資材がないのできつい…
全てが終わったとき、俺は大切なものを殆ど失っていた。
執務室の机上に置いてある写真立てを取った。
「なぁ、俺はどうすればいい…?」
そこには俺と涼月の笑顔の写真があった。
今は亡き涼月。
俺の愛した人。
俺は自責の念に駆られた。
記憶が蘇る。
涼月「提督!今何処にいるんですか!」
必死そうな声で通信が来た。
「俺はまだ作戦司令室だ。大丈夫、救援を要請次第すぐにシェルターに向かう。」
俺は嘘をついた。
今俺は足を鎮守府の倒壊した瓦礫に足を挟まれ自力で脱出することは出来なかった。
俺は自分の死を悟った。
後悔ばかり頭を巡る。
「すまない…涼月…」
すると突如、涼月の声が聞こえたような気がした。
幻聴だ、と思った。
涼月はすでに避難させたはずだ。
しかし、声はどんどん大きくなる。
近づいてきている。
涼月「提督…!提督!大丈夫ですか!?」
「な!?涼月!?避難したはずじゃ!」
涼月「心配になって見に来ました。それより今助けるのでじっとしててください!」
「すまない…有難う…」
数分後、無事助け出された俺は涼月の肩を借りるようにしてゆっくりと避難し始めた。
丁度鎮守府の外へと出た瞬間だった。
突如として航空機の音が聞こえた。
今この付近に艦載機を載せられる空母は居ない。
つまり敵だ。
そう判断した。
それと同時に狙いが俺であることも理解した。
深海棲艦の特徴として優先的に指揮官を狙う傾向がある。
前例として幾つもの鎮守府襲撃の記録では殆どの提督が死亡している。
涼月を巻き込むわけには行かない。
俺は自分を奮い立たせた。
艦載機はすぐそばまで迫ってきていた。
俺は涼月から離れ反対方向へ走り出した。
涼月のなにか言っているような声が聞こえたような気がしたが、今の俺には聞こえていなかった。
艦載機からの機銃の掃射音と爆弾の投下音が同時に響き機銃のたまが徐々に俺に迫ってきた。
「皆、すまない…俺は先に逝くらしい。未練しかないよ…」
思えば俺は生まれてから謝って、後悔してばかりだ。
自分らしく生きれなかったのかもしれないな。
そんな思いが駆け巡る。
俺は目を瞑った。
大きな爆発音と銃弾が肉を貫通するような音が響いた。
しかしいくら経っても衝撃は来ない。
ふと俺の手に何かが滴り落ちてきた。
目を開けると、俺の目の前には真っ赤な血に染まった涼月の姿があった。
倒れてきた涼月を、俺は呆然と受け止めた。
涼月「か…ヒグッ…ハ…」
苦しそうな声にならない声を聞き俺は我に返った。
「喋るな!何故!何故庇った!」
まるで子供のように泣き叫ぶ俺に涼月は優しく笑いかけてきた。
「貴…方が…無事なら…良かったです…」
俺は涼月を抱きかかえると全力疾走で避難シェルターへと向かった。
そこには医師も居るからだ。
足の痛みなど既に忘れてしまっていた。
…………
医師「残念ながら…私達の手ではどうしようも…」
提督「涼月を見捨てろってことか!」
医師「はい…残念ながらそういうことです。」
提督「高速修復材は!?無いのか!?」
医師「倉庫が完全にに破壊されております。それに…ドックも…」
俺は目の前が真っ暗になった。
黒いタオルを腕に巻きつけられた涼月を俺は外へと運び出した。
「お前と…初めて会ったのは彼処だったよな。お前は反抗的な態度を取ってきたのが懐かしい、それから色々なことがあったよな…………」
思い出が走馬灯のように駆け巡る
涼月「提督、私はあなたと会えて本当に幸せでしたよ?」
その言葉にまた俺は涙を流した。
「本当に…すまなかった…」
涼月「貴方は…謝ってばかりですね」
そう言って微笑む涼月の声はどんどん弱弱しくなっていっていた。
涼月「提督、もし私が…生まれ変わったら…私がどんな姿でもまた愛してくれますか?」
「そんなの…当たり前だ!絶対だ!だから…!」
涼月「ありがとうございます…これで…安心して…逝けます…」
…………
海軍は更に多大な犠牲を払いながらも相手の統率を上回る戦術で深海棲艦に勝利した。
…………
一年後
桜の舞う春の日差しの中で俺は石碑の前で酒を飲んでいた。
「涼月…お前が居なくっなってもう一年か…俺は大将まで昇格したよ…。俺は相変わらずお前を待っているさ。いつまでもな。」
そう言って俺は石碑に残った酒をかけた。
そして黙祷を捧げた。
帰り際にふと思い出したことがあった。
「そういやまた大規模作戦だ。今度は今度こそ、俺達の反撃さ。」
そう言って俺はその場を去った。
前から現秘書艦が小走りにこちらへ向かってくるのが見えた。
秘書艦「司令官!作戦についてまとめておきました!それから、今回参加される鎮守府の提督達が全員揃ったようです!」
「有難う。了解した。すぐに行こう。」
そろそろ現実編と提督編を同時進行でクライマックスに持って行きます。