ウィザーディング・ロイヤル 古き王家と穢れた血   作:ただの杖振り

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とんがり帽子の組み分け帽子

「良く来たなイッチ年生、こっちだほら。こっちに来い!」

 半巨人のハグリッドが一年生を、呼び集める。

 とても大きい毛むくじゃらな大男で、髭もじゃだ。だが、その奥にある瞳はつぶらで優しく光っている。

 ハリーと出会い再会を喜ぶハグリッドは、ちらりとハーマイオニーの隣に並ぶシュロモに目をやりウィンクをした。シュロモも、ハグリッドにウィンクを返す。

 それを見ていたハーマイオニーはシュロモに質問した。

 

「あなたあの人と知り合いなの?」

「実家のあれこれでちょっとね。彼はルビウス・ハグリッド。森番で、魔法動物のスペシャリストだ」

「へぇ、あなたが言うのならよっぽど凄いのね」

「言っとくが、俺が得意なのは魔法を扱うことで、魔法生物は門外漢だよ?」

「あら、けれどあなたとっても凄い動物を飼ってそうな気がするわ。あの二人は見逃してたみたいだけど、私あなたの杖の柄にキリン(・・・)と不死鳥が彫られてるのをこの目で見たもの。代々受け継いでるってことは、一族に所縁(ゆかり)があるんじゃないかしら?」

「……なんのことかさっぱりわからないな」

 鋭いハーマイオニーの指摘を、シュロモは誤魔化しながら集団について行く。

 

 

 だが、ハーマイオニーの質問は、小舟に乗っても続いていた。

 

「ねぇ、あなたの杖もそうだし、あなた私に何か隠してることあるでしょ? 苗字(ラストネーム)を聞いてもはぐらかすし――」

「お、あれを見ろ!」

 シュロモは分かり易く、別な場所を指差して誤魔化す。

「誤魔化そうとしてもそうは……わああぁ」

 あれを見ろ、と言われたら向きたくなるのがヒトの悲しき(さが)であり、その悲しき習性は魔法族であろうと変わらない。

 何もないだろうなと思いつつ、シュロモの指差した先を見つめると――。

 

 ハーマイオニーは口を両手で押さえて、素直に驚いた。

 

 

 驚くほど透明で深い湖の先に、丘の上にそびえたつ大きな城があったのだ。

 聖堂のような建築物と、中世の城を合わせたゴシック調の巨大建築で、天空を突き刺すように尖塔が幾つも伸びている。

 窓からこぼれる光が星のように城を明るく照らしている。

 美しくも荘厳な、魔法使いたちの学び舎。

 

 ハーマイオニーは、シュロモへの追求を忘れて、これから7年間過ごすことになる第二の家に見入っていた。

 

「これらがスリザリンが我らに見せたかった城か……素晴らしいな」

 

 

 

 

 ボートを降りた新入生たちは、厳格そうな老婆ミネルバ・マクゴナガル教頭に引き連れられ、広大な城の中を歩いていた。

 

 

「ようこそホグワーツへ。さて、みなさんはこれからこのドアをくぐり上級生たちと合流しますが、その前にまず、皆さんがどの寮に入るか決めなければなりません」

 

 勇気溢れる騎士道精神のグリフィンドール(獅子の寮)

 

 努力と忠誠を重んじる、献身のハッフルパフ(穴熊の寮)

 

 叡智求める、探求者のレイブンクロー(鷲の寮)

 

 そして、知恵と狡猾さを重んじる気高き団結のスリザリン(蛇の寮)

 

 偉大なる4人の創始者が遺した4つの寮に組み分けされるのだとマクゴナガルは、新入生たちにそう言った。

 

「どれもとても素晴らしい寮で、素晴らしい魔法使いや魔女を輩出してきました。ホグワーツにいる間は寮が貴方がたの家になります、そして寮生はみなさんの家族と言えるでしょう。良い行いをすれば寮の得点になり、逆に規則を破ったりすれば減点されます。年度末に、一番得点の高い寮には優勝杯が与えられますので、皆さん是非とも頑張るように。くれぐれも、寮の名誉を損なうようなことをしないでください」

 鋭い目付きで、新入生たちを見渡すと、マクゴナガルは少しだけ離れた。

「ねぇ、シュロモ。あなたはどの寮に入ると思う? そもそもどうやって寮を決めると思う? もしかしてテストをするのかしら? テストだったらどうしよう」

「組み分けの方法はてんで見当がつかないな。俺は多分、レイブンクロー……もしくは――。まあけど君が入りそうな寮なら検討がつくな、ミス・グレンジャー。君はレイブンクローかグリフィンドール、この二択だよ。組み分けだけど、テストはない、と思うな。マグル生まれがいるわけだし、それでは公平さに欠く」

