盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
砂漠の虎との決戦に挑むアークエンジェルから、プレディザスターが射出されるなり主翼を展開、そして飛翔した。
灼熱の砂漠、涼しいコックピットの中にてロマは顔をしかめつつ戦場を見下ろす。
バクゥが10機以上は確認でき、ジンオーカーに敵駆逐艦ことピートリー級も四隻ほどが確認できた。
―――明らかに多いだろこれ。
記憶は定かでないものの、敵の数が“原作”と比べても倍はあるだろうとロマは唸る。でなければストライク一機とスカイグラスパー“二機”で覆る戦力ではない。例え隊長を仕留めたとしても、だ。
なればこそ前のパターンと一緒だろう。降下作戦時のラウ・ル・クルーゼの出撃、降下後の戦闘でのバクゥの数とバルトフェルド、先の戦闘でのディンと二機のG兵器、どれも原作と違う。
―――修正力とか、か?
ロマは思考したが、そんなものではない。純粋に“赤い悪魔がいる”という事実だけでそうなっているのだ。
『きますわよッ!』
「敵意は感じているということさ……!」
チェシャの警告より早く、フットペダルとレバーを操作してプレディザスターを加速させ、放たれたビームを回避。ビーム兵器を使う敵などG兵器以外はないだろう。
そちらを確認すれば、砲戦用特化機体バスターがグゥルに乗って飛んでおり、銃口をロマの方に向けている。
グゥルに乗ったデュエルはストライクの方へと飛んで行って攻撃をしかけているが、自身に近づく同じくグゥルに乗った機体が一機―――。
「“青いシグー”だと……!?」
正確には“青いシグーアサルト”だ。
両腕にバルカンシステム内装防盾、バインダーにも同じものを装備しており、さらに側部と腰部にミサイルまで見える。
ロマはそのパーソナルカラーを持つ機体、パイロットを知っており、パーソナルマークこそ見えないもののおおよその予測をつけることが可能であった。
そのパイロットは“シホ・ハーネンフース”、後に“ホウセンカ”の異名をつけられるであろうザフトレッド、エースパイロットである。
ロマは顔をしかめつつも、そのシグーアサルトが両腕に装備しているバルカンシステム内装防盾から嵐のように放たれる弾丸を回避するためにプレディザスターを地上に加速させた。
「あれに当たれば損傷しかねんか……!」
『ひょぉ!? 地面に加速は心臓に悪くってよぉ!?』
―――心臓、ねぇだろ。
思わずにはいられないものの、あえて言わないでおく。
地上へと加速するプレディザスターを追うようにシグーアサルトのバルカンが放たれるも、プレディザスターは死角である真下へと入り込むように方向を変えて、地上スレスレで高度を上げる。
グゥルの真下に入られては追撃もできず、シグーアサルトは攻撃の手を止めて移動を開始するが、そんなプレディザスターに続いて襲い掛かるのは―――橙色のバクゥ。否、ラゴゥであった。
即座に横に回転しつつ回避行動をとれば、先までいた場所に奔るビーム。
「砂漠の虎かッ!」
『先日ぶりだねぇ、赤い悪魔……!』
―――通信をしかけてきやがった!?
