玉衡の元から逃亡したら千岩軍が追いかけて来ていた件について   作:久遠とわ

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3話目が完成したので投稿。

今回は完全にエウルア(との戦闘)回です。

元素反応を活かした戦闘描写とかって、よく分からない...
取り合えず一通りは出来たものの...

今更ですが、2話目の時にあとがきとかに書けば良かったのですが、主人公の瞬詠は現時点では神の目は保持していません。
ただ、それをある程度は補う程の強さ?は持っていますが...

それはそうと、お気に入り登録、また高評価等もありがとうございます。

小説情報とかを開いたときに急激に増えていて、思わず見間違えかと思って入りなおしたりしました。

特に何も考えずに、本当に完全に衝動的に始まってしまった見切り発車の本作品ですが、よろしくお願いします。


波花騎士から逃げようとしたが、彼女と共に戦舞踏を踊ってしまった件について

エウルア・ローレンス。

 

西風騎士団の遊撃小隊隊長、波花騎士という称号を持った女性騎士。氷のような水色の髪に金眼で整った顔立ちをしている美人な女性、だがその身にはかつてモンドを暴政と恐怖で染め上げた旧貴族「ローレンス家」の血が流れている女性。そして、その罪人の血が流れている罪人達の末裔である彼女の瞳は、まるで氷のような冷酷な敵意を込めて瞬詠の姿を映していた。

 

「エ、エウルア。お、お前どうしてここに…?」

 

蒼風の高地の清泉町とアカツキワイナリーの中間地点にある高台、そこで奔狼領で拾った片手剣を手にした瞬詠は焦りながらエウルアに声をかける。

 

「それは風の翼で奔狼領に逃げたと聞いた私が、次に君が行きそうな場所を考えた結果よ」

 

「ははは、まじですか...でも、自分はもう行かないといけないから、じゃあな」

 

「駄目に決まってるでしょう」

 

「っ!!」

 

エウルアはその言葉を発すると同時に一瞬で瞬詠との距離を詰めて大剣を振り下ろす。瞬詠はそれをかろうじて体をそらしてかわす。

 

「っ!?」

(冷たっ!?)

 

瞬詠はかわした筈なのに身の毛をよだつ程の冷たい感覚を覚えていた。

 

「ふぅん?やっぱり私の一撃を避けるのね」

 

「おい!!馬鹿!!エウルア!!自分の事を殺す気か!?死を意識したぞ!?死を!!何考えてんだ!?お前!?」

 

「えぇ、だって瞬詠、君はこんなんじゃ別に死なないでしょ?君はものすごくしぶといと思うし…遺跡守衛みたいに」

 

「いや、だからなに言ってんの!?」

(人のことを遺跡守衛みたいってなに言っちゃってんの!?頭いかれてんじゃねえの!?こいつ!?)

 

瞬詠はエウルアのまさかの発言に心の中でツッコミを入れる。

 

「ふぅ、まぁいいわ。私は君を捕まえに来たわけだし、その過程でついでに君にあの時の復讐を行うだけだよ」

 

そう言うとエウルアは再び瞬詠に向かって大剣を振るい始める。

 

「おい待てって!!っ!!だからさっきから!!っ!!復讐って!!一体自分が何をしたっていうんだよ!?」

 

「あら、覚えていないのかしら?」

 

「知らねえよ!!」

 

エウルアの大剣が横薙ぎに振るわれる。それを瞬詠は叫びながらバックステップをしながらなんとか回避する。

 

「全く覚えてないなら、別にそれはそれでも構わないけど。私が受けたあの時の屈辱はここで晴らすだけだし……まぁ、とにかく始めましょう」

 

「っぁ!?だから待てって!!っぉ!?なんの話をしてるんだよ!?お前は!?」

(一体自分が何をしたっていうんだよ!?)

 

瞬詠はエウルアが本腰を入れたのか、まるで軽々と綺麗にダンスを踊るかのように大剣を振るい始め、彼はよりいっそう必死になって、攻撃を回避しながら説得を試みる。しかし、そんな瞬詠の言葉など耳に入らないように大剣を振り続ける。

 

「っぅ!?っぁ!?ちょっ!?」

(一体、エウルアは何に対して怒ってるんだ!?全然意味がわかんねぇんだけど!?)

