盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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決戦の地に

 

 明けの砂漠のアジトに停泊するアークエンジェル。

 

 開かれたハッチから入ってくるのは、コンテナを抱える“二機のモビルスーツ”である。

 

 ストライクと、“黄赤色のジンハイマニューバ”の二機が、次々とコンテナをアークエンジェル内に積み上げていく。

 最後のコンテナを置くと、ジンハイマニューバは“真っ赤に染められた右腕”を使い、コンテナの上部を開け、中からいくつかの資材をとりだす。

 突如、そのジンハイマニューバのコックピットが開くなり、中からパイロットが顔を出した。白い髪をなびかせる少女―――ハイータ・ヤマムラである。

 

「とりあえず、プレディザスターのパーツだけ出しておきますね~!」

「お~う、助かるぜ嬢ちゃん!」

 

 そこに立っていたマードックがそう返事を返すと、ハイータは頷くとストライクと協力しつつ、他のパーツを取り出していく。

 

 それを見ていたロマとナタルの二人。中破状態であった輸送機からの“搬送”作業はつつがなく終わりそうであり、ナタルは持っていた端末に何かを打ちこんでいる。

 黙ってみているロマの必要性は、ポッと出のコーディネイターを相手に周囲が“安心”できるようにだ……かといって、モビルスーツに乗っているわけでもないのでなんの意味があるのかとも思うが、やはり“飼い主”がいるのが重要なのであろう。

 

「やはりモビルスーツが増えるのは助かりますね」

「私もそう思うよ。今の私はモビルアーマー乗りだからな……」

「大尉がモビルスーツに乗ったほうが良いのでは?」

 

 そんなナタルの質問に笑みを浮かべる。

 

「私がジンを扱うことは可能だが、ハイータにプレディザスターは乗せられんさ、私用にチューンされているしな……付け焼き刃ではどうにもならんさ」

「コーディネイターが使えない機体を、扱ってるんですか?」

「ハイータに操縦が無理なわけではないがな、何事も適正さ」

 

 そんな言葉に、ナタルはそういうものか、と納得。

 ハイータと共に来た他の補給部隊の面々も、アークエンジェルのスタッフと共に作業を続けているようだが、いざ見るとほとんどが整備士であり、アズラエルがどこを心配して送ってきたのかよくわかる。

 損傷したプレディザスターを扱うのに不安感もあったので、助かるというものだ。

 

 ストライクとジンハイマニューバの二機が、作業を終えたのかパイロット二人が降りてくる。

 

「終わったようだな」

「ええ、では大尉。私は艦長に報告へ」

「頼んだ」

 

 去っていくナタルを見送り、待っているとキラとハイータの二人が近づいてきたのを認識。

 

「お疲れ様だ」

「ハイータさんのおかげで早く終わりました」

「あ、いえいえ、私なんてとても……キラ君、ストライクの扱いが繊細で驚きましたよ」

 

 感謝するキラに、謙遜するハイータ。コーディネイター二人、早くも打ち解けてくれたようでロマとしては安心である。

 バナディーヤで入手した補給物資と、アズラエルから送られてきた補給物資。

 しばらくアークエンジェルも安泰であろう。

 

「さて、昼御飯にしよう……すぐに“作戦開始”だ」

 

 そう言うと、ロマは歩き出す。

 

 ―――決戦の時は近い。

 

 

 

 

 

 

 バナディーヤの街にてハイータと合流した後、アークエンジェルに辿りついた夜、ロマは艦長室へとやってきていた。

 先に居たのはマリュー、ムウ、ナタルの三人。

 入るのはすっかり“保護者”扱いと化しているロマ。一時的に行方不明になっていたキラとカガリ、お付きのキサカ。そしてハイータと大所帯。

 机に座るマリューを前に、軽く敬礼をするロマ。

 

「ただいま帰艦いたしました」

「大尉、ありがとうございます。さて、色々と整理しなきゃいけないことがあるんだけれど、まずはその……」

 

 三人の視線がロマの“仲間”であるハイータへと向けられる。

 

「ハイータ、紹介を」

「あ、うんっ……ハイータ・ヤマムラ少尉であります!」

 

 そこから話を始めるが、要はアズラエルの命令により補給に来た。だが、ほとんどが墜とされ現在残っているのは中破した輸送機とモビルスーツが一機のみ。困ったことになったので、ハイータが一人でバナディーヤの街に向かい……あとはロマに話した通りである。

 それを聞いて、頭を抱えるマリューと唖然とするナタルとムウの二人。

 

