ウィザーディング・ロイヤル 古き王家と穢れた血   作:ただの杖振り

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みんな大好き小悪党フォイの登場です


ドラコ・マルフォイ

 ドラコ・マルフォイはシュロモとの握手を解くと、シュロモの佇まいをありありと観察した。

 

 『生き残った男の子』

 

 奇妙なことに、名前を言ってはいけない例のあの人を打ち倒したグレート・ブリテンの英雄と同じ異名を持つ少年は、ドラコからしても唸るほど佇まいや所作が洗練されていた。

 同じ10歳でありながら、既にエルサレムの新たなる指導者『王』に就任することが決まっているだけはあり、椅子に座る背筋はピンと伸びていて美しい。

 シュロモに流れる血の権威と影響力を鑑みれば、シュロモと仲良くすることはマルフォイ家のグレート・ブリテンにおける地位はおろか国際魔法社会での地位をも盤石にしてくれるだろう。

 シュロモがホグワーツに入学することは事前に父から知らされていたので、さして驚きはない。

 だが、同時にマルフォイは父から、もしシュロモがスリザリンに入ることがあれば、何かと便宜を図り良くしてあげるように言われていた。

 

 だから、ドラコは慎重に言葉を選んで声を掛けた。

 

「父上から、君がスリザリンに入ったら何かと手伝ってあげるように言われていてね。まるっと違う異国の地で、慣れないことが多いだろうし、困ったことがあれば遠慮なく僕を頼ってくれシュロモ」

 ドラコの申し出を、シュロモは嬉しそうに受け入れた。

「それはとても助かるよ、ドラコ。まるっと文化が違うから、教えてくれると非常に助かる。まったく君のお父さんといい君といい、マルフォイ家には感謝しかないよ」

 打算抜きに、ドラコの申し出はシュロモにとって嬉しい物だった。

 ルシウス・マルフォイとファッジ大臣が尽力したおかげで、シュロモはロンドンで安全に暮らすことが出来ている。

 ルシウス・マルフォイとは直接の面識はないが、いずれ会ったらお礼をしなければとシュロモは決意した。

 

 家族愛の強いドラコは、敬愛する父が褒められて嬉しくなった。

「あとで父上に手紙で伝えておくよ。どうやら僕たち、良い友人になれそうだ」

「私もそう思うよ」

 二人の友情が芽生えた瞬間だった。

 

 

 二人の交流が温まってきたところで組分けが終わり、背が高い老人が立ち上がった。

 髭と髪は真っ白で、足下に届きそうなまでに伸ばしている。二度折れ曲がった鼻の上に掛けている半月メガネから覗く瞳は理知的で、生徒たちを優しく見守っていた。

 ホグワーツ魔法魔術学校校長のアルバス・ダンブルドアだ。ダンブルドアが立ち上がる瞬間、ちらりとシュロモを見て微笑み、それから何事もなかったかの様に立ち上がった。

 

「ホグワーツの新入生の諸君、入学おめでとう! 上級生たちはおかえりなさい! さて、歓迎会を始める前に儂から二言、三言、言わせていただきたい。ではいきますぞ。そーれ! わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! *1 以上!」

 

 ダンブルドアのおかしな挨拶に大広間がどっと沸いた。

 スリザリンの席ではまばらであったが。

「あれがダンブルドアだよ。父上はいつもまともじゃないって言ってる。けど、確かにイカれてるな」

「少し、だいぶ個性的なことは認めるが、あまり悪口は感心しないな。間接的にでは、あるがダンブルドア校長が頷いてくれたから私はこの地に来たんだから」

 とシュロモは言うが、あれが校長としての挨拶ならば――。

 残念ながらイカれてると言わざる得ない。

 シュロモにとってはそうかと思ったドラコは、シュロモの肩を叩きテーブルに注意を促す。

「ご馳走の時間だ。食べよう」

 ダンブルドアの独創的な挨拶に気がとられているうちに、いつ間にやらテーブルに並んだ金の皿にご馳走が配膳されていた。

 