ラゴゥとすれ違うも、即座にラゴゥは方向転換してプレディザスターを追う進路を取る。背後から放たれるビームを再び回避するも、涼しいはずのコックピットの中でロマの額に汗が流れた。
今まで戦った敵の中でも、ラウ・ル・クルーゼに匹敵するようなプレッシャー。殺意というよりまた違ったなにかを感じる。
顔をしかめつつ、他の敵襲に警戒しながらもミサイルを放つも……ラゴゥはそれらを回避しつつ、プレディザスターを追う。
「バスターにシグーのカスタム機に砂漠の虎とは、人気者は忙しくてかなわんなッ……!」
『君は君自身が思っている以上に人気者さ、ファンも多いしねぇ』
瞬間、妙な感覚に追加ブースターを使って急転回、横を向きそのまま加速。
『さすがですわねあなたっ! 撃ちますわよ!』
瞬間、向いていた方向の砂丘から跳んでくるジンオーカー。察知していたことにより即座に放たれたビームがジンオーカーを貫き、さらにチェシャが背後のラゴゥを牽制するためにミサイルを放つ。
ラゴゥは追撃できずにそのままミサイルを跳んで回避。プレディザスターに砲身を向けビームを放つが、さらにプレディザスターは即座にバレルロールで回避した。
『本当に人間なのかねぇ、本物の悪魔ならお目にかかりたい……だが、ただの人間のように見えたが!?』
「ご察しの通りただの人間さ、しかも殺すことしか能のない
そう言いながら、次に自身に砲身を向けているシグーアサルトに向かって機関砲とビームを放つ。
しかし、シグーアサルトはシールドで機関砲を凌ぎながらビームを回避。後退するシグーアサルトの近くにいたバスターが二つの砲身を連結させ対装甲散弾砲を放つも、加速して回避。さらにミサイルが放たれるが、チェシャがミサイルを放ちそれらを迎撃しつつ、バスターへと数発を当てて見せる。
―――バカにできねぇなチェシャ!
プレディザスターからのミサイルを回避しきり、地上に降りたラゴゥの砲身がプレディザスターの進路へと向けられていた。
『いやはや、それは僕にも刺さる言葉だね……アイシャ!』
『オーケーアンディー』
「女の、声……ッ!」
『“君と同じく二人乗り”というわけさ!』
引かれるトリガー、放たれるビーム。
ロマとてわかってはいた。アンドリュー・バルトフェルドと共に在る女、アイシャ。
「チィ!」
『ロマさんッ!』
だが、そのビームは射線上に現れたストライクがシールドで防ぐ。
「キラっ、助かった……!」
『いえ、それより一人でこれだけの相手を……バルトフェルドさんは僕がっ!』
「く、頼む……!」
ラゴゥへと加速するストライク。
プレディザスターのコックピットでバスターとシグーアサルト、さらに迫る数機のディンを認識しつつ、ストライクに代わりデュエルと数機のバクゥを相手にするハイータの方にも意識を向ける。
戦況は不利だが、まだマシにはなった。
『“アレ”をしますの?』
「いや、まだだ、まだやれる……」
その赤と青の瞳で、敵を認識し、プレディザスターはさらに加速する。
キラのストライクがラゴゥとの戦闘を始めた頃、ハイータのジン・アイズはキラに代わりデュエルと交戦をしていた。デュエルのパイロットであるイザーク・ジュールはストライクを追う気でしかなかったのだが、バクゥとデュエルを同時に相手にしていたキラをハイータが援護した形だ。
相変わらずのテンションだったので、キラはだいぶ混乱したものの、結果ギリギリでロマを助けることはできた。
ジン・アイズが左手に持った”
グゥルに乗ったデュエルは素早くそれを回避するものの、さらにジン・アイズは右手に持った
コックピットの中で、イザークは顔をしかめつつ“右腕だけが真っ赤な白いジンハイマニューバ”を睨みつける。
「くっ、ストライクを討つ邪魔をッ! ザフトから奪取した機体でェ!」