「ええっと、さすが大尉の“同僚”と言いますか……」

 

 苦笑して言うマリューに、ハイータはロマの方を向く。

 

「ロマ君、褒められてる?」

「褒められてないだろ。変人ってことだぞたぶん」

「えっ」

「ちょ、カガリ……っ」

 

 明け透けなく言うカガリに、キラが戸惑うもなぜか納得するハイータ。

 

「なるほど……」

「しかしモビルスーツがあるということは、大尉の機体ですか?」

 

 ナタルの言葉に、首を横に振るロマ。

 

「いや、それはハイータのものだ」

「ッ」

 

 気づいたのだろう、キラとムウが驚いた表情でハイータを見る。

 しかして、それに気づくこともないカガリはハイータに視線を向けながら眉を顰めた。

 

「モビルスーツに乗れるナチュラル、意外と多いのか?」

「あっ、いえ……私はその、コーディネイターですので……」

「ブルーコスモスにコーディネイター!?」

 

 よほど驚いたのか、大声でそういうカガリにビクッと反応するハイータ。ロマはというと冷静……と見せかけておいて、突然の大声に驚いて反応できていないだけ、心臓はバクバク音を鳴らしている。

 しかし、声を出していないだけでもちろんロマ以外の面々も驚愕しているようだ。言葉を選ぶために脳を動かしているようだが、それを遮るように落ち着いたロマが先に口を開く。

 

「珍しいのは確かだが、別にハイータ一人ではないさ。“親の都合”で勝手にコーディネイターにされた自分を嘆く子供だっている」

「そういうもん、かねぇ」

「ああ、コーディネイターになりたいという人間がいるように、ナチュラルでありたいという人間もいる。その二つでなかろうと、自分の生まれや親を呪う人間はいるだろう?」

 

 そう言われ、今度はムウが苦笑した。親子の話をされれば、思うところはあるのだろう。

 

「隣の芝生が青く見えるわけね」

 

 マリューが憂鬱そうに口にすると、苦笑するロマ。

 

「まぁハイータの場合はそういうわけではないが」

「なら、どうしてわざわざ反コーディネイター組織に?」

 

 ナタルの言葉に、少しばかり眉を顰めるハイータ。反コーディネイターを掲げているのは確かだが、そのための組織ではない。

 だが、ここで言うこともないだろうとすぐにハイータは質問に答えようとするが、顔をほんのり赤く染めて俯く。

 

「……あ~なるほどねぇ」

 

 ムウがなにかを察したのか、ニヤニヤと笑っていて、少し遅れてマリューがポンと手を叩いた。

 当事者たるロマとてハイータの思っていることを感じてか、なんとも言えない表情でムウを睨むが、強い言葉を使えないとわかっているからかムウはそのニヤケ顔を止めない。

 質問の答えが返ってこないことに、眉を顰めるナタル。

 

 ロマは、軽く咳払いをして話を続ける。

 

「なにはともあれだ、純粋に戦力が増えてくれたと思ってくれていいはずだ」

「あ、はい。合流させていただいたからには作戦行動には参加させていただきます!」

「助かるねぇ、俺たち三人じゃ苦しい時もあるだろうし……な?」

「大天使討伐にはザフトも本腰を入れているようだからな」

 

 そう言うロマにムウは“悪魔討伐”にもだろ、とは思ったが言わないでおくこととした。

 

「この後に、ハイータと共に来た者たちを迎えに行く。バギーを一台借りたい」

「ええ、それは構いませんが……」

「明日には物資の搬送などもしよう。それと部屋なども」

「用意しておきますわ。むしろ余ってるぐらいですから」

 

 苦々しく言うマリューに、ロマはムウの方を見る。つまりは“フォローしろ”ということだが、理解したのかしていないのか、ムウは少し悩んだ後に笑みを浮かべてグッとサムズアップ。

 不安になりながらも、次はナタルの方に視線を向ける。コクリ、と頷いたので今度こそ大丈夫だと信じたいところであった。

 とりあえずと、ロマは軽く後ろに下がってキラの背を軽く押す。

 

「あ、はい」

 

 察したキラが前に出ると、同じくカガリも出た。

 マリューがロマに軽く笑みを浮かべて頷くと、すぐに表情を引き締める。

 

「続きましては、ヤマト少尉。連絡が取れなくなってから一体何があったのか……説明してくれる?」

「はい……僕とカガリさんがその、街で昼食を食べた時、です」

 

 

