お前はもしかしたらアビス教団の手によって殺されるかもしれない。……あの日、アビスの使徒達と相対した場にいた者達を全員狙っているはずだ。あいつらは」

 

「……っ!」

 

「…」

 

レザーはその言葉を聞き、恐怖で体が震え始めるが、ファルカは厳しい目つきのままレザーを見つめる。

 

「レザー、いいか。お前には二つの道がある」

 

「…二つの、道?」

 

レザーは恐る恐ると聞き返すと、ファルカはゆっくりとうなずく。

 

「そうだ。まず一つは俺がお前をモンド城までに連れて行き、そのまま俺達西風騎士団の保護下に入る事だ。この選択ならモンド城内や西風騎士団と行動を共にしている限り、安全は保障される。だがこの選択の場合、モンド城にいない間や西風騎士が近くにいない場合はかなり危険な目に遭うかもしれないし、その間に俺達の目を掻い潜ったアビス教団の者達がお前を殺しに来る可能性がある…そして、何よりも_」

 

ファルカは少し悲しそうな表情をしながらも、レザーの目を見ながらはっきりと告げる。

 

「_もしかしたら、お前はもう、二度と『ルピカ』達、お前の家族に会う事が出来ないかもしれない」

 

「……!?」

 

ファルカの言葉にレザーはショックを受けたような表情をし、体を震わせる。ファルカの言っている事は理解できた。つまり、ファルカ達と一緒に行動すれば、少なくともレザーの安全は確保できるが、『ルピカ』、つまりレザーの家族である狼達と会う機会はほぼなくなる。逆に一人でいれば『ルピカ』達といられるが、それではその内、それこそもしかしたら明日にでもアビス教団がレザーに襲撃を仕掛け、レザーは命を落とす事になるだろう。

 

「…」

(ルピカ……)

 

レザーは頭の中で考える。確かに自分は人間の家族の温もりというものを知らずに生きて来た。だがそれでも、自分に優しくしてくれた『ルピカ』達との日々はかけがいのないものだった。そんな彼らと別れてまで、自分だけ生きる事に意味はあるのだろうか?

 

「……」

 

「…そして、もう一つの道」

 

ファルカは静かに言うと、レザーはビクッと反応する。

 

「それは、単純だ。お前自身が強くなること。ヒルチャール達やアビス教団の者達から自分の身を守り、そしてお前の『ルピカ』達を守れるほどに強くなることだ。そうする事でお前はお前自身の力だけでなく、自分の大切な存在を守る事が出来るようになる」

 

「……」

 

「レザー、俺はお前を一人の人間として尊重したいと思っている。だが同時に、俺は西風騎士団の一人の騎士として、お前を一人の人間として守る義務もあると考えている。だから、ここで決断しろ。お前はどうしたいか?何をすべきか?お前はどちらを選ぶ?」

 

「……」

 

ファルカはレザーに問いかけるが、レザーは何も答えられずにいる。だが、ファルカはレザーが何も言わなくても分かっていた。何故なら、今の彼は今にも泣き出しそうな顔をしながら必死に耐えていたからだ。だが、それでもファルカは敢えてレザーに聞いたのだ。

 

 

それは彼の覚悟を確かめるために。

 

 

「……オレは、オレは……オレは……っ!」

 

「………」

 

レザーは声を絞り出すように呟き、ファルカはその様子をただ見つめる。

 

「オレは、……オレは強くなりたい!離れたくない!!強くなりたい!!そして自分だけじゃなく、『ルピカ』を守れるようになりたい!!」

 

「そうか……それがお前の出した答えか」

 

ファルカはレザーが叫んだ言葉を聞いて、優しく微笑んだ。

 

「はぁっ!!はぁっ!!はぁっ……っ!」

 

「……」

 

レザーは息を切らしながら、汗を流し、まるで全身に痛みを感じるような感覚に襲われながらもファルカを睨みつけるように見る。

 

「…レザー、よく言った。お前の決意と想い、そして覚悟はしっかりと受け取ったぞ。…さあ、ならば始めよう。レザー、まずは渡した鉤爪を装着し、そして大剣を手に取れ」

 

「分かった」

 

レザーは初めて見た鉤爪や初めて扱うことになった大剣に戸惑いながらゆっくりと装着し、そしてファルカから渡された大剣を手に持って、それをじっと見つめた。

 

「……重い」

 

「はは、最初は誰でもそういうものだ。そして、その重さに慣れるしかない」

ファルカは笑いながらレザーに言い聞かせる。

 

「よし、なら早速始めよう」

 

「え?っ!!」

ファルカはそう言うと自身の大剣をレザーに振り下ろし、レザーは突然の行動に驚いて反射的に大剣で防ぐが、衝撃で思わず体勢が崩れそうになった。

 

「ははは、思った通りだ。…悪くない動きだ」

 

「な、何を、何をするんだ!?」

 

レザーは驚きの声を上げるが、ファルカは特に気する様子をせずに大剣を構え直した。

 

「いきなりだが、これから俺はお前の相手になってやる」

 

「…本当か?」

 

レザーはファルカの言葉に驚くが、ファルカはうなずく。

 

「ああ、俺がお前の相手をしてやる…俺は騎士団の中で何かを教えるというのが、一番下手くそだからな。俺はお前に何かを教えるなんてことはしない。その代わり俺がお前に出来るのは、お前が疲れ果てて動けなくなるまで、練習相手や実験相手になってやるだけだ」

 

ファルカはそう言うとニヤリと笑った。

 

「…分かった」

 

レザーは真剣にうなずき、ファルカは満足げに笑う。

 

「なら、遠慮なくかかってこい。俺との実戦練習を通じて、何かを掴み取って見せろ」

 

「あぁ。…っ!!」

 

ファルカの言葉にレザーはこくりと首を縦に振ると同時に、勢いよく走り出すとファルカに斬りかかる。

 

「はははっ!」

 

ファルカは楽しげに笑い、レザーの大剣を自身の大剣で受け止めた。

 

 

 

◆◆◆

「…結構、降ってきたな」

 

「「「グルルゥ」」」

 

「「「ガルルゥ」」」

 

とある日の昼下がり、草原の中を行くレザーと『ルピカ』達は自分達の住処に向かって歩いていた。レザーは『ルピカ』達の鳴き声を聞きながら空を見上げると、雨雲が広がっていて、少しずつではあるが、ポツリポツリと小粒の水滴が落ちてきていた。

 

「皆、少し急ぐ」

 

「「「グルゥ!!」」」

 

「「「ガルゥ!!」」」

 

レザーは周りを歩く『ルピカ』達にそう言うと、レザーの『ルピカ』である狼達は元気よく吠えると、レザーと狼達は少し駆け足で歩き始めた。

 