デュエルが肩部からミサイルを放ちながら後退していると、その下の地上をバクゥが走る。
真っ直ぐにジン・アイズへとレールガンを放ちながら接近していくバクゥ。
放たれたレールガンを、デュエルの方へと加速しつつ回避するジン・アイズのコックピットで、ハイータが犬歯をむき出しにして笑みを浮かべる。
即座にレバーとフットペダルを操作して、大きく上昇。
「アハハッ! ワンちゃんだぁ、畜生は這いつくばってるのがお似合いなんだよねェ!!?」
しっかりとバクゥのレールガンの射角から出て、真上からライフルを連射。レールガンとバックパックを破損させる。
空中で体を翻すジン・アイズが、左手のビームライフルをデュエルへと向けるも、ハイータは撃たずに上昇を選択。真下を通っていくミサイルとマシンガン。
それを撃ったのは、ディン。
「小鳥さんがピィピィ鳴いちゃってさぁ!?」
ジン・アイズを空中で加速させてディンへと旋回しながらも接近。右手のライフルを投げつければディンは散弾銃でそれを破壊するも、それは陽動。
その隙を見て背後から組みつくジン・アイズが右手の指を真っ直ぐに伸ばして引く。
「アハァッ♪ 焼き鳥になっちゃえ、ヒートクローでさァ!」
ジン・アイズの右手が背後からディンの胴体に突き刺さる。ただその手の指は―――高熱を発す。
ディンの胴体が熔け―――貫通。指先がその胸部から突き出るとすぐにジン・アイズはディンを蹴って離れる。
空中で爆散するディンを見ることもなく、ハイータの次の目標は地上で未だ動こうとする損傷したバクゥ。
「伏せっ♪」
上空から勢いよくバクゥの背に落ち、そのコックピット部分にビームライフルを撃ちこみ―――離脱。
爆散するバクゥを背に、地上へと着地するジン・アイズのコックピットで、ハイータはハッとする。上空から降るミサイルは直撃こそしないものの、衝撃は十分伝わる。
コックピットの中で、ハイータが唸る。
「くっ、最速でロマ君のとこ、イキたいのにさァっ!」
だが敵はデュエルのみ、いっそ振り切るのも手だろうと、即座に判断。
ヘルメットを脱いでシートの後ろに投げ捨て、ノーマルスーツの胸元を開ける。
「っハァ……息ッ苦しいんだよねッ!」
笑うハイータがモニターでロマを視認。ロマはといえばバスター、青いシグー、二機のディンと地上から三機のバクゥに狙われていた。
並のパイロットであれば一瞬で落とされかねない過剰戦力を割り当てられながらも、ディンを一機落としているのを確認できる。
ハッとした表情をして、上空のデュエルにビームライフルを放つ。
「ロマくんっ、私のロマ君になに集ってんのさ羽虫共ォ!」
加速するジン・アイズは、凄まじい速度でロマの戦場へと突入。低空飛行をしていた青いシグーがそちらを向くが───遅い。
「邪魔すんなぁっ!」
青いシグーをグゥルから蹴り落として、そのグゥルを踏み台にさらに跳ぶ。ついでに踏み台にしたグゥルをビームライフルで破壊し、爆風により加速。
バスターがジン・アイズに気づき砲撃とミサイルを放つも、マシンガンを引き抜いてそれらを迎撃、即座にビームライフルで爆煙を晴らすが、丁度バスターもビームライフルを放ったようで爆煙からビームライフルが伸びる。
かと言って、当たるわけもないのだが……。
「えへへっ、きたよロマくぅん♪」
素早く加速し、ライフルを連射してバスターのグゥルを狙うが、バスターは距離を取る。
プレディザスターが近くを通り、ジン・アイズを狙うディンを一機ビームで破壊した。
『助かることだ、しかしまぁデュエルを連れてくるとはな……!』
「ロマくんと一緒なら愛の力で一瞬だよっ!」
『愛かはともかくとして……早々に片付けて駆逐艦を落とすぞ! アークエンジェルの援護もある……!』