 話は実にわかりやすく言えば“原作通り”である。ロマの記憶しているものとも寸分違わず、砂漠の虎との遭遇、ブルーコスモスの襲撃、身を守るためにキラは戦い結果的に砂漠の虎の“命の恩人”となってしまった。そして、助けた礼にと、キラとカガリはバナディーヤのバルトフェルドの邸宅へと案内され、邸宅にてもてなしを受け―――問答をした。

 正体は知っていたようだが、無事に帰してくれたのは彼の“気まぐれ”か“優しさ”なのか……ロマとしてはどちらにしろお互い“やりにくくなるだけ”だと、理解している。

 

「砂漠の虎、やりづらい相手ね……」

 

 マリューが顔をしかめて言うが、それもそうだろう。純粋な軍人でも純粋な武人でもない。

 軍人にしては“中途半端な甘さ”が際立つし、武人にしては“賢しい真似”が強い。だからこそ彼女は“やりづらい相手”という表現をしたのだろう。そこに関してはロマも同感であった。

 あまりに“自分が強すぎる”のだ。ある意味では羨ましささえ感じる。

 

「なぜ砂漠の虎は、パイロットであるヤマト少尉を……」

「“卑怯”だと感じたのだろうさ、砂漠の虎は」

 

 ナタルの疑問に答えたのはロマ。それが正解という保証もないが、だがそれは、この世界の誰にもできはしないだろう、砂漠の虎という男を“三人称”から見たことがある故の推測だ。

 

「卑怯っ、アイツはいつだってそうだ! 今回だって、わけのわからないもてなしをして、最後は銃を突き付けて問答して! なにがしたいんだアイツはっ!」

「さてな……」

 

 だが、自分と似たものを、ロマは感じていた。

 戦わざるをえないが、非人道的な真似もしたくはない。人間性があるが故の、なんのメリットもない行為。だからこそ砂漠の虎は“決闘”に挑むのだろう……。

 そして、大切なものを失ってから、自らが“進むべき道”に辿りつくのだ。

 

 あくまで、それらもロマからの視点に過ぎないが……。

 

「ロマ、さん?」

 

 キラの言葉に、ふと呆けていたことに気づく。

 

「すまんな、少し考え事だ。しかしまぁ、砂漠の虎については考える必要もあるまいよ。どうせ―――“殺す相手”だろう?」

 

 そう宣言すると、場に緊張感が走る。

 耐え切れなくなったムウが、まず最初に両手を上げて笑う。

 

「……そうだな、それもそうだ。考えるのなんてやめにしようぜ」

「私も賛成です。まずは生き残ってこのアフリカを出るのが先決ですよね」

 

 ムウに同意するように言ったハイータの発言に頷くマリューたち。

 

 解散ということになり、部屋を出ていく面々。

 カガリが少しばかり不満そう、いや……苦々しい表情を見せていたが、ロマは自分が突っ突いてもしかたのないことだと放置、キラが苦しそうな表情をしているが、それもまた……なにを言うでもない。

 ハイータが立っているロマを見て小首をかしげるが、軽く頷いてキラの方に目配せすると、彼女はそれを理解してか頷いて出ていく。

 

 最後に残ったロマは三人の方を見て、軽く頷くとその後を追うように出る。

 

 部屋を出るなり、自らを睨む少女が目の前にいて、その横にはキサカ一佐(ランボーモドキ)が複雑な表情を浮かべて立っていた。

 

「……なに用かな、姫様」

「おいっ!」

 

 周囲を見回すカガリ。すでにキラは去っていき、そのあとを追ってハイータは行ったようだ。

 

「いつから、気づいてたんだよ……っ」

「最初からさ、ハイータも気づいているだろう。ブルーコスモス盟主の側近は伊達ではないさ」

「くっ、政治利用でもする気か?」

「自惚れるな。まだその価値もない」

「なんだと!?」

「冗談さ……それよりこんなところで大声で話していて良いのか、すぐに出てくるぞ」

 

 ロマの言葉に、グッと言葉を詰まらせるカガリ。

 見ての通り知っての通りの跳ねっ返りだ。ロマのような“大人”相手にはちょっとしたことでも反発したくなるのだろうが、次期オーブ首長としてはまだ未熟。ヘソで茶が沸く話である。

 歩き出すロマの隣を歩きつつ、そのサングラスの横から見える瞳を睨みつけるカガリ、後ろを行くキサカは眉をひそめてその後を追う。なら止めろ。

 