「あら、そう? けどそうね。私も入るならレイブンクローかグリフィンドールだと思うわ。何をするのかしら、緊張してきたわ」

 

 と、そこでマクゴナガルが戻ってきた。新入生全員が揃っていることを確認すると、宜しいと頷き。 

「では、組み分けの儀式が始まります。ついて来なさい」

 歩きだした。

 

 マクゴナガルが近付くと、ドアが一人でに開き、大広間の中が明らかになった。

 

 大広間は、それはもう素晴らしい空間だった。

 長い机が4つ並べられ、上級生たちが寮ごとに分かれてところ狭しと座っている。

 空中には何百ものロウソクが浮かんでいて、机を爛々と照らしていた。

 壁には、ホグワーツの校章が彫られていて、4寮の動物たちは今にも飛び出してきそうなまでに精巧に彫刻されていた。

 

 そして何よりも驚くのが、大広間の天井だ。

 

 本来なら石造りの天井が広がっている筈のそこには、それはもう見事な満天の星空が広がっていた。

 

「星空じゃなくて、天井よ。魔法で空が広がっているように見せているだけ。ホグワーツの歴史にそう書いてあったわ」 

 とはハーマイオニーの説明である。

 魔法のかけられた天井を見て、シュロモは遥か遠くの故郷にある、己が城を思い浮かべた。

 

 とても素晴らしい魔法に、多くの新入生たちが釘付けになるが、ハーマイオニーとシュロモはいちはやく、先生たちが座るテーブルの前に、3脚椅子が置かれていることに気が付いた。

 そして、その椅子の上には古くてくたびれた山高帽子が置かれていた。

 怪しいなと思って目を凝らしたシュロモは、直ぐに驚くことになる。

「驚いた。あの帽子、魔法がかけられている。しかも、あの魔法は、――なるほど犬猿と言われはするが、仲が良かったのか」

「どうしたの? そんなに驚いた顔をして」

「いやなに、何でもない。それよりも、何か始まるぞ」

 

 場違いな帽子に、新入生たちの視線が自ずと集まる。

 帽子がぴくりと震えると、つばの部分が口のように動き出し、帽子が急に歌を唄い出した。

 

 

私はきれいじゃないけれど

 人は見かけによらぬもの

 私をしのぐ賢い帽子

 あるなら私は身を引こう

 山高帽子は真っ黒だ

 シルクハットはすらりと高い

 私はホグワーツ組み分け帽子

 私は彼らの上をいく

 君の頭に隠れたものを

 組み分け帽子はお見通し

 かぶれば君に教えよう

 君が行くべき寮の名を

 

 

 グリフィンドールに行くならば

   勇気ある者住まう寮

    勇猛果敢な騎士道で

     他とは違うグリフィンドール

 

 

 ハッフルパフに行くならば

   君は正しく忠実で

    忍耐強く真実で

     苦労を苦労と思わない

 

 

 古き賢きレイブンクロー

   君に意欲があるならば

    機知と学びの友人を

     ここで必ず得るだろう

 

 

 スリザリンではもしかして

   君はまことの友を得る

    どんな手段を使っても

     目的遂げる狡猾さ

 

 

 かぶってごらん!恐れずに!

 興奮せずに、お任せを!

 君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

 だって私は考える帽子!

 

 帽子が歌い終えると、先生たちだけでなく、新入生上級生も皆拍手した。ハーマイオニーも、そしてシュロモも拍手を送る。

 

「組分けの方法が分かったね。被れば良いんだ」

 ハーマイオニーの緊張が少しだけ楽になった。

 

「では、皆さん。名前を呼ばれた生徒は前に出るように、帽子を被せます。アボット、ハンナ!」

 

 ABC順に生徒が呼ばれ、次々と組分けされていく。

 そして遂に、ハーマイオニーの番になった。

 シュロモはレイブンクローに組み分けされることを祈った。シュロモは自分に、グリフィンドールの適性があるとは思っていなかったし、入れるとも思っていなかったからだ。

 もし、グリフィンドールに組み分けされれば一緒の寮で過ごすことは叶わない。

 無論、どの寮に入ろうとも、シュロモはハーマイオニーとの交流を絶つつもりはないが、出来れば同じ寮で過ごしたいというのが偽りなき男心である。

 だが、運命は無常であり、帽子は悩み悩み抜いた末

「これは難しい。ならば……グリフィンドール!!」

 ハーマイオニーをグリフィンドールに組み分けしてしまった。

 

