ウィザーディング・ロイヤル 古き王家と穢れた血   作:ただの杖振り

9 / 14
魔法界における十字軍遠征(作中設定)

 エルサレムに眠る魔法の知識を当時のフランス純血やドイツ純血が欲し、多くの魔法使いを同伴させた。結果、略奪と殺戮が起き、メルフォティートは3人にまで減った。
 魔法史上初の世界大戦と評されている。これが起きた結果、たくさんの魔法(姿くらまし/姿現わしetc)がヨーロッパだけでなく世界中の魔法界に浸透したので、何とも言えない。


友からの忠告と、シュロモの決意

「ねぇシュロモ。ここの呪文なんだけど――」

「すまないハーマイオニー。先日の変身中の課題なんだが、君に見てもらいたい箇所がある」

 シュロモとハーマイオニーは和解した。

 

 シュロモは、ハーマイオニーに抱いていた後ろめたい感情をすべて清算し、ハーマイオニーはシュロモに抱いていた不満を解消させ、2人は晴れて友達として交流を重ねていた。

 まだ4日しか経過していないが、図書室での逢引きは実用的であり、またシュロモにとってもハーマイオニーにとっても刺激的で魅力的な時間となった。

 宿題を教え合ったり、他愛のない雑談をしたり……非常に楽しくて夢のような時間である。

 

 だが、それは目立っていた。

 

 魔法界で最も高貴な家系の『王子』と、学年一の秀才と陰で評判の『穢れた血』の逢引きは、本人たちにとってひっそりとしているつもりでも、否応なしに注目を引いていた。

 

 学校の中で、密かな噂話として広まり、そしてそれは排他的で同胞愛の強い蛇の耳にも届くのであった。

 

 

 

「悪いことは言わない。シュロモ、穢れた血との交流は今すぐに絶った方が良い。君の為にならない」

 シュロモが談話室で読書をしていると、ドラコが開口一番にそう言って近付いて来た。

 ドラコが、シュロモの読書の邪魔を明確にするのは非常に珍しい光景だ。互いに互いを敬い尊敬しあってるが故に、ドラコが趣味を害することはこれまでなかった。その逆も然りである。

 

 だが、ドラコは珍しいことにシュロモの趣味を邪魔し、義憤に燃えた瞳でシュロモを見ていた。

 

 ドラコの差別的蔑称と、それが指し示す相手が容易に想像でき、シュロモは読書を止めてドラコの顔を見た。

「どうしたんだドラコ。急にそんなことを言い出すなんて、らしくないぞ? 私の貴重な学友を友に貶して欲しくはないのだが」

 ハーマイオニーを貶され、シュロモは不快な気持ちになったが、それを隠してドラコに務めて穏やかに話し返した。

 だが、ドラコの表情は晴れるどころかますます曇り、真っ赤になった。

「僕は君を思って言ってるんだ!」

 怒鳴らないように自制するが、それでも決して穏やかではない声音でドラコは言った。その言葉に嘘はない。

 本気でシュロモを案じてることが伝わる故に、シュロモは黙って話を聞くことにした。

「図書室で君が穢れた血と仲良くしているのを見たと言ってる奴がいる。勘違いされるぞ、……君が、その……あー」

「ミス・ハーマイオニーに恋してる?」

 言い辛そうにしていたドラコの言葉を繋ぐと、ドラコは再び口を開いた。

「……そうだ。これ以上悪い噂が広まる前に交流を絶て。そうすれば僕の力で揉み消せる。今ならまだ取り返しがつく」

 ドラコの目を見て、シュロモは小さく噴き出した。

 まったくどうしてドラコは良い奴なんだろう。

 

「なら、交流を絶つ必要はないな。噂は真実だ」

「な!?」

 ドラコは絶句し、聞き耳を立てていたスリザリンも驚く顔をした。

 衆目で断言してみせるとは、――それが何を意味するか分からないほどシュロモは愚かではない筈だ。

 

「私はホグワーツに安寧と保護を求め入学した。そして、私には一族を再興させるという夢もある。だから、私は卒業するまでの間に一族に迎える妃を探さないといけないんだ」

「そ、それなら僕が紹介してあげようじゃないか。父上に頼んで縁談を組んでもらうことだって出来るぞ! それで解決だ。穢れた血で身を穢す必要はない!」

「血の貴賤を問うならば、我が一族にとって王の血が流れぬ者は皆等しく下民だよ?」

 

 そう告げるシュロモの目は冷ややかで、初めて見せるシュロモの表情にドラコはたじろいた。

 下民と穏やかな表現を選んだが、メルフォティートが掲げる主義からしたら、王の血を引かない者は純血だろうとマグル生まれだろうとマグルだろうと、そして魔法動物であろうと等しく下等生物なのだから。

 

「残念ながら身内に迎え入れられるほど私たちと君たちの歴史は平和じゃなかった筈だ……と言うと意地が悪過ぎるかな。私は気にしていないからな」

 

