ウィザーディング・ロイヤル 古き王家と穢れた血   作:ただの杖振り

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シュロモは箒が得意じゃありません。(乗れないとは言ってない)


早くハリーと仲良くさせたいけど、まだ仲良くなりません。登場するだけ


初めての箒訓練

「ついに来たぞ、シュロモ。飛行訓練の時間だ」

「ああ、ついに来てしまったなドラコ。不安で不安で仕方ないよ」

 木曜日。

 談話室の掲示板に

 

 飛行訓練は木曜日開始される。グリフィンドールとの合同授業だ。間違っても遅刻はせぬように

 

 とありがたくも寮監が殴り書いたと思われる走り書きが掲示されていた。

 

 飛行訓練――箒に乗る訓練が始まるとあってドラコはとても興奮していたのだが、シュロモの表情は昏い。

 箒の訓練を終えた暁に個人用の箒の持ち込みが許可されるというのに、何故そんな嫌そうな顔をするんだとシュロモに疑問を抱いたが直ぐに霧散した。

「そうか、箒がないんだった、か? 杖と同じで、箒が一般的じゃないんだ」

「あら? なら、エルサレムの魔法使いたちは何に乗って移動するの?」

 パンジーも興味津々と言った様子で、話しに入ってくる。ワクワク顔だ。

「魔法の絨毯か動物に乗っての移動がほとんどだよ。自力で飛ぶ達人が1人いたな。――私も杖があれば飛べなくはないが、才能がないらしく箒の様には飛べない」

「自力で飛べる方が僕からしたら凄いと思うけどな」

「ね、飛んで見せてよ」

「色んな魔法が干渉してくから城の中では無理。校庭とか訓練場とかならできると思うから、機会があれば見せてあげよう。と、言っても本当にうまくないよ? 箒で飛ぶのより劣る」

「道具無しで飛べる時点で、凄いじゃないか」

 

 シュロモとパンジー、そしてドラコはクラッブとゴイルを引き連れて談話室を後にすると、大広間へと向かった。朝食を食べるためだ。

 楽しみ、不安、羨望、期待、焦燥。

 

 4人の内で渦巻く感情は違うけれども、飛行訓練を待ちわびていることは共通していた。

 

 

 

「ねぇ、大丈夫なのシュロモ? 緊張し過ぎよ? たかが訓練なんだからリラックス」

 箒の乗るという行為は、予想よりもシュロモに緊張を強いるもので、シュロモは緊張のあまり朝食を食べれないでいた。食事が喉を通らないのだ。

「そうだぞ、シュロモ。パーキンソンの言う通りだ。たかだか訓練、クィディッチの試合じゃあるまいし、何も緊張する必要はないぞ。――ほれ、アイツらを見ろ」

 と言ってドラコはロンやシェーマスといった飛行訓練を心待ちにしているグリフィンドール生を指差した。

「あんな奴らだって緊張してないんだ。優秀である僕や君が、たかが訓練如きでそう緊張しなくていい。箒が下手くそだったしても、君は優秀な魔法使いだろ? お、郵便の時間だ。今日は何が届くかな」

 ドラコは分かり易いくらいに大きな声で話を逸らそうとした。

 ふくろう便の時間であり、たくさんのふくろうたちが大広間に飛んで来た。

 

 マルフォイ家のふくろうはいつも通り、大量のお菓子の包みを運んで来た。

 ドラコは包みを開けると、いくつかの菓子をシュロモと分け合った。

「カエルチョコレートがダースも入ってる、シュロモに半分あげるよ。――おっと、最高級七食アメだ。世界各国の高級料理の風味をランダムで味わえるんだ。とてもうまいぞ。これも君にやろう」

 ドラコの気遣いを、シュロモはありがたく頂戴する。

 

 と、そこで突然空中で炎が燃え盛り、中から不死鳥のフェニアが飛び出してきた。

 

 最初の数日は、ざわついていたが毎日のように突然現れて郵便物を運ぶ姿を見ると、人間は慣れるものでちょっと見惚れる者が出るだけで、もはや騒ぎにはならなかった。

 フェニアはくちばしに手紙を咥えていた。

 

 シュロモは手紙を受け取ると封を切って、中を読んだ。

 そして中身を全部見ると、怒りのままにびりびりに破り捨てた。

 

「誰からの手紙だい? 破り捨てるなんて」

「傍付きの闇祓い(オーラ―)からだ。今日飛行訓練があるのを知ってたらしく、とても無礼なことが書いてあった。またくもって腹立たしい、くそ」

 

 先程の緊張が嘘のようにシュロモはガツガツと朝食を食べた。

 

 

 親愛なるシュロモ様へ

 

  ホーキで飛べなくたっていいじゃん!

