玉衡の元から逃亡したら千岩軍が追いかけて来ていた件について   作:久遠とわ

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完成したので投稿。

今回の話は今までに投稿した中で、一番長いです。
アビスの魔術師達の戦闘シーンと状況や戦況の推移、またその他諸々等を描写してしまった関係でほぼ2話分の分量と内容になってしまいました。

但し、あらすじにも書いてある通りに、本来ならばこのままアビスの魔術師達編を終わらせるつもりだったのですが、あまりの分量になってしまったこと、レザーのシーンの描写に想像以上に時間が掛かる見込み(本文を読めば分かる)になってしまう事から、今回はアビスの魔術師達戦・前編(瞬詠編)という事で投稿しました。

尚、今回はタグにある“考察ネタ”、後書きにて一部“ネタバレ”?が若干発揮しています。

また、前回のアンケートですが、
アンケート結果は再度アンケートを行うべきという結果(また、やっぱりアンケートの存在を知らなかった人が多かった)という事から、再度そのアンケートを置きました。そしてアンケート結果は次々回に反映させる予定ですので、興味のある方はご回答をよろしくお願いします。


アビスの包囲網の無力化を試みたら、カウントダウンが始まった件について

「っ、っ、っぅ、オァァッッッ!!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、あぁっ!!」

 

日が射さない曇り空の下で二人の男、片方は赤い瞳に体つきが逞しく、緑のズボンにぼろぼろのフードのような恰好姿で背中に雷の神の目、大剣を手にしたまるで狼の体毛のような長髪の少年のレザー、そしてもう片方は灰色の服装に、黒い髪に灰色の髪が混じった男、そして片手に閉じた状態の鉄扇を持った男である瞬詠の二人は、雄叫びを上げながら曇り空の下をまるで灰色の突風の如き速さで駆け抜けていく。

 

「ヤァ!?」

 

「イヤァッ!?」

 

「ヤゥッ!?」

 

そして自分達の元に突っ込まんとするいきり立っていたヒルチャール達はしびれを切らして、こちらから襲おうとしたタイミングで、瞬詠とレザー達が逆にこちらに雄叫びを上げながら突撃してきた事により、突然の出来事にヒルチャール達は怯んでしまう。

 

「っぅ!?っ!!怯むな!!」

 

「なっ!?ぐっ!!来るぞ!!迎え撃て!!」

 

「っ!?はっ!?ぼーっとするな!!あの二人をやれぇっ!!」

 

そして炎と水と氷のアビスの魔術師達も突撃してきた瞬詠とレザーの二人に驚きながらも迎撃を行うために、慌てながらヒルチャール達に次々と指示を飛ばしていく。

 

「ヤァ!!」

 

「ヤァーウ!!」

 

「ヤァッ!!」

 

アビスの魔術師達の指示を受けたヒルチャール達は混乱しながらもレザーと瞬詠を迎撃するために走り出す。

 

「グフォン・ルールル」

 

「ツナージャ・スタージャ」

 

「イロン・グールル」

 

またアビスの魔術師達もバリアを構築しつつ、呪文を唱え始めることで魔法を行使する準備をし始める。

 

「レザー!!来るぞ!!」

 

「あぁ!!オレに任せろ!!」

 

レザーはそう言うと、先行するように大剣を振りかざしながら更に足を速める。

 

「ヤアァッ!!」

 

「ヤゥゥゥッ!!」

 

しかしそんなレザーの前に立ちふさがるように現れたヒルチャール達が棍棒を構えたり、盾を構えることで防御態勢を取る。

 

「邪魔だぁ!!どけぇっ!!」

 

「イヤァッ!!」

 

「ヤゥッ!!」

 

それに対し、レザーは勢いよくジャンプすると空中で体を捻らせながら回転することで攻撃範囲を広げた一撃を放ち、その攻撃を喰らったヒルチャール達は衝撃で吹き飛んでいく。

 

「ヤァッ!!」

 

「ヤゥッ!!」

 

「っ!!」

 

だが次の瞬間、その攻撃を回避したヒルチャール達がレザーの左右から襲い掛かろうとする。

 

「おいおい、俺の存在を忘れてんのか?まぁ、別に空気扱いで構わないけどな。ふんっ!!」

 

「ヤァッ!!イギャァ!?」

 

「ヤゥッ!!ヤァゥッ!?」

 

「ギャゥッ!?」

 

「ヤァッ!?」

 

「「「「イギャァッ!?」」」」

 

刹那、レザーに襲い掛かろうとしたヒルチャール達に対し、瞬詠は呑気にそんなことを言いながらレザーとレザーを襲おうとしたヒルチャールの一団の片方との間に割り込み、そのまま鉄扇を開いて薙ぎ払うようにしてヒルチャール達の攻撃を防ぎ、ヒルチャールの手に持っていた棍棒を弾き飛ばしたり地面に叩き落とす。そして瞬詠はそのままの勢いで連続で鉄扇を振るう事でヒルチャール達の意識を刈り取ったり、そのヒルチャール達をレザーの元に接近していたもう片方の一団のヒルチャール達に向けて蹴り飛ばし、または投げ飛ばしていくことでもう片方のヒルチャール達の集団を蹴散らしていく。

 

「ヤァッ!!」

 

「ヤァゥッ!!」

 

「っ、ちっ」

 

その時、ボウガン持ちの2体のヒルチャール達が待ってたと言わんばかりに、背を向けた瞬詠に目掛けて矢を放ち、ボウガンの矢を放たれたことに気づいた瞬詠が舌打ちしながら回避しようとする。

 

「させるかぁ!!」

 

その次の瞬間、レザーが叫びながら瞬詠の真上に跳び上がると、そのまま後ろから迫ってきたボウガンの矢から瞬詠を守るように大剣を地面に突き刺す。そうしてレザーが地面に突き刺した大剣が盾代わりになり、瞬詠の背に迫ってきたボウガンの矢を防いた。

 

「瞬詠、大丈夫か?」

 

「大丈夫だ。レザー、ありがとう。助かった」

 

「あぁ、良かった」

 

瞬詠とレザーは背中越しで会話を行い、互いの無事を確認する。そして二人はすぐに背中合わせになり、自分達に向かってくるアビスの魔術師達とヒルチャール達を睨みつける。

 

「ヤァゥ!!」

 

「ヤァッ!!」

 

「っ、また囲まれた」

 

「あぁ、そうだな」

 

レザーと瞬詠は互いに背中を合わせた状態で武器を構えながら周囲を見渡す。するとそこにはいつの間にか瞬詠とレザーの周りを別のヒルチャール達が取り囲んでおり、また瞬詠達が倒したヒルチャール達のうちの意識が残っていたヒルチャール達は起き上がって瞬詠達に襲い掛かる準備をしていた。

 

「ぐっ、本当にしつこい」

 

レザーは地面に突き刺した大剣を引き抜きながら、ヒルチャール達やアビスの魔術師達に警戒するように視線を向ける。

 

「あぁ、本当にだな」

(さっきの攻撃、不意打ちだったな。しかも俺が介入するときと比べたら格段に悪くなっているが、それでも一応は連携を取れている。やはり、頭を潰さなければだめだな)