ファルカがレザーに鍛錬を始めてから、数週間が経過していた。あの日以降、レザーは来る日も来る日も疲れ果てて動けなくなるまでファルカの実戦練習を受けていた。最初はレザー自身もどうすればいいのか分からず戸惑っていたが、徐々にファルカの動きや戦い方を理解していき、それを元にレザーはファルカとの実戦経験を積みながら徐々に戦いに関する技術を身に着け、戦いの勘を掴んでいった。

 

そうして今では、熊等の狼達に取って脅威となりえる大型の獣達や大型を含むスライム達、そして狩りをする上で今まで妨げとなってきたヒルチャール達とも対等に戦えるようになり、まだヒルチャール暴徒やヒルチャールシャーマン等を相手取る事は出来ないものの、それでも僅かな時間稼ぎ程度であるならば何とか出来るようになっていった。

そして今では、完全では無いものの狼達にとっての天敵であったヒルチャール達を対処したり、場合によっては通常の棍棒持ちや盾持ち、ボウガン使いのヒルチャール達の集団をレザーは一人で何とか撃退する事が出来るようになっていた事により、『ルピカ』である狼達を守る力を身に付けつつあったのであった。

 

「…強くなってきたな」

 

レザーは徐々に自分に打ち付ける水滴や風が強くなっていく中、呟くと同時に更に歩く足を速めた。

 

「…はぁ」

 

これは戻ったら、直ぐにでも雨に濡れた身体を拭かないと風邪を引くかもしれない。そんな事を考えながらレザーはため息をついた。

そして、その時であった。

 

「ツナージャ・スタージャ!!」

 

「ぐぁっ!?っ!?っぁ!?」

 

突如、レザーの背後に強烈な衝撃が襲い掛かり、それと同時にレザーは吹き飛ばされた事によって大剣を手放し、そして受け身を取ることなく地面に叩きつけられた。

 

「っ…い、今のは」

 

「「「「ガルッ!?」」」」

 

「「グルルルゥ!?」」

 

突然の出来事にレザーと『ルピカ』達は驚きの声を上げ、地面を転がって行ったレザーの元に駆け寄る。背後から何者かに攻撃を受けたレザーは顔を歪めながらもゆっくりと自分の背後を振り返る。

 

「ふんっ、一撃で仕留めるつもりだったが……思ったより頑丈だったようだったな」

 

「お、お前は…!!」

 

レザーは目を見開く。そこにいたのは、あの日、ファルカ達を襲撃したアビスの使徒達と共に同行していたアビスの魔術師、アビスの水の魔術師が宙に浮いて吹き飛んだレザーを興味深そうに眺めていた。

 

「…くっ、まさか」

 

「ふっ!!」

 

「ぐぁっ!?」

レザーは慌てて立ち上がろうとするが、それよりも先にアビスの魔術師が杖をレザーの方に向けて振りかざして、追撃するかのように大量の水の水球を放ってそれらがレザーに直撃して吹き飛んでいった。

 

「ほぉ……これでも死なないとは」

 

「っ、くそっ……」

 

アビスの水の魔術師は、吹き飛んで倒れ伏すレザーを見て感心したような声を上げ、そして倒れ伏したレザーはファルカの言葉を思い出す。ファルカ達とアビスの使徒達との戦いの場を目撃してしまったことで、もしかしたらアビス教団が自分を狙ってくるかもしれないという事を。

 

「…ぐっ」

 

「無駄な抵抗を」

 

レザーは激痛に表情を歪ませながらも吹き飛ばされた大剣を手に取るために腕を伸ばそうとし、そしてアビスの水の魔術師が呟いて再び杖をレザーに突き付けようとした時だった。

 

「「「ガァァルルゥゥ!!」」」

 

「「「グルゥァァッ!!」」」

 

「なっ!?」

 

「っ!?っ!!邪魔をするなぁ!!」

 

レザーを守ろうと彼のルピカである狼達が一斉に立ち上がり、そしてアビスの水の魔術師に向かって飛び掛かった。だが、狼達の鋭い牙と爪は宙に浮いていたアビスの水の魔術師に躱されてしまい、逆にアビスの魔術師が狼達を迎撃する為に杖を狼達に向かって振り下ろした。

 

「死ねぇ!!お前達もここで殺してやる!!」

 

「「ギャゥンッ!?」

 

「「ガァゥッ!?」」

 

アビスの水の魔術師の杖による攻撃が次々と『ルピカ』達に襲いかかって、彼らは悲鳴を上げる。狼達は必死になって攻撃を避けるがアビスの魔術師の水球や水弾が次々と狼達に襲いかかり、狼達の顔や身体に傷が出来上がり、傷から血が流れ出ていく。

 

「やめろ!!」

 

狼達の苦痛の叫びを聞きながらレザーは急いで立ち上がろうとする。だが、先程の攻撃によって全身に激痛が走るために、上手く立ち上がる事が出来ない。

 

「グルァッ!?」

 

「グァンッ!?」

 

一頭、また一頭と狼達は水魔法による攻撃を受け続け、次々と致命傷を負って地面に倒れ伏していく。

 

「「グルルゥッ!!」」

 

「「ガルルゥッ!!」」

 

だが彼らは致命傷を負おうとも決して諦める事は無く、レザーを守るために立ち上がって前に出てはアビスの魔術師に攻撃を仕掛け続ける。

 

「やめろ!!立つな!!やめろ!!やめろぉ!!」

 

レザーは叫ぶ。だが狼達は決して止まらず、次々とアビスの水の魔術師の攻撃を止めさせるために牙を剥き出しにして噛みつこうとしたり、それどころか流れ弾から倒れ伏しているレザーを守るために、自ら盾となって攻撃を受け続けた。

 

「ギャウンッ!?」

 

「あぁっ!?だ、大丈夫か!?」

 

狼達の一頭がアビスの魔術師の攻撃をもろに受けてしまい、レザーのすぐ近くに吹き飛ばされてしまう。そしてその光景を見たレザーは思わず叫び、激痛に顔を歪ませながらも這いつくばるようにして狼の元に向かう。

 

「グルルゥッ……」

 

「っ!?…っ!!」

 

レザーは思わず言葉を失う。そこにいたのは既に瀕死の重傷を負い、虫の息となっている狼の姿があった。

 

「…クゥン」

 

「…っ」

 

その狼は最期の時であると悟ったのか、まるでレザーに別れを告げるかのように小さく鳴き声を上げて、レザーを舌で舐める。すると舐められていたレザーは何かを悟ったように表情を歪ませると、ゆっくりと手を伸ばしてその狼の頭を撫でる。

 

「…」

 

「…っ」

 

そして、舐めていた狼は力尽きたのか、そのまま動かなくなった。

 

「……」

 

レザーの赤い瞳から一筋の涙が零れ落ち、そして彼は自分の無力を呪い、怒り、そして悲しみを抱いたまま拳を握り締める。

 

「…っ」

 

 

どうしてこんなことになってしまったんだ?

 

それはアビスの水の魔術師が奇襲を仕掛けたからか?

