盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
渓谷を行くアークエンジェルのブリッジにて、艦長席に座るマリュー・ラミアス。
そしてその隣に立つロマ・K・バエル。
サングラスの奥の瞳が前方を見据えている。
突如、操舵士であるアーノルド・ノイマンが喜びに満ちた声で報告をした。
「海へ出ます。紅海です!」
「ようやく、だな」
静かに息をつくロマの、その視線の先には───“紅海”と呼ばれる青い海。
砂漠の虎との決戦を終えて、ようやくアークエンジェルはそこへと辿りついた。
目的地であるアラスカ、ひいては“オーブ近海”までもう少しだ。
コロニー育ちの者は初めて見るであろう海、目を輝かすクルーも少なくは無い。
軽くマリューの方に視線を向けると、マリューはわかっていたのか微笑を浮かべて頷いた。
「少しの時間なら交代でデッキに出ることを許可します。艦内にもそう伝えて」
少年少女の歓喜の声が聞こえる。それに今度はロマが微笑を浮かべる。
「ソナーはブルーコスモスからの補給に入っていましたし、ありがたいことですわ」
「アズラエル理事がここまで察していたのは流石としか言えんな」
おそらくアラスカに自力で向かうには海を通ると理解しているからだろう。アークエンジェルの規格に合うソナーまで用意されていた。おかげでわざわざザフトのものをこちらにつなげるような真似をしなくて済んだというわけだ。
ロマがナタルの方に視線を向ければ、少しばかり破顔しており、安心感なども感じているのだろう。
そうしていると、ナタルが隣に立つ。
「それにしても意外でした」
「ん、なにかな?」
意外なのはナタルの方から雑談を振ってきたことだが、いちいち言葉にすることでもなかろう。
「彼女たち、ですよ」
「……ああ、それに関しては私もだわ。大尉が賛成するなんて」
───ああ、カガリ・ユラ・アスハのことか。
そういうことだろう。アークエンジェルがアンドリュー・バルトフェルドを討伐した夜、カガリ・ユラ・アスハが『私も連れて行け』ということを言った時に、ロマがそちら側に“味方した”ことを言っているのだ。
それもそうだ。でなければ“詰む、かもしれない”のだから……。
カガリもかなり意外そうな顔で自分を見ていたのを思い出して、ロマはサングラスの奥の瞳を細めて苦笑する。
「しかしまぁ……勘だ。勝利の女神が必要な気がしたのさ」
「まぁ、私も異論はありませんでしたが……」
ナタルの言葉に、ロマは静かに頷く。
どちらにしろ彼女はこちらへ付いてくることになっていたのだから、問題も無かろう。
「さて、私も休憩してこよう。久しぶりに海の香りにも浸りたい」
「ええ、いってらっしゃい」
マリューの言葉に片手で軽く返すとブリッジを出る。
すると、前から歩いてくるキサカを発見する。特になにを言うこともないと、通り過ぎようと思うのだが、止まったキサカ。
眉を顰めながらもロマは歩みを止めた。
「どうした?」
「いや、礼を、と思ったんだが……」
「構わんよ。私も乗せた方が利があると思ったからしたにすぎん」
実際にその通りなのだ。キサカは複雑そうな表情を浮かべている。
「そうだな、いつか借りは返してもらえればそれで結構だ」
「ブルーコスモスに借りを作るとは、恐ろしいことをしたかもしれんな」
笑うキサカに、ロマも軽く笑みを浮かべて返し、歩き出す。
別段キサカが振り返るような気配も感じない。そのまま後ろでドアが開く音、そして閉じる音も聞こえたし何事もなく、だ。
エレベーターに乗り込んでデッキのある階層で降りると、見知った顔を近くに見つけた。
「……ハイータ」
「あ、ロマくん!」
ハイータ・ヤマムラである。
バルトフェルドとの一戦の後には、抱き着かれ押し倒されたりもしたが、キラが止めてくれたのは記憶に新しい。その後、薬の効果が切れると顔を真っ赤にして機体に引きこもったりもしたが……。
結果的にはいつも通りに戻ったのでよしとしよう。ロマはムウに同情のこもった目で見られたりもしたが、よし。
さらにロマもハイータもクルーから生暖かい目で見られることも増えたがそれもまたよしとしよう。
ロマの目的を察しているのか、その隣を歩くハイータ。
「それにしても海ですよ。なんだか久しぶりですねっ」
「そうだな、私も久しい」
「……水着とか無いんで泳げないですけどね」
―――水着! そういうのもあるのか!