 

瞬詠はエウルアの攻撃を何とか避けながら考える。全くもって何が原因なのかが分からない。いや、正確にはエウルアが自分に対して恨む心当たりがありすぎて、どれが原因で彼女が怒っているのかが全く分からなかった。

 

 

瞬詠とエウルアは他の西風騎士団の面々の中でも良くも悪くも長い付き合いだった。瞬詠がモンドにやって来て、その時に初めて本格的に西風騎士団と関わった最初の西風騎士団の騎士がエウルアでもある。

当初は瞬詠もエウルアも、他の人と比べて特別仲が良いという訳ではなかったが、モンドで何度か瞬詠とエウルアが行動を共にしたり、エンジェルズシェアで相席したりした結果、それなり以上に親しい間柄になったのだ。

また、お互いがお互いに色々と面倒な事を背負っている事もあり、二人は互いに同情し合っていた。それ故に二人は互いに心を開いたのか、良く言えば互いに相手に言いたいことを何でも言えるような関係になり、悪く言えば遠慮なく悪口や罵倒をぶつけあえる関係になっていた。

 

 

「ふぅ……いつまで君は持つのかしら……」

 

そして、その瞬詠を追い詰めるエウルアの顔には余裕があり、その表情からは、今のこの状況を楽しむかのような笑みを浮かべていた。

 

「おい!?っ!?一体、何をしたっていうんだよ!?そこまで恨ませることなんて……あぁっ!?」

(いや、もしかして!?あれなのか!?)

 

エウルアの攻撃を何とかしてかわし続ける瞬詠は、ふとある事に思い当たる。

 

「お前……っ!!まさか!!いつかのエンジェルズシェアでの『公開接吻乱闘事件』のことか!?」

 

「砕け散れ!!」

 

「うぉっ!?っぅ!?」

(寒っ!?)

 

瞬詠がそう叫ぶと、エウルアは今までよりも早く大剣を地面に叩きつけ、またその際に彼女の氷元素の余波なのか周囲に強烈な冷気が撒き散らされる。だが、瞬詠は大剣をギリギリのところでそれを避けきり、エウルアと距離を取った。

 

「ふっ、やるじゃない。瞬詠」

 

「っ!?やっぱりかよ!?」

 

エウルアは避けた瞬詠に顔を向ける。エウルアは瞬詠に優しく微笑んでいるものの、その瞳には絶対零度のような冷たい殺意が込められていた。そしてその瞳を見た瞬詠は、やはり自分の予想は当たっていたと確信する。

 

「いやいや待ってくれ!?あれは自分は悪くない!!事故だ!!事故!!」

 

瞬詠はエウルアに対して抗議の声を上げる。

 

 

公開接吻乱闘事件。それは、今でもまるでまことしやかなように、一部の西風騎士団とエンジェルズシェアの常連に語られている一種の伝説的な事件。

 

事の全貌はとある日のエンジェルズシェアで瞬詠は知り合いの吟遊詩人と一緒にお酒を飲んでいたのだが、その時は知り合いと共にかなり飲んでいたために泥酔ぎみであった。そこにその知り合いの吟遊詩人が瞬詠にどついて、どつかれた瞬詠はフラフラな状態でエンジェルズシェア内を歩き、そこへ同じく客として来ていたガイアの足に偶々引っ掛かり、バランスを崩しかけた瞬詠がそのまま独りで飲んでいたエウルアの元に倒れ込んで、そのまま彼女の唇を奪ってしまったのだ。更には彼の手が偶然彼女の胸にも伸びてしまっていたのである。