「君がこんなところで“ザフトを相手に戦う”等、あきらかなオーブの主張に反す行為だ」

「だがっ、これは私の意思でっ」

「“これは個人の意思だ”等と、詭弁にすぎん……(まつりごと)においては意味をなさんさ」

 

 公になれば、おそらくオーブとザフトの両者の緊張感は一気に高まるか……ザフトがそれを利用して、オーブを強請るか、だろう。

 

「頼むっ、私のことは―――」

「言わんよ、私になんのメリットもない」

 

 それにアズラエルたちにとっても、だ。故に理由がない。

 

「……ありがとう」

「構わない。それより砂漠の虎との決戦だが、もちろん君は余計なことはしてくれるなよ」

「それは……」

「言っただろう?」

 

 カガリは思い出す。忘れるわけもない言葉―――“生きる方が戦い”だ。そのたった一言はなぜか深く、カガリの心の刻まれている。

 

 歩き続けていたロマが、立ち止まった。

 

「特に君は、な?」

 

 フッ、と口元に笑みを浮かべて言うロマがカガリの頭を軽く撫でる。

 まるで子ども扱いされているかのような気恥ずかしさに顔を赤くするカガリだが、その感覚にどこか安心感も覚えてしまう。

 しかしカガリは跳ねっ返りである。もちろん凄まじい勢いでロマの手を振り払った。

 

「子ども扱いするなっ!」

 

 ぷんすこ激怒しながら去っていくオーブの姫。これが政治の場であればロマの首が飛ぶレベルの無礼である。

 

「……これが若さか」

 

 意味もなく一人ごちて笑うと、ロマはハイータと合流するために格納庫へと向かう。

 

 その後はなんてことはなく、バナディーヤの街から離れた場所に墜ちた輸送機へと向かい、生き残った仲間たちを拾って戻ってきたというわけだ。

 整備士が四人とその他スタッフ二人ほど、蓋を開ければ補給物資のほとんどがおしゃかになっていたものの、プレディザスターのパーツは残っていたので結果オーライ。

 

 そして、なんやかんやと今に至るわけである。

 

 

 

 

 

 

 飛び立ったアークエンジェルの食堂にて食事をするロマ、キラ、ハイータ、そしてムウの四人のパイロット。

 街で調達したケバブを口にしながら雑談をしているわけだが……ロマは向かいに座っているキラの食事の手が止まっていることに気づく。

 それに隣にいたムウも気づいたのか、軽く肘でつついた。

 

「早く食えよ。ほら、これもやる」

 

 四人の中心の皿の上にあったパンをキラの前のプレートに置くが、キラのその表情は晴れず戸惑いを浮かべる。

 

「ん~やっぱ現地調達っていいですねぇ、プトレマイオス基地は酷いもんでした」

「あ、お嬢ちゃんもそう思う? やだよねぇ軍の食糧なんて」

「まぁ基本的には私達はアズラエル理事の元なので食事も、な?」

 

 別段マウントを取りたいだとかそういうつもりはないのだ。純粋にムウの悔しがる顔を見たいだけである。

 その願い通り、ムウは顔をしかめた。

 

「んだよ、いいよなぁ上司があんな別嬪さんで、しかも待遇も良いし」

「褒めてもなにも出んぞ」

「羨ましがってんだよ」

 

 そういうムウだったが、ロマとしてはムウにこそ言いたいことが山ほどある。

 

 ―――マリューさんとくっつく癖に! あのマリューさんと!

 

 テレビで見てた時はまぁ良かったが、現実で目の前でそうなるんだなと感じれば思うところもあるだろう。なにはともあれ、外面はクールなのがロマ。

 フッ、と笑みを零す横でハイータが『ロマくんしゅてきぃ……』とかいう状態になっていることには気づいていない。

 

 ふと、ムウが次の食事に手を伸ばせば、キラが顔をしかめた。そんなキラを見ながらも、ハイータも手を伸ばしてケバブをもふもふ食べていく。

 

「少佐、まだ食べるんですか? ハイータさんも……」

「んぐっ、だってこれから戦いですよ?」

「え、まぁ……」

 

 きょとんとして言うハイータに、キラが曖昧に答える。それを引き継ぐように、ムウはキラの方を向いた。

 

「食っとかなきゃ力でないでしょほら、ソースはヨーグルトのが旨いぞぉ」

「え~チリですよぉ」

「ヨーグルト!」

「チリ!」

「どう思うよキラ!」

 

 ムウの言葉に、キラは顔をしかめる。

 