 平和じゃなかった……、そうシュロモの口から語られた瞬間――談話室は一気に静まり返った。

 

 1099年、魔法史に記された最初の世界大戦が起きたが、グレート・ブリテンの魔法族は何もしていない。

 グレート・ブリテンの魔法族は静観を決め込んでいた。

 グレート・ブリテンは多大な(ホグワーツ城の魔法等)を受けておきながら、何もしなかった(・・・・・・・)

 

 シュロモが、ただ1人だけ生き残ったメルフォティートが言い放った言葉は、ドラコを黙らせて、聞き耳を立てていたスリザリン生を凍てつかせるのに十分な重みを秘めている。

 

 一瞬で静まり返った談話室を見渡すと、シュロモは苦笑して気にしていないと言葉を付け足した。

 

「君たちが聖28一族だからといって責任を感じる必要はないよ。魂や誇りは守っても、叡智は独占すべきでなかった。王の血を引かねばヒトに非ず、そんなふざけた思想を妄信していたんだよ? 私たち(メルフォティート)は今、自分たち(メルフォティート)の手によって絶滅の危機にある。十字軍がなくても、『王国』はどの道滅んでいたさ」

 あっけからんとシュロモは世間話をするかのように軽い調子で言った。

 永い魔法史上で唯一成立した魔法使いのための中央集権国家『王国』の崩壊を、シュロモは必然であったと断言する。

 それに対する意見など言える筈がなく。

「――もしあの『悪夢』がなく、純粋な見聞を広める目的での留学なら君たちの中から妃を選んでいたと思う。みんな、優しい人ばかりだ。だけど、今メルフォティートに余裕はない。私以外全滅した今、他国の純血を一族に迎える訳にはいかないんだ。そのことは君たちにも通ずるだろう?」

「……言わんとすることは分かるけど、ならば自国の純血がいるじゃないか。なんでわざわざグリフィンドールの穢れた血……グレンジャーを選ぶ?」

 穢れた血と言った瞬間、流石に我慢が限界なシュロモが目を細めたので、ドラコは渋々と言った様子ではあるがグレンジャーと呼び変えた。

 外国が無理ならば、自分の国の純血を娶れば良いのでは? ドラコの新たな提案も、シュロモは一刀両断に切り捨てた。

「自国の血統なんか益々論外だ。誰が裏切り者か分からないし、危機に乗じてわが身大事に逃げ出す輩の血など迎えてたまるものか。図々しい、向こうから乞うてきてもこっちから願い下げだ」

 エルサレム魔法界を担う純血たち……賢人階級(メルバーダ)は10年前にこぞって逃げ出した恥知らずの集団だとシュロモは思っている。

 恩知らずで、愛国心の欠片のない薄情者の血を入れるなどシュロモには耐えられない。

 

 シュロモは、確固たる決意を滲ませて、ドラコに断言した。 

 

「兎に角、とれる選択肢は一つだ――他国のそれも第三国のマグル生まれを娶ること。それも先祖に恥じぬ思慮深き才女を一族に迎え入れる。当て嵌まる魔女は……ハーマイオニー・ジーン・グレンジャー只1人。『王』を仰ぐ者を、『王家(מלכותי)』は種族問わず歓迎してきた。故に、マグル生まれだろうと大した問題にならない――納得してもらえたかな? 私の掛け替えのない友、ドラコ」

 

 ドラコは、自分の目を真っ直ぐ見据えるシュロモの目をじっと見た。

 ドラコを視るシュロモの目には迷いはなく、覆しようのない覚悟の炎が揺らめいている。

「つまり君は聞き入れるつもりがないと言うことだな? 僕の忠告を無視して、友情が解消されるとしても……君はグレンジャーを取ると? スリザリンを敵に回す覚悟があるということか?」

 敢えて脅すような物言いでドラコは言うが、シュロモの表情に変化が見られない。

 覚悟に微塵も影響を与えられなかったのだ。

「言葉を選ばずに言うならその通りだ。私の心は、彼女に初めてあったその日に決まっている。……視野狭窄に陥ってるのかもしれない。だけど、私は自分の気持ちを信じる。例え、――ドラコ君との友情が解消されるとしても……スリザリンでの居場所を失うとしても、私は自分が見初めた宝を諦めたくない」

 

 無視できない沈黙が走る。

 ドラコは何度か口を開けては閉じるを繰り返し、言いたいことを整理する。

 

「君と間近に過ごして、君はレイブンクローの方があってるんじゃないかと思ってた」

 

 魔法に対する貪欲さ。

 名誉より知識を欲するその姿勢は、蛇的ではなく鷲的行動である。

 

 シュロモと行動するうちに、ドラコのそうした思いは強くなっていった。

 だが、それはドラコの思い違いだったのだ。

 

「だけど思い違いだったね。シュロモ、君は間違いなくスリザリンだ。臆面もなくこの場で断言した狡猾さ、……きちんと筋道が立っている理屈を僕たちは無碍にできない。それに君のグレンジャーに対する執着心はまさしく(スリザリン)的だね。――わかったよ」