「りょーかいですっ♪」
プレディザスターが加速してジン・アイズから離れる。ディンが追おうとするもジン・アイズは加速してそのディンに組みつくと右手のライフルを放り投げてヒートクローでその胸部を鷲掴みにする。
凄まじい熱により熔けていくディンの胸部、パイロットは恐怖からかライフルやショットガンを乱射するが狙いも定まっておらず、助けようと接近したディンをむしろ遠ざけてしまう。
そしてその爪が胸部を抉り取ると、ディンは活動を停止させた。
「アハァッ♪ 私も悪魔って呼ばれちゃうかなぁ!? ロマ君と一緒になっちゃうなぁ、えへへっ」
ディンを蹴り飛ばして、接近してきたもう一機のディンにビームライフルを放つも、回避される。そのままジン・アイズを狙うディンだったが、接近してきたプレディザスターに気づかずにコックピットを切り裂かれ活動を停止した。
落ちていくディンを狙って加速したジン・アイズが、接近と同時に地上のバクゥへと蹴り飛ばす。
「私とロマ君の邪魔ぁすんなら……死んじゃってよ!」
バクゥは落ちてくるディンを回避するも、ジン・アイズが放ったビームライフルがディンに直撃───爆散。
怯むバクゥだが損傷は大してない。しかしてその隙に、ジン・アイズがその背に飛び乗るとバクゥのコックピット部分に右手を突き刺す。
メインカメラの光が消え、動かなくなるバクゥ。
「つぎぃ!」
上空のプレディザスターを狙うデュエルとバスターに向かってビームライフルを連射。当たるわけもないのだが、それで充分だ。
エネルギーの残量を確認しつつ、さらに接近してくるシグーアサルトに目を向ける。
脚が取られているようで、その隙を逃すはずもなくジン・アイズは加速。
「ロマくん以外を押し倒すのは趣味じゃないんだけどね!」
『ハイータ! 聞こえているならやめろ!』
「はぁい!」
色々と危ないハイータの発言を必死に止めるロマに楽しそうに返事を返して、シグーアサルトに組みつく。
しかし、そのまま押し倒してしまうつもりがパワーは拮抗している。
「でも、この距離なら砲撃戦は無意味だねぇ!?」
『なっ、女のパイロット!?』
シグーアサルトから聞こえる声も女性のもの。バルカンのついたシグーアサルトの両腕を押さえるジン・アイズのコックピットで、ハイータは感慨深そうな表情を見せた。
「親近感湧いちゃうなぁ、でも私とロマ君のために死んでよぉ」
『くっ、ですがあなたも両手を押さえていてはっ』
「アハハハハッ! 確かにぃ───」
コックピット内でハイータが笑う。
◇
地球、アズラエル財団の持つ研究所。
アズラエルと三人娘は無事にそこへと帰ってきており、三人娘は検査を終えて問題なしと診断された後に、再びアズラエルに召集をかけられ集合。
ここ数日、ずっと顔を合わせていたものの、こうなったのは致し方ないことだろう。
場所は地下の格納庫、ライトが点くと三機のモビルスーツが現れる。
「おひょ~すっげぇ! おにーさんにも見せたかったなぁ!」
「いいじゃん、好みの機体だ」
「……でも、作りかけ? びみょー」
三者三様にリアクションをするも、シャニの言葉にアズラエルは眉をひくつかせた。
「作りかけですよそりゃ、できてたらまず貴方達を行かせてますから」
「まぁそりゃそっか」
クロトが両手を頭の後ろで組んでため息をつく。
「お兄さんにも見せたかったなぁ……」
「そのうち帰ってくんだろ、ハイータも行ったんだし……アイツつえーだろ」
オルガの言葉に、シャニは頷く。
ハイータの能力は異様だった。ビクトリア基地のコーディネイターの中でも“特別待遇”ではあったし、自分たち以外の研究所の強化人間では相手にならないことは確かだ。戦闘能力に特化されたコーディネイターなのかもしれないが、それであっても“