そして、瞬詠に何をされたのかを理解した彼女は瞬詠を睨むと、その後すぐに彼をボコボコにぶん殴りまくったわけだが、彼も彼でかなりの酒が入っていたために、普段の彼なら最後まで逃げたり謝ったりしていたはずなのだが、エウルアにぼこぼこに殴られ続けた彼が、遂に逆ギレして彼女に殴り返して反撃してしまったのだ。その結果、瞬詠とエウルアは互いに殴ったり殴られたり、蹴ったり蹴られたり、組伏せたり組み伏せられたり等の取っ組み合いを始めてしまい、最終的には偶々エンジェルズシェアに一緒に訪れたオーナーのディルックと西風騎士団の代理団長のジンによって、二人共彼らに取り押さえられて喧嘩両成敗させられ、そのまま瞬詠とエウルアの二人は二人纏めて、騎士団本部の反省室に放り込まれたという事件である。

 

またその後には、更に両者ともにエンジェルズシェアに迷惑を掛けたお詫びとしてディルックとジンの提案により、数日ほどエンジェルズシェアの従業員としてバーテンダーやウェィターとしてオーナーのディルックにこき使わされたのである。

 

因みに瞬詠はその事件の時の記憶はそこまで残っていないが、エウルア曰く、『私にとっては、一生忘れられない思い出になったわ』との事で、その最終日には『いつの日かは、この屈辱を晴らすために復讐してやるから。だからその日までに覚悟を決めておくことね』とまで言われた。

 

 

「まさか!?まさか、そのいつの日かって!?今日なのか!?というか、そんなずっと前に起きたことをまだ根に持ってるのか!?」

 

瞬詠はエウルアの執念深さに驚愕する。

 

「当たり前でしょう?私は自分の受けた屈辱を忘れるほど愚かではないし、自分自身の誇りを傷つけられて黙っているほど優しい性格でもないわ」

 

「いや、さっきからなに言っちゃってんのエウルア!?というか、そんなことを言うなら今すぐ全ての元凶のウェンティの奴に言えよ!?」

 

「もちろん、ウェンティが私の目の前に現れたら、この恨みを晴らすために……直接文句を言うつもりよ」

 

「いや、自分とウェンティの奴との復讐の内容が絶対に逆だろ!!こういうのはあいつこそが受けるべき罰だと思うんだけど!?」

 

瞬詠はエウルアの言葉を聞いて、思わずツッコミを入れる。

 

「まぁ、良いわ。これで貴方がどうして私に復讐されそうになっているのか、十分に分かったでしょ?さぁ、罪人は罪を償ってもらうわよ」

 

「その言葉をお前が言うか!?」

 

瞬詠はエウルアの言葉にまたもやツッコんだ。

 

「ふふっ、喚きなさい!!ふっ!!っ!!っ!!」

 

「おい馬鹿!?っ!!くっ!?ちっ!?」

 

エウルアは一気に間合いを詰めるとエウルアの氷の元素を纏わせたのか、極寒の氷気を帯びた大剣を瞬詠に連続して放ち、瞬詠はエウルアの大剣を当たるか当たらないかのギリギリでかわしていく。

エウルアの剣技はまるで剣舞のように美しいものであり、その動きには無駄がない。普通なら大剣を振るえば隙ができるはずなのに、エウルアのそれはまるで彼女の祭礼の大剣が彼女の身体の一部のように、彼女の舞のような華麗な動作に合わせて、彼女の武器も華麗かつ優雅な動きで振るわれていく。

 

「ちょっ!?馬鹿!?」

 

だが、彼女の剣戟に振るわれている当の本人である瞬詠にとってのそれは、ただの恐ろしい死神が操る鎌にしか見えなかった。

 

「ふっ 」

 

「っ!?っ!!ぁっ!?」

 

彼女の大剣の一振るいを瞬詠はかわすと、今まで彼女の猛攻を受けていたせいだろうか、彼は彼女に攻撃するつもりがなかったものの、つい反射的に片手剣でエウルアに突きを放ってしまう。

 

「っ、やるね」

 

そしてエウルアは一瞬目を見開いて、瞬詠の突きを大剣で軽く弾いて防ぐと、その瞬間に瞬詠の懐に入り込む。

 

「うおっ!?」

 

瞬詠は慌ててエウルアの攻撃を防ごうとするが、エウルアの蹴りによって瞬詠は吹き飛ばされてしまう。

 

「っぅ、くそったれ……やったな、エウルア?」

 