「……残念だ」
「あれ、海好きでした?」
水着が好きなのである。水着ガチャのために石は溜めるものだと、かつて教わった。
「残念だ……」
「こ、今度行きましょうよ。みんなで」
ハイータは水着を見せたい。ロマは水着を見たい。win-winの関係なのである。
◇
地球、アズラエル財団の研究所。
シミュレーションルームから出てくるのはクロト、オルガ、シャニの三人だ。
なぜ今更こんなことが必要なのかとも思う三人ではあるが、基本的には三人一組での運用を想定して作られている彼女らの機体の力を最大限発揮するためには、訓練を何度繰り返してもやりすぎというものも無い。
背を伸ばすオルガが、くぁっと欠伸を零す。
「ん、眠ぃ……」
「疲れた?」
シャニの言葉に、首を横に振るうオルガ。
しかし最近、たっぷりしっかりと寝れてないのは確かだ。その理由もなんとなくクロトとシャニも察してはいるのだが……。
「おにーさんのこと心配なの?」
「はっ!? 違ぇよ!」
突然強い口調で否定するオルガ。その顔は赤い。
「オルガ、あざと」
「はぁっ!?」
シャニの言葉に、さらに顔を赤くするオルガ。憤怒もあるが、やはり羞恥の方が強いのだろう。それは図星だからか、それとも素直に乙女として思うところがあるからか……。
まぁ十中八九前者であると、クロトは理解した。
それをおいても、シャニにあざといと言われるのは心外ではあろう。奴は歩くロマの“服の袖をつまむ”ような少女である。
それをあざといと言わずしてなんと言おうか。
「ったく、なんだよ。別に……心配ぐらいすんだろ」
赤い顔のままそう言いながら、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま歩くオルガ。
「まぁ僕も心配はしてるけどさぁ、寝不足になるほどぉ?」
「うっせーよ!」
相も変わらず赤い顔で否定もせず、純粋に声を荒げるオルガを見てクロトとシャニが笑いあう。いつだって三人よれば姦しいのだ。
そして、そんな三人の前へとやって来たのは、盟主王ならぬ盟主女王ことムルタ・アズラエル。
変わらぬ白いスーツでやって来た彼女はどこか上機嫌に見えた。
付き合いも長いのだからそのぐらいはわかって然るべきなのだ。
「どーしたのおねーさん?」
「ん、この人が上機嫌な理由って一つしかなくない?」
「確かに」
三人が頷きあうのを見て、上機嫌だったアズラエルが少しばかり不満そうな表情を浮かべる。
「なんですか、朗報だっていうのに……私があの子の話しかしないみたいな……」
「じゃあ違うのかよ?」
「……違わ、ないですけど」
顔を薄ら紅潮させながら、フイッと顔を逸らして言う。
中々どうしてこちらもあざといが、いかんせん“歳が違う”のでやったとしても周囲の反応は変わるだろう。しかしてロマは素直に“可愛い”と思うのだろうが……。
「おにーさん元気なの!?」
「えっと、少なからず砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドを討つぐらいには元気なようですよ」
クロト、オルガ、シャニが顔を合わせる。それぞれが『誰?』と言いたそうな顔をするので、アズラエルは額に手を当てて溜息をついた。
「ザフトの英雄ですよ。ですが赤い悪魔に撃退されたということで、間違いないそうです」
なぜか鼻高々に胸を張って言うアズラエル。彼女のシャツのボタンがギチギチと音を立ててるがクロトもオルガもツッコまないことを胸に誓った。