故に、今回行ったのは彼女で正解と言えば正解かもしれない……だが。
「薬入ってる時のハイータ、おにーさんになにするかわかんないんだよなぁ」
「それな~」
クロトのつぶやきにシャニが同意し、オルガも苦々しい表情を浮かべた。
アズラエルはというと、彼女は彼女で難しい表情をしているものの『そうなったらなったでこちらも……』とか呟いているので大丈夫であろう。
普段からジュブナイル小説を愛読するようなオルガはおおよそ理解していた。“戦争”になるか“共有財産”になるかの二択だろうと結論付ける。
オルガ自身は“自分は違う”と思っているのだろう。達観した様子であり、それを見たクロトとシャニは肩を竦めて笑う。
アズラエルは静かに頷いた。
「……ともかく、とりあえずお披露目です。月でのデータとかを入れて武装をちょちょいとすれば完成といったところですね」
「へぇ~じゃあすぐだ」
「お兄さん、迎えに行けるかな?」
「所在さえわかれば、ですかね……予定通りならそろそろハイータも合流してることでしょうし」
そう言いながら、ライトが点いていない方に立っているモビルスーツに視線を送るアズラエル。
クロト、オルガ、シャニもそちらを見るが、暗がりでモビルスーツがあるということ以外はいまいちわからないようで、すぐに自分の機体の方に視線を向ける。
データ通りならかなりそれぞれの技能にあった高性能機に仕上がるはずだ。
「……そういやハイータが持ってった機体ってよ。アイツが使ってた奴だよな?」
オルガの言葉に、アズラエルは微妙そうな表情で頷く。
「若干違いますけどね。ビーム兵器を使えるようにしてありますし、右腕も超高熱のクローに火炎放射、ついでに頭部もちょっといじってますし」
「頭ぁ? お兄さんのと一緒に見えたけど……」
アズラエルが悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「そう見えてるところに───ドカン、ですよ♪」
ウインクをして言うアズラエルに、誰かが『歳考えろ』とぼやいたところで、三人対アズラエルの追いかけっこが始まった。
アズラエルが即座にバテてお開きとなったが……。
◇
組み合うジン・アイズとシグーアサルト。
ジン・アイズのコックピットの中で、ハイータが笑みを浮かべる。八重歯をむき出しにして、爛々と輝く蕩けた瞳で、見やるは敵ではなく、獲物。
その狂気は別段、薬の影響ではない。ストッパーを外す薬により現れる彼女の戦意、本能そのものだ。
コーディネイターの中でも、戦うことに能力を特化させた者。だがそれを抜きにしても、遺伝子操作云々など関係なく、彼女は間違いなく戦いの才に恵まれていた。
「───なぁんちゃって♪」
ジン・アイズのモノアイが橙色に輝く。
シグーアサルトのシホは良くないモノを感じ取り、即座にレバーを操作。バーニアを吹かしてどうにか離脱しようと暴れるものも、ジン・アイズはシグーアサルトを離さない。
そして次の瞬間、ジン・アイズのモノアイから放たれる───閃光。
『うあぁっ!?』
「アハハッ、怯えて竦んでモビルスーツの性能を活かせないまま逝っちゃえぇっ!」
しかして閃光はシグーアサルトの首元あたりから頭部を焼き切るにとどまる。
不満そうな顔をするハイータだが、その右腕はしっかりとヒートクローを起動しており、熱によりシグーアサルトの左腕が焼き切れた。
右腕を引いてそのコックピットを貫こうとしたその瞬間、ジン・アイズは地を蹴り下がる。
「ああもぉ、いいとこだったのにぃ!」
『貴様ぁ、好きにさせるかァッ!』
「威勢のいいパイロットだなぁっ!?」
突っ込んでくるデュエルに向かい合おうとするも……。
「アハッ♪」