 

瞬詠はそう思いながら、自分達を囲むヒルチャール達とアビスの魔術師達を見つめる。多くのヒルチャール達の足元や身体が恐怖のせいなのか震えており、まるで瞬詠やレザー達と戦いたくない、むしろ今すぐ逃げたいくらいであるのにも関わらず、アビスの魔術師達の命令のせいで戦わざる負えない状況にあるかのように思え、そんなヒルチャール達をアビスの魔術師達は詠唱しながらも、この場から逃げ出すことは絶対に許さないと言わんばかりにヒルチャール達の背後から威圧感をかけていた。その様子を例えるならば督戦隊が既に士気等が崩壊して、敵前逃亡したがっている兵士達を敵軍と無理やり戦わせるために、彼らの後ろから銃火器で脅して強制的に戦場へと向かわせているような状態だった。

 

「…ヤ、ヤァッ!!」

 

「…ヤ、ヤゥッ!!」

 

ヒルチャール達は怯えながらも瞬詠とレザーに向かって威嚇するように声を上げる。

 

「くっ」

 

レザーは自身の大剣を構えながらヒルチャール達を睨みつける。

 

「…」

(…なんだが、哀れだな)

 

それに対し瞬詠は、鉄扇を構えながらも自分たちに怯え、震えているヒルチャール達をじっと見つめながら心の中で呟いた。

 

「ヤァッ!!」

 

「ヤゥッ!!」

 

ヒルチャール達は瞬詠とレザーに敵意を抱きながら棍棒や盾、またボウガン等を構える。だがしかし、先程の奇襲の時のような勢いはなく、彼らの様子からしてどこか焦りと困惑の色が浮かんでいた。

 

「…ふぅ」

(…だが、そうは言っても仕方がない)

 

瞬詠は息を吐く。そしてヒルチャール達に対して抱いていた同情の念を頭の中から振り払うと、鉄扇を開きながら改めて構えた。

 

「行けぇ!!ここで二人を必ずここで殺せぇ!!お前達!!」

 

「ぼーっとするなぁ!!あの二人を殺せ!!分かっているんだろうな!?」

 

「殺せぇ!!殺すんだぁ!!絶対にこの場で!!さっさと行けぇ!!」

 

「イヤァッ!?ヤァッ!!」

 

「イヤゥッ!?ヤァーウッ!!」

 

「「「「ヤァゥッ!!」」」」

 

アビスの魔術師達は口々に叫びながらヒルチャール達に指示を出しながら、魔法でヒルチャール達の背後の地面に水弾や火炎放射、氷の塊を飛ばすなどし、ヒルチャール達を脅すようにして瞬詠達を攻撃させる。そのおかげか、ヒルチャール達は怯むことなく瞬詠とレザーに向けて、次々と棍棒を掲げたり盾を振り回し、また瞬詠達の周囲を走り抜けるように駆けながらがむしゃらにボウガンを放って襲い掛かった。

 

「ぐっ!!コイツら!!」

 

「っ、っ…おいおい、何なんだこいつら」

(いくら何でも必死すぎるな)

 

レザーは大剣で襲ってきたヒルチャール達を大剣で薙ぎ払い、瞬詠も鉄扇でヒルチャール達を返り討ちにしながら、どこか悲壮的な叫び声を上げながら突っ込んでくるヒルチャール達の攻撃を掻い潜りながら、レザーは思わず驚きの声を上げ、瞬詠は眼を僅かに細めた。最早、今のヒルチャール達には連携と言う言葉は存在しておらず、ただひたすらに目の前にいる獲物を殺すことしか考えていない獣のように、単調な動きで襲い掛かってきていた。だが、先ほどまでの様子とは違って、ある意味今のヒルチャール達からは決死隊のような気迫を感じられた。

 

「っ、っ、ふっ」

(これは流石におかしい…一体、何がヒルチャール達やアビスの魔術師達をここまで駆り立てるんだ)

 

瞬詠は冷静に襲ってきたヒルチャール達の対処や遠方から次々と放ってきたヒルチャール達のボウガンの矢を回避したり、弾いたりしていきながらヒルチャール達やアビスの魔術師達の様子を伺う。

 

「ぐぬぬぬ…」

 

「思ったよりもやる…」

 

「しぶとい…」

 

そして瞬詠とレザーを囲っていたアビスの魔術師達は、自分達が思っていた以上に抵抗してくる二人に苦々しく呟いた。

 

「…こうなったら!!」

 

「…良いだろう!!」

 

「…遊びは終わりだ!!」

 

「「「ふぁぅっ!!」」」

 

炎、水、氷のアビスの魔術師達は三体はそう叫ぶと、それぞれ赤と青と白の光を放ってその場から消え果てる。

 

「っ!!瞬詠!!来る!!」

 

「あぁ、レザー!!頼むぞ!!手筈通りにな!!」

 

レザーと瞬詠は僅かに目を見開きながらお互いに声をかけ合う。

 

すると次の瞬間、瞬詠達の周りを取り囲むように、先程と同じように三人のアビスの魔術師達が姿を現した。

 

「死ねぇ!!灰塵と化せ!!灰色の者達よ!!ここで死んで我等の礎になれ!!」

 

「ここがお前たちの墓場だ!!これからお前達が散らす命は我らの栄冠を照らす光となるのだ!!」

 

「さぁ!!死ね!!今日!!この日!!奇しくも!!我らの在りし日々の栄光を取り戻すための第一歩を踏み出すことになったこの日!!」

 

 

「「「我らの神聖なるこの日!!お前達の命が我らの手で尽き果てる事によって!!我らアビスの栄光を照らす輝きとなることを!!」」」

 

 

その次の瞬間、アビスの魔術師達は瞬詠とレザーを包囲するように先ほどの赤と青と白の光の中から、それぞれの元素を使用したバリアーを張りながらその場に現れて、口々にそう叫ぶ。

 

 

「「「そして!!散りゆくお前たちのその命の輝きは、我らの’指導者たる”あの御方”’に捧げられる栄誉となれることを光栄に思え!!」」」

 

 

そしてアビスの魔術師達はそう叫び上げると同時に、一斉に瞬詠とレザーに勢いよく杖を向けると、そのまま火炎放射や水弾、氷の塊を飛ばしてきた。

 

「ぐっ!!っぅ!?」

 

「っ!!ちっ!!」

(ったく!!さっきから何なんだ!!こいつら!!)