シャニはというと『よくわかる』という顔でそのボタンを見ている。
なにはともあれ、後方彼女面で『私も鼻が高いよ……』しているアズラエルは、コホンと咳払いをして空気を変えた。
「最近は赤い悪魔以外にも呼び名があるそうですが」
「へぇ~それは興味ありますねぇ!」
思い切り食い付いたのはクロト。しかし思い切り食いついたのがクロトなだけであって、ほか二人も興味はありそうである。
「曰くアークエンジェルこと“足つき”にちなんで“悪魔憑き”だとか」
「……ん~?」
「もっとこう、わかりやすい方がいいな」
「ええ~」
「私が考えたみたいに言わないでください! それにほら、足つきみたいなって言ってるんですから異名というよりは俗称みたいなものでしょう!」
言われてみればそうだと、三人も納得する。シャニが少し上を向いて考えるような様子を見せた後に、なにか思いついたのかポンと拳で平手を叩く。
「そのうちザフトに
「やですよ不吉な……」
確かに、とクロトとオルガが頷く。
「かっこいいのに……」
それはそれとして、カッコいいかもしれない―――とオルガとクロトは頷いた。
◇
アークエンジェルにて、デッキへと出たロマとハイータ。すると先客が二人ほどそこにはおり、ロマは意外、という風に表情を変えた。
紅海での戦いがあるのは記憶にあるし、アークエンジェルの戦闘もぼんやりと覚えている。
だがしかし、ここでのことをそれほど覚えていないのだ。そこで見てようやく思い出した。
「キラにカガリ・ユラか」
ここでは“本来”なら“バルドフェルドを討ったことによる傷”から泣いていたキラをカガリが慰めたりするわけだが。
心に傷は受けているが“原作”ほど重々しくキラが受け止めていないのは、撃ったのが本人でないからだろう。それでも顔見知りが“死んだ”というのは重いものがあるのだろうが……。
だから落ち込んではいて、カガリは隣に座って話を聞いていたのだろう。
―――まぁバルトフェルドと会ったのも二人だからな。
そこに関してロマはまるで携わっていない。その気もそれほどなかった。
彼と話してみたいとは思うが、やはり討った時のことを思えば会わないにこしたことなかったのだろう……。
「ロマさん……」
「おいお前、こいつのことちゃんと見ててやれよ」
「か、カガリっ……」
不満そうに言うカガリに、キラは気恥ずかしさからか頬を染めてカガリを止めようとする。
「だってこいつ、兄貴みたいなもんだろ」
「フッ、言いえて妙だな」
「ロマ君がお兄ちゃん? ロマ君がお兄ちゃん……かぁ」
―――お前のお兄ちゃんは背徳的で興奮するからやめろ。
決して口には出せないことを思った。ロマは外面にも出さずクールに笑う。
「ともあれ、確かに私が放っておいたのも悪いな」
「な、なんだよ素直に認めるのかよ」
もっと責めるつもりだったのか、意外だというように、カガリが少し引く。
「自分の非を認めぬわけにはいくまいよ。すまなかったな」
「……ってなんで私の頭撫でるんだよっ!」
無意識下でカガリの頭を撫でていたようで、勢いよく振り払われる。
それに関してはロマ自身も驚いていたようで、一瞬だけ止まってしまったのも仕方のないことだ。クロトやステラ、シャニにはよくやっているせいか、癖になってきている。身長が二回りほど低いのも原因だろう。たまにオルガやアズラエルにやって怒られ、ハイータに不満そうに見られたりもする。
そしてハイなハイータにはせがまれる。
―――もしかしてモテ期か?