笑みを浮かべたハイータがフットペダルを踏み込み、ジン・アイズは空へと舞い上がる。
『空ならばグゥルの方が───ハッ!?』
瞬間、デュエルが搭乗していたグゥルから跳ぶと、次の瞬間には閃光がグゥルを貫く。
「空なら私の悪魔さまが一番に決まってるでしょぉ!?」
『えぇい、こうも期待されてはな……!』
プレディザスターが爆散するグゥルの横を下降していき、地上スレスレを飛ぶ。軽く跳んだジン・アイズがそのプレディザスターの上に乗れば、ロマは高度を上げていく。
地上に落ちたデュエルがビームライフルを撃つが当たるわけもない。
唯一空中にいたバスターがランチャーを連結させるが……。
『ハイータ!』
「遅いんだよねぇ!?」
プレディザスターの背を蹴って加速するジン・アイズ。その背後のプレディザスターから放たれたミサイルがジン・アイズを追う。
ハイータがトリガーを引けば、ジン・アイズのモノアイ部分からビームが放たれる。
空を裂くは狂気の火。
それは真っ直ぐに、バスターの左腕を貫く。小さく爆発するバスターの左腕、笑顔を浮かべるハイータ。
「やったね狂い咲きィ!」
『ハイータ! そのまま駆逐艦の迎撃にあたれ、ムウだけではあの数はどうにもならんし、アークエンジェルにトラブルだっ』
「いつもの勘ですかぁ!?」
そう言いながら、加速するジン・アイズはバスターにビームライフルを放つ。
グゥルから跳んで回避するバスターだが、空中のバスターに向かってジン・アイズは蹴りを放ち、バスターを遠ざけつつも乗り捨てたグゥルを足場にさらに跳ぶ。もちろんグゥルを撃ち落とすことを忘れずに……。
離れると通信にノイズが走り出す。
『認めたくないが、そういうことだ……!』
「かしこまりぃ! ロマくんの命令なら物騒なことからえっちなことまで!」
『ええぃ戦場を乱す物の怪かっ』
「残念ケダモノでしたァ♪」
それを最後に通信が切れる。空中で落下しつつも、ジン・アイズはバーニアを吹かして加速していく。
笑みを浮かべて、その加速度で敵艦を捉えると加速。
スカイグラスパーも戦闘をしているが、まだ落とせていないようだった。
すでに一隻は落としているようだが、アークエンジェルの方に視線を向ければ確かになにか様子がおかしい、工場地帯の建造物に引っかかっているようにも見える。
だが、まずは敵駆逐艦だと、飛んでいるディンをビームライフルで撃ち落とすなり、持っていたショットガンを落ちる前に空中でキャッチ、さらに加速して敵艦の正面に降りた。
「帰ったらたっくさん愛してもらっちゃうからね、ロマくぅん♪」
上機嫌のまま、ディンの持っていたショットガンで駆逐艦のブリッジを撃ち抜き、即座に離脱。
『おいおい嬢ちゃん! すっげぇな!』
「褒めてもなにも出ないよぉオジサァン!!?」
『おじさんじゃない! アイツ全然羨ましくないなまったく!』
スカイグラスパーが別の駆逐艦へと飛ぶのを確認すると、ハイータはアークエンジェルの方へと飛んだ。
ロマからの指示はアークエンジェルのトラブルを解決してこいということだ。すべてはまずそこから……。
◇
ロマのプレディザスターが、きりもみ回転しながらミサイルと機関砲、ビームを一斉射する。
コックピットのロマの視線の先には、旗艦レセップス。“本来”と違い、バスターもデュエルもおらず、ザウートが配置されただけのレセップスには、プレディザスターを迎撃するだけの力もない。
故に、大量のミサイルと機関砲とビームをそのエンジンや船体に浴び、レセップスは機能を停止する。
これで、退艦せざるをえないだろう。副官であるマーチン・ダコスタも含めて、だ。
「次は……!」
『駆逐艦の方も迎撃しているようですわよ。たぶんあの爆発ですと』
「概ね順調か、ハイータめさすがだな!」
