ウィザーディング・ロイヤル 古き王家と穢れた血 作:ただの杖振り
「マグルの駅に溶け込ませるなんてよく考えたな?」
「そうでしょそうでしょ」
シュロモと、シュロモの護衛役である
ピンクのショートヘアの女性で、スタイルが良く革ジャケットにデニムとスタイリッシュなファッションを決めていた。マグル的に見ても似合っているしカッコいい。
その横を歩くシュロモも、まだあどけなさが残っているとは言え、ハンサムでフロックコートを着こなすスタイルも相まってとてもカッコ良かった。
容姿端麗で、ファッションセンスも良い男女が並んで歩く様は、良くも悪くも行き交うマグルからの注目を集めている。
「どうしてこんなことするの?」
「こんなことって?」
首を傾げるニンファドーラに対して、シュロモは周りを見渡して更に疑問を深めた。
息を深く吸えば、鼻孔を擽るは緑の香りと川の匂い。
すぐ左側からはリージェンズ運河のせせらぎが、右や前方からは道を往く自動車の喧騒が耳の奥の鼓膜を揺らしている。
「なんでわざわざこんな人目につく場所を白昼堂々歩いて駅に向かうのかを聞いてるんだ」
シュロモとニンファドーラの2人は、徒歩でキングス・クロス駅に向かっていたのである。
「安全な移動手段が徒歩だからだよ。箒に乗って移動しても少ない人数で警護するのは無理だもん。マグルの乗り物を使う案もあったけど仕組みが複雑なようで実は単純だから魔法を掛けやすいって師匠に却下されたし。移動キーを作って移動するわけにもいかないし、かといってキングス・クロス駅の周りでは姿現わしが出来ない。……だから徒歩で向かうことになりました」
「あ、でも安心して。マグルも警護についてるし、あと一人護衛がいるから御身の安全は私が必ずお守りします。……?」
おどけて言うドーラであったが何やら違和感を感じて押し黙る。
シュロモが慌てて周囲を見渡すと、周囲の様子がいつの間にやら一変していた。
あれだけの喧騒がいつの間にやら鳴りを潜めて、人の気配がまるっと無くなっていた。
自動車はおろか人っ子一人綺麗サッパリ消えている。
「ねぇ、ドーラ。この感じってまさか?」
一瞬のうちにロンドンがゴーストタウンと化したことにシュロモはある懸念を抱いている。
「ごめん、ドジッた。チベットの鏡面魔法だ」
ニンファドーラがそう言った瞬間、何処からともなく閃光が飛来してきて、ドーラはそれを杖を振って跳ね返した。
「兎に角逃げましょう?」
「激しく同意」
ドーラはシュロモと一緒に駆け出した。
「ここだッ」
ドーラはそう叫ぶと、何もない虚空に杖を向けた。
ちょうど同時に、バチンと弾ける音がして渦巻く何かが現れた。
それは、完全なヒト型になる前に、杖の前で押し留められた。ドーラはレイピアで突き刺すように杖を突く、すると渦巻く何かは吹き飛ばされた。
「流石は闇祓い!」
「たまたまうまくいっただけッ 全部は無理!」
仮面を被った魔法使いが4人、次から次へと姿現わしして呪文を唱えた。
色とりどりの閃光が杖の先から放たれて、シュロモを狙うがドーラがそれを杖を使って逸らす。逸らされた呪文は、アスファルトや街路樹に跳ね辺り火花をまき散らしたり道路を穿った。
ドーラがお返しにと無言で、杖を振るい赤い閃光を放った。
閃光を防ぎきれず一人が姿勢を崩した。その、瞬間をシュロモは逃さない。
すかさず杖を出すと、振り返ってその魔法使いに呪文を唱えた。
「
走りながら放たれた呪文は、見事に魔法使いに命中しその動きが止めて、そのままの姿勢で魔法使いを転倒させた。
「お見事!」
「どうも、それより、姿くらまししないの!?」
走りながら、シュロモは質問する。
「誰かを守りながら戦って! それでッ、一緒に姿くらましできる自信がアタシには、ない、から、ね!」
後ろから飛んでくる呪文をすべて防ぎながら、ドーラは無理と告げた。
むりくりやったらバラけてしまう。
バチン
大きな音がすると、木陰から山羊の仮面を被った魔法使いが飛び出してくる
「
飛んでくる緑の閃光を、ドーラはシュロモの襟首を掴んで一緒に仰け反ることで躱してみせた。
杖を消すとシュロモは、右手で空中を押す。魔法使いは見えない力に押されて体制を崩した。
無防備になった魔法使い。シュロモが手招きすると、相手の手から杖が弾かれて地面に転がり――。
ドーラは最後の止めとして、杖をくるくる回した。
杖を失った魔法使いに防ぎようがなく、勢いよく吹っ飛ばされて魔法使いは丁度その後ろで呪文を唱えようてしていた男とぶつかりもろともリージェンズ運河に落ちた。