  気にすることはないよ、箒に乗れなくたって恥ずかしいことじゃないもん

 

 トンクス

   追伸! アタシは箒乗り上手いけどね♪

 

 

 あの闇祓い(オーラ―)の小馬鹿にした顔がありありと目に浮かぶ。

 

「フェニア、今度アイツから何か受け取ったらそのくちばしで突け」

 

 フェニアは、呆れたような顔をして、自分の羽に顔を埋めると自分で毛繕いをした。

 

 

 

 

 スリザリン生は、午後3時半の10分前には、全員集合し整然と並んでいた。

 

 よく晴れていて、少し強めの風が青々とした芝生をゆらゆらと揺らしていた。絶好の飛行日和である。

 

 そこへグリフィンドール生がやって来て、そして時間きっかりにマダム・フーチがやってきた。

 灰色の髪を短く切り揃えた妙齢の魔女で、鋭く黄色い鷹の眼をしている。

「こんにちわ、皆さん。何をぼさっとしてるんですか!」

 マダム・フーチは開口一番ガミガミ言った。

「いよいよ飛行訓練です。さっさと箒の左側に立ちなさい」

 マクゴナガル教授やスネイプ教授とは違った方向性の厳格な先生のようだ。

「左手を箒の上に出しなさい」

 

 みんなびしっと手を箒の上に出した。

 

「『上がれ』と言いなさい」

 

「「「上がれ!!!」」」

 何と奇蹟的なことにグリフィンドールとスリザリン、相容れない二つの寮の声が揃ったではないか。

 

 だが、上がれと言って直ぐに箒が上がったのは数名だけだ。

 ドラコ・マルフォイ。ハリー・ポッターの他に2、3人。

 シュロモの箒はちょっと動くだけでちっとも浮き上がらない。ちらりとハーマイオニーを見れば、ハーマイオニーの箒もどっしりと地についていて動く気配すら見せない。

 ハーマイオニーと目が合って、互いに苦笑した。

「毅然とした態度で言うんだ。杖までじゃないけど、箒も乗り手が肝心なんだ」

 すぐさま箒が上がったドラコは、熱心にシュロモに箒を教えた。

 はじめてシュロモに物を教えれることに、密かに舞い上がっているのか熱心に指導している。

「乗り手が不安がってるようじゃ箒は応えない。ましてや自信がなければね。自分を信じて『上がれ』って言うんだ」

 

「おーけい、ドラコ。やってみるよ」

 そこで、シュロモは家臣たちに命じる時のことを思い浮かべた。

 毅然と命令する自分。

 己が主人で、箒が家臣だと思え。

 

「上がれ」

 

 シュロモが毅然とした態度で言うと、箒はすんなりと上がった。

 遠くでチラ見していたハーマイオニーはあんぐりと口を開けて、パンジーは嬉しそうに笑みを浮かべた。ちなみに、パンジーは箒が古いのか一発成功とはいかなかったが二回目で成功させていた。

「な? 簡単だろ」

「ありがとう、ドラコ。感謝するよ」

 2人の友情はさらに深まった。

「ミスター・マルフォイ。素晴らしい教え方でした。スリザリンに5点」

 

「では、箒の柄をしっかりと握って箒に跨りなさい」

 マダム・フーチが次の指示を出した。

 

 生徒は皆箒に跨るとしっかりと柄を握った。

 マダム・フーチは正しく握れているか、チェックするために巡回を始めた。

「ミスター・メルフォティート。握りが甘いです、それでは飛んだ時に箒が思ったように動いてくれません。もっとしっかり握る様に」

 シュロモの場合は握りが甘いと指摘して――

「ミスター・マルフォイ。箒の握り方におかしな癖がついています。これでは高速飛行時に、予期せぬ曲がり方をして事故につながる恐れがあります。今すぐ正しい持ち方に直しなさい」