『はぇ~あの薬中女ったら存外やりやがりますのね~』
プレディザスターが大きく旋回し、目標地点へと飛ぶ。
そして、すぐに───メインモニターに“敵”を捉えた。
「見つけたぞ。“砂漠の虎”……!」
『ロマさん!?』
ストライクと戦闘中のラゴゥにビームを放つ。
『男同士の戦いの邪魔をするとは、不粋だねぇ赤い悪魔ッ!』
『あらアンディー、私は邪魔者かしら?』
『いやぁ、これは困った。君たちを倒してから弁明するとしよう……!』
ラゴゥから放たれたビームを回避しながら機関砲を撃つが、バルトフェルドとてザフトのエース。当たるわけもなく軽く回避され、接近したキラがラゴゥのサーベルをシールドで受け止めつつ、自分のサーベルを振るうもわけなく回避された。
顔をしかめつつ、ロマが旋回。
「消えてもらおう!」
『どうかな、手負いのオオカミはなにをするかわからんよ!』
「油断はしない。徹底的にやらせてもらおうか……!」
なにをどう言おうと、やはりロマはなにもしないまま“キラにバルトフェルド達を討たせる”わけにはいかなかった。それができれば苦労もしないのだ。
それができないからこそ、こんなところまで来てしまったのだ。
だが、キラは叫ぶ。
『もう止めて下さい! 勝負は付きました! 降伏を!』
『言ったはずだぞ! 戦争には明確な終わりのルールなどないと!』
その会話に、ロマは介入する術を持たない。そんな会話“知るわけない”のだから……。
『バルトフェルドさん!』
「キラ、奴との戯言はやめろ!」
いや、必要な会話のはずだ。しかしそう言って、トリガーを引く。
それを回避するラゴゥに歯痒さを覚えた故に、高度を地面ギリギリにまで下げて加速。
ラゴゥを正面から撃つように、機関砲とビームを放ちつつ、ミサイルを放つ。
『ぶっ潰してやりますわぁ! 燃える鉄と肉の匂いを放ちながら死ねですわぁ!』
『えぇっ!?』
キラの驚愕の声も当然だろう。知らぬ女、チェシャの声。
『あら、下品ですのね……!』
『ッの! お嬢様ぶりやがってぶち殺してやりますわぁ!』
「少し黙れポンコツ……!」
ラゴゥが飛び上がると、プレディザスターへとビームを放つ。
横にバレルロールして回避したプレディザスターを相手に、横から加速するラゴゥ。
「チィっ!」
『もらったぞ悪魔!』
「させるものかッ!」
さらにフットペダルを踏んで急旋回、ラゴゥの方に正面を向けて加速。
「ぐぅ!」
『なにっ!?』
加速するプレディザスターの追加ブースターの一つを、ラゴゥのビームサーベルが切り裂く。
だが、ただではブースターをやるわけにもいかない。プレディザスターの主翼がラゴゥの左前脚を切り裂いた。
『くっ! やってくれる……ナチュラルとは信じ難いが、君はその力でなにをするのかなっ』
「私がしたいことをする、だけさ……!」
バランスを崩すプレディザスターをなんとか上昇させながらも、脳裏をよぎるのは自らが全てを“捻じ曲げて”でも守りたいと思った女たち。
ロマとバルトフェルド、立場も矜持もまったく違う二人だが、それでも……お互いに“死にゆく男たちは守るべき女たち”と共に、戦う。
ラゴゥに背を向けながらも、プレディザスターのミサイルが放たれる。
左足を失ったラゴゥが、着地しつつビームでミサイルを迎撃しつつ、跳ぶ。さらに放たれたビームはプレディザスターに向けてだが、当たるわけもない射線。
それでも前に出た“ストライク”がそれをシールドで凌ぎ、ラゴゥへと飛ぶ。
『僕は、僕は……!』
『少年! 戦うしかなかろう。互いに敵である限り! どちらかが滅びるまでな!』
飛びだすラゴゥをストライクが迎え撃とうとするが、その間を───閃光が奔る。
『邪魔をするか悪魔っ!』