大人2人が川に落ちた水音が聞こえると、シュロモとドーラは示し合わせたかの如く走りを再開した。
ふと気になり後ろを見たシュロモは一度前を向くと、さっき見た光景が信じ切れずもう一度見た。
しかし、目に映った真実は変わらず。
「ドーラ! ふ増えてる!」
4人の暗殺者の内3人を倒したから残り1人の筈が、いつ間にか3人に増えていた。
「知ってる! 兎に角前を向いて走って! 背中はッアタシが絶対に、守るから!」
シュロモと、そしてシュロモを守る邪魔なオーラを纏めて潰そうと何十もの呪文が放たれた。
幾重もの呪文の光線を、ドーラはすべて打ち消したりあるいは弾き返した。
呪文だけでなくゴミ箱やベンチ、街灯までもがピンポン玉のように飛来する。ドーラが杖を振ればゴミ箱は川へ吹っ飛び、ドーラがベンチに杖を向ければベンチは燃えて消失し、ドーラが杖を鞭の様に振れば街灯はバウンドしながら暗殺者たちの方へと跳んでいった。
しかし、戦闘は激しさを増すばかりで埒が明かない。
橋に差し掛かった時、ドーラはブチ切れた。
「あぁあ!!! もう埒が明かない。シュロモ、さきに行って! ケリを付けるから!」
ちょうど遠くにキングス・クロス駅のレンガ造りの駅校舎が見える。
「分かった!」
そう言って走り去るシュロモを尻目に、ドーラは橋の端に杖を突きたてた。
「
青白い火花の波紋が広がると、橋の真ん中らへんまでが爆発して砕けた破片が宙に舞う。
ドーラは杖を2度振った。1度目で破片一つ一つが鋭く尖ったナイフに変わり、2度目でそのナイフが追って来る暗殺者に向かって飛んで行った。
「うごっ!」
バチン
悲鳴を背に、ドーラは姿くらましした。
そして橋を渡り終えたシュロモの隣に姿現わしをした。
「凄い呪文だね!」
「まだ安心できない!
ドーラは後ろを向くと、杖を構えた。
閃光が漏れ出、シャボン玉のように白い波紋が広がる。
「姿現わし対策かッ」
「苦手だから、保たない! 兎に角ッ、走る」
手こずってはいるが、当初の目的であるキングス・クロス駅は目前だ。
魔法で作られた閉ざされた空間からどう抜け出すかが鍵だが、幸いなことに激しい魔法の応酬で、魔法の空間に徐々に綻びが生じ始めている。
許容できる魔力を超え、閉ざされた世界が綻んでいる。
――そして。
「ここが世界の果て、ですか。……はぁ…はぁ」
キングス・クロス駅を睨みながら、シュロモは息を切らす。
800メートル近い距離を休みなしで魔法を使いながら走ったのだ。体の出来上がっていない10歳には非常に酷な体験だった。
「多分ね――魔法の防御がしてあるから、魔法の空間はここで終わり。一気に壊そう……準備は良い?」
だがドーラは、流石は闇祓い《オーラ―》と言ったところか、殆ど息を切らしていなかった。
魔法力もさることながら体力の鍛え方も違うようだ。
「……はあ…はあ。もちろんだとも」
シュロモは、杖を
「じゃ、いくよ。3――2――1、はい」
ドーラも構えると、2人は息を合わせて。
「「
同時に炎のような光線が噴き出し、見えない何かにぶち当たって壮絶に火花を散らす。
空間が激しく燃え上がり、目がくらむような閃光を放つと――周囲にマグルの喧騒が戻った。
風が吹き、緑に色と匂いが戻り、世界に命が吹き込まれている。
窮地は脱したようだ。
「マズイ、このままじゃ出発の時刻に遅れちゃう。ダッシュ!」
ドーラのせいで、再び走る為になった。
シュロモがホグワーツ特急に、ギリギリで乗る羽目になった理由を知る者は少ない。
こうして、シュロモはホグワーツに向かうのであった。
ちなみに、ドーラはお詫びの印に元気爆発薬を買い与えたのだが、それのおかげで、ハリー相手に存分にカッコつけられたのは言うまでもない。
オリジナル呪文集
チベットの鏡面魔法
色 分類:闇の魔術ヘックス
効果:対象を鏡面(鏡、窓ガラス、水面)を介し、閉ざされた世界に誘う闇の魔術。閉ざされた空間を作成するので使用するのに相応の力量が必要で、生き物がいないし匂いや風がない。激しい決闘を行う際に、使用されることがある。魔法に対し脆いので、魔力量が許容量を超えると世界は崩壊する。
※ダンブルドアの秘密から輸入してでっち上げた魔法。
姿現わし防衛呪文
詠唱「プロテゴ・アぺリス(空間の護り)」
色 白い泡 分類:チャーム
プロテゴの派生呪文で、姿現わしから防衛するための魔法。詠唱すると、杖の先から白い泡状の波紋が広がり、広がった範囲内の姿現わしを出来なくする。
簡易呪文であるため効果は薄いが最低でも数分は持続する。ホグワーツ城やエルサレム城、魔法省で使われているのと同種の魔法と言う設定。