 シュロモはがっかりしたが、決して顔に出さず、シュロモに向けて笑みを浮かべるハーマイオニーに微笑み返した。

 残念ではある。非常に、物凄く。

 だがあまりショックに沈んでいられない。

 ついにMの番が来た。

「メルフォティート、シュロモ!」

 シュロモは一歩前に出た。

 

「メルフォティートだって? あのエルサレムの?」

「ポッターと同じ『生き残った男の子』か」

 マグル生まれの新入生を他所に、ざわめきが広がった。

 遠く離れた異国の地の悲劇とはいえ、悲惨さと時期、そして被害者の家柄もあり、グレート・ブリテンに広く知れ渡っている。一歳にも満たない男の子を除いて一族みな殺されたのは、あまりに悲惨でブリテンの英雄ハリー・ポッターに近しい何かがあった。

 だが、純血の、それも由緒正しく裏事情に精通する聖28一族は、別の意味でも驚いていた。

 

「何で、あのメルフォティートがヨーロッパに?」

 長い歴史の中で起きたヨーロッパ魔法族とメルフォティート一族との確執は、多くの血を流した悲惨な歴史であった。両者、特に後者の恨みは大きいはずで、安全を求めるにしてもアジア圏に亡命するだろうと聖28族は予想していた。

 なのに、メルフォティートの御曹司、魔法界の若き王子は、今こうしてホグワーツの地を踏み、新入生として立っている。

 

 魔法史に目を通したであろうハーマイオニーが、驚きの目を向けてくるのに、シュロモは胸に手を当て表情を歪めることで謝罪の意を示した。

 ハーマイオニーはぷいっとそっぽを向いた。

 許してもらえなかった。

 

 気を取り直して椅子に座ると、マクゴナガルは帽子を被せた。

「どの寮に入っても応援していますよ、シュロモ」

 とても小さな耳打ちにシュロモは笑みを浮かべる。

「ありがとう、ミネルバ」

 ばさりと帽子が被らされた。

 たちまち視界が真っ暗になる。

「ふ~む。非常に難しい。実に難しい、実に実に難しい。君たち一族がこの城に来る日を創始者たちはずっと待ち望んでいたよ。エルサレム城の太古の秘術を学び、君たち一族に師事したスリザリンは特に。――話はそれたが、君には創始者たちが望む素質がすべてある。どの寮に入っても君は間違いなくやっているける」

 優しくも深い声が頭の中に響いてくる。

 そして、帽子は心の深いところを見透かしている。

 

 溢れんばかりの自信と。

 

 溢れんばかりの不安がせめぎあい、自負と誇りが入り混じった心の奥底を帽子は視ている。

 

「勇気もある、野心もある。それに才能に満ち溢れている。帽子としては、スリザリンかレイブンクローの2つを奨めたい。もちろん君が望めばどの寮でも輝くことが出来るが、レイブンクローに入れば君は更に魔法の道を究められるだろう。そして、スリザリンに入れば君は間違いなく偉大な魔法使いになれる。……グリフィンドールも君が望めばその門戸を大きく開けて歓迎してくれる。だけど他ならぬ君が無理だと思うのに入れるなんて酷なことをこの帽子はしやしない。――私にゆだねてくれるのだね、ならば――宜しい」

 

 匙は投げた。

 

 己が心の内はすべて見せた。

 

 帽子ならば、己を相応しき道を拓いてくれる。

 

スリザリン!!!」

 

 ハリー程とは言えないが、少なくない歓声がスリザリンから上がる。

 

 何故、メルフォティートがヨーロッパに来たのかは分からない。だが、由緒正しい純血であり、ともすれば聖28一族よりも歴史が古く権威のあるメルフォティートの王子を獲得できたのは、スリザリン寮の格と名誉を高めることに他ならない。

 

 スリザリンと言われて、悲しそうな目をしたハーマイオニーにウィンクをすれば、ハーマイオニーは気付いて苦笑した。

 

 握手を求める先輩方に応じ握手をしながら、シュロモは席に着く。

「シュロモ・メルフォティート。同じ寮になれて光栄だよ」

 ブロンドヘアをオールバックにした少年が、握手を求めてきた。

 顔は青白いが表情は凛としていて、尖った顎が特徴の少年。

「こちらこそ。ミスター?」

 シュロモの疑問に、ドラコはしまったと、すぐさま名乗った。

「失礼。ドラコだ。ドラコ・マルフォイ。僕のことはドラコと呼んでくれ」

「ドラコ。こちらこそ、私のことはシュロモで構わないよ」

 

 ドラコの手を取り、シュロモとドラコは固い握手を交わした。

 

 

 

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