もしかしなくてもそうなのである。
「代わりにしてくれたんだろう?」
「うっ、まぁ……こいつ、半べそだったから……」
「ちょ、そ、そんなことありませんからねロマさんっ!」
カガリの隣に立って抗議するキラに、なにか物言いたそうなカガリだったが、ロマは笑ってキラの頭をポンポンと軽く叩く。
「いや、顔を知った相手が死んだんだ。苦しいだろうさ……すまない」
「ロマくん、これでも気にしぃなので気持ちを汲んであげてください」
「茶化すなよ」
そう言いながら、デッキの端の方へと歩く。
潮の香りが鼻腔をくすぐる。ロマにとってはあまり好きな香りではないが、それでも心を揺さぶられるには十分なものだ。良い意味で。
静かに息をつくと、隣にハイータが立つ。遅れて反対側にカガリとキラの二人。
「なんで、お前らコーディネイターのく……なのに、地球軍に居るんだよ?」
少しばかりデリカシーの無い言い方だと思ったのか言い直すも、ロマとしてはどちらにしろデリカシーの無い質問だなとは思ったが、直球なのが彼女のいいところでもある。現状では悪いところの方が目立ってしまっているものの……。
それにしたって、活かし方はいかようにでもあるだろうに、とロマは一人心の中で呟く。
ロマがそんなことを考えている間に、カガリの質問にキラは顔をしかめ思考し、呟くように言葉にする。
「やっぱりおかしいのかな、良く言われる」
「でも別に、そこまで極端に珍しくも無いんですよ? ビクトリア基地にもコーディネイター部隊がありましたし」
お世辞にもホワイトな職場とは言えなかったが……。
「まぁ、たぶんナチュラルの方からみたらおかしいのかもですけど」
「おかしいとか、そういうことじゃないけどな。けど、コーディネイターとナチュラルが敵対してるからこの戦争が起きたわけで」
「根本的にそこを勘違いしてるのさ」
ロマの突然の言葉に、カガリはそちらを見る。
カガリとしては“相変わらずなにを考えてるかわからないのに核心だけついてくる奴”という感覚ではあるが、実際に突いているのは核心。それに、そこまで嫌ではないし、目の前の男が嫌いでもない。
妙な感覚だが……指導者、なんて大仰なものでもないが、そういう類の者に見えるのだ。
「この戦争の理由を遡り続ければナチュラルとコーディネイターの確執で違いないが、もはやそういうものではないよ。ザフトが地球にNジャマーを撃ちこみ何人のコーディネイターが犠牲になったと思う?」
「それは……」
「まぁそもそもが地球軍が撃った核が原因でもあるが、無差別攻撃にしたってやり方はあると思うがな」
全面核戦争にしなかった穏健派シーゲル・クライン。などと笑わせる話である。
核以上に野蛮な兵器、行為をしておいてなにを、とロマは心の中で苦々しく思う。
「なにはともあれこの戦争は連合対ザフトだ。ナチュラル対コーディネイターなどと考えるからおかしなことになる。ザフトの被害者は我々ナチュラルだけでない……おかげで反コーディネイターが根強いから、関係のないところで別件の被害者が出る」
そう言いながら、隣にいるハイータの頭を軽く撫でると、ハイータはくすぐったそうに笑みを浮かべた。
「カガリ・ユラ、君も」
「カガリで良い」
「……カガリ、君とてコーディネイターだからどうこうって気持ちはないだろう?」
「まぁ、うん」
「それで良い。それが一番なのだが、やはり比べられてしまうとそちらに当たってしまう」
「別にコーディネイターだからってなんでもできるわけじゃないんですけどね。練習や努力だって必要だし、コーディネイター同士ならそりゃまた確執もあるわけで」
ハイータの言葉は、どこか他人事のようでもあるが、実際にそうなのだろう。彼女がザフトに行っていればなにかで悔しい思いをしたかもしれないし、逆にほかに劣等感を抱かせることもあったのだろう。
そういうものだ。人間の欲など果てしないもの故に、嫉妬や欲望は止まらないのだと、ロマは考える。