 ドラコの場合には、家で我流で乗ったが故に自己流が過ぎると、矯正された。

 

 物言いは鋭くずばっとしているが、指摘は的確であり彼女が箒乗りとして如何に熟達したプロであることがよくわかった。

 

「アイツら僕を笑ってる、許さないぞ!」

「まぁ落ち着けよドラコ。君の寛容な心が泣くぞ」

 

 

「さあ、いよいよ飛行します! 私が笛を吹いたら地面を強く蹴ってください。ぐらつかないように両手でしっかりと箒を押さえて2メートルくらいの高さを浮上したら、少し前かがみになってまた地面に降りるのです! いいですね! 笛を吹いたらですよ。それでは行きます――1――2の」

 そしてマダム・フーチは笛を吹いたのだが、緊張やら何やらでネビルは地面を思い切り蹴ってしまい、勢いよく飛び立ってしまった。

ミスター・ロングボトム!

 マダム・フーチは鋭く呼び付けた。

 

何をしてるんですか! ミスター・ロングボトム! 今すぐに降りてらっしゃい

 

 だが、ネビルは降りる気配を見せず、むしろ箒が暴れ出してネビルは振り回され始めた。

 

「落ち着きなさいネビル・ロングボトム! ミスター・ロングボトム!

 

 

 上空をしっちゃかめっちゃかに飛び回る箒。

 ネビルは落ちない様に必死に掴まるのだったが――。

「「きゃあああああああああ!!!!!」」

 箒から落ちて、女子生徒の悲鳴が響き渡った。

 

 だが運の良いことにネビルは、城壁の篝火にローブが引っ掛かったので、落ちずに済んでいる。

 

 だが、ローブが徐々に破けて。

 

 ネビルが落ちるッ! 

 

 誰もが思った瞬間。

 シュロモは箒を置いて飛び出した。そして素早く、杖を出すと握り締める。

「おい、シュロモ!」

 ドラコが呼び止めるが返事せず、シュロモは地面を強く踏んだ。

 すると、シュロモの体は浮かび上がり、空中を足場があるように蹴る。

 文字通り空中を蹴って浮遊すると、シュロモはネビルを抱き留めて地上に降りた。バランスを崩し、転んだが怪我はない。

 マダム・フーチはいち早く駆け付けると、ネビルとシュロモの怪我の具合を見た、二人とも無傷でネビルだけが気絶していた。

 空を落ちるショックで、気絶したのだろう。

「念の為、ネビル・ロングボトムを医務室に連れて行きます。ミスター・メルフォティート。見事な判断と飛行術でした。スリザリンに5点あげます! 私が医務室にいっている間、箒に乗ってはいけません。箒一本でも飛ばしたらクィディッチのクの字を見る前にホグワーツを出て行ってもらいますからね!」

 と、マダム・フーチがネビルを連れて去ると。

 

 どっとスリザリン生が集まりシュロモの周りで興奮して囃し立てた。

 グリフィンドールもさっきの光景を、指差してひそひそと喋っている。

「凄いじゃない! 今のが空を飛ぶ魔法なの?」

「なあ僕にも教えてくれよ!」

 パンジーとドラコが、いの一番に興奮して捲し立てる。

「残念だがドラコ、君は幼少期に浮かんだことはあるかい?」

「いやないが……まさか?」

「父上が単独飛行の研究をしていてね。単独飛行術は先天的な素質で幼少期には発現するらしい。それを訓練することで、何とか飛べるようになる。父上曰く七変化と一緒で、後天的に芽生えた試しはないそうだ」

「くそっ それじゃあ無理じゃないか」

 単独飛行の夢がついえたドラコは、やるせない気持ちのまま歩き出した。

 

「空を箒無しで飛ぶなんてすごいことよ。誰にでもできることじゃない」

「今日はたまたま上手くいっただけだよ。今までで飛ぼうと思って飛べた試しがない。全部の神経を飛ぶことに使うから何もできないし、箒か絨毯に乗って飛ぶ方が私には合ってる。それに、消耗も激しいんだ」