 シュロモは、それに驚くことなくナイフとフォークを使い、優雅に食事をした。

 洗練されている中々のマナーに、観察していたドラコは感嘆の息を漏らす。

「中々のものじゃないか。シュロモの故郷では、ナイフやフォークは馴染みがないと聞いていたから、教えてあげるつもりでいたけど、見事なものだよ」

「護衛の闇祓いに教わったんだ。少なくとも7年の大半をここで暮らすからね。慣れないと食事すらままならないだろう? 私は食事が好きなんだ」

「それは言えてるな」

 下品にならない程度に、シュロモとドラコは談笑して友誼を深めた。

 

 そこで、一つ小さな騒動が起きた。

 

 何気なくシュロモは手にしたナイフを置いて、離れた大皿に載せられた七面鳥の丸焼きに手を伸ばした。そして、指を軽く何度か揺らす。すると、大皿の手間に置いてある丸焼きを切り分ける用のナイフと皿の上の丸焼きが宙に浮かんで、ナイフが丸焼きをシュロモが食べたい大きさに切り裂いた。切り分けられた肉は宙に浮かび、残りの丸焼きは大皿の上に戻った。

 シュロモが再び指を振るうと、切られた肉が皿の上に乗る。それをシュロモは美味しく食べ始めた。

 食べながらシュロモはフォークを持った方の手の小指をくいくいと動かした。

 それだけで、別の大皿に載っていたサラダやフルーツが、シュロモの皿に飛んで来た。

 

 それを見ていたドラコたち新入生の他、上級生たちも等しく驚いていた。

 

「嘘、杖なしで魔法を使ってるわ!」

 

杖なし呪文(ワンドレス・マジック)だと!? 熟練の魔法使いにしか使えない高度な魔法な筈なのに、新入生がどうして!?」

 

「杖がないだけじゃなく、呪文も言ってないや、すげぇ!」

 

 その驚きの光景は、スリザリン生だけでなく、他の寮も、先生たちも見ていて、大広間全体がざわついている。

 

「これが父上が言っていた常識の違いってやつか」

「高度な魔法を使うときは杖を使うけど、物を取るくらいなら詠唱も杖も必要ない。その代わりに箒がてんでダメだけどな」

「あァ、そう言えば絨毯があるんだっけか?」

「そう、絨毯に乗るか魔法動物に乗るかの二択だ」

 あらかじめ事前情報と、予備知識のあったドラコは驚きはしたが、取り乱すことはしなかった。

 ちょっと驚いた後、普通に食事を再開し会話をしている。

 

 周囲の喧騒をシュロモはBGMに、ドラコはこんな奴と最初に仲良くなったんだぞという優越感のエサにして食事を楽しんだ。途中、ゴーストたちがシュロモに挨拶しに来ると言う、追加の珍事件が発生したがメルフォティートも学校のゴーストも相応に古いので何か縁があったのだろうとドラコは気にしなかった。

 

 そんな喧騒をダンブルドアは爆竹音を二度打ち鳴らすことで鎮めると、席から立ち上がった。

 すると、お皿の上にあった食事が、すべて消えてしまった。

 

「さて、みなよく食べてよく飲んだじゃろうから、お腹が膨れて眠くなる前にもう2,3言注意事項を述べさせてもらおうかの。まず一年生のみなに連絡じゃが、校内にある『禁じられた森』に入ってはいけませんぞ、許可なくの。そして、これは何人かの上級生にも当てはまることじゃ」

 

 そこでダンブルドアは一度言葉を切って、グリフィンドールに座る何人かの上級生をちらりと見た。

 

「では次の注意事項じゃが、管理人のフィルチさんから授業の合間で魔法を使わないようにと注意があった。悪戯グッズについても同様じゃ、廊下で決して使わんようにの。持ち込み禁止リストがフィルチさんの事務所に貼っておるので目を通すとよろしい。ああ、それと二週間後にはクィディッチの予選があるから、寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡するのじゃ。よいな?」

 

「――では最後にじゃが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい四階の右側の廊下に入ってはいけません。そこには恐ろしい苦しみと死がまっておる。以上じゃ」

 

「君に言われた手前気が引けるけど、やっぱり僕にはイカれてるとしか思えないな」

「今後の友情の為に私は聞かなかったことにするよ……」

 二人は、こそこそを顔を寄せて囁いた。

 

「さーて、みなもそろそろ眠くなった頃じゃと思うが、ふかふかのベッドに飛び込む前に校歌を歌いましょうぞ!」

 ダンブルドアは立ち上がると声を張り上げる。

 そして、杖を細かく振るうと杖の先から金の光のリボンが飛び出して、くねくね空中を這うと文字になる。

「思うがままに歌うが宜しい、メロディもリズムも自由じゃ。――では、()くぞ。いちにのさんはい!」

 