「いえ……虎もそう言ってたから、ヨーグルトのが旨いって」

 

 そんな言葉に、ハイータはロマの方を向く。その表情は『なにかまずいこといいました?』という感じだが、ロマは目配せをして別段問題ないことを示す。

 ムウはなんでもないようにふるまいつつ、食事を続ける。

 

「ん~味のわかる男だな。けど、敵のことなんか知らない方がいいんだ……早く忘れちまえよ?」

 

 そんな彼の言葉に、言葉を詰まらせるキラ。

 

「私も言っただろう。これから“殺す相手”のことなど考えるな、と」

「……はいっ」

 

 コクリと頷くキラと目を合わせて、ロマはフッと微笑む。

 

 だが次の瞬間―――艦内に警報が鳴り響く。

 

「言ってる傍からかよ」

「始まるか……」

 

 ムウとロマが即座に立ち上がる。遅れて立ち上がるハイータとキラ。

 

 だがキラのその表情は、どこか曇ったままだ。

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェルから離れた砂漠の上に、サイーブやカガリ、キサカはいた。

 バギーに乗ったまま、双眼鏡でのぞきこんだ先にアークエンジェルを確認し、さらにトランシーバーから聞こえる声に頷く。サイーブからの言葉を聞いて、カガリは次にアークエンジェルへと情報を伝達。

 明けの砂漠の面々は各場所に散っているのだろう。

 

 仕掛けていた地雷原が吹き飛ばされるのが見える。

 

「我々はバックアップだ。直接戦闘は避けろよ!」

 

 サイーブが再三に渡って言い続けていることだ。

 通信機の向こうからはしっかりと同意の声が聞こえる。

 

「あれだけの地雷を一瞬で……!」

「虎が本気で牙をむいて来たか、だが……その視線の先は我々ではない」

「アークエンジェル……!」

 

 歯痒そうに言うカガリを見て、キサカは眉を顰めた。

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェルの格納庫は慌ただしい。

 第一戦闘配備ともなればそうなるのも当然だろう。ムウはストライクがエールストライカーで出るというのを聞くなり、整備士たちに自分の乗るスカイグラスパー一号機にランチャーストライカー、二号機にソードストライカーを装着するように指示する。

 戻ってきて乗り換える方が早いと考えたのだろう。

 

 ロマは相変わらずノーマルスーツも着ないままプレディザスターへと歩く。そしてその隣を歩くのは白に紅いラインの入ったノーマルスーツを着たハイータ。

 ふとロマが、近くにいたキラに気づく。

 

「どうしたキラ、レジスタンスは後方……気を遣わずに戦えるんだ。ある程度肩の力は抜いておいた方が良い」

「あの、ロマさん」

「ん?」

 

 悩むように、キラが口にする。

 

「バーサーカーって、なんですか?」

「バーサーカー……」

 

 ―――そりゃサーヴァントの……じゃなくてな。わかってるわかってる。ていうかこの質問俺にくるの!?

 

 ムウの方を見るが、スカイグラスパーに乗り込もうとしているところでたまたま目が合ってしまう。“出撃前にお前の顔なんか見たくない”と言葉にしなくとも理解できる表情に、早く乗れとロマは顎でジェスチャーをする。

 咳払いをして、ロマは頷いた。

 

「どこかの神話の狂戦士さ」

「狂、戦士……?」

 

 キラの疑問に、今度はハイータが答える。

 

「えっと、普段は大人しいのに、戦いになると興奮して、人が変わったように強くなる……的な感じです」

 

 ―――お前じゃん。

 

 とは口が裂けても言わない大人なロマ。

 そんな彼の心情など露知らず、ハイータは目を輝かせてキラを相手にぐわっと身を乗り出す。

 

「かっこいいですよね! 褒められてますよ!」

「え、あ、はい……」

「私も言われてみたいなぁ~」

 

 どこか、いわゆる厨二チックな願望があるのか憧れを口にする。

 しかしロマは心の中で『いくらでも言ってやるバーサーカー』と吐露するも、やはりそこは自制して決して言わない。今すぐ“お前じゃん”と言ってやりたい。

 

「で、キラ、どうしたんだ?」

「あ、いえ……なんでも」

 

 ロマは知っている。砂漠の虎に言われた言葉だと……。

 

「自分の守りたいモノを守るためなら、なにになろうと構わんがな私は……」

「え?」

「なに、とりあえずはまず生き残り帰ってくることが先決だ。良いな?」

 