 

潜んでいたアビスの魔術師の存在に気付かなかった自分のせいなのか?

 

 

そんな事を考えながらもレザーはゆっくりと立ち上がり、顔を上げる。

 

「グルァッ!?」

 

「ガルルゥッ!!」

 

「…グゥ」

 

「しぶとい!!っ!!」

 

狼達はレザーを守らんと、死力を尽くしながらアビスの水の魔術師に立ち向かった。だが、アビスの水の魔術師の水魔法攻撃の前には全く通用せず、次々に狼達が吹き飛んでは倒れ伏していき、立ち上がってくる数も少なくなっていく。

 

「…」

 

「…クゥ」

 

そして、少し離れたところに倒れ伏している狼と目が合う。その狼は何かを語りかけるかのような表情を浮かべ、そして最後の力を振り絞ってレザーに視線を向ける。

 

「グルルッ……グァッ」

 

「…」

 

そしてその狼も力尽きたのか、レザーに語り掛けるような声を上げた後、目を閉じた。

 

「……」

 

レザーは顔を伏せる。その狼がレザーに対して何を言ったのかをレザーは理解できない。だが、それでも目の前にいる狼達が自分を守るために庇ってくれたのは間違いない。

 

「……オレ、弱い…だからなのか」

 

レザーは震えた声を上げる。弱いとこんな目に合ってしまう。大切な者達は傷つき倒れる。それが悔しくて、情けなくて仕方がない。

 

「…っ!!っぅ!!っぁ!!あぁっ!!」

 

レザーは吠えるかのように泣き叫んだ。自分が弱いからこんな目に遭う、大切な『ルピカ』をこんな目に遭わせてしまったとでも言うような後悔を抱きながら、レザーはただ叫ぶ。

 

「もっと力…もっともっと力を…皆を守る力を!!」

 

レザーは傷つき倒れていく狼達を見て、涙を流しながら心の底から叫ぶ。そして『覚悟』と『決意』、倒れ逝くルピカ達のその『瞬間』を瞳に宿しながら立ち上がろうとする。今も尚、レザーを守るために戦っている痛々しい姿の狼達を守りたいという思いを。そして今ここで自分のせいで死んでしまった狼達の思いに応えるため、自分を生かしてくれた彼らの思いを背負うという思いを抱いて。

 

 

するとその時であった。

 

 

 

「___っ!?」

 

レザーは顔をしかめて頭を抑える。彼の視界はなぜか歪み始め、身体に痛みが走って思わず目を閉じる。

 

「ぐっ……あっ……はぁ、はぁ、はぁ」

 

だが、幸いにも謎の頭痛や身体の痛みはすぐに治まり、レザーは深呼吸をして心を落ち着かせた。

 

「…っ」

 

そしてレザーはゆっくりと瞼を開いた。

 

「っ!?…こ、ここは!?」

 

レザーは目の前に広がる光景に驚きを隠せなかった。

 

 

 

目の前には襲ってきたアビスの魔術師がそこには居なく、またルピカである狼達も近くにはおらず、そして自分がいた草原の景色とは一変していたからだ。

 

 

 

「…」

 

レザーは信じられないと言わんばかりに呆然とする。その場所を一言で例えるならば、『星空の海』と言うべきだろう。

 

地面は無く、足元にあるのは夜空のように美しい光を放つ不思議な水のようなもの。そしてその不思議な水面のような物には、大空に浮かぶ様々な色に光る星々の光景が映っていた。

 

「…」

 

レザーは顔を見上げて、思わず息を呑む。そして、そんな時だった。

 

「っ…な、なんだ?」

 

とある方向から少し強い光を感じたレザーはそちらに振り向いた。

 

「…ぉぉ」

 

そこにあったのは、少し紫色に染まる空、その空を彩るようにそれぞれの星と星を移動した際に出来たのか、流れ星のような紫色に光る線、そして強い光を放つ星であった。それらを名付けるならば『狼座』とも呼べるものだろうか?その幻想的な星座が広がっている光景にレザーは言葉を失い、息をするのを忘れるほどに見入ってしまった。

すると突然、その『狼座』が眩い光を放ち始める。

 

「……っ!!」

 

レザーは『狼座』が放つ光が思った以上に眩しかったのか、咄嵯に少しだけ目を細める。

そしてレザーが目を細めた瞬間の時であった。

 

「___っ!?っぁ!?」

 

ドクンっと心臓が高鳴る音が聞こえたように感じ、レザーは思わず胸を押さえる。そして何かが自分の中に入ってくる感覚を覚えると、その次の瞬間にまるで雷が落ちてきたかのような衝撃を感じ、身体の中で稲妻のような痺れが起こる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

そしてレザーは少し苦しそうな表情を浮かべると、そのまま膝をつく。だが、幸いにもすぐにその状態は落ち着いた。

 

「…ん?__こ、これは!?」

 

そうして、胸を押さえていたレザーは胸と胸を押さえていた手の間に何かがある感触を覚え、ゆっくりと手を離す。そして、それを見てレザーは目を見開いた。

 

「…っ、誰だ!?」

 

そしてそれをじっと見つめていたレザーは、ふと自分の事を見つめる視線や何かの気配を感じてそちらに振り返ろうとした。

 

「ぐぁっ!?っぅ!?っぁ!?」

 

だが振り返ろうとした瞬間、レザーの視界が酷く歪んだかと思うと、今度は激しい頭痛に襲われ、頭を抱え込んでしまう。

 

「__っ!!っぁ!?」

 

そして、それと同時に音が聞こえなくなったり、耳鳴りが起こったりする。

 

「っ……あぁ……」

 

一体何が起こっているのか、それが分からずにレザーは目を閉じながら悶絶し、そのまま強烈な浮遊感のようなものに襲われる。

 

 

 

 

 

 

「…っ」

 

そうして少しした後に、頭痛は治まり、耳鳴りは止み、妙な浮遊感が治まり、レザーに感覚が戻ってくる。雨に打たれる感覚に、雨が地面を叩く音、風で揺れる草木の音、そしてアビスの水の魔術師の嘲笑と狼達の悲鳴。

 

「ぐっ!!」

 

レザーは瞼を開けて、近くにあった大剣に腕を伸ばして掴む。そしてそれと同時に、大剣を杖代わりにゆっくりと立ち上がる。そして、アビスの水の魔術師や狼達の方に視線を向けた。

 

「ここまでしつこいとは、だがこれでようやくお前を始末できる」

 

「…っ!!」

 

レザーはこちらに顔を向けるアビスの水の魔術師、そして生死は不明だが、周囲に倒れ伏している全ての狼達の姿を確認すると同時に、怒りに満ちた形相を浮かべながら歯軋りした。

 

「…オレ、オマエを、許さない___!!」

 

そして、レザーはアビスの水の魔術師に殺気を込めた鋭い眼差しを向けた。

 