 

”アビスの礎”、”栄冠を照らす光”、”在りし日々の栄光を取り戻す”、”神聖なるこの日”、そして’指導者たる”あの御方”’。瞬詠はアビスの猛攻を何とか掻い潜りながらも、アビスの魔術師達が口々に叫んだ言葉を頭の中で反すうする。

 

「ぐっ!!おぉぉっ!!瞬詠!!」

 

「ちっ!!っ!!あぁ!!レザー!!行くぞ!!」

 

「ヤァッ!!」

 

「ヤゥッ!!」

 

「「「ヤァーウッ!!」」」

 

レザーと瞬詠は迫りくるアビスの魔術師達の攻撃、またボウガン持ちのヒルチャール達のボウガンの矢や、突進してきた棍棒持ちや盾持ちのヒルチャール達を避けたり捌き切りながら、二人は一斉に散開するようにそれぞれのアビスの魔術師達に向かって駆け出し、レザーは水のアビスの魔術師、瞬詠は炎と氷のアビスの魔術師達の元へと向かう。

 

「灰塵と化せ!!灰色の者よ!!」

 

「死ねぇっ!!我らを愚弄した罪により!!お前達の血で大地を染め上げろ!!」

 

「我ら偉大たるアビスに仇名す者達よ!!今ここで死に絶えるがいい!!」

 

アビスの魔術師達はそう言い放つと、それぞれの属性の魔術を放つ。

 

炎と氷のアビスの魔術師達は、瞬詠に向けて一斉に火球と氷柱を放ち、水の魔術師はレザーに向けて水弾や水泡を放った。

 

「っ!!ふっ!!ふんっ!!」

 

「ぐっ!!っ!!」

 

瞬詠は炎のアビスの魔術師と氷のアビスの魔術師が放った攻撃に対して、鉄扇を使って防いだり、持ち前の身のこなしと身体能力を駆使して、巧みにアビスの炎と氷の魔術師の攻撃をぎりぎり回避していく。

 

「っ!?がぁっ!!」

 

そしてレザーも大剣でアビスの水の魔術師の攻撃を防御しつつ、また自身の高い身体能力と反射神経を生かして避けていく。

 

「っ、ぐっ」

 

瞬詠は炎のアビスの魔術師と氷のアビスの魔術師達の猛攻をいなしながら、ちらっとレザーの方に視線を向ける。

 

「っぅ!!アァー!!」

 

「ぐっ!!ちょこまか、ちょこまかと!!」

 

レザーはアビスの水の魔術師の攻撃を巧みに避けながら、アビスの水の魔術師に反撃していく。またアビスの水の魔術師をこの場から引き離すための誘導も上手く行えており、瞬詠の思惑通りにアビスの炎と氷の魔術師、アビスの水の魔術師の分断に成功しつつあった。

 

「よし、上手くやってくれたな。レザー」

(これでアビスの炎と氷の魔術師の方に集中できる。今度は俺が『役割』を果たさないとな)

 

瞬詠は心の中でレザーに称賛を送りつつ、アビスの炎と氷の魔術師に視線を戻して、アビスの炎と氷の魔術師の攻撃を回避し続ける。

 

「ぐぬぬ!!なぜだ!!何故当たらない!!我らアビスに仇なす愚か者め!!」

 

「お前達もぼーっとせずにあの男を何とかしろ!!」

 

「ヤァッ!!」

 

「ヤゥッ!!」

 

アビスの炎と氷の魔術師達はそう言うと、それぞれ杖を構えて同時に魔術を発動させ、更に攻撃を激しくしていく。またアビスの氷の魔術師の一声により、更にヒルチャール達の勢いが増し、瞬詠に襲い掛かる。

 

「っ!!ふっ!!」

 

アビスの氷の魔術師の言葉を受けたヒルチャール達の攻撃は激しさを増すものの、瞬詠は冷静に鉄扇でボウガンの矢を弾いたり棍棒の軌道をそらして、その猛攻を何とか凌ぎ切りながら、アビスの炎の魔術師と氷の魔術師の様子を観察するように見つめながら、彼らの猛攻をいなしてゆく。

 

「っぅ!!」

 

瞬詠はアビスの魔術師達やヒルチャール達の的にならないように駆け抜けつつ思考していく。元々、アビスの魔術師達はかなりの脅威であることは間違いない。実際問題、ヒルチャールシャーマン等の一部のヒルチャール達は除外するとしても、彼らと違ってアビスの魔術師達は元素を使用した魔術を使える。

 

「燃え尽きろ!!」

 

「粉々になれ!!」

 

瞬詠がアビスの炎の魔術師と氷の魔術師を観察していた理由。それはこの場にいる彼らが明らかに他の者達に比べて明らかに実力が高く、またヒルチャールを指揮統率していたのが、アビスの魔術師であった事から、彼らがヒルチャール達の指揮官でありリーダー的存在であるという事。つまり彼らはかなりの実力者ということになり、必然的にアビスの魔術師の放つ攻撃は、ヒルチャール達や瞬詠やレザーをも含めてアビスの魔術師達が放つ攻撃が、この場にいる者たちの中でより強力であるという事を理解しているからだ。おまけに強力な攻撃をしてくるアビスの魔術師達はそれでいてかなり賢いのか三体が同時に行動していた事でお互いにカバーしあう事も出来ていたために死角すら見当たらず、彼らはレザーと瞬詠にとって非常に戦いにくい相手であったのだ。だからこそ、瞬詠はレザーにアビスの水の魔術師を任せて、何とか分断させた。

 

「っ!!ちぃっ!!」

 

瞬詠は彼らを翻弄するように駆け回りながら、鉄扇を振るってボウガンの矢を弾き飛ばし、機会を待つ。現状、アビスの魔術師達を無力化するには正攻法で倒すことは限りなく不可能であることが瞬詠は嫌という程に分かっていた。しかしそれでも勝機が全くないというわけでもない。彼が考える、とある条件の全てを、完璧に整える事さえ出来れば。

 

「いい加減にしつこいぞ!!」

 

「くそぉ!!ちょこまかと動き回るな!!」

 

アビスの炎の魔術師とアビスの氷の魔術師はそう言いながらも、瞬詠の動きに合わせて攻撃を繰り返していく。対する瞬詠はアビスの炎の魔術師とアビスの氷の魔術師の攻撃を避ける事に徹しつつ、またアビスの魔術師達の動きを観察し、彼らの攻撃パターンを把握できるように動いていく。

 

「っ、ふっ」

(やはりな……。こいつらは、今までに遭遇してきたアビスの魔術師達の中でも、個々の能力自体がかなり高い。しかもさっきまでかなり良い連携すらもみせていた。…分断させておいて正解だった)

 

瞬詠はアビスの炎と氷の魔術師達の攻撃を捌きつつ、心の中で目の前のアビスの炎と氷の魔術師達を評価すると共に彼らの動きを分析を続ける。彼の瞳はまるで鷹や大鷲といった猛禽類のような鋭い眼光を放ち、一瞬たりとも彼らから目を離さずに、冷静に状況を見極め続ける。

 

「ふんっ!!貴様ごときが我等をどうにか出来ると思うなよ!!」

 

「我々を舐めると痛い目を見るぞ!!」

 

「はんっ!こっちは一片たりともお前らを侮ってねえわ!!」

 

瞬詠はそう言いながらアビスの魔術師達の攻撃や時折来るボウガンの矢やヒルチャール達を鉄扇で弾いていなし、その最中も冷静に状況を判断しながら、アビスの炎と氷の魔術師達のそれぞれの攻撃や彼らの癖、また各ヒルチャール達の攻撃パターンや彼らの連携術を素早く見極めていき、頭の中で次々と整理してはそれらを次々にと結びつけていく。

 

「っ!!っ!!」

 

瞬詠は駆けながら、彼らを観察して得られた情報を基に、彼らを倒すための行動手順と手段を高速かつ的確に導き出していく。

 