 毒蛇のように狡猾的で、大蛇のような執着心を持ち、蛇のように理知的である、その精神は間違いなくスリザリンだ。

 

 ドラコは心底悔しそうに言った。

「君の勝ちだ、シュロモ。正直言って納得しかねるが理解はしたし、承服はした。君の決意が固いことは分かったし覆らないこともね。――だからこの件について諦めるよシュロモ。寮に迷惑をかけない間は、僕は君の関係に金輪際口出ししない。君がどこの誰と付き合おうが、聖28一族(ヨーロッパ魔法族)と関係しようがないことだ。僕との友情よりも、君が迷わずにグレンジャーを取ったことが僕には悔しくてたまらない」

「ありがとうドラコ。君の広い心と、蛇の寛大な精神に感謝する」

「ということで手打ちにしましょう、監督生(・・・)。この分からず屋は友達の言葉も聞き入れやしない頑固者です。それに他所のお家事情に首を突っ込むべきじゃない」

 

 その言葉に、壁に背を預けながら本を読みふけっていたコロントは、その手に持つ本をばたんと閉じると顔を上げてシュロモとドラコの2人の顔を見つめた。

 そして億劫そうに口を開く。

「私は由緒ある純血じゃない、単なる杖振り(ワンドスウィンガー)に過ぎない。監督生と言っても殆どお飾りの様な者、私の言葉に権力はない。君の言葉こそが、この寮の意思だ。と言っても君は納得しないのだろうな。はぁ、……スリザリンは個人の交流関係にまで関知しない。ホグワーツの模範と、スリザリンの良識に反しない範囲なら関わるな。これでいいな、諸君?」

 そう言うと、コロントはスリザリンの談話室にいる生徒を、一人一人見つめた。

 隈塗れで血走った目でぎょろぎょろ見つめられ、生徒たちはつい飛び上がってしまう。

間違ってもスリザリンに招いたり、グリフィンドールの席に行くようなはしたない真似だけはしてくれるなよ? 」

 

 わざわざシュロモの耳元に口を近付け、低い囁き声でそう言うとコロントはやることは終えたとばかりに寝室に引っ込んだ。

「監督生としての仕事は果たした。友情の確認は、当人同士だけで済ましたまえ」

 捨て台詞を残して。

 

「君の面子を潰して気遣いを不意にしたのだが、私とドラコの関係は続くと期待してもいいかい?」

 シュロモが、ドラコの顔色を伺うように言うと、ドラコはしょうがないなという顔をした。

 内心少しどころかかなり嬉しいのに、すました表情をしている。

 

 シュロモの友人は今のところ、全員素直じゃないようだ。

 

「あぁ、いいとも。正直、僕との友情よりも女を取ったことにわだかまりを覚えないと言えば嘘になるけど。僕と君は友達だとも。グレンジャーのことはまったく認めないけどな!!! 突っかかってこない限り僕から関わることはしない。これが僕にできる最大限の譲歩だ」

「それだけでも嬉しいよ。正直言うとこれが初恋で、生まれて初めて人を好きになったんだ」

「は!? 嫁云々を初恋なのに言ったのかい!? それであれだけの啖呵と歯の浮くようなセリフを……」

「何かおかしいことでも?」

「……いや何でもない。それより、課題についての話をしよう」

 頭が痛くなったドラコは、話しを変えて課題についての話題を提示した。

 

 

 そんな、ドラコの様子を見てスリザリンは渋々だがシュロモの奇行に目を瞑ることに従った。

 相手が半純血ならば、寮をあげて叩き潰す所存ではあるが、間違いなく聖28一族よりも血が確かな高貴な血族相手ならばそういうものだと受け入れるしかないのだから。

 




メルフォティート家の選民思想

「王の血を引かずんばヒトに非ず。我らが血を前に、すべては等しく卑賎である」
 ソロモン王の血を引く己らのみがヒトたる存在にして至高の魔法使いであり、それ以外は非魔法族であろうとケンタウルスや水中人(マーピープル)といった存在やドラゴン含めて等しく下賤な下等種族であるという凄まじいまでに傲慢な思想。ただある意味では平等であるといえ、純血であろうと他国の王族だろうと平民であろうと知恵を乞われては拒絶して、逆に見所があれば半人であっても奴隷であっても一族と婚姻させ迎え入れ知恵を授けた。
 屋敷しもべ妖精もマグルも、魔法動物もメルフォティートの思想に基づけばどの種族も例外なく隷属階級なので使用人として扱ってきた。

 その傲慢な思想が国内の魔法使いたちの不満の温床となっていて、十字軍遠征の間接的な要因となった。結果的には、初代ソロモンから続いた王国の統治が1099年に崩壊したが、十字軍派兵がなくても王国は滅んでいたと考える魔法史学者は多い。かくいうシュロモも、十字軍は崩壊を早めただけで12世紀には滅んでいたと断言している。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。