ウィザーディング・ロイヤル 古き王家と穢れた血   作:ただの杖振り

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魔法薬のマスター

 シュロモがハーマイオニーと魔法薬学の教室に入った時、既にドラコはクラッブとゴイルを引率し、シュロモの分の席を確保して座っていた。

 

 ハーマイオニーは、すたすた歩きグリフィンドールの集団の中でたまたま空いていたハリーの隣に座った。

「こんにちわ、ハーマイオニー」

「こんにちわ」

 ハーマイオニーは、そう言うと教科書を広げ始めた。

 

「ありがとうドラコ」

 シュロモはドラコに礼を言うと、ドラコの左隣に座った。その直ぐ後ろにはパンジーが座っていて、いつものメンバーが固まっている形だ。

「どういたしましてシュロモ」

 

 ドアを乱暴に開け放つと、コウモリのような黒装束の男が入って来た。

 

 土気色の顔でお世辞にも健康とはいえないが、目がギラギラしている。髪は黒くねっとりとしており、肩まである長髪の前髪を左右に分けていた。

 漆黒のローブに黒髪、黒尽くしでまさにコウモリのような出で立ちの男性こそ、スリザリンが寮監のセブルス・スネイプ教授その人である。

「我輩の授業では杖を振ったりなどという馬鹿げたことはやらん。速やかにしまいたまえ。――このクラスでは魔法薬の調合という微妙な科学と緻密で芸術的な技を学ぶ。良いかな?」

 

 そこで言葉を区切ると、スネイプは後ろを振り返った。

 隈が少しある目でギラギラと生徒たちを見る。

 

「諸君はこれでも魔法かと思うかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち上る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……これらを諸君が真に理解できると我輩は期待しない。だが、伝授してやろう。一部の素質ある、選ばれた者に――」

 

 ドラコとシュロモを一瞬だけ見るとスネイプは言葉を続けた。

 

「名声を瓶の中に詰め、栄光を醸造し、死にさえも蓋をする技を。我輩が今まで教えてきたウスノロ共よりましであるならばの話だが」

 ノートをひたすら取るハリーにスネイプは目を付けると、猫撫で声を出した。

「ところで、諸君らの中には少々自信家がいるようだ。有名だからと言って、我輩の授業など聞く必要がないと。……ミスター・ポッター。アスフォルデルの球根の粉末にニガヨモギを加え煎じると何になる?」

「分かりません、先生」

 ハリーの隣でハーマイオニーが手を上げた。

 だが、スネイプはそれを無視するとハリーをせせら笑った。

「有名なだけではどうにもならんらしいな。ならばミスター・ポッター、ベアゾール石を見つけてこいと言われたら何処を探す?」

 ハーマイオニーが限界まで手を伸ばすが、スネイプはまたもやそれを無視する。

 ドラコが笑う中、シュロモはこの問答の意義が分からず、傍観していた。

「分かりません。ハーマイオニーが分かってるようですから、彼女に聞けばどうですか?」

「黙れポッター。慇懃無礼な態度でグリフィンドールから一点減点。……なるほど、我らがスターは教科書を開くことすらしなかったようだ。名声と実力が釣り合っていないと悲惨だな、ポッター」

 スネイプは、ハリーから目を離すと、シュロモをまじまじと見た。

「さて、ミスター・メルフォティート。我らがスリザリンのスターにも同じ質問をしよう。ミスター・メルフォティート、アスフォルデルの球根の粉末にニガヨモギを加え煎じると何になるか分かるかね?」 

「……生ける屍の水薬だったと思います」

 そこでスネイプは初めて感心したかのような表情を浮かべると、うっすら微笑んだ。

「……ベアゾール石を見つけてこいと言われたら何処を探す?」

「ヤギの胃の中です」

「ほうほう。ならば最後の質問をしよう。ミスター・メルフォティート、モンクスフードとウルフスベーンの違いは何かね?」

「違いはないです。どちらも同じトリカブトですから。それよりもスネイプ先生、何故このような質問を?」

 

「失礼したなミスター・メルフォティート。君もポッター同様名声に溺れて現を抜かしているのでは、と邪推したのだよ。スリザリンに5点与える。――ところで諸君、何故今のを板書しないのだ? 諸君にとってもこれが簡単な質問であったというのなら話は別だが?」

 スネイプの言葉に、一斉に羊皮紙と羽ペンを動かす音が重なった。

 スネイプはその音に重ねるように声を張り上げた。

 

「今の問答で諸君らの大体のレベルを推し量ることができた。二人一組でおできを治す簡単な薬を調合してもらおう。教科書143ページに載っている、諸君らの腕でも辛うじて作れるはずだ。ペアを作ってさっさと作るがよい」

 

 ドラコはパンジーと組み、クラッブとゴイルのウスノロコンビはコンビでペアを組んだので、シュロモはセオドール・ノットと組むことになった。シュロモとドラコの持ちつ持たれつ故に目立つコンビの影に隠れているが、中々に優秀な生徒で寡黙であり、女子の間で密かに人気のある男子である。

 スネイプが、マントを翻しながら教室を巡回する中、2人は黙々と調合を続け互いにフォローしあいながら一番早く完成に漕ぎつき1人5点ずつ与え、さらに素晴らしい出来であることに10点ずつ与えた。

 

 2人の他に才能を見せたのは意外なことにドラコであり、素晴らしい手際であることをスネイプが讃え、みなに手本とするように説明していた、ちょうどその時に事件は起きた。

 

「御覧の通りに、ミスター・マルフォイの茹で具合は最良であることが分かったであろう。諸君には、これを手本に――」

 グリフィンドール生の鍋が吹き飛び、一人が大怪我を追った。

 

 素早く爆発物を検分し、その優れた洞察力と論理力で原因を見抜いたスネイプは声を張り上げて怒鳴った。

大馬鹿者!! 大方、鍋の火が上がらぬうちにヤマアラシの針を入れたな!?」

 スネイプは杖を振ると、零れた劇薬を一点に集めて消滅させた。

 

 劇薬をもろに浴びたネビルの顔には見るにも痛々しそうなオデキがぶくぶく広がり涙を流している。

 

 スネイプは忌々し気に舌打ちすると、ネビルを医務室に連れて行くようにグリフィンドール生に告げると、矛先をハリーとロンに向ける。

「何故ヤマアラシの針に気を付けろと注意しなかった? 彼が失敗すれば自分が有名になれるのかと思っていたのか? 傲慢なポッターの態度に、グリフィンドールから10点減点」

 

 クラッブとゴイルを手伝ったり忙しくも、充実した時間であり、初めての週の最後に相応しい知を学ぶことができた。

 

 

 

 非常に優秀な教授なのだが、依怙贔屓が過ぎるとはシュロモは思った。

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