吹き飛ばされた瞬詠はゆっくりと立ち上がると、エウルアに視線を向ける。彼はエウルアの攻撃をまともに受けたものの、ダメージはほぼ無いに等しいようで、彼は彼女を睨み付ける。

 

「あら、ようやくやる気になったみたいね?」

 

エウルアは瞬詠の方を見ると、ほんの少しだけ楽しそうな表情を浮かべて笑う。

 

「どうやらどうやっても、自分が逃げるためにはエウルア、お前をここで何とかする方法は無いようだな……」

 

瞬詠はエウルアの蹴りを受けたのが原因で彼自身にスイッチが入ったのか、先程までの回避や逃げに徹していた様子とは違い、彼の瞳に宿っていた彼女に対する怯えや焦りの色は消え、代わりにその瞳の奥底からは強い意志を感じるようになった。

 

「そう、やっと戦う気になったのね?それじゃあ始めましょうか?瞬詠」

 

エウルアは自身の大剣を構える。

 

「ふん、これからするのはあくまでも正当防衛だ。お前が悪いんだからな?覚悟しろよ?エウルア」

 

「ふふっ、面白いじゃない?やってみなさいよ?瞬詠」

 

「そうか、なら遠慮なくやらせてもらう」

 

瞬詠はそう言うと、今度は瞬詠の方からエウルアとの距離を詰める。

 

「っ」

 

「っ」

 

瞬詠は片手剣をエウルアに向かって振り下ろし、エウルアはそれを身体をそらして避ける。すると瞬詠はエウルアに避けられたことなど気にせず、そのまま流れるような動きで片手剣を振り上げ、エウルアに一撃を放つ。

 

「ふっ、ふんっ」

 

「っぅ、っ」

 

また、エウルアも瞬詠の攻撃を自身の大剣で防ぎつつ、大剣を巧みに操り、まるで踊るかのように華麗な動きで瞬詠の攻撃を受け流しつつ、時折反撃をしていく。

 

「全く、本当に中々やるな。お前は」

 

「あら、どうもありがとう。でもやっぱり貴方もかなり良い腕をしているわね」

 

「そりゃどーも」

 

二人は互いに相手を褒めつつも、相手の隙を伺っているのか、互いの攻撃の手を緩めることなく、激しい攻防を繰り広げていく。二人はまるで独特のステップを踏みながらダンスを踊るかのように、まるで戦いの舞踏会を行っているようであった。

 

「っ、っ」

(……仕方ない、アンバーを助けるのに使ってしまったから出来れば節約したかったんだが、今はそんなこと言ってる場合じゃないな)

 

瞬詠は心の中で呟くと、自分の服からそれぞれの元素反応を引き起こす投擲瓶を取り出す。

 

「あら、瞬詠。それを取り出したってことは、今から私も元素攻撃をしてもいいという事よね?」

 

「はんっ、どの口がそれを言う?その前にお前は散々自分に向かって、氷元素を纏わせた大剣を自分に振るってきただろうが?」

 

「ふふっ」

 

瞬詠の言葉を聞いたエウルアはクスリと笑うと、彼女は瞬詠に攻撃するために間合いを詰めようとする。しかし瞬詠はバッグステップを踏んで、エウルアの攻撃を回避する。

 

「っ、はっ、ちっ」

 

「っ、ふっ、あら、瞬詠。私の舞台でも整えてくれたのかしら?」

 

そしてエウルアの攻撃をかわし続けた瞬詠は、エウルアが大降りに放った氷元素を纏わせた大剣を後方に宙返りしながらかわすと同時に、複数の青い液体の投擲瓶をエウルアの足元に狙って投げつけるが、エウルアはその場で跳んで投擲瓶を避ける。そうしてエウルアに避けられた投擲瓶は割れて周囲に水元素を拡散し、更にはエウルアが周囲に発していた氷元素に混ざることで、一瞬にして緑の草原を凍らせてしまい、氷の大地へと変貌させた。

 

「随分と面白いことしてくれるじゃない?次は何をしてくれるのかしら?」

 

エウルアは瞬詠が作り上げた氷の大地を見て不敵に笑いながら問いかけると、瞬詠は服からそれぞれ青と水と橙と紫の四色の色の投擲瓶を取り出して片手でそれらをエウルアに見せる。