 

アビスの炎の魔術師。火炎放射による炎の遠距離攻撃、アビスの仮面等を模したのか魔法で生み出した質量のある物体から放射する三方向からの同時火炎放射攻撃、またある程度追尾してくる炎の球。そしてそれらを次々と連続して攻撃に移るまでの速度。

 

アビスの氷の魔術師。氷の塊や氷柱による遠距離攻撃、魔法で頭上辺りから氷柱の雨を降らす攻撃、またアビスの氷の魔術師の魔力の余波のせいなのか、周囲が凍える程の強烈な冷気による範囲攻撃。そして、その魔術師がとある場合に陥った時に行うワープする際の癖。

 

そして、士気が低いために動きは鈍いもののヒルチャール達による棍棒や盾を用いた前衛達の他方向からの同時連携攻撃、また各元素反応を引き起こすボウガンを持ったヒルチャール達による一斉攻撃や時間差攻撃。また、ボウガンのヒルチャール達が一斉攻撃をする際の法則や、前衛のヒルチャール達が邪魔してこない条件。

 

そして、地理的要因や現在の状況。

 

 

「ふっ、っぅ」

 

瞬詠は彼らの攻撃を回避し続けたことで得られた情報を整理していくことで、彼らを最終的に無力化する為に必要な手順を考え続け、その手順を実行する為にどう動くべきかを即座に思考し、それらを次々と結論付けていく。

 

 

そして、遂にその時が来た。

 

 

「…よし」

 

回避をし続けていた瞬詠はそう呟くと、ふとその場に立ち止まった。

 

「うん?止まった?」

 

「なんだ?いい加減に諦めたのか?」

 

「…ヤァ?」

 

「…ヤゥ?」

 

アビスの炎の魔術師と氷の魔術師、それにヒルチャール達は突然動きを止めた瞬詠に少し困惑した様子を見せる。

 

「諦めた?…いや、悪いな。諦めたんじゃなくて、“段取り”が整ったんだよ」

 

瞬詠はそう言いながら、不敵に笑う。最終的な結論を得られた瞬詠は、アビスの炎と氷の魔術師達を確実に無力化するための最適な手段が彼の脳裏に浮かんでいた。

 

「……何を言っているんだ貴様は!?」

 

「おい、こいつ何か企んでるぞ!!気を付けろ!!」

 

「「「ヤゥッ!!」」」

 

「「「ヤァッ!!」」」

 

アビスの炎の魔術師と氷の魔術師、そしてヒルチャール達は瞬詠を警戒して身構えるが、彼らは瞬詠の考えを読み取れず、ただ彼を警戒することしか出来ないでいた。

 

「……」

 

周囲の草はアビスの炎の魔術師の炎により未だに燃え上がり続けており、アビスの氷の魔術師の魔法による冷気が周囲を冷やし続け、また倒されたり吹き飛ばされた際に落としたヒルチャール達の棍棒や盾が地面の上に転がり、そしてアビスの魔術師達とヒルチャール達の敵意が瞬詠に突き刺さる。

 

しかし、そんな中でも瞬詠は余裕の表情を見せており、むしろどこか楽しげな様子にも見えた。

 

「…っぅ」

 

「…ぐっ」

 

アビスの炎の魔術師と氷の魔術師は目の前の男に何故か焦燥感を覚え始めていた。

 

それはアビスの魔術師達の攻撃やヒルチャール達の攻撃が悉く彼に弾かれ続けているだけでなく、普通の人間や例え神に認められし神の目を持った者であっても、多少は疲労を感じ始めるはずなのに、瞬詠は一切疲れている様子が見られなかったからだ。

 

アビスの炎と氷の魔術師達の攻撃は全て弾かれるか避けられるかしており、ヒルチャール達による遠距離、近距離双方の攻撃も全て彼には命中していない。

 

まるで全ての攻撃の軌道が見えているかのように、彼はそれらの攻撃を完璧に回避し続け、それはあたかも彼はこの後に自分達が何をしようとしているのかを知っているかのような動きを見せていた。そしてそれらは信じがたいが、未来予知でもしているのではないかと思える程にだ。

 

そしてそれと同時に彼が名乗った『仕事人』という言葉。それがアビスの魔術師達には妙に引っ掛かっている。アビスの魔術師達は思い出そうとするが、どうしても思い出せない。だが、それでもなんとなくではあるが、その言葉だけは聞いたことがあるような感覚に襲われ、非常に不快、そして強烈な不安感に襲われる。

 

「……さてと、そろそろ片付けるとしようかな」

 

瞬詠はそう言うと鉄扇をゆっくりと閉じていく。

 

そしてそう呟いた瞬間、アビスの魔術師達の身体中を悪寒が走り抜けていき、瞬詠から放たれる殺気に気圧されてしまいそうになる。

 

「…」

 

そして、辺り一体に瞬詠の鉄扇が完全に閉じきった音が響き渡った。

 

「っ!!」

 

「くっ!!来るぞ!!」

 

「む、迎え撃て!!」

 

「……ヤァッ!!」

 

「……ヤゥッ!!」

 

そしてその音と共に瞬詠はアビスの魔術師達やヒルチャール達に向かって駆け出し、その動きを見たアビスの魔術師とヒルチャール達は一斉に彼へと攻撃を仕掛ける。

 

「ふっ!!っ!!」

 

回避し続けた時と違って瞬詠は迫り来るヒルチャール達の矢やアビスの魔術師達の炎や氷を弾けるもの弾き、弾けないものはいなしたりしながら一気に前進していく。

 

「ヤァッ!?」

 

「ヤァッ!?」

 

「ヤゥッ!?」

瞬詠の動きが先ほどまでよりも遥かに速いことにヒルチャール達は驚きの声を上げる。

 

「ヤァッ!!」

 

「ヤウッ!!」

 

ヒルチャール達は一気に接近してくる瞬詠に飛びかかって武器を振り下ろす。

 

「ふっ!はぁっ!」

 

「ヤウッ!?」

 

「ヤァッ!?」

 

だが瞬詠はヒルチャール達の攻撃を鉄扇で受け流し、そのままの勢いでヒルチャール達の体勢を崩させて横転させたり、また他のヒルチャール達が振るう棍棒を飛び上がって避けたり、足でヒルチャールの足を引っかけて転倒させたりするなど、瞬詠は自身の動体視力や反射神経を遺憾なく発揮することで次々とヒルチャール達の攻撃をかわして、そのまま流れ作業のように突っ込んできたヒルチャール達を全員後方に吹き飛ばしていく。

 

「っ!!こいつ、なんて奴だ!?おい、お前達!!突っ込んでくるぞ!!何とかしろ!!」

 

「っぅ!!全員!!一度、あいつから距離を取れ!!それとそこの手ぶらのお前!!応援を呼べ!!とにかくこの事をあの御方達に伝えるんだ!!あの男にここを突破されれば、そのままあの御方達が行っているあの場所へ行ってしまうかもしれん!!そうなってしまえば大変なことになってしまうぞ!!」

 

「ヤ、ヤゥッ!!」

 

アビスの炎の魔術師と氷の魔術師は目の前で起きている光景を見て驚愕しつつ、すぐさま瞬詠から距離を取るように命令を出す。そしてアビスの氷の魔術師は棍棒を落としてしまっていた偶々そこにいた一体のヒルチャールに指示を出し、それを受けたヒルチャールはその通りに動き始めた。

 

「っ!!くそっ!!」

 

「行かせるか!!」

 

瞬詠は増援を呼ぼうとしたヒルチャールを見て焦り、即座にそのヒルチャールの行く手を阻んでそのまま無力化しようとしたが、アビスの氷の魔術師が氷の塊を大量に撃ち出してきたため、瞬詠は回避せざるおえずそのヒルチャールを取り逃してしまう。

 

「っ!!」

 

(くそっ!!最悪だ!!)