「はんっ、何を言っている?その状態のお前に何ができるんだ?」

 

アビスの水の魔術師はレザーの姿を見て鼻を鳴らす。

 

今のレザーの状態は酷いもの。全身には無数の傷があり、一部の傷からは血が流れだしている。

「…」

 

だが、レザーは痛みなど全く気にせずにアビスの水の魔術師を睨みつけながら深呼吸する。そしてそれと同時にレザーは無意識ではあるが、ある思いを抱く。これ以上狼達を傷つけさせるわけにはいかない、絶対に守り抜く。そして死んでしまった彼らの思いも背負うと。

 

「……っ」

(___守りたい、復讐する)

 

レザーは目を瞑る。

 

「っ!!な、なんだ!?」

 

刹那、レザーの周囲に稲光のようなものが発生し始める。それは今の彼の憤怒の感情を表すかのように、バチッという音を鳴らしながら徐々に激しくなっていき、憤怒の雷電が彼の身体に纏わりつき、それを目にしたアビスの水の魔術師は思わず一歩後ろに下がる。そして勘づく。

 

「お、おい、ま、まさか!!そ、その力!?“元素力”か!?」

 

「…っ!!」

 

レザーは瞑った目を開くと同時に大剣を握ってない方の手を開かせる。

 

「そ、それは"神の目"!?」

 

アビスの水の魔術師はレザーが握っていた物に気づくと驚愕の声を上げる。

そう、レザーの手にあったのは雷光のような紫色の輝きを放つ神の目、雷の神の目がレザーの掌に存在していたのだ。

 

「___」

 

そして、レザーは目を鋭くさせながら神の目をさっと服に身につける。

 

「__っ!?」

 

そして、その瞬間だった。レザーの身体から雷元素が放出されたかのように、更なる雷電が発生し、終いにはレザーの近くに幾つもの落雷が着雷した。そしてその光景にアビスの水の魔術師は驚き、そして身体が震えだす。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

レザーは肩を大きく揺らしながら荒く息をする。レザーの乱れた雷電の力はまるで、この場に存在する全てを威嚇するように周囲へと拡散していく。

 

「っぅぅ!!グルァァッ!!」

 

レザーは吠えるかのように声を出すと、大剣を握る手に力を込めて、大剣を持ち上げた。

 

『__ウォォォンッ!!』

 

そしてその瞬間、レザーの雷電の力に呼応するかのように、レザーの背中から"それ"が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

「…そうだ、思い出した。オレ、オレは」

 

レザーはゆっくりと目を開けながら、自分の心臓部分に触れていた胸に添えるように当てていた手を離す。

 

「ふっ!!はっ!!」

 

「「イヤァッ!?」」

 

「「ヤァゥッ!?」」

 

目を見開いた先に広がっていたのは、灰色の璃月人の服装をし黒い髪に灰色の髪が混じった男、瞬詠が全てを思い出すために無防備になっていたレザーを守るために、レザーに襲い掛かかろうとしたヒルチャール達に対して、倒したアビスの氷の魔術師から奪った魔法の杖を槍のように扱い、次々と薙ぎ払ったり突きを放ち、またレザーに直撃しそうになったヒルチャールのボウガンの矢を鉄扇で的確に別のヒルチャールの方に弾き飛ばして防いだりと、たったの一人で大勢を相手にしている光景であった。

 

「ヤァゥッ!!」

 

「ぐっ!?っぅ!!…はははっ!!この程度の痛みぃ!!もうとっくのとうに慣れているんだよっ!!ふんっ!!はぁっ!!」

 

「イギャァ!?」

 

「ギャァゥッ!?」

 

「っ!!」

 

だがレザーはその光景を見て目を見開く。

 

瞬詠はヒルチャール相手に無双しているが、瞬詠はここまでに炎と氷のアビスの魔術師達の相手や数多くのヒルチャール達を相手にしていた事、また瞬詠のここまでの経緯でアンバーと共同でヒルチャール暴徒を含めたヒルチャールの集団を相手にしたり、瞬詠を捕縛しようと彼を追いかける西風騎士団や千岩軍から逃げ回っていたことから、流石に連戦かつ長時間の戦闘により体力の限界を迎えつつあるのか、動きに精細さが欠けていた。そのため、ヒルチャールの攻撃を躱したり弾いたりするのが遅れ始めていて危うい場面が出始めており、ボウガンの矢が掠ったり、ヒルチャールの棍棒による一撃をもろに受けたり、明らかにダメージを負ってしまうことが増えてきてしまっていた。だがその状況下、瞬詠は己に気合を入れるように叫んで自らを奮い立たせて、疲れ切っているはずの更に激しく身体を酷使し、レザーを死守すべべく、迫りくるヒルチャール達相手に果敢に立ち向かっていったのだ。

 

「っ!!」

 

レザーは瞬詠の痛々しい姿ながらも、相手を威圧するような鋭い眼光や、口角を上げながら笑みを浮かべるその姿に胸が締め付けられるような感覚を覚え、拳を強く握りしめながら歯噛みする。その姿はかつてのレザーを守ろうとするためにアビスの水の魔術師に死力を尽くして立ち向かい、そして命を散らしていった『ルピカ』達そのものであった。

 

「___これ以上、奪わせるか!!」

 

レザーは叫び、そしてとある思いを抱く。それは神の目の本来の力を発揮させるための二つの鍵。

 

「__っ!!」

(瞬詠、守る!!)

 

一つはアビスの魔術師達から大切な者達を守りたいという思いを。

 

「__っぅ!!」

(オレは__!!)

 

そしてもう一つはあの日、雨が降っていたあの日。レザーの人生で最も険しい分岐点とも言えるあの日。アビスの水の魔術師の襲撃を受け、自分のせいで死んでしまった狼達の思いに応えるため、自分を生かしてくれた彼らの思いを背負うという思いを。

 

「__頼む!!オレに!!」

(オレに、力を貸してくれぇっ!!!!)