 

「さぁな、因みにエウルアはどういう目に遭いたいんだ?お前の要望に答えてやるぞ?」

 

「あら、それは光栄ね。でも、残念。酷い目に遭うのは君の方だから」

 

エウルアはそう言いながらも大剣を構えて、瞬詠の方を見る。瞬詠もまた、エウルアに視線を向けながらそれぞれの投擲瓶と片手剣を握り直す。

 

「…………」

 

「…………」

 

二人はしばらく睨み合う。

 

「…っ!!」

 

「っ!!」

 

すると先に動いたのはエウルアだった。彼女は瞬詠との距離を一気に詰める。

 

「っ、っぅ、くっ」

 

瞬詠は重心を移動させたり、身体を捻ったりしながらエウルアの大剣による横薙ぎの攻撃を氷の上を滑りながら回避していく。

 

「あら、中々器用ね」

 

エウルアはそう言って感心しながらも、瞬詠に追撃を仕掛けるために、瞬詠と同じようにまるでスケートのように滑っていく。

 

「っ... 氷浪の様に唸れ!」

 

「ぐっ!!っぅ!?」

 

そして瞬詠にある程度近づくと、フィギュアスケートのジャンプのように大きく飛び上がり、空中で回転しながら気合いを込めたかのような一声を放ち、莫大にまで膨れ上がるほどの氷元素を纏わせた大剣を瞬詠の元に振り下ろす。

それに対し瞬詠は顔をしかめながら、エウルアが振り下ろしてきたその大剣を何とか片手剣で軌道を逸らしつつ、エウルアの大剣の威力を後方に逃がすように滑っていったが、その衝撃が抑えきれなかったために、瞬詠は水の元素反応を引き起こす投擲瓶の幾つかを手放し遠くにばら撒いてしまう。

そしてばら撒かれた水元素反応を引き起こす投擲瓶は、エウルアの強烈な氷元素の冷波により更に二人の周囲を氷漬けにさせてしまった。

 

「あら、中々いい反応するじゃない?やっぱり君は強いね......流石、私の宿敵よ」

 

エウルアはそう言うと、ニッと微笑む。

 

「はんっ、何だそれ?......さぁて、そっちもやったんだし、こっちもそろそろ同じようなことをさせてもらおうじゃないか」

(まぁ、今ので条件は整った……そろそろ本格的に始めるとしようか)

 

瞬詠は心の中で呟くと、彼は2つの同じ色であるとある色の投擲瓶、それと同時にそれとは別の元素の複数の投擲瓶の準備をエウルアに気づかれないように準備する。

 

「ふふっ、そうね。やれるもんならやってみなさい」

 

そして、瞬詠の言葉を聞いたエウルアは不敵な笑みを浮かべながら大剣を構えた。

 

「なら遠慮なく行かせてもらう!!」

 

瞬詠はエウルアに向かって走り出すと、エウルアは瞬詠を迎え撃つために、大剣を上段から振り下ろしてくる。しかし、瞬詠はエウルアの攻撃を回避しようとせずに、そのまま丁度エウルアと瞬詠の間の氷が張った地面にその投擲瓶を少しタイミングをずらしながら投げつける。

 

 

 

___刹那

 

「っぅ!?」

 

エウルアと瞬詠の間の氷が張った地面から強烈な爆風が吹き荒れると、エウルアはその攻撃に驚きながらも、すぐに体勢を立て直そうとする。

 

「っ!!」

 

そして瞬詠は吹き荒れ続ける爆風に突っ込み、そのまま彼の黄金の風の翼を広げて空を舞う。

 

「くっ!?しまった!?...まさか!?」

 

エウルアは空へと舞い上がった瞬詠を見て、思わず声を上げる。

 

 

モンドで瞬詠と共に行動をしてきたエウルアだからこそ分かる。

 

瞬詠は地上でも狡猾で中々厄介な男であり、風の翼を用いて空を自由に舞えるようになると、恐ろしいほどに実力が跳ね上がってしまうことを。

 