 

背中が遠くなってしまったそのヒルチャールを見て瞬詠は、とんでもない失態を犯してしまった事に心の中でそう叫ぶ。

 

「…大人しくしろ、お前はここでもう終わりだ。お前は只者では無い事が良く分かった。だからこそ、この場で留まってもらう」

 

瞬詠の目の前に浮遊するアビスの氷の魔術師は瞬詠にそう言い放つ。

 

「そうだ。お前ともう一人の人間はこの場で留まってもらう。もしかしたら、我らの指導者たるあの御方がここにやってきて、直々に貴様らを始末するかもしれないがな」

 

そして、瞬詠の背中にいるアビスの炎の魔術師がそう言う。

 

「ヤァ」

 

「ヤーゥ」

 

そしてヒルチャール達はボウガンや棍棒を構えて、瞬詠とアビスの魔術師達を取り囲むように布陣する。

 

「……ははは」

(本当に洒落にならない状況になったな)

 

瞬詠はそれを聞いて、思わず苦笑いを浮かべてしまう。自身の耳に入った言葉から推測するに、アビス教団という魔物や怪物達の勢力を統率しているだろう指導者的存在、その存在がこの近くにいる。しかも、その指導者は自分達を仕留めに来るかもしれないと。

 

「何を笑っている?今の状況を理解していないのか?」

 

「いや、この状況で笑う以外に何か出来ることがあると思うか?」

 

アビスの氷の魔術師の言葉に瞬詠はそう返す。瞬詠は笑うことで思考を切り替える。こうなってしまったとしても、やるべきことは変わらない。ただ、僅かに状況が変わっただけなのだ。もとより、この場に長居するつもりは全くない。

 

「…はんっ、たかが元素も使えない人間相手にどうしようもないから、みっともなくあんたらのボスであろう、そのアビスの指導者とかいう奴が来るのを期待しているってわけか。随分とまあ小物だなお前さん達よ」

 

「…」

 

「…おい、お前。なんて言った?」

 

瞬詠の発言を聞いたアビスの氷の魔術師は瞬詠の挑発に乗らずにただ沈黙していたものの、瞬詠の背中越しにいたアビスの炎の魔術師は違ったようで、どこかドスを聞かせた声でそう聞いてきた。

 

「ん?ああ、聞こえなかったか。じゃあもう一度言ってやる。あんた等みたいな雑魚集団を束ねてる奴なんざ大したことねえ奴なんだろ、って言ったんだよ。それにこんな奴らしかいないんじゃ、そんな指導者なんて名ばかりの存在なんだなって思ってな」

 

「っ!?貴様!?やっぱり今すぐ殺してやる!!」

 

「おい!?乗るな!!っ!!」

 

瞬詠は更に煽るような発言をしてアビスの炎の魔術師達の怒りを買ってそのまま瞬詠の背中に向かって火炎放射を放つ。またアビスの氷の魔術師も、今の状況下で瞬詠に攻撃をするつもりはなかったが、アビスの炎の魔術師が行動を起こそうとしたため咄嵯の判断で氷柱を複数生成し、それらを一斉に射出した。

 

「おっと」

 

瞬詠はそれを軽々と回避していき、ヒルチャール達の包囲網の中を駆け抜ける。

 

「ヤァ!!」

 

「ヤゥッ!!」

 

「っ!!ふっ!!」

 

また、ボウガン持ちのヒルチャール達もアビスの氷の魔術師の攻撃から走り回る瞬詠に、彼の行動を抑止ように矢を放つ。

 

「ちぃ!!本当に鬱陶しいな!!」

(だがそれでいい!!あともう少し!!)

 

瞬詠はそう叫びながら飛んでくる矢を避け、同時にボウガン持ちのヒルチャールに向けて鉄扇を振るう。瞬詠は訪れるであろうそれを待つ。条件は揃いつつあり、この偶発的な戦闘は瞬詠にとって、ある意味好機であった。

 

「っ!!ふっ!!ほらよっと!!」

 

「ちっ!!ちょこまかちょこまかと!!撃て!!あの男に当てろ!!一発だけで良い!!」

 

「ぐっ!!この男め!!本当に厄介だ!!」

 

瞬詠はヒルチャールが放つ元素付きのボウガンの矢をかわし、時々アビスの魔術師達の方にそのボウガンの矢を弾いていく。ボウガンの矢はアビスの魔術師達が自分に張っている元素バリアによって防がれているために彼らにはダメージが入らない。だが、そのボウガンの矢には炎元素や雷元素、氷元素と言った各種の元素が付与されていたため、弾かれた元素付きのボウガンの矢とアビスの魔術師達が張っている元素バリアがそれぞれ元素反応を引き起こして、その元素バリアに僅かでかつすぐに修復されてしまうものの、それでもそのバリアーに小さなヒビが入っていく。

 

「ヤァッ!!」

 

「ヤゥッ!!」

 

ヒルチャール達は次々とボウガンの矢を放ち、瞬詠は地面に落ちた大量の矢やヒルチャールの棍棒や盾、また所々の草が燃え上がっているそのヒルチャール達の包囲網の中を疾走する。

 

「っ!!」

 

瞬詠は機を見定める。そして、遂にその瞬間が訪れた。

 

「ヌヌヌ・グルフォン・サ一クル」

 

「氷漬けになれ!!」

 

アビスの炎の魔術師がとある魔法を行うために詠唱を開始し、それと同時にアビスの氷の魔術師がまた瞬詠に向けて幾つもの氷柱を飛ばす。

 

「ふっ!!」

(来た!!)

 

瞬詠はその氷柱を回避するためにわざと大きく飛び跳ねる。氷柱は先ほどまで瞬詠がいた場所に着弾する。

 

「ヤゥッ!!」

 

「ヤァッ!!」

 

そして、瞬詠が飛び上がった瞬間を狙ったかのように瞬詠とアビスの魔術師達を取り囲んでいたボウガン持ちのヒルチャール達が一斉にボウガンを構え、瞬詠に向かって元素反応付きの矢を放つ。

 

「はぁっ!!ふぅっ!!」

 

空中を舞っていた瞬詠は飛んできた矢を次々と地面に叩き落として行く。

 

「っ!!」

(よしっ!!)