 

レザーは心の中で強く叫ぶ。無意識でありながらもあの日のトラウマを思い出さないために、忘れ去ってしようとしてしまったことにより、自分を生かしてくれた彼らをもいつの間にか忘れてしまっていた事を後悔しながらも、改めて今ここで彼らの思いを背負うのだという覚悟と決意を抱いて。

 

「グルルルァー!!」

 

刹那、レザーが吠えると同時にレザーの雷の神の目が光り輝き始める。その光は雷光の如く眩き、そしてレザーの雷の神の目と共鳴するかのように雷鳴のような轟音と共に、瞬く間に周囲を照らしていき、レザーの周囲に落雷が発生していく。

 

「っ!?レザー!?」

 

「「「イヤァッ!?」」」

 

「「「ヤァゥッ!?」」」

 

その瞬間、瞬詠とヒルチャール達は突如現れた強大な雷元素の力に驚愕し、目を見開きながらレザーの方へと視線を向ける。

 

「瞬詠に手を出すなぁ!!アァー!!どけぇ!!」

 

「「ヤァゥッ!?」」

 

「「ギャァゥッ!?」」

 

「レザー!?」

 

そして次の瞬間には、その身に雷電を纏わせたレザーが瞬詠に襲い掛かろうとしていたヒルチャール達を、大剣で吹き飛ばし雷を纏わせた鉤爪で切り飛ばしていき、瞬詠はレザーの突然の行動に驚きの声を上げた。

 

「オレ、死なせない!!瞬詠、死なせてたまるか!!んあァぁ!!」

 

レザーは瞬詠に背中を向けて、ヒルチャール達と相対するように立ち塞がり、大剣を地面に突き刺して遠吠えするように声を上げると、レザーの全身から更なる雷元素が放出される。

 

その時であった。

 

『__ウォォォンッ!!』

 

「っ!?そ、それは!?」

 

「「「ヤァッ!?」」」

 

「「「ヤゥッ!?」」」

 

瞬詠はレザーの背中から現れた“それ”に目を見開き、“それ”を見たヒルチャール達は怯えた様子を見せる。

 

『__グルルゥッ!!ガルルゥァッ!!』

 

何故ならそれは、レザーの背後に出現したのは稲妻のような紫紺色のような体毛に覆われ、そして周囲には強烈な雷元素を放っているためか、バチバチという音を立てながらヒルチャール達を威圧するように吠える、レザーよりも大きい狼、“雷狼”の姿があったからだ。

 

「な、なんだ!?なんだ!?それは!?」

 

そしてこの場にいるヒルチャール達を指揮していたアビスの水の魔術師は、レザーの背後から現れた巨大な狼の雷狼の姿を見て動揺したように叫ぶ。

 

「よし!!レザー!!上手く行ったようだな!!流石だ!!『役割』を果たせると信じてた!!レザー!!行けぇ!!アビスの水の魔術師を倒せ!!」

 

「あぁ!!任せろ!!瞬詠!!アビスの水の魔術師、オレが倒す!!瞬詠!!ヒルチャール達、頼む!!グルァぁッ!!」

 

「おうよ!!行くぞ!!」

 

レザーは瞬詠の言葉に応え、瞬詠もレザーの言葉に応えるとと同時に、二人は一斉に駆け出す。

 

「く、来るなぁ!!」

アビスの水の魔術師は駆け出したレザーに対して慌てて魔法の杖をレザーに向けて、大量の水球や水弾等の魔法を撃ち放っていく。しかし、それらはレザーの機敏な動きで避けられてしまい、レザーはアビスの水の魔術師へと迫っていく。

 

「「「ヤァッ!!」」」

 

「「「ヤァゥッ!!」」」

 

そしてレザーのそれを見ていたヒルチャール達はアビスの水の魔術師の元には行かせまいと言わんばかりに、棍棒を持って襲い掛かったりボウガンの矢をレザーに向かって放っていく。

 

「おっと、お前らの相手は俺じゃなかったのか?ふんっ!!っ!!ふっ!!」

 

「「「イヤァッ!?」」」

 

「「「ヤァゥッ!?」」」

 

だが、その次の瞬間にはアビスの水の魔術師の元に駆けるレザーとレザーを追いかけるヒルチャール達の間に瞬詠が割り込み、奪ったアビスの氷の魔術師の杖を槍のように使って、薙ぎ払うようにしてレザーの元に接近していたヒルチャール達を振り払ったり、鉄扇でボウガンの矢を弾き飛ばし、また隙を見せたヒルチャール達を利用して、彼らをボウガンの矢を放っていたヒルチャール達目掛けて、蹴り飛ばしたり腕を掴んで投げ飛ばしたりすることで、レザーへの攻撃を防いでいく。

 

「アーー!グルァー!!ぁぁー!!」

 

『グルァッ!!グルゥッ!!グルゥァッ!!』

 

「ぐっ!?っ!?っぁ!?」

 

そして遂にアビスの水の魔術師の元に辿り着いたレザーは、自身の雷元素の力を纏わせた鉤爪や大剣を振るってアビスの水の魔術師が展開している水のバリアーに攻撃を与えていき、レザーの背中にいる雷狼もレザーに追撃するように、雷電を纏わせた自身の鋭い爪で、アビスの水の魔術師が展開する水のバリアに傷を付けていき、次々とヒビを入れていく。

 

「___オァァッ!!貫けぇっ!!」

 

『___ウォォォンッ!!』

 

「っぁ!?ギャァァッ!?」

 

レザーは大剣を振り上げ、アビスの水の魔術師が展開する水のバリアに出来た大きな亀裂目掛けて振り下ろす。そしてそれと同時に雷狼もレザーに呼応するかのように雄たけびを上げるように吠えると同時に、雷狼が纏っていた雷電の爪でアビスの水の魔術師のバリアを斬り裂くように振り下ろす。その結果、遂にアビスの水の魔術師のバリアは限界を向かえたのか砕け散り、アビスの水の魔術師の元にレザーの大剣の一撃と雷狼の鋭い雷の爪の一撃が直撃し、アビスの水の魔術師は悲鳴を上げながら、手に持っていた水の魔法の杖を手放しながら吹き飛ばされた。

 

「ぐっ、はぁ、ぁぁ」

 

そして派手に地面を転がって行ったアビスの水の魔術師はダメージが大きすぎたのか立つことが出来ず、その場でうずくまる。

 

「「「イヤァァッ!?」」」

 

「「「ヤァァゥッ!?」」」

 

そしてそれを見てしまったヒルチャール達は悲鳴を上げる。自分達を指揮していたアビスの炎の魔術師、水の魔術師、氷の魔術師のうち、氷の魔術師に続いて水の魔術師までもが倒されてしまったのだ。それにより阿吽絶叫のような声を上げて慌てふためいて、更にヒルチャール達は混迷していき始めた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、っ、ははは」

『グルルゥッ』

 

レザーは吹き飛ばしたアビスの水の魔術師を見て、肩で息をしながらも彼を倒したことを確認する。そして、雷狼はやったなとでも言いたげにレザーの頭を撫でて、レザーの表情が少し緩んだように見えた。

 

「レザー」

 

「瞬詠」

『グルゥッ』

 

そこに吹き飛んだアビスの水の魔術師が持っていた魔法の杖を拾い上げた瞬詠が現れ、レザーに声をかけると、レザーと雷狼は瞬詠の方に顔を向ける。

 

「やったな、レザー」

 

「あぁ!!これで後はあの炎の魔術師だけだ!!」

『グルルゥ!!』

 

そしてレザーと雷狼、瞬詠はアビスの炎の魔術師の方に視線を向ける。

 

「っ!?くそっ!?ど、どうすれば!?」

 

レザーと雷狼と瞬詠に追い詰められたアビスの炎の魔術師は、完全に動揺していた。

 

「「ヤァゥッ!?」」

 