また、それと同時にエウルアは今まで彼が何を狙っていたのかを理解した。

 

最初の水元素と氷元素の元素反応で地面を徹底的に凍結させて、氷の大地を作り上げると同時に、次にその氷の大地を巨大な氷元素の塊と見て、そこにさっきの投擲瓶、橙色の炎の元素反応を引き起こす投擲瓶を投げつける。

そうすることで1本目では溶解反応を引き起こして氷を溶かし、それを水や水蒸気に変化させることでそれらを瞬詠は全て水元素とみなし、時間差で投げられた2本目の炎の元素反応を引き起こす投擲瓶を投げつけることで、水元素とみなした水や水蒸気を蒸発させることで蒸発反応を引き起こした。

そうして、それらを利用した蒸発反応や溶解反応によってその投げつけた箇所が急激に熱せられたことにより、熱せられて軽くなった空気が上空へと駆け上がるような流れを作ることによって、まるで風元素を用いた時のような強烈な上昇気流を疑似的に作り出して、上空に舞い上がるための風を発生させたのだ。

 

そうして瞬詠は地上にいるエウルアを見下ろしながら不敵に笑う。

 

「これでやっと全ての準備を終わらせることができた……ここからは自分の番だ」

 

「っ!?」

 

瞬詠のその言葉を聞いた瞬間、エウルアは嫌な予感を感じたため、その場から離れようとする。

 

しかし……

 

「逃がすかぁっ!!」

 

「っ!!っぁ!?」

 

エウルアが動き出す前よりも早く、瞬詠はさっきの炎元素反応を引き起こす投擲瓶をエウルアの近くに投げつけ、瞬詠が投げつけた箇所が爆発すると、その衝撃でエウルアは大きく吹っ飛ばされてしまう。

 

「っぅ!?くっ!!」

 

エウルアは何とか受け身を取れたものの、瞬詠の不意打ちに近い攻撃をうけてしまったため、それなりにはダメージを負ってしまい、痛みに耐えながら立ち上がる。

 

「...これは」

 

そして、エウルアは自身の身体の違和感に気づく。身体が痺れたかのようになっているようになっていることに。

 

「あぁ、どうだ?雷元素の投擲瓶は?痺れるだろ?」

 

エウルアが自身の状態を確認していると、瞬詠はそう言い放つ。

 

「……そういう事ね」

 

瞬詠の言葉にエウルアは納得したかのように言う。

自分が瞬詠に何をされたか、瞬詠が整えたこの巨大な氷の舞台はどういう仕掛けか、そして今自分が瞬詠に嵌められて、どういう状況に陥っているのかを。

 

「瞬詠、貴方。随分と悪趣味な手を使ったわね?」

 

エウルアは瞬詠を睨みながら言う。

 

瞬詠が作った舞台では自分は圧倒的に不利な状況にある。

瞬詠が作り上げたこの巨大な氷の舞台には、雷の元素反応を引き起こす投擲瓶を割れないように大量にばら撒かれているのだ。おそらく、先ほど瞬詠が爆風を生み出して空を舞い上がった時の僅かな時間の間に。そしてあの爆発は、雷の元素反応を引き起こす投擲瓶に炎の元素反応を引き起こす投擲瓶を直接ぶつけて割らせる事で過負荷を発生させたもので、体の痺れはおそらく割れた雷元素の投擲瓶の雷元素が、先ほどの水や水蒸気に変化させた水元素と反応して感電、もしくは瞬詠が築き上げたこの巨大な氷の舞台の氷元素が反応して超電導でも引き起こしたためだろう。

 

「ふんっ、悪趣味とは失礼な。ただエウルア、今のお前に絶対に勝たないと駄目だからだ。今の自分は何がなんでも捕まるわけには行かないしな。…正直に言えば、お前にはここまでやらないと厳しいと思ったからやったまでだよ」

 

「ふぅ……私も君を甘く見ていたみたいだわ。まさかこんな手を使おうなんて思いつかなかったもの」

 

エウルアは苦笑いを浮かべながら、自分を見下ろす瞬詠を見上げる。

 