 

そして、瞬詠が弾いたそれらの矢が地面に降り注ぎ、降り注いだ矢は近くで燃えていた草やそれぞれの矢に付着していた元素によって、主に過負荷を中心とする爆発によって地面に転がっていた棍棒や盾が上空へと吹き飛ばされ、吹き飛ばされたそれらを瞬詠はキャッチしていく。

 

「さぁ、燃え落ちろ!!お前はここまでだ!!」

 

「ファゥッ!!」

 

次の瞬間、アビスの炎の魔術師と氷の魔術師が叫ぶ。アビスの炎の魔術師は叫びながら杖を瞬詠が着地するであろう場所に向けると、そこに瞬詠の着地地点を取り囲むようにアビスの仮面等を模した火炎放射を行う物体が、アビスの炎の魔術師の魔法によってその姿を現わす。また、アビスの氷の魔術師はワープした。それはアビスの炎の魔術師の攻撃を補助するために、その姿を消したのだ。

 

「っ!!」

 

瞬詠は僅かに目を見開く。そして口角を上げた。周辺の草は燃え上がり、ヒルチャールの元素反応付きの矢が飛び交い、地表には浮遊していたアビスの魔術師の仮面を模した火炎放射を行うそれが放口し、まるで着地する瞬詠を待ち構えるかのように高温の熱気が上がり始め、そしてワープしたアビスの氷の魔術師が瞬詠にダメ押しの不意打ちを喰らわせんと、とある位置にワープする為に姿を消した。それら全ての出来事は一見して最悪な状況に見える。だが、瞬詠にとってはそれらは好都合だった。

 

 

何故ならば瞬詠の考えていたアビスの氷の魔術師を無力化するためのとある条件の全て、それらが今この瞬間に完璧に整える事が出来ていたからだ。

 

 

「ふぅっ!!はぁっ!!」

 

瞬詠は手に持っていたヒルチャール達が落とした棍棒を一気にアビスの魔術師の仮面を模したそれに投げつけ、投げつけられたそれらの放口が、瞬詠の投擲によってそれらの向きをとある場所に誘導させられる。

 

「なにぃっ!?」

 

アビスの炎の魔術師は、まさかの瞬詠の行動に焦りを見せる。そして次の瞬間。

 

「ファウッ!!……えっ?」

 

姿を消していたアビスの氷の魔術師の姿が現れ、その魔術師は唖然とする。なぜなら、目の前には着地した瞬詠に向けられていたはずのアビスの魔術師の仮面を模した火炎放射を行うそれら全ての放口が、自分の方に向いていたのだから。

 

「イィッ!?」

 

そして間隙が空かずにその放口の全てから火炎放射が一斉にかつ、盛大にアビスの氷の魔術師に襲い掛かり、アビスの氷の魔術師は悲鳴を上げる。アビスの氷の魔術師が張った氷のバリアは、アビスの炎の魔術師のそれらによる火炎放射によって修復もままならずに、一気に次々と大小のヒビが入っていく。

 

「っ!!ふっ!!」

 

そこに瞬詠の鉄扇によって弾かれた元素付きのボウガンの矢、また地表に落ちていたヒルチャールの棍棒を蹴り飛ばし、その棍棒が燃え上がる草むらの上を通過することで、火が燃え移り、それら全てがミサイルのように真っ直ぐにアビスの氷の魔術師のバリアーに飛来していく。

 

「ヒィッ!?アァッ!?イギャアァァッッッ!?」

 

「「「イヤァァッッッ!?」」」

 

「ヤァッ!?」

 

「ヤウッ!?」

 

そして、ついにアビスの氷の魔術師のバリアーはアビスの炎の魔術師の火炎放射と瞬詠のダメ押しの弾いた元素付きのボウガンの矢と燃えている棍棒の嵐によって砕かれ、まるで断末魔のような悲痛な叫び声を上げながら、アビスの氷の魔術師は過負荷による爆発や連続して引き起こされる超伝導や溶解反応の衝撃によって派手に吹き飛んでいき、瞬詠を包囲していたヒルチャール達を巻き込みながら、地面へと叩きつけられて転がり回る。

 

「な、なぁっ!?」

 

アビスの炎の魔術師は目の前で起こってしまったことに対して、現実を受け入れられずに呆気に取られ、そして目の前の男の恐ろしさに戦慄を覚える。あの男は圧倒的有利であった自分達の状況を一瞬にして覆してしまったのだ。しかも瞬詠が行ったことはただ自分達の攻撃を利用しただけに過ぎない。

 

「ヤァッ!?ヤァッ!?」

 

「ヤゥッ!?ヤーウッ!?」

 

「あ!?お前達!?待てっ!!」

 

そして一部始終を見ていたヒルチャール達は遂に恐慌状態に陥り、極一部のヒルチャールだけではあるものの、我先にとその場から逃げ始めてしまうのも現れてしまった。

 

「逃げるな!!この男を"姫様"の元に行かせる訳にはいかないんだぞ!!」

 

「…ふーん、”姫様”ね?……あ」

 

瞬詠はアビスの炎の魔術師が漏らした言葉に反応する。そしてふとアビスの氷の魔術師が吹き飛ばされる前にいた所に視点を移すと何かを見つける。

 

「……へぇ、これ使えるかもな」

 

瞬詠はそれを手に取る。手に取ったそれは吹き飛ばされたアビスの氷の魔術師が使っていた魔法の杖だった。

 

「…ふっ、っ」

 

瞬詠は落としたアビスの氷の魔術師の杖を振り回す。それはまるで槍を扱うような動きであり、彼は何かを確かめるようにそれを振っていた。

 

「……よし」

(…そこまで悪くない、壊れかけの練習用の槍とも思って丁寧に扱えばなんとかなる)

 

瞬詠はそう思うと同時に槍を振り回すのを止め、そのままレザーの元へと行くために自分を包囲しているヒルチャール達に向かって走り出す。

 

「おい!!お前ら!!そこをどきやがれぇっ!!」

 

「イヤァッ!?」

 

「ヤァーウッ!?」

 

瞬詠はヒルチャール達に怒鳴る。そして、怒鳴られたヒルチャール達は既に恐慌状態に陥っていたこともあり、瞬詠の怒号によって更にパニックを起こしてしまい、その混乱が更なる混乱を招いてしまったことで包囲網は完全に崩壊してしまい、瞬詠はそのままレザーの元に向かうことが出来た。

 

「ふんッ!!アァーッ!!」

 

「ぐっ!!くたばれ!!」

 

瞬詠の目の前では、レザーが果敢にアビスの水の魔術師に大剣で斬りかかるが、アビスの水の魔術師が張った水のバリアーによって阻まれ、またアビスの水の魔術師は魔法による水弾や水の泡を用いた攻撃を繰り出すが、レザーはそれらを巧みにかわしていくという、まさに一進一退の戦いを繰り広げていた。

 

「レザー!!待たせたな!!」

 

「っ!!瞬詠!!」

 

「ぐぬぬ!!そ、それは!!…き、貴様ぁっ!!」

 

瞬詠はアビスの水の魔術師と睨みあうレザーの隣に立ち、アビスの水の魔術師と対峙する。

 

「瞬詠、やったな」

 

「あぁ、ちゃんとさっき言った手筈の通りにアビスの氷の魔術師を無力化したぞ。だが、不味い事になった。本当に時間が無い」

 