「「ヤァッ!?」」

 

そしてアビスの炎の魔術師の元に集っていたヒルチャール達も、怯えるかのように身体を震わせながら後ずさりする。

 

「…丁度、“一分半後辺り”か」

 

「…瞬詠、どうした?」

レザーは空を見上げていた瞬詠に対して、不思議そうに首を傾げる。すると瞬詠はレザーの方へと顔を向けて口を開いた。

 

「…レザー、それとお前に頼みがあるんだが、あそこにいるアビスの炎の魔術師達はレザーに完全に任せていいか?」

 

「オレがか?…大丈夫だ、オレに任せろ」

『グルゥッ』

 

レザーは一瞬不安そうな表情を浮かべる。だが、先ほどアビスの水の魔術師を仕留めたことを思い出し、自分になら出来ると考えて、自信満々に返事をし、雷狼も任せとけと言わんばかりに腕を組みながら頷いた。

 

「あぁ、任せたぞ。俺はそこで寝転がっているアビスの水の魔術師に聞かなきゃいけないことがあるからな」

 

「聞かなきゃいけない事?」

 

レザーは瞬詠の言葉を聞いて、地面に倒れているアビスの水の魔術師に目を向けた。

 

「そうだ。こいつらが口々に言っていた”神聖なるこの日”、’指導者たる”あの御方”’、それに“姫様”って言っていたことが気になってな。それを聞き出す必要がある。アビス教団は今日この日に、いったい何をやらかそうとしているのか、それに’指導者たる”あの御方”’、そしてアビス教団の言う“姫様”は何者なのかをな…まぁ、取り合えず頼んだぞ。俺はレザーと共に行かないが、俺の代わりに“彼ら”がレザーを援護、支援してくれる手筈になっているから、取り巻きのヒルチャール達は心配するな。…まぁ、既に氷の魔術師と水の魔術師が俺達に倒されたことによって、あいつらは大混乱に陥っているし、もはや戦意喪失している奴もいるみたいだから、もう大した脅威にはならないだろうがな」

 

瞬詠はアビスの炎の魔術師とヒルチャール達を横目に見ながら言った。

 

「それに、もうそろそろ“アビスの炎の魔術師は攻撃を行う事が出来なくなる”しな。まぁ、レザー任せたぞ」

 

「わかった、瞬詠。オレに任せろ」

 

「おうよ」

レザーはそう言うと瞬詠と別れてアビスの炎の魔術師の元へと駆け出し、瞬詠は倒れこんでいるアビスの水の魔術師の元に歩き出した。

 

「はぁ!!はぁ!!ガァァ!!」

『グルァァッ!!』

 

「く、来るなぁ!!こっちに来るなぁ!!近づいてくるなぁ!!っ!!っぅ!!お前達も何とかしろぉ!!」

 

「「「ヤァッ!!」」」

 

「「「ヤァゥッ!!」」」

 

レザーと雷狼はアビスの炎の魔術師の元に駆け出し、自分の元へと駆け抜けていく姿を見たアビスの炎の魔術師は、焦りながら炎球を放ちつつ、ヒルチャール達に叫び、ヒルチャール達も慌てながら棍棒で襲い掛かったり、ボウガンの矢を撃つ。

 

「っ!!ガァゥ!!アー!!」

『グルルルゥッ!!』

 

「「ヤァッ!?」」

 

「「ヤァゥッ!?」」

そしてレザーは飛んできた火の玉とボウガンの矢を巧みに躱し、接近してきた棍棒持ちのヒルチャール達を鉤爪や大剣、またレザーの背中にいる雷狼と共撃しながら撃退していく。

 

「っ!!ちっ!!」

 

「「ヤァッ!!」」

 

「「ヤゥッ!!」」

 

しかし、ヒルチャール達にとって最後の指揮者であるアビスの炎の魔術師を守るために決死の覚悟でレザーに攻撃を仕掛けたり、またアビスの炎の魔術師自身の炎の攻撃とボウガン持ちのヒルチャール達による遠距離攻撃によって、上手く距離を詰められずにいた。

 

そして、その時であった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、っ!!」

 

刹那、空が光る。空は稲光を纏い、その稲妻の光が次々とレザーやアビスの魔術師達のいる地表に落ちていく。

 

「っ!!…水?」

 

レザーは空を見上げる。すると空は黒く染まっており、その次の瞬間から雨が降り始めた。それはまるで滝のような大雨。雷鳴も鳴り響いており、激しい雷雨が地上に降り注いでいたのであった。

 

「…雨か」

 

レザーは思わず呟いた。

 

「くそっ!!」

 

その時、アビスの炎の魔術師が悪態をつく。レザーはその言葉を聞いて、アビスの炎の魔術師の方に視線を向けた。

 

「ちっ!!これじゃあ、攻撃がっ!!」

アビスの炎の魔術師は自分が展開しているバリアーの方に杖を向けていた。アビスの炎の魔術師が展開していた炎のバリアは雷雨による雨による蒸発反応が発生してしまったことで、バリアに非常に小さいながらもヒビが入り始めており、そのヒビを修復しつつなんとかバリアを維持しようと、アビスの炎の魔術師は自身の魔力をそちらに振り分けたため、攻撃が完全に止んでしまったのだ。

 

「___そうか、そういうことか!?」

 

レザーはそれを見て何かに気づいたかのように目を見開く。瞬詠が言っていた“一分半後辺り”と“もうそろそろアビスの炎の魔術師は攻撃を行う事が出来なくなる”という言葉。つまり、この状況の事を指していたのだ。

 

「……」

 

レザーは瞬詠の方にチラッと視線を向けた。

 

「おぉ、ちょっとずれたがちゃんと降って来たな。良かった、良かった。…んで?お前さん達はここら辺で何をしようとしたんだ?それと’指導者たる”あの御方”’や“姫様”って何者なんだ?お願いだから、教えてくれないか?」

 

「ぎゃあああっ!?痛い!!痛い!!やめろ!!やめろぉ!!」

 

瞬詠は倒れこんでいるアビスの水の魔術師の背中を踏みつけつつ、時折蹴りを入れたり、奪ったアビスの氷と水の魔術師の魔法の杖で叩きつけていた。

 

「はぁ、中々情報を吐いてくれないな…こんなことならロサリアの奴やキャンディスさんの言っていた拷問のコツの話を真面目に聞いておけばよかったかもな」

 

「ぎゃあああっ!!」

 

瞬詠は足元で絶叫するアビスの水の魔術師の声を聞きながら、ため息をついた。

 

「まぁ、俺の仕事は別に拷問が本職という訳では無いしな…っ」

 

瞬詠はそう呟くと同時にレザーとアビスの炎の魔術師達の方に視線を向ける。

 

「___今だぁ!!行けえぇっ!!」

 

瞬詠は雷鳴轟き豪雨が降りしきる中、叫んだ。

 