この雷元素の投擲瓶をばら撒かれている、例えるなら瞬詠の意思で爆発するまるで見えない爆弾が埋め込まれた氷のステージ、もしくは地雷が埋め込まれた雪原の舞台、そういうような凶悪すぎるこの氷舞台を作り出した瞬詠の意図が、自分を確実に倒すか無力化することであり、逆に言えば瞬詠はそれくらいエウルアの事を警戒するほどに、非常に高く評価しており、それは今の瞬詠が、エウルアは油断したりを手を抜いたりすることが出来ないほどの、一筋縄でいかないほどの強敵であると認識しているという事になるからだ。

 

「……これで完全に舞台が整ったな、どうする、エウルア?降参するか?自分としてはこのまま降参してくれると本当に助かるんだが?」

 

そして、そうしている間にも瞬詠はゆっくりとエウルアと相対するように氷の舞台に降下してくる。

 

「はんっ、瞬詠、悪いけど私もここで負けを認めるわけには行かないわ。それにまだ勝負はこれからよ。私の宿敵」

 

エウルアは瞬詠の問いかけに対して不敵に笑う。

 

「はぁ……エウルア、お前ならそう言うと思ったよ。なら、もうここから先は言葉はいらないかもな。ここからは今出せる限りのお互いの全力を出し切るだけだ。この、くそ恨み節女め」

 

瞬詠は呆れたようにそう言いつつも、どこか嬉しそうな表情を見せる。

 

「えぇ、そうね」

 

そして、二人は互いに剣を構え合う。

 

「っ!!」

 

「っ!!」

 

瞬詠がエウルアの元に一気に駆け出し斬りかかり、エウルアはそれに迎え撃たんとばかりに自身の剣を振りかざす。

 

「っ!!せいっ!!ふっ!!」

 

「っ!!くっ!!ふぅっ!!」

 

瞬詠はエウルアに片手剣を振るうが、エウルアは両手で握る大剣を盾のように扱い防ぎ続ける。

 

「流石だな、エウルア」

 

瞬詠はエウルアのその防御の仕方を見て素直に称賛の言葉を口にする。

 

「それはどうも。君も私の剣術についてこれるって事は、やっぱり相当鍛えていたってことなんでしょうね」

 

「鍛えていたというか、積み重ねた経験と判断だな。気づいたときには幾年以上も海の上で姐さん達と共に過ごして色んな経験をしたり、おまけに稲妻で事故って墜落したら、姐さんの船まで歩いて帰る、なーんて生活を送ってたら、誰でもこんなことができるようになるさ」

 

瞬詠は自身の持っている剣を器用に操りながら言う。

 

「なるほどね。本当にお互いに難儀な過去を持っているわよね。私達は」

 

エウルアは瞬詠の言葉を聞いて苦笑しながら言う。

 

「あぁ、本当にそうだな。お前はお前でローレンスという名前を持っているせいで、苦労しているところはあるからな」

 

「えぇ、本当によ。だけど、私は私よ。そんな事は気にしてないわ」

 

瞬詠とエウルアは剣を振るいあいながらまるで愚痴りあうかのように会話を続ける。

 

「っ、ふっ!!そこっ!!」

 

「っ、っぅ!!くっ!!」

 

そして瞬詠の片手剣の突きに対して、エウルアは身を捻るようにして回避し、そのまま隙が生まれた瞬詠に大剣を振るおうとする。だが、それを察知した瞬詠は直ぐ様、その場を高く飛び炎元素の投擲瓶をその真下に投げつけると上昇気流を生み出して、風の翼を展開してそれに乗って宙に回避する。

 

「ふっ!!」

 

「っぅ!?」

 

そして宙を舞っていた瞬詠は風の翼を翻し垂直降下し、そのままエウルアに斬りかかる。

 

「ちぃっ!!」

 

しかし、エウルアはそれを大剣で受け止めるが、瞬詠の垂直降下した際の勢いを殺せずに後方に押されてしまう。

 

「っ!?ふんっ!!」

 

「っ!!あぁっ!?」

 

