ウィザーディング・ロイヤル 古き王家と穢れた血   作:ただの杖振り

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賢者の石編
魔法界の王子と穢れた姫


 シュロモ・メルフォティートは忘れない。

 

 ――炎に焼かれた家族の苦痛を。

 

 シュロモ・メルフォティートは覚えている。

 

 ――一族の晴れやしない無念を。

 

 

 だから、シュロモ・メルフォティートは決意した。

 一族に仇なした賊には然るべき報いを。

 そして自分の代で一族にかつての栄光をもたらすと。

 魔法界に現存する最古の純血、メルフォティート一族に栄光と繁栄をもたらさんと。

 

 

 

 魔法界最古の家系であるメルフォティート一族はシュロモが生まれて間もない頃に、まだ乳児だったシュロモを除き悉く虐殺された。

 シュロモはメルフォティートの虐殺を生き延びた唯一の男の子だ。故にウィザーディングワールドでは「生き残った男の子」と奇しくもヨーロッパを救った英雄と同じ称号で呼ばれていた。

 

 

 

「困りますシュロモ王子! 不用意に護衛も無しに出歩いてはお命の保障が!」

 

 護衛の闇祓い(オーラー)たちの呼び声をシュロモは無視してダイアゴン横丁の雑多な道を駆け抜ける。

 一族を裏切った下手人が誰か未だに解らない以上、不用意に独りになるのは危険だということは良く分かる。

 だけど、何となく今日は一人でいたい気分だった。

 

 行く宛も目的もなく、ただ一人になりたいから。そんな理由で走るシュロモに周りを見る余裕なんてなくて。

 シュロモは、自分と同じ背丈の子供にぶつかってしまった。

 出っ歯がチャームポイントの少女。

「きゃっ」

 可愛らしい悲鳴ともに少女は、両手に抱えていた大量の荷物を落としてしまった。

 

「ごめん、大丈夫?」

 ぶつかってしまった少女を転ばないように手を回すとシュロモは少女を支え立たせた。そして、地面に散らばった荷物に指を振るう。すると、荷物は独りでに浮き出し少女の手の中に治まった。

 汚れてはいないようだ。

 良かったと、シュロモは心の中で安心した。

「ぶつかって、すまない。周りを見ていなくてね。怪我はないか?」

「こちらこそごめんなさい。私も周りを見てなかったわショーケースに夢中で。――それより、さっきのは何!? 杖無しで魔法使ってるみたいだったけど! 私マグル生まれで、なにも知らないから本屋さんで教科書を読んだのだけどそんな技術どこにも載ってなかったわ!」

 捲し立てるように話し掛けてくる少女に、シュロモは何故か好ましい物を感じた。魔法に対する貪欲さは自身と共通する者がある。パーソナルスペースに、それも異性のそれに容易く踏み入り、顔を不用心にも近付ける姿も、何処となく微笑ましい。

 

「今のは杖無し呪文(ワンドレス・マジック)。私の、いや俺の故郷では杖は一般的じゃないから俺にとっては特別な技じゃないよ。もっとも、複雑な魔法はまだ杖なしじゃ無理だけど。外国から来たんだ、ホグワーツに留学しにね。俺はシュロモ。君の名前は? マグル生まれのお嬢さん」

 胸に手を当てると、シュロモはキザっぽく歯を見せて笑った。

「ごめんなさい私ったら挨拶も無しに長々と! 私はハーマイオニー、ハーマイオニー・ジーン・グレンジャーよ」

「気にすることはないよ。初めての魔法界にドキドキを抑えられないんだろう? 俺も同じだから分かるよ、その気持ち。自分の国以外の魔法界を見るのは初めてなんだ。ミス・グレンジャーは今は一人?」

 ハーマイオニーは、恥ずかしそうに顔を伏せた。

「その、……色んなことに夢中で、はぐれてしまったの。マクゴナガル教頭先生に案内してもらってたのに」

 紅潮する頬を見るに本気で恥じているだろう。

「奇遇だね。俺もだ」

 本当のところは違うのだ、シュロモは嘘をついた。

 少しでもハーマイオニーと一緒にいるために。

「マヌケな迷子同士、一緒に見て回ろう」

 シュロモの言葉に、ハーマイオニーは笑顔を輝かせる。

「いいの? ありがとう! 是非とも一緒に見て回りましょう!!」

 

 何故、初対面のマグル生まれと一緒にいたいと思ったのかシュロモにはわからなかった。だけど、一緒に過ごした時間は、家族が死んだあの日以降のつまらない日々を吹き飛ばす、楽しくてとても充実した瞬間だった。

 セピア色の記憶を吹き飛ばした鮮やかな時間。

 

 魔法界や、ホグワーツについて語る時間は楽しくあっという間だった。

 

 

「またホグワーツで会おう。ミス・グレンジャー」

 

「うん、また会いましょうシュロモ!」

 

 別れるのがとても名残惜しかった。

 だが、ホグワーツに通うならまた会える。

 

 

「逢引に割って入んなかったことは褒めてやるよ、ドーラ」

「あんなに楽しそうに話す姿を見たら、割って入ることなんて出来ないわ。さ、戻りましょう。魔法大臣がお待ちです」

 

 

 

 未だわからない、ホグワーツ生活。

 だけど間違いなく充実したものになるだろうと、シュロモは確信した。

 願わくば、彼女の隣にいられますように。

 

 




シュロモ・メルフォティート
『生き残った(生き残ってしまっ)男の子』
1980年7月10日生まれ

 エルサレム魔法界を統治する王族、メルフォティートの次期当主でありホグワーツに通う新一年生。エルサレム魔法界の成人15歳を迎えると第203代の当主になる。
 偉大なる大魔法使いソロモン王の直系で、歴代の『王』たちが遺した魔法を幾つも習得している。杖なし呪文(ワンドレス・マジック)を普通に使えるが、それは生まれた場所が杖文化圏内でないため当然の技能。
 幼い頃から優秀な家庭教師たちに魔法を師事した故、優れた魔法能力を有するお家チート。
 一族全員はもれなく惨殺された『エルサレムの悪夢』ただ一人の男の子なので、奇しくもハリーと同じく『生き残った男の子』と呼ばれている。いわばクーデターを生き延びた故立場と命が危ういので、ホグワーツに入学することに。国際魔法社会のVIPであるため、ホグワーツの外ではイギリスの闇祓いが護衛に付く。

※15歳になった時点で自動的に『王』を襲位しエルサレム魔法大臣に就任するこれが命を狙われる原因の4割を占めている。
※ニンファドーラ・トンクスが筆頭護衛でもう2人傍付き(使用人兼護衛)として警護しています。
※純粋培養で育ったのに、あまり異性に慣れてなく、不可抗力とは言え異性と触れ合い会話しちゃったから……。
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