 そう言って、軽く笑みを浮かべると、キラも少しばかり元気を取り戻したようで笑顔を浮かべる。

 

「……はい!」

『各パイロットは搭乗機へ』

 

 ミリアリアの声が響くと頷くロマ。そんな彼に頷いて返したキラ。

 走り去ったその背を見送ると、横からの視線を感じてロマはそちらに目を向ける。どこか不満そうなハイータが白い髪を揺らしている。

 ため息をつきながらもそっと、手を伸ばしその頬に触れた。

 

 瞬間、ハイータの顔が真っ赤に染まる。

 

「ふぇあ!? ちょ、ここ、心の準備がですねっ!?」

「なにを言ってる」

 

 いや、わかる……しかもそうしてから気づいたせいでロマも心臓がバクバクである。

 

「生きて帰れよ。お前も」

「えっ、あ……はい。もちろんです。お薬も一杯持ってきてるので戦闘し放題です!」

「しないに越したことないがな」

 

 そう言って苦笑すると、手を降ろして歩き出す。階段を上ってプレディザスターのハッチへと向かう最中、ハイータの声が聞こえる。

 

「ロマ君も、ご無事で!」

 

 それに軽く手を上げて応えると、ロマはプレディザスターへと乗り込んだ。

 シートがリフトアップし、コックピット内に入ると深く息を吐く。システムが起動し周囲をカメラが映せば、既にハイータもジンハイマニューバに乗り込んでいるようだった。

 薬は既に打ったのだろう。でなければ、戦闘能力が落ちかねない……今、彼女が服用しているものは前までのものと違い純粋に“気分を高揚させるだけの薬”なのだ。

 

 前回は副作用的に気分が高揚していたが、既にハイータの技術はかなりのものであり、あとは心の問題なのだがそれを解決するための薬だ。

 

「ハイータがハイに、な……フッ」

『なに寒ぃこと言ってらっしゃいますの……!?』

 

 驚愕するような声に、ロマはため息を吐く。

 

「おはよう、チェシャ」

『おはようございましたわあなた』

 

 騒がしい相棒もすっかりやる気満々なようだ。

 

「砂漠の虎、G兵器も出てくるだろうしディンもな……我々の仕事だ」

『上等でしてよ、近づく奴は全部灰にしてやりますわ』

 

 言っている間に、スカイグラスパーが発艦、続いてストライク。

 そして次にハイータと自分であり、別々のカタパルトにセットされる。プレディザスターの中で、ロマは視界の先の光を見やり、息を吐く。

 先ほどまであった手の震えは収まり、妙な昂揚感すら感じる。

 だが、敵は砂漠の虎に本来より強力になっているであろう、ザフトだ。

 

『システム、オールグリーン。続いてジン・アイズ、プレディザスターどうぞ!』

 

 フレイの声に驚きながらも頬を綻ばしたがそこであることに気づく。

 あ、と声を出しそうになるも止まるロマ。嫌な予感しかしない。

 

『ハイータちゃんは、ジン・アイズでいっきまぁぁぁす!!』

『へっ!?』

 

 CIC初担当のフレイには難易度高めの人材だったせいか、素っ頓狂な声を出して驚いている。

 そりゃそうだ。誰だってこんなもの驚く。

 笑いながら出撃するハイータ。一応“報告”はしたのだが、やはり実物を見るとそれは違うのだろう。

 モニター内のマリューは顔を引きつらせており、ナタルも珍しくあんぐりと口を開いて驚いている。

 不安なのはロマとて理解はできた。初めて見たときはロマとてそうであったし、今とはまた違った。しかし今、あれはあれでしっかりと指示に従うしでテンションが高い以外の問題点はほぼない。

 

 故にロマは―――慣れている。

 

 だからこそ驚くでもなく、ただ坦々と物事を進めるのみだ。

 

 砂漠の虎(アンドリュー・バルトフェルド)をキラに撃たせるために……。

 

「ロマ・カインハースト・バエル。プレディザスター、出るぞ!」

 

 

 

 そして、厄災(プレディザスター)は虎の縄張りたる砂漠へと飛翔する。

 

 

 





遅くなってしまいました
かなり急いで書いたので変なとこあったらそれはそれですみません

ようやく次回は砂漠の虎と決戦ということで……
こうなれば変化とか言ってられるレベルではない

ハイータは機体お披露目、ロマのジンハイマニューバを引き継ぐ形でした
次は戦闘もあり、ちょっと()引かれるでしょう

それでは、次回もお楽しみいただければと思います
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