 生徒だけでなく、教授陣も――大広間の全員が立ち上がると一斉に歌い始めた。

 

ホグワーツ ホグワーツ♬

 ホグホグ ワツワツ ホグワーツ

 教えて どうぞ 僕たちに

 老いても ハゲても 青二才でも

 頭にゃ何とか詰め込める

 おもしろいものを詰め込める

 今はからっぽ 空気詰め

 死んだハエやら がらくた詰め

 教えて 価値のあるものを

 教えて 忘れてしまったものを

 ベストをつくせば あとはお任せ

 学べよ脳みそ 腐るまで♪

 

 

 飛び切り遅いのは、グリフィンドールの赤毛の双子で、ドラコは伝統的なイングランド民謡風に歌っていた。

 かくいうシュロモは、自由に歌えとのことなので軍隊行使曲風に歌い終える。

 赤毛ツインズブラザーズがとにかく遅く、ダンブルドアは二人が歌うのに合わせて指揮を執った。

 二人が歌い終えるとダンブルドアは、はちきれんばかりの拍手をした。

「音楽じゃ」ダンブルドアの瞳から涙がこぼれる。「音楽まさに何ものにも勝る魔法じゃ。素晴らしい……おっと、歌っとる間に眠る時間になってしもうた。そ~れ、駆け足じゃ! ほれほれ」

 

 スリザリンの監督生、コロント・ワンダースウィングは、立ち上がると声を張った。

 雪原のような銀髪の魔法使いで、背が高い。

 深く落ち着いた声で、騒がしくなった大広間でも彼の声は良く響いた。

「栄えある新たなスリザリンの諸君! 我らが(スリザリン)の談話室まで案内する、ついて来たまえ」

 女性の監督生と共に、コロントは一年生を先導する。

 レイブンクロー生やグリフィンドール生が階段を登るなか、コロントは一年生に注意を促した。

「間違えて階段を上がらないように。スリザリンの談話室は地下にある。ついでに言うが、ホグワーツの階段はじっとしていない、下手に登ると大変だぞ。さて、こっちだ」

 そう言うと、コロントは階段を降りていく。

 

 

「純血に栄光あれ」

 コロントがそう唱えると、何もなかった壁が動いて、中から蛇が彫刻された扉が出てきた。

 扉の中に入ると、荘厳な地下室がスリザリンたちを出迎える。

 

 天井や壁に窓があり、窓ガラスの向こうには湖が広がっていた。

 天井を見ると、丁度オオイカが通り過ぎるところだった。

 

 沈没した船の中にいるような、幻想的な落ち着いた品のある空間。

 緑色のランプが、談話室の闇を照らしている。

「見ての通り、ここは湖の地下だ。時折、水中人(マーピープル)やオオイカの泳ぐ姿が見える。あそこにある棚に、偉大なる先輩方が我らの為に残した知恵がある。スリザリンの誇りを穢さぬように、勉学に励みなさい。……さて、もう夜遅い。荷物はもう寝室に届いているから――もう寝なさい。良い夢を」 

 

 割り振られた寝室は、二人部屋であったが、とても広く調度品も立派で高級ホテルの様な内装だった。

 シュロモとドラコは、同じタイミングでベッドに飛び込んだ。

 ベッドはとても柔らかく、雲の上はこんな感じだろうと想像させる程ふかふかで体を優しく包み込む。

 

「おやすみドラコ」

「おやすみシュロモ」

 

 二人はあっという間に眠りに落ちた。

 

*1
原文はNitwit! Blubber !Oddment! Tweak! であり正確に訳そうとうするならば、(アホ馬鹿間抜け、泣き虫、変わり者の未熟者!)といきなり罵声を浴びせるキチガイ爺になる。ユーモアがどこかズレてる魔法族の例に漏れない、偉大魔法使いなりの気を紛らわすユーモアなのだが、いきなり日本読者が読むと困惑するので意訳されたのだろう。作者は、この訳を非常に秀逸な訳だと思っているので某社へのリスペクトとしてそのまま流用する。




スリザリン談話室の資料が少なすぎて……。

二人部屋……ウルトラスイートな内装ということにします。
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