そして、エウルアは何とか踏ん張り瞬詠を押し返し、瞬詠は押し返され宙に打ち上げられる。

だが、瞬詠は打ち上げられると同時に炎元素の投擲瓶を投げつけ、それがエウルアの近くにあった雷元素の投擲瓶に叩きつけられて爆発を引き起こし、その爆発にエウルアは巻き込まれ吹き飛ばされ、氷の舞台の上で転がりながら受け身を取りながら立ち上がる。

 

「っ!!瞬詠!!やっぱりそれは卑怯よ!!正々堂々と剣で戦いなさい!!」

 

エウルアはそう言いながら、瞬詠の方へと走り出す。

 

「はんっ!!何を言っているんだ!?自分とエウルアが剣のみで戦ったら絶対に負けるに決まってるだろうが!!エウルア、こういう搦め手を使うのが今は最も最適だと理解しているんだ!!だから、この手段は使わせてもらうぞ!!」

 

「っ!?本当にぃっ!?」

 

そして瞬詠は炎元素の投擲瓶を氷の地面に投げつけて上昇気流を作って、またもやエウルアの方に垂直降下しながら片手剣で斬りかかる。エウルアは大剣で防ぐが、瞬詠はそれも織り込み済みであったようで、エウルアの大剣で防いだ片手剣を滑らせるようにして弾いて大剣を逸らす。

 

「ふっ!!」

 

「っぅ!?」

 

そして瞬詠はエウルアに蹴りを喰らわせると、そのまま後ろに下がり着地する。

 

「っ!?瞬詠!!やったわね!?」

 

「お前が先に蹴ったんだろうが!?」

 

エウルアは両手で握る大剣を握りしめ、瞬詠に向かって振りかざし、瞬詠も片手剣を振り上げる。

 

「っ、ふっ、はっ」

 

「っ、ぐっ、っぅ」

 

エウルアは瞬詠に肉薄するかの如く、距離を詰めて連続で斬撃を放ち、瞬詠はその連続攻撃を片手剣で逸らし、場合によっては炎元素と雷元素の投擲瓶の爆発で妨害する。また、瞬詠もエウルアと剣を交えながらも、巧みにエウルアを雷元素の投擲瓶の方へと誘導して炎元素の投擲瓶を投げつけて爆発させてエウルアを吹き飛ばしたり、上昇気流を生み出して空高く舞い上がりそのまま急降下や垂直降下してエウルアに攻撃し、それに対しエウルアは慣れてきたのか爆発に巻き込まれ吹き飛ばされても、何とかして適切に受け身を取れるようになっていきダメージも先ほどよりも受けないようになっていった。そして垂直降下等の落下攻撃もエウルアは場合によっては反撃できるようになっていき、それを起点にそのまま自身の身体能力の高さを活かして瞬詠に接近戦を仕掛けていく事すらも出来るようになった。

 

「っ、ふんっ」

 

「くっ、ふふっ」

 

だが、そんな激しい攻防を繰り返しても、二人の顔には笑みが浮かんでいた。まるで相手の力を試すように、互いの実力を測るような戦闘に二人はどうしても楽しさを感じざるおえなかった。

 

そして、高台の氷舞台の上で瞬詠とエウルアの剣と剣が弾きあう音、それぞれの打撃音、瞬詠の投擲瓶による爆発音が響き渡り何度も木霊する。

 

「なんだ!?この連続する爆発音は!?」

 

「向こうから聞こえるぞ!?」

 

「向こうには隊長がいたはずだぞ!!」

 

「なんだって!?どうなってるんだ!?まさか、あの男か!?」

 

そして瞬詠とエウルアの戦舞踊によって生み出されたその戦いの音楽は、近くにいた千岩軍の兵士達と西風騎士団のエウルアの遊撃小隊の隊員達やその他の騎士たちを大勢呼び寄せたのであった。




瞬詠の飛行術やそれなりの戦闘経験による剣術が相まってるとはいえ、各元素反応を起こす投擲瓶って使い方によってはこんなに強くなる物...なのか?
まぁ、そういうことにしておきましょう。

―――
追記1
・蒼風の高地という用語を追加し、それに伴って一部描写や表現を修正しました。

追記2
・文字間隔の調整を行いました。
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