「ええぃっ、若者がすることではない!」
プレディザスターの残った三つの追加ブースターがパージされ、勢いよく飛んでいく。
その内の一つをラゴゥがビームで撃ち落とすものの、もう一つは外れ、最後の一つがラゴゥに直撃───直後に爆発。
『ぐおぉっ!?』
『アンディ!?』
通信機から聞こえる声に顔をしかめるロマ。爆煙から、ラゴゥが砂漠の上に落下する。
ボロボロのラゴゥがそれでもビームキャノンの砲門をプレディザスターへと向けようとした。それを確認したところで、顔をしかめたそのままに、ロマはトリガーを引く。
放たれたビームがラゴゥを貫くと、そこでラゴゥはとうとう動きを止めた。
「ぐっ……くっ」
『どうしましたのあなた!?』
「なんでも、ない」
どうなったかなどわからない。かなりコックピットに近い位置に撃ちこんでしまったのは癖だったのか、本能だったのか……。
旋回するプレディザスターがストライクの近くを通れば、キラは察したのかストライクが少し跳んでプレディザスターの背に乗る。
モニターで確認をするが、ラゴゥは動くはずもないただの鉄塊。そこから人が出てくることもなければ、ただの一つの動きも無い。ロマ自身が“そうした”のだ。
片手で頭を押さえながら、息をつく。
「チェシャ……ユー・ハブ・コントロール」
『かしこまりですわ。アイ・ハブ・コントロール』
それでも安全確認のために周囲のモニターに目を配れば、戦闘はすでにこちらの勝利。ザフトは撤退していくようで、明けの砂漠の面々も追撃するでもない。
安心したように息を吐きながらも、手は震えて気分も非常に悪かった。
今すぐ眠ってしまいたい気分だが、目を瞑れば“会ったことないはずの敵の顔”が浮かぶ。
『殺したくなんて、ない……けどっ』
そうだ、殺したくはない。“顔を知っている相手”は……。
『殺したくなんて、ないのに……ッ!』
だが、ロマはこれからも殺すのだろう。
頭を、胃を───いや、心を抉られるような痛みに浸りながらも、自身を殺しながらも……ただ、彼女たちを守るために、だ。
「……さて、完璧な勝利だな」
『あら、感傷に浸るのはおやめになったの?』
「さてな、勝利を喜ぶとしようか」
スイッチを切り替え、フッと笑みを浮かべる。
それに“守りたい相手”と会えれば、コロッと気分は変わってしまうぐらいには自分の心は簡単なのだと理解しているから……。
アークエンジェルに近づけば、ジン・アイズから通信が入ってくる。
『ロマくぅ~ん! 聞こえますかぁ! 貴方のペットハイータちゃんですよぉ!』
「ハイータ、冗談ではない!」
『アハァ♪ 冗談なんかじゃありませんよぉ』
―――なおタチ悪いんだよぉ!
『……おかえりなさい、ロマくん』
「……ああ、ただいま」
守るべき相手、その一人からのそんな言葉を噛みしめて、ロマは笑みを浮かべて返した。
『……ということで、薬のせいにして温めあいませんかぁ♪』
―――落ちたな、俺の株が。
ロマがとどめでした
というか足止めキラ、ほとんどロマとハイータが撃墜みたいな感じに
チラッとゲスト出演もさせつつ……
シリアス一色にしても良かったのだけれど、こんな感じに
ちょっとだけアズにゃんたちの出番がありましたが、次回はもうちょっと増える予定でございます
メインヒロインたちが出てない不具合、早々に修正パッチ入れねば
最近忙しいながらもなんとか週一更新、そのせいでなんか変なら申し訳ないと思いつつ……
それでは、次回もお楽しみいただければと思いますー
それとアンケート落としときますわ~
アウルとスティング……たぶん(SEED時点では)ほとんど出番ないけど一応です
もしかしたらデスティニーするかもしれないので……
アウルとスティングは……?
-
女の子だよ!
-
男の子だよ!