 

「おい見ろよ!」

 と、ふてくされて歩いていたドラコが地面に転がる何かを見つけて拾い上げた。

「ロングボトムのばあさんが送ってきた『バカ玉』だ!」

 ドラコは、『思い出し玉』を拾うと、ジャグリングのように遊び始めた。

「マルフォイ、それを僕に渡してくれ」

 ハリーは静かに言った。

 スリザリンも、グリフィンドールも話を止めてドラコとハリーの口論に注目した。

「なんだいハリー・ポッター。生き残った男の子! お怒りかい? ならロングボトムが取れるような場所に置いていくよ。そうだな、……木の上なんてどうだい?」

 ドラコの言葉にスリザリンはどっと笑ったが、シュロモは呆れた顔をした。また、始まったと。

 だがしかし、あまり人と話してこなかったシュロモはドラコを止めることができない。口論した経験がないので、止められないし、実のところ喧嘩に憧れているのだ。

 

「返せったら!」

 

「そうかい! なら取りに来いよ!」

 そう言うとドラコは箒に跨って空に飛び立った。

 箒乗りが得意というのは過言ではなく、手慣れた手付きで箒の柄をしっかりと握ると、地面を蹴ってあっという間に木の高さまで飛びあがった。

「勇敢なポッター君はここまで来れるかな!」

 ドラコはせせら笑った。

 マグルに囲まれて育ったハリーに、初めてで箒に上手く乗れるわけがないと思っていたからだ。

 

 だが、それはドラコの勘違いで。

「ダメよ、ハリー! 止めて、フーチ先生が飛んではいけないっておっしゃっていたでしょう!」

 ハーマイオニーが叫んだが、ハリーは無視した。

 

 ドクン、ドクンと高鳴る心臓と、湧き上がる衝動に身を任せてハリーは箒に跨って地面を強く蹴った。鮮やかに飛びあがると下で歓声が湧き上がった。

 

 ハリーとドラコが上で言いあってる。

 

 それを下から見上げながら、シュロモはハーマイオニーに話し掛けた。

「やぁ、ハーマイオニー。ご機嫌いかがかな?」

「彼ってあなたのお友達でしょう? 何とかできないの? 何とかしてくれたら嬉しいな」

「彼にショッキングな事実を教えちゃったからね。完全に八つ当たりだよ、俺にはどうしようもない。それより彼の父上は相当のシーカーだったようだがやはり箒の才能は遺伝するんだな」

 ドラコが曲芸飛行を披露し、それに追従して飛ぶハリーの、初めて箒に乗るとは思えない鮮やかな箒捌きを見ながらシュロモはしみじみと言った。

 飛行関連の才能は遺伝すると父の研究にあったがアレを見ると概ねあっているようだ。

 ジェームズ・ポッターの名シーカーぶりは、ホグワーツに飾ってあるトロフィを見ればよくわかる。

 ハーマイオニーも、『生き残った男の子』関連でハリーを調べた時、ジェームズの記録を調べたので箒の才能があることは知っていて、あまり驚いていない。

 それよりも、これ以上減点されたらどうしてくれようかという怒りが彼女の中で渦巻いている。

「……前に図書室で言っていたあなたのお父様の研究のことね。まったく、フーチ先生は飛んじゃダメっておっしゃったのにハリーってば一体何点減点されれば気が済むのかしら! 彼ってお馬鹿ね!」

「……あー、おそらくだが、ハリーが減点されることはないと思うよ」

 ドラコがぶん投げた『思い出し玉』が地面目掛けて落下するのを、ハリーが迷わず追いかけて急下降する様子を見ながらシュロモは言葉を続けた。

「箒も絨毯も才能がない身からしたら妬ましい才能だな――っと、とにかく彼が君たちに迷惑をかけることはないと思う」

「あら、どうしてそう言い切れるの?」

「それは君たちの寮監が――」

 ここで歓声が沸き上がって、シュロモの言葉が掻き消された。

 