瞬詠はレザーの言葉に応えると、先ほどアビスの氷の魔術師の命令で伝令役のヒルチャールが消えた方に視線をやる。

 

「レザー、急ぐぞ。あまりにも無駄な時間を掛けているとこのアビスの魔術師達を救援するために、アビス教団の増援がこっちに来る。ヒルチャールが一体、伝令としてこの場を離脱したんだ」

 

「なんだと!?瞬詠、本当なのか!?」

 

「あぁ、そうだ。だけど安心しろ。それも既に織り込み済みで想定内だ」

 

(だが、もしもあのアビスの魔術師達の言う通りなら、最悪の場合だとアビスの指導者やら姫様やら、明らかにアビス教団の頂点辺りに位置する怪物といっても過言ではない奴等がここに来る可能性がある)

 

瞬詠は隣に立つレザーにそう言いながら、この現状に対して嫌な予感を感じる。とにかく目の前のアビスの魔術師達の対処に加えて、その者達が増援としてやってくる可能性を頭に入れておかなければならない。

 

「…分かった。瞬詠、オレ、お前を信じる。オレの命、お前に預ける。…例え、もしも、今日が最期の日だとしても、最期の時まで瞬詠に付いていく」

 

「え?レザー?お前?」

 

レザーは覚悟を秘めた瞳で瞬詠を見る。それを見た瞬詠は、自分の予想以上にレザーは非常に強く、そして硬い意志を持ってこの場に臨んでいたことに、少しだけ驚く。

 

「…あぁ、分かった。ならば俺も自分の命をレザーに任せよう」

 

瞬詠とレザーは互いに視線だけを向けて頷きあう。そして、それと同時に瞬詠は非常に大きな責任を背負ってしまったと自覚すると同時に、それならば絶対に判断ミスを犯さぬように多少滾ってしまった思考を冷ましながら、今出来る最善の行動をとる為に頭をフル回転させつつ、また現在のアビスの炎の魔術師の様子や周囲のヒルチャール達の状況を確認を行い始めた。

 

「っ!!ぐっ!!くそっ!!」

 

「ヤァッ!!ヤァァッッッ!!」

 

「ヤゥッ!!「ヤゥッ!!」

 

「ヤゥッ!?ヤァッ!!」

 

「イギャァァッ!!アギャァッ!!」

 

アビスの炎の魔術師は、倒されてしまい地面でぐったりとしている氷の魔術師に逃げ出そうとする一部のヒルチャール達、そしてレザーと瞬詠の二人を相手することになってしまった水の魔術師の方をそれぞれ交互に見ながら、どうすればいいのか分からずただオロオロとするしか出来なかった。

 

そして、今のヒルチャール達の状況は主に3つのグループに分けることが出来る。自分たちのリーダーの一人であるアビスの氷の魔術師が瞬詠に倒されてしまい、その現実に動揺、または受け入れられずにその場で固まってしまったり、ただ意味もなく叫んだり、逃げだそうとする者達。また、何とか現実を受け止めて冷静さを失わずに、吹き飛ばされたアビスの氷の魔術師の様子や安否を確認しようとする者達、アビスの炎の魔術師の元に集って彼の指示を待っている者や彼をサポートしようとしたり、冷静さを失って混乱している仲間のヒルチャール達を落ち着かせようとしている者達。そして現実を受け止めきれられず、逃げ出すことも出来ず、遂にはパニックを起こして自暴自棄、半狂乱になってまるで正気を失ったかのような叫び声を上げながら全ての元凶である瞬詠の方に突撃しようとし、それを必死に抑えようと他の仲間達が止めに入ったことにより、その仲間達とごたついている者達だ。

 

「…やっぱり、正解だったな」

 

瞬詠は改めてアビスの氷の魔術師を無力化した事が正しかったと確信する。瞬詠の睨んだ通り、三体のアビスの魔術師達の中ではリーダー格はアビスの炎の魔術師であるが、実際に実働隊とも言えるヒルチャール達を組織的に動かしていたのはアビスの氷の魔術師であり、その氷の魔術師だけが的確な判断の元、ヒルチャール達を動かすことができていた。そしてヒルチャール達もそんなアビスの氷の魔術師がいたから、彼らを信頼し安心して組織的に行動することも出来ていた。またどんな状況に陥っていてもアビスの氷の魔術師だけは冷静さを失わなずに、臨機応変に動けていた。それ故に、真に警戒すべき相手がアビスの氷の魔術師であったのだ。だが、そのアビスの氷の魔術師はヒルチャール達の指揮を執る事は出来ない。

 

「…レザー、単刀直入に聞くぞ」

 

瞬時に状況を把握した瞬詠は、絶叫を上げながらこちらに突撃しようとするヒルチャール達に目を離さずに、隣のレザーに小声で話し掛ける。

 

「なんだ、瞬詠?」

 

レザーも瞬詠の言葉を聞き漏らさないように集中して、瞬詠の声を聞く。

 

「改めて聞くが、お前の神の目…その神の目をちゃんと使いこなせているか?雷の神の目を上手く使えているか?」

 

瞬詠の問い掛けを聞いたレザーは、一瞬だけ目を見開くが、すぐに真剣な表情で瞬詠の質問に対して答え始める。

 

「瞬詠…ごめん、オレ、まだ、神の目の力を完全には扱えない」

 

「いや、謝るな。扱えないのは扱えないのでしょうがない。それよりもレザー、よく聞け。これからレザーが神の目を完全に扱えるようになるために、レザーにはあることを行ってもらう」

 

「っ!?瞬詠!?それはどういうことだ!?」

 

瞬詠の言葉にレザーは驚きを隠せない。瞬詠は自分が何をしようとしているのか説明する。

 

「簡単な話だ。まず”神の目”っていうのは、”ごく一部の選ばれた人間のみが扱う事のできる特殊な外付けの魔力器官”であり、元素力を自在に操れるようになる為に必要不可欠な物だ」

 

(…まぁ、スネージナヤのファデュイ、また更にはそのファデュイの幹部に当たる十一人の執行官(ファトゥス)が持つ、神の目の模造品である“邪眼”っていう例外はあるがな)

 

瞬詠はアビスの水の魔術師やヒルチャール達の動きを警戒しながら、レザーに説明を続ける。

 

「レザー、良いか?あくまでも俺の考えだが、神の目を上手く扱えないという事は、その神の目はレザーのせいで機能不全を引き起こしているんじゃないかという事なんだ」

 

「機能不全?オレのせい?どういうことなんだ?」

 

「あぁ、そうだな…説明するとかなりややこしくて難しくなってしまうが、端的に言えば神の目というのは神の目を得られた時の思いや願い、つまりは神の目に込められた願いと引き換えに、神の目はその真価を発現させて、その神の目が宿している元素の力を使うことができるんだ。ここまでは分かるか?」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

レザーは瞬詠の説明を聞いて、しっかりと理解したと返事をする。瞬詠はそんなレザーを一瞬だけ見ると、アビスの魔術師達やヒルチャール達の様子を観察しながら口を開く。

 