「他者より強く、他者より先へ、だな」
「え?」
「いいや、なんでもない。だがキラ、君はどう思う?」
キラを見れば、自分に話が振られたのが意外なのか少し戸惑うも、すぐに海の方を見て目を細めた。
「……怖い病気にはかかんないし、何かの才能とか体とか、いろいろ遺伝子を操作して生まれたのが僕達だけど……でもそれって、みんなの夢だったんじゃないのかな……って」
「そうだな。みな、ジョージ・グレンを目指したんだ。そしてその先を、な」
ナチュラルかコーディネイターを滅ぼせば争いは無くなる……そんなわけはない。そんなことで手に入れた平和が続くものかというのはロマの自論である。
所詮はどちらも同じ人類であり、コーディネイターがどうとか言う前から戦争など無くなったこともないのだ。
思考すればするほどズブズブと深みにはまっていく。
―――考えれば考えるほど泥沼だな。やめとこ。
「あ、キラ……!」
少女の声が聞こえた。四人してそちらを振り向けばそこには赤い髪を揺らして歩いてくる少女。随分な薄着である。
一瞬だけロマと目が合って固まるも、すぐに視線をカガリ、ハイータ、そしてキラへと向けていく。ロマ以外の二人に少しばかり眼力を強めたのを感じ、ロマは苦笑を浮かべた。
妙に距離感が近いカガリに、どうやったって距離感が縮まるであろうハイータ。牽制しない方がおかしいのだ。
「さて、私達は戻ろうか、ハイータ、カガリ」
「はい!」
「なんで私まで一緒なんだよ」
「じゃあ残るか?」
「う゛っ……行く」
不承不承ながら了承したカガリはロマとハイータと共にその場を歩いて去っていく。
ロマがすれ違いざまに軽く挨拶をすれば。フレイも一応は会釈を返す。
残されたフレイが、キラへと近づく。
少しばかり暗かった雰囲気が改善されて、どこかすっきりしたような表情だ。フレイとて自分自身で理解はしていた。
落ち込んでいたキラを慰められるほど、自分には力はないと……。
自覚していただけに、ロマたちを認められない。そしてそれはそれとして。
「あの人、やっぱり苦手……」
「優しい人だよ。ロマさん」
その言葉を否定はしない。だが……。
「なんていうか、優しいのかもしれないけど……内面の優しさをあえて刃で囲ってるっていうか、話してるの見ててもなんか他人事っていうか……」
「なんだか、詩的な表現しようとしてる?」
「そんなんじゃないけど、苦手っ」
顔をしかめて言うフレイを見て、キラは思わず笑う。確かに万人に受け入れられるタイプでないのはわかるが、それにしても“人を嫌う”ことはあろうフレイだが、ここまで人を“苦手がる”というのは、非常に珍しく感じて、おかしく思うには十分だった。
笑うキラに不満そうな表情を浮かべるフレイだったが、どこかその表情には───明るさが見てとれる。
一方でロマはというと、カガリと軽く話をするも別れてハイータと共に格納庫へとやってきていた。
ほぼ損傷の無かったジン・アイズの整備は既に終わっており、ストライクも然り。プレディザスターも損傷した箇所の修理等は終わっているのだが……いかんせん、追加ブースターが無くなったことによりやけに身軽になってしまった。
しかし、身軽に見えても結果的には遅くなったし、奇抜な機動もほぼできなくなってしまったのだが……。
プレディザスターを見ながら顔をしかめるロマに、隣に立つハイータは苦笑を浮かべる。
「まぁまぁ、私がいるのでとりあえずそこまでガッツリなことしなくて良いんですから……」
「わかってはいるがな、不安なものだよ。今までできた動きができなくなるというのは」
染みついた動きをしようものならミス、即撃墜されかねない。
「無茶な機動して怪我するんですから、私としては安心なとこもありますからね」
「心配をかけるな」
そこについては素直に反省して謝罪を述べた。
そうは言っても、またなにか機体を手に入れたらそういうことをするのだろうと察しているからこそ、ハイータは困ったように笑うのみ。