「「「グルルゥッ!!」」」

 

「「「ガルルゥッ!!」」」

 

「っ!?『ルピカ』!?」

 

そして、瞬詠が叫ぶと同時に草むらから多くの狼達が一斉に飛び出し、レザーの邪魔をする棍棒を持ったヒルチャール達やボウガンの矢をレザーに放っていたヒルチャール達に突っ込んでいき、レザーはその光景を目にして驚く。

 

「「イヤァァッ!?」」

 

「「ギャァゥッ!?」」

 

「な、そんなところにそんな数の狼がいたのかっ!?」

 

狼達の奇襲を受けたヒルチャール達は狼達に襲われて大混乱に陥る。狼の突進を受けてもろに吹き飛ばされたり、鋭い牙や爪で噛みつかれたり引っ掻かれ、ボウガンや棍棒を落としてしまい丸腰になってしまうヒルチャール達や、狼達から必死に逃げ回るヒルチャール達も現れ、そしてまさかの事態に陥ったアビスの炎の魔術師は動揺した声を上げた。

 

「っ!!そういう事か!!…ガァァ!!」

 

「「グルルゥッ!!」

 

「「ガルルゥッ!!」」

 

レザーは瞬詠が言っていた“彼ら”が『ルピカ』達である事を悟りレザーは、大剣を握りしめる。そしてレザーは『ルピカ』達や瞬詠が作り出してくれた攻撃チャンスを逃さないと言わんばかりに、アビスの炎の魔術師に向けて走り出し、そして一部の『ルピカ』達もレザーに追伴するように駆け抜けていく。

 

「ふんっ!!はっ!! ガルルルー!」

『グルァッ!!ガルゥッ!!ガルルル!!』

 

「「グルルァッ!!」

 

「「ガルゥッ!!」」

 

「がっ!?ぐぅっ!?」

 

そして遂にアビスの炎の魔術師の元に殺到したレザーと『ルピカ』達は連携しながら、アビスの炎の魔術師に攻撃を加えていく。

 

「っ!?くそっ!!」

アビスの炎の魔術師が展開していた炎のバリアはただでさえ雨が降ってきたせいで蒸発反応が発生し、ヒビが入り始めていた所にレザーの雷を纏わせた鉤爪に雷狼の攻撃による過負荷反応、また狼達の引っ搔きや大剣による攻撃によってバリアのヒビが拡大していき、アビスの炎の魔術師は焦っていった。

 

「___くそっ!!こうなったら!!ファウッ!!」

 

「っ!?消えた!?どこに行った!?」

 

『グルァッ!?』

 

「「グルゥッ!?」」

 

「「ガルゥッ!?」」

 

そしてアビスの炎の魔術師は何かを決断すると、赤い光を放ちながらレザー達の目の前から消え、レザー達は突然の事に驚き動きを止める。

 

「邪魔だぁ!!」

 

「っ!?ちっ!!」

 

次の瞬間、アビスの炎の魔術師は瞬詠とアビスの水の魔術師の真上に現れ、瞬詠目掛けて炎の球を放つ。そしてアビスの水の魔術師の背中を踏みつけていた瞬詠は舌打ちをしながら飛び上がり、アビスの炎の魔術師の攻撃をかわした。

 

「っ!!しっかりと捕まれ!!__」

 

「ぐぅっ」

 

「っ!!逃がすか!!__」

 

そうしてアビスの炎の魔術師はぐったりとしている仲間のアビスの水の魔術師の身体を抱えてワープしようとし、瞬詠は咄嗟にアビスの炎の魔術師目掛けて奪ったアビスの水の魔術師の杖で突き刺そうとする。

 

「__ファウッ!!」

 

「__ちっ!!どこに行った!?」

 

だが、間一髪でアビスの炎の魔術師は赤い光と共に再び姿を消し、瞬詠の一撃は空を切った。

 

「っ!!しっかりしろ!!」

 

「っぅ」

そしてその次の瞬間、今度は瞬詠に利用された味方の攻撃によって吹き飛ばされて倒れこんでいて、意識がはっきりしていないアビスの氷の魔術師の傍に現れた。

 

「っ!!ここから離れるぞ!!二人とも!!お前達!!撤退!!撤退だ!!今すぐこの場から退却しろ!!ファウッ!!」

 

アビスの炎の魔術師はそう言いながら、もう片方の腕でアビスの氷の魔術師の身体を支えてワープする。

 

「「「イヤァァ!!」」」

 

「「「ヤァァゥッ!!」」」

 

そしてアビスの炎の魔術師の合図を聞いたヒルチャール達は、我先にと一目散に逃げ始める。

 

「…逃げていくな」

 

「「「グルルゥッ」」」

 

「「「ガルルゥッ」」」

レザーは大慌てで背中を向けて全力で逃げ出すヒルチャール達を見てそう呟くと、他の『ルピカ』達もレザーの元に集まる。

 

「キャウン!!」

 

「クゥンッ!!」

 

「わっ!?えっ」

 

そしてルピカ達はレザーを押し倒すように覆い被さり、レザーはルピカ達に押し倒されて舐められる。

 

「っ…良かった…」

 

「「ワフッ!!」」

 

「「「ウォォォンッ!!」」」

 

「ははは」

ルピカ達はレザーが無事で安心したのか嬉しそうな声を上げ、またアビス教団のアビスの魔術師達やヒルチャール達を撃退したことに喜んでいるようでもあり、勝利の雄たけびを挙げるかのように遠吠えをしていた。そしてレザーはそんなルピカ達に少し戸惑った表情を浮かべながらも笑みを零していた。

 

「…本当は、早くこの場から離れたいんだが…まぁ、良いか」

 

そしてレザー達の元に歩み寄っていた瞬詠は、そんなルピカ達とレザーの様子を見ながら笑みを零した。




次回はいよいよ『第2幕エピローグ・アビス教団編』です。

また、今回の解説は主に既存の情報の整理が中心であり、考察部分については神の目を得る条件や各元素入手時の傾向、また代償に関しての軽い考察のみであるため、前回みたいにストーリーに深く関わってきそうな重要なネタバレは無いので安心して下さい。