「よし、なら続けるぞ……俺が思うに、その神の目が宿している力を使うという事は、神の目に込められた願いと引き換えにその力を行使すること。つまりは使用者本人が今抱いている思いと、その神の目に込められている願いが一致してないと、上手くその神の目を扱えなくなってしまうという事だ」

 

「っ!?」

 

レザーは目を見開き、驚愕する。

 

「…そして、一瞬の瞬きの間に現れる神の目、その神の目に込められた願いや抱かれた思い、それは決して表面的な願いや思いなどではない、それは恐らくだが自分自身を確立させるものや己の根幹と成すもの、もはや魂そのものといっても過言ではないほどの強い願いや思いだろう。例えるなら自分が死ぬまで、いや例え死んでその身が滅んだとしても、不変で変わらずに今後も永遠に追い続ける、それくらい変えることのできない絶対的な願いや思いだ。だからこそ、その神の目を上手く扱えなかったり、思うように扱えない、扱いにくいと思うことは、それが何かが不安定になって揺らいでしまっているのか、そもそも神の目に込められた願いや抱かれた思いを忘れてしまっているのか、何かが勘違いとかで誤った願いや思いを抱いているくらいしかない」

 

「…」

 

瞬詠の説明にレザーは黙って聞き入る。瞬詠はアビスの魔術師達とヒルチャール達を睨みつけながら言葉を続ける。

 

「だから、もしもお前が神の目を上手く発揮できないというのであれば、それはお前が抱いている思いや願いが原因だ。もしそうなら、お前の心の中にある本当の想いや願いを思い出させれば、きっと神の目も本来の力を発揮する。俺の言っていることの意味は、これで分かったか?」

 

「……うん、わかった」

 

レザーは瞬詠の話を理解したようで、静かに返事をした。

 

「レザー、思い出せ。ありのままを。その神の目が現れた、レザーに取って忌まわしいあの日を。そしてその願いや思いを強く抱くことになった経緯の全てを。…ヒルチャール達やアビスの魔術師達の心配はするな、むしろ、さっさと神の目を完全に扱ってもらわないと困る。今、この場を切り抜ける第二の鍵は、レザー、お前に掛かっているわけだしな…レザー、お前ならやれる。なっ」

 

瞬詠はそう言いながら一歩前に出る。そして、後ろに立つレザーに向かってレザーを安心させるように笑いかける。

 

「瞬詠……」

 

「…さぁさぁ、頼むぞレザー。こっちは『役割』を果たしたんだ。そっちも『役割』を果たしてもらおうか。さもなきゃ、このままだとアビスの増援が来ちゃって最悪死んじゃうぞ。そんなのは、ごめんだろ?」

(…まぁ、俺としては……な。しかも俺の命は既に一度、とっくに”あの日”の”あの海”で失ったようなもんだし)

 

瞬詠の脳裏にとある情景が浮かぶ。それは周囲が徐々に暗くなっていく中、沈みゆく自分自身の身体を無理やり抱え込むように抱きしめた赤い眼帯を付けた身体中ボロボロで傷だらけの女性が、明るい方に向かって必死に手を伸ばしては水を掻いて水中を突き進んで行く光景であった。

 

「…はははっ」

(…いや、駄目だな。まだ死ぬわけにはいかない…俺は生かされたんだ。まだまだやることや、やらないといけないこともたくさんある。おまけに今やらないといけない事として、少なくともこんなふざけた事をさっさと終わらせないと…それになによりも)

 

瞬詠はそんな光景を思い出し、そして心の中でそう呟くと独りでに笑う。

 

「もはやここまで来たら、こんなことをしでかしてくれたあの暴走女の顔面を思いっきりぶん殴ってやんないといけないしな、さもないと俺の気が収まらん。今日久々にモンドでゆっくりと過ごす予定をぶち壊しにされ、千岩軍に追いかけられるわ、西風騎士団に襲われるわ、アビス教団やヒルチャール達に絡まれるわで散々な日になったからな……覚悟しろよ、刻晴の奴め」

 

瞬詠は吐き捨てるようにそう呟くと不敵に笑った。

 

「まぁ、とにかくレザー。頼んだぞ?…俺達がここで生きるのか死ぬのかが、それで決まる。かなり不安になるかもしれないが、レザー、お前なら大丈夫さ。きっと何とかなる」

 

瞬詠はそう言うと、手に持っていたアビスの氷の魔術師を槍のように振り回し始める。

 

「…」

 

レザーは黙って頷く。

 

全てはレザーが自分が本当に抱いた願いや思いを思い出すか否か、それによって決まる。

 

「…俺もレザーが安心して思い出せるように、出来る限りヒルチャール達やアビスの魔術師達が邪魔立てしないよう、何とかやってみるからよ」

 

そして、そのまま振り回すのを止めて槍のように構えると同時に瞬詠はそう言い放つと、残りのアビスの魔術師達とヒルチャール達を警戒するように見つめた。

 

「……あぁ、分かった。ありがとう、瞬詠」

 

レザーが本当の願いや思いを思い出すのが先か、それとも先にアビス教団の頂点辺りに位置する怪物、もしくはその怪物達が先か。それは分からない。だが、確実に言えることは今こうしている間にも自分達の身の破滅、もしくは死に果てるまでのカウントダウンが、刻一刻と着実に刻まれているということ。しかし、レザーは瞬詠の背中にそう言いながら、呼吸を整える。それは精神統一するためであり、全てはただ自分に課せられた『役割』を果たすべく集中するため。

 

「…オレ、オレは」

 

レザーは深呼吸すると、ゆっくりと自分の心臓部分に触れる。そして、その手を胸に添えるように当てると、まるで何かを感じ取ろうとするかのように意識を集中する。レザーは心の中で自分自身に問いかけながら、ゆっくりと瞬詠が言っていたその日、また自分の願いや思いについて考える。そして、その願いや思いを頭の中で巡らせる。

 

「…っ」

 

すると、ふととある記憶。

 

 

 

“初めて西風騎士団と関わった日の記憶”。”西風騎士団の大団長、‘ファルカ‘と出会った日の記憶”が、まず初めに鮮明に浮かび上がり始めたのであった。




次回はレザーの過去(西風騎士団の大団長ファルカ+西風騎士団の数名との出会いと交流、レザーの神の目)、そしてアビスの魔術師達戦・後編(レザー編)です。

尚、余談ですが現在のレザーの状況を補足説明をすると、今のレザーは元素スキルを放っても2、3回に1回は不発、元素爆発は一切出来ない状況下に陥っています。

また、気づいた方は気づいたかもしれませんが、実は今回は“弓矢”持ちのヒルチャールから“ボウガン持ち”のヒルチャールと描写を変更しています。実はアビス教団やカーンルイアについて調べ直していたのですが、その過程でヒルチャールについて見返したところ、今更ですがヒルチャールが使っていたのは弓矢ではなく、ボウガンであったという凡ミスをしていたというが判明してしました。そのため、後日にヒルチャールのその部分の描写を順次修正していきます。

そして前書きにて告知しましたが、再度になりますが璃月のキャラアンケートを置いてあります。締め切りは今月末までとする予定なので、興味のある方はご回答をよろしくお願いします。

追記1
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