 そして城の中から厳格で身内贔屓しないことで有名なグリフィンドール寮監ミネルバ・マクゴナガルが出てきたので二人は話しを中断した。

 グリフィンドール生の女子とロンがマクゴナガル教授に弁明するが、教授は聞き入れることなく城に大股で歩いて、その後ろをハリーが付いていく。

「ねえシュロモ。あれを見て、なんでハリーが減点されないと言い切れるの?」

「――すまん、ドラコがもの凄く凹んでいるから、またの機会に教えよう。忠告だが、あまりとやかくこの件を言わない方がいい。いいね? 俺の予想があっていればだが、ハリーとロンにとやかく言う必要はない!」

 そう言うとシュロモは、慌ててドラコの方に駆けていった。

 

「なぁドラコ。気にするなって。中々に見事な箒捌きだったじゃないか」

 シュロモはドラコの肩を叩いた。

「……ポッターに負けた! アイツ、マグルに囲まれてた癖に、ずっと箒に乗ってた僕よりも上手かった!」

 それが悔しくてたまらないのだとドラコは荒ぶっている。

「仕方ないさ。あいつの父親は優れたシーカーだったんだ。気にすることはない、君の方が勉学は優れている。箒が下手くそでもいい、君はそう言ったろ?」

「だが……! くそっ」

「落ち着けよ、ドラコ・マルフォイ。ドラコの飛びっぷりは凄かった、光る何かを感じたぞ。な、ミス・パーキンソン」

「えぇ、そうよ! きっと来年のシーカーはドラコに違いないわ!」

 パンジーとシュロモの本心からの言葉に、ドラコは少し気を取り直した。

「――本当にそう思うかい?」

 ドラコは問い掛けるように二人を見た。

「ああ。もちろんだとも」

「ええ、当然だわ」

 

 ドラコは、気を取り直すとスリザリンの談話室に戻った。

 

 その日食べた夕食は、ちょっぴりしょっぱいと感じたドラコであった。

 

―――――

 

Q ドラコが荒れた理由。

A 単独飛行が絶望的と知りショックを受けて、それで八つ当たりしたらハリーが箒上手くてアドバンテージが崩された二重ショックのダブルパンチがクリーンヒットしたから。

 

今回は不憫なドラコをお送りしました

 




 幼少期の魔法使いは、無意識に姿くらましをしたり物を浮かせたりできるという。そして、極稀に自力で飛ぶ者もいる。飛ぶというには拙いが、空中を浮遊することが出来た(・・・)者が極稀に生まれる。

 おそらく、魔法使いは皆空飛ぶ魔力も生来備わっているのだと考える。一部の適性ある者のみが幼少期に飛んでいたのだろう。
 ではなぜ成長すると飛べななるのか。幼少期に無意識下にやっていた複雑な制御を成長すると意識的にしなければならず、それは相当の至難な業故に飛べなくなるのだろうと推測できる。空中浮遊はもちろん速度、姿勢、行き先などを同時に制御しなければならず非常に難しい。魔法使いは箒に乗って空を飛ぶことを覚えた。箒(絨毯等)にたくさんの魔法をかけることで複雑な制御を肩代わりさせて、魔法使いの負担を極端に減らすことでようやく飛行を可能にした。箒や絨毯で飛ぶ才能の正体は、飛ぶ魔力への適性の強度だと推定できる。
 箒や絨毯無しで飛ぶには相応の魔法力と技量、そして幼少期に飛んだ経験が必要で、ソロモン王の他に杖の補助なしで飛んだ魔法使いは3人しかいないことからどれだけ難しくて熟達した天才にしか扱えない高等技能であることは疑いようがないだろう。杖のサポートを得てようやく「非常に少ない」レベルが空を飛べる。
 魔法使いは常々空に憧れ、大空を自由に飛ぶ術を模索してきた。空を飛びたい憧憬は、非魔法族にも共通していて――、地を這う者の宿命なのであろう。ちなみにだが、幼少期の飛行経験なくして杖の補助があろうと単独飛行に成功した例はまったくといっていいほど記録にない。

『単独飛行術 概論』――ヨハタン・ウルム・メルフォティート

※幼少期云々要するに舌の話と同じ。構造上、舌を丸めることが誰にでも出来る筈だが実際それが出来るのは生まれつ気出来る極一部。それと同じノリの理屈です。
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