ふと、プレディザスターの方を見てなにかを思い出す。
「……それにしてもチェシャですか、本当にロマ君以外と喋らないみたいですね」
「まったくとんだじゃじゃ馬、いや猫だよ」
見てる側としては二人で戦っていると言われてもピンとこないが、そういうものだとは聞いている。
それにサポートしているのはあくまでミサイルや自動操縦、死角からの攻撃ぐらいなので、結局はロマの技量が要求されるものなのだとか……。
アズラエルとしては不満だったが、ロマはそれで良いと言ったそうだ。
「あ、そういえばロマ君、プレディザスターの」
何かを話そうとするハイータだったが、直後に艦内警報が鳴り響く。
「えぇっ!?」
「敵襲か……!」
海のど真ん中、それでもザフトはアークエンジェルを落としに来るのだろう。いや、本命はそちらではないのかもしれないが……。
ムウを見つけて目を合わせ、頷く。
『総員、第二戦闘配備! 繰り返す! 第二戦闘配備!』
オペレーターであるパルの声が聞こえて、すぐに格納庫は慌ただしくなる。
「ロマ君、またあとで!」
走り出すハイータはノーマルスーツに着替えるために走ったのだろう。ムウも素早く格納庫から出ていく。
ロマはと言うと着替えるつもりもないのでそのままプレディザスターへと乗り込んだ。
コックピット内で、静かに息をつくロマ。
『海に出てそうそうに敵襲ですの!? 厄日ですわ!』
「私は最近毎日思うよ」
そう言いながら、メインモニターから格納庫内を確認。真っ先に出るのは自分になりそうなのを確信し、少しばかり震える手を見て溜息をついた。
いつまで経っても慣れるものでもない。特に今回にいたっては今までとは違う戦闘を強いられるだろう……機体のパワーダウンはもちろん、敵は空と水中だ。
通信で聞こえるマリューの声。
『総員、第一戦闘配備! バエル大尉、フラガ少佐、ヤマト少尉、ヤマムラ少尉は搭乗機へ!』
『ですが艦長、ストライクはっ!』
『空も飛べなけりゃ泳げもしないってことくらい知ってるわ。ハッチから撃ってもらう形に───』
マリューとナタルの会話に、ロマが口を開く。
「バズーカを用意しておけ」
『大尉!?』
「キラの役に立つ。敵機に水中戦機がいるなら対空攻撃で落とされるぞ」
『……マードック曹長!』
『あいよ!』
マードックの返事を聞いて、ロマは軽く頷く。問題はキラ一人に水中を任せなければいけないことだが……と考えたところで、ジン・アイズが持ってきた補給物資を思い出す。
武装もいくつかあったが、その中に……。
格納庫をモニターで確認すると、丁度ハイータがジン・アイズに乗り込むのが見えた。
「ハイータ」
『はぁい♪』
すでに“キマッて”しまっていた。しかしてテンションが高いこと以外はさほど問題もない。
「実弾系、いやスナイパーライフルがあったな」
『ん、アズラエル理事が持ってけって言ったやつがありましたよぉ、そんなのよりロマ君のライ』
「それをな、装備しておけ、私はそう言いたい」
問題しかなかった。
『アハァっ♪ なるほどォ、そういうことデスねぇ……♪』
納得したように頷いたハイータは、すぐにマードックに声をかける。カメラで見ているとマードックがちょっとひきつった顔をしているが、ロマからは“慣れろ”と言う他ないのである。
キラとムウも機体に乗り込んだのを確認し、ロマは再び深く息を吐いた。
『アイツやっぱやっべ~ですわねぇ』
「まぁ、そういう薬だし多少はな。かわいいものだよ」
『身内に甘すぎじゃございませんこと?』
そんなチェシャの指摘に、言葉を詰まらす。
「……甘くもなるさ、こんなことではな」
『わたくしにももっと激甘でよろしくってよ~』
「考えておく」
『遠回しに断られてる奴ですわ!?』
口元に思わず笑みを零すロマ。
しかして、すぐに焦るようなトノムラの声が聞こえる。
『ディン多数接近! 10時、4時、6時の方向です!』