以上、よろしくお願いします。

追記1
文字間隔の調整を行いました。

―――
◎解説
・神の目(『神の目その物』、『神の目の入手条件』、『各元素入手時の傾向』、『神の目入手時の代償』)について
『神の目』については、それぞれ『神の目その物』、『神の目の入手条件』、『各元素入手時の傾向』、『神の目入手時の代償』がありますが、まず『神の目その物』についてを整理すると、神の目自体は“ごく一部の選ばれた人間のみが扱う事のできる特殊な外付けの魔力器官”であり、それは大雑把に言えば“抗えぬ運命を前にした時の人生の最も険しい分岐点に対峙した時、その渇望が極致となって、神の視線(俗世の七執政、七神によるものでは無い。(雷電将軍の神の目のボイスにてそのことを確認できます))が自分に降りた時に現れる物、それが神に認められし者が得られる外付けの魔力器官、元素の力を引き出す「神の目」”という事です。そしてこの部分に関してはどこか別の機会があれば解説したいと思いますが、神の目の所有者は、“神になる資格を持っており、その者のことを「原神」と呼び、「原神」達は死後、天空の領域(またの名を天空の島※おそらく“セレスティア”の事かと思われる)に登る資格が得られるという事になっています”。つまり七神では無い何者、例えば“セレスティアにいる七神よりも上位の存在の者”、もしくは“テイワットの世界そのもの”が選別し、与えているのでないかと思われます。また、神の目と元素力については、まだ完全に確定しているわけではないのですが、大方は“神の目に込められた願望と引き換えに、その神の目が宿している元素の力が発揮する物”と見て問題は無いのではないかと思われます。
次にここから考察になりますが、『神の目の入手条件』についてを簡単に説明しますと、神の目を入手する際には、前提として必ず何かしらの『覚悟』や『決意』、また『信念』等を抱いているのではないかと思い、これらと雷電将軍(影)が言っていた神の目の言及について(「~重要なのは、人々の「願望」、そして…」)との事から考察するには、『自分が為すという“強い意志”』と『“願い”や“思い”』、また“そして…の”部分には『その他の要因として“代償”』なのではないかと、作者個人的には考えられました。
そして『各元素入手時の傾向』については、それぞれ“炎”、“水”、“風”、“雷”、“草”、“氷”、“岩”元素があり、それらは神の目を入手した際のキャラが取り巻く、周囲の環境や境遇によって左右されているのでは無いかと考えられました。具体的に本編では主にファルカ(オリジナル設定)の氷元素の神の目とレザーの雷元素の神の目について深く取り扱っていたので、この2つの元素で説明すると、氷元素の場合ならば、自分自身の矛盾等と向き合ったり、窮地を乗り越える事で神の目が得られたのではないのかと思いました。例えばキャラストーリーを見るに生まれのせいで疎外されてきたエウルアが自分自身と向き合い、そして自分だけの優しい復讐の道を見出した瞬間の時。半仙であるが故に人に馴染めないと感じていた甘雨が、初代の璃月七星が人々の手でより完璧な国を作り上げるための補佐を必要だとして甘雨に任を出した際、甘雨もその時に仙獣と人間の混血としての自分を見つめ直したうえで、彼女はこの任を引き受けて七星の秘書となり、そして二つの種族の架け橋となることを選択した時。家柄の関係で友達がいない神里綾華が、病床の母と疲労した兄の姿を見て一人前に成長しなければと決意し、剣術の訓練を続けて遂に敵を一撃で倒すことができるようになったその日、剣術においてであるが一人前に成長した時、などです。つまり、『ハードな人生かつ、かなり特殊な境遇を送っているキャラ』がこの氷元素の神の目を手にしていることが多いのではないかと思います。また雷元素の場合であるならば、窮地に追い込まれた時、または死に近い経験をしたことがある時か大切な何かを失った時、または大切何かを失いかけた時であると思われました。これも具体的に、本編のレザーのようにルピカ達がアビスの魔術師に傷つけられ、惨死させられたのを見ていた時。刻晴(時期と経緯が明かされていないため、完全に憶測になります)が、岩王帝君の信徒が大多数の璃月で帝君につくことが正しいという風潮が圧倒的に強い中、貴族かつ名門出身であるにも関わらず彼女の“「人」として生まれたのなら、「人」としての誇り、「人」としての考えも大事にすべきだ”という異端な考え、また現在の経済建設に力を入れる事よりも、信仰型の投資が主流となってしまっている事から、もしもいつか今のだらしなく弱い考えしかを持っていない璃月人達に対して、帝君が存在意義のない人間として愛想を尽かして守らなくなり、その責務を履行しなくなった時にどうするのかという問題や危機感を覚えていた事から、彼女は自身の考えや信念を元に帝君と違った意見を主張し、それを率先して行動に移して、新たな時代を切り拓いていくリーダーに自分はなるべく行動を続け、その中の幾度もない挫折の中で、彼女の商売人としての人生が窮地に追い込まれてしまった時。九条裟羅の幼かった頃の彼女が魔物との戦いで羽を傷付けられ、崖から落とされて傷ついた翼を開くことができず、絶望しながら地面へと落下していった時、等です。つまり『人生のどん底に突き落とされたかのような苦渋や、一生付きまとう程の後悔、また忘却することは出来ず、ある意味トラウマになるほどの絶望を味わされたキャラ』が雷元素の神の目を手にしていることが多いのでは無いのかと思いました。
以上から、それぞれの各元素には入手時に、『自分が為すという“強い意志”』と『“願い”や“思い”』、また『その他の要因として“代償”』、それに加えて『本人を取り巻く環境や状況』によって、各元素という分岐してそれぞれの元素の神の目を手に入れているのではないかと思います。
最後に代償は、氷元素の場合なら生涯矛盾した環境に置かれ続け、周りの大勢には本人の真意を理解される事は無い事。雷元素の場合なら、本人にとっての何か大切な事ややりたい事を行う為の時間が足りない、もしくは本人の寿命が短命であるが故にそれを完全に叶える事は出来ない事であり、それは望みが完全に叶う事は無いという事なのではないかと思いました。
結論として、これらを纏めると神の目の入手条件と元素が分岐する際の傾向、代償は以下の通りになるのではないかと思いました。

-----
◎各元素の神の目入手時の傾向とその時の代償について
〇神の目の入手条件
・自分が為すという“強い意志”
・強い“願い”や“思い”を抱く事
・その他の要因として“代償”

〇各元素分岐傾向(本人を取り巻く環境や状況)
:氷元素
・自分自身(の矛盾)と向き合う。
・窮地を乗り越える。
⇒『ハードな人生で、かなり特殊な境遇を送っている』キャラが氷元素の神の目を手に入れやすい。

:雷元素
・窮地に追い込まれた時、または死に近い経験をしたことがある時。
・大切な何かを失った時、または大切何かを失いかけた時。
⇒『人生のどん底に突き落とされたかのような苦渋や、一生付きまとう程の後悔、また忘却することは出来ず、ある意味トラウマになるほどの絶望を味わされた』キャラが雷元素の神の目を手に入れやすい。

〇代償
:氷元素
⇒矛盾した環境に置かれ続け、周りの大勢には本人の真意を理解される事は無い事。
:雷元素
⇒本人にとっての何か大切な事ややりたい事を行う為の時間が足りない、もしくは本人の寿命が短命であるが故にそれを完全に叶える事は出来ない事。





※尚、前回に引き続き考察や解説ではもしかしたら作者の知識不足や認識不足のせいでおかしくなっている所があるかもしれません。ですので、もしもありましたら暖かい目で見ていただけると助かります。よろしくお願いします。
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