中々どうして厄介なことになっていると、ロマは綻んでいた口元と表情を引き締める。
策はあるが、そうすると今度は海への攻撃の手が緩む。早々にディンの数を減らせれば色々と変わるのだろうが……。
カタパルトへと移動されたプレディザスター、そのコックピットでロマは深呼吸。
『プレディザスター、発進位置へ。プレディザスター、進路クリア……発進どうぞ!』
CICのフレイの声に少しばかり慣れなさを感じながらも、ロマは前を見据える。
「ロマ・K・バエル。プレディザスター、出撃するッ!」
リニアカタパルトで射出されたプレディザスターが、海上でウイングを展開。
即座にスラスターを使い加速、追加ブースターが無くなったことにより急旋回こそできないものの、高速で旋回をかけてディンの一機をビームで撃墜。さらにミサイルをばら撒きディン数機を艦から遠ざけつつ、一機をさらに破壊した。
わずか数瞬でディン二機を失ったザフト兵の戦慄は計り知れないだろう。
旋回するプレディザスターを警戒してか、ディンは少しばかり距離を取った。ムウのスカイグラスパーも出撃。
ロマは通信にて、二人のパイロットへと声をかける。
「ハイータかキラのどちらか、私の上に乗れ!」
ちょっとした策のつもりで言ったのだが、それが悪かった。せめてどちらか一人を指名するべきだった。
『僕が!』
『私が!』
二人の声が聞こえて、ロマはどうするかと思考した。
どちらかが先に譲るかすると思っていただけに、ロマは少しばかり混乱する。挙句どちらも声を出すわけでもない……。
そもそもロマのプレディザスターに乗って戦闘など、かなりの技量を要求されるのだが、キラもハイータもそれをこなせるだけの技量を持っているからさらに厄介である。
どうするかと考えたロマだが、先に言葉を発したのはキラだった。
『ハイータさん、ロマさんの方へ!』
『キラきゅぅん♪』
『僕が艦を守ります。任せてください!』
「……キラ、任せた!」
『あぁ!? 背中任せて的な感じですかぁ!? 私もそっちやりたかっ』
「ハイータこい!」
『ワンワン♪』
カタパルトから射出されたジン・アイズを拾うプレディザスター。
その背に乗ったジン・アイズの手にはスナイパーライフルがあり、背に乗るなり即座に機体を安定させるとスコープを覗き込み───撃つ。
離れた位置にいたディンが一機、撃墜される。
すると途端に、遠巻きに眺めていたはずのディンが動き出す。
「やるな……!」
『えへへっ、もっと褒めてくれていいんですよぉ、ご褒美期待しちゃいますしねぇ!』
「考えておく、まずは敵を殲滅するぞ……!」
技量も十分、いかんせん“余計なこと”を口走るのさえなんとかなれば実に頼もしい。
『了解です♪ おじさんも頑張ってくださいね!』
『おじさんじゃねぇって! ああもぉ! やるぞロマ!』
「了解だ。ムウ少佐……!」
ミサイルを放つも、今度はディン5機が迎撃、または回避をしてみせる。一機だけ明らかに技量の違うディンを見つけ、ロマはその色違いの瞳を細めた。
視線の先、この部隊の隊長であろう“マルコ・モラシム”が搭乗しているであろうディンを見据える。
「見せてもらおうか“紅海の鯱”の腕前を……!」
『私とロマ君の愛のパゥワーで鯱なんてイチコロですね!』
「鯱は怖いぞ……!」
ロマがフットペダルを踏み込み、操縦桿を引く。
プレディザスターは閃光の如く、加速。
そして───紅海は血に染まる。
こんな感じで海編スタートです
原作沿いな感じですが、ちょっとずつ変化は加わってます
カガリとも少し打ち解けて、キラとフレイも少しばかり軟化
ハイータはいつも通り
非チートと言いつつロマがチートくさい気もする今日この頃、でも砂漠で結構危ないところがあったので非チートで違いないはず
なにはともあれそのうち水着回とか入れたいなと思った今日この頃です
では次回もお楽しみいただければと思います
アウルとスティングは……?
-
女の子だよ!
-
男の子だよ!