盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
海上を行くアークエンジェル。
いつも通り、ロマは制服姿で廊下を歩く。先ほどまではブリッジにてマリュー、ナタルと今後についての話もしたのだが、結局は変わらずだ。
だが、それで良い。必要だったのは“確認”であって進路の“変更”ではない。
ここで改変する必要は一切ないのだ。ともなれば……。
「問題は私だな」
『どうしましたの』
耳元から聞こえる支援AIチェシャの声。
「いや、各部の異常は?」
『昨日から何回言いますの、滅茶滅茶にヨユーですわよ!』
自信満々という声音で言うチェシャに、ロマは静かに息を吐き頷く。準備はできている。いつ敵が来たとて問題はない、はずだが……。
いかんせん、いつ来るかなど日にちや時間までわかるわけもない。
歩いていると、ふとこの先はキラの部屋だということに気づく。“グロッキー状態”のフレイもいるので訪問するわけにはいかないが、声ぐらいかけておくか悩む。
スルーが安定だと歩き出した直後───艦内に警報が張り響いた。
「なに?」
『総員、第一戦闘配備! 繰り返す! 総員、第一戦闘配備!』
『来ましたわね。ディンの5機や6機楽勝ですわぁ!』
そのぐらいならば良いが、と思いつつ歩き出す。
キラの部屋の前に辿りつくなり、丁度出てこようとドアを開けたキラと鉢合わせて少し驚くも、キラも驚いたようにロマの顔を見る。通り道であるからに仕方ないのだが……。
なにか言おうとしたキラに、部屋の中から声がかかった。
「キラぁ、私も仕事……」
「フレイ寝られるなら寝ちゃった方が良いから……」
「っ、うん、ごめんね……頑張って」
弱々しいフレイの言葉を聞くなり、キラは部屋を出る。
「あっ」
そんな声に、キラとロマが同時にそちらを見れば、そこにはヘリオポリスでのキラの友人たち。サイに関してはとても複雑な状況であることを知っているからか、なんとも言えない表情を浮かべる。
だが、その中で一番最初に口を開いたのは───サイだった。
「俺が言うことじゃないけどさ、キラ……頼むな」
「……うん」
微笑を浮かべるサイに、キラは頷く。
そしてロマはというと、サイの変化にもだがフレイについての方が驚いていた。体調が悪かろうに仕事に向かおうとしたこともそうだが、諸々と違う気がすると……。
走り、去っていくサイたち、残されたキラがロマの方を向いた。
「行きましょうロマさん!」
「ああ……」
頷いて、ロマも走り出す。
目的地である格納庫に着くなり、ロマはプレディザスターへと駆けだす。
キラは更衣室へと向かい、ハイータが既にジンへと乗り込もうとしているのが視界の端に見える。そしてさらに視界に映るのは───マードックとムウ、それと、カガリだ。
そういえばそうだったと、忘れていた自分に顔をしかめたくもなる。
前回はキャンセルできたが、今回はどうしたものか……。
「だからなんで機体を遊ばせておくんだよ! 私は乗れるぞ!」
「だからあんたはっ……!」
カガリの言葉に、マードックが抵抗を見せる。
ロマはそんな二人へと歩いていくが、カガリは背を向けていて気づいていないようだった。
「あ、大尉ぃ~!」
「大尉って……げっ」
振り返って顔をしかめるカガリ。彼女も、ロマは止めるだろうとわかっていたのだろう。だからこそ早々に話に決着をつけようとしたのだが、そうもいかなかった。
そもそもそうでなくとも、ロマにカガリが出撃すると報告が行かないわけがないのだ。
「カガリ、なにをしている。私は言ったはずだが?」
自覚を持てとの話、だろう。オーブの、獅子の娘として……。
「あ、アークエンジェルが沈んだらみんな終わりだろ? なのに何もさせないでやられたら、化けて出るぞ!?」
彼女が出なければ、彼女のスカイグラスパーが“ザフトの輸送機を落とさねば”、ある一つの出来事がなくなる。ザフトの輸送機を撃墜し、彼女も撃墜され、無人島に流れ着く。そこでザフト兵、アスラン・ザラと出会うことになるのだ。
しかし、それでも……。
「やられないさ、私がやらせんよ」
「っ……」
カガリを、目の前の少女を生死のわからぬ戦場に出せられるほど、ロマは覚悟が決まった男ではない。
「大人しくしていろ。キサカはどうした、まったく」
ため息をつくロマに、カガリは歯痒そうな表情を見せるがその頭をポンポンと叩いて収めようとする。
「子供扱いするなっ!」
「なら聞き分けをもたんと、だろうさ」
ロマの手を振り払って、顔をしかめるカガリ。マードックとしては今にも噛みつきそうな犬を見ている気分ではあったが、ロマはいつも通りであった。
カガリがスカイグラスパーの方を見てから、再びロマに視線を向けるも、やはり首を横に振るわれる。それもそうだろう。
「私やムウ少佐、それにハイータとキラもいる。いざとなれば私がどうやったって守るさ、この船はな。もちろんキラも」
純粋に、カガリはキラを心配しているのは理解していた。だからこそそう言ったのだが、やはりどこか不満そうなのでいまいちわからなくなるロマ。
だがしかし、いつまでもそうしているわけにはいかないと、軽くカガリの肩に手を置く。マードックに視線を向ければ、後頭部を掻きながら頷いて他の機体の方へと向かう。
二人きりになって、ロマは単刀直入、真っ直ぐに話す。
「君の仕事は戦場に出て戦うことではないだろう。誰かに守りを託すというのは今の内に慣れておくべきことではないか?」
「慣れるって……!」
戸惑うカガリに余計な反論を考える隙も与えず、たたみかける。
「さらに言うと、スカイグラスパーを軍人でもない者に、いや君にいじらせるわけにはいかんよ。シミュレーターでさえ本来なら……」
「わ、わかったわかったから!」
「……なら良い。今すぐ大人になれとは言わんが、少しずつ大人になっていくべきではあるな」
「だから子供扱いするなって!」
それっぽい言葉を口にして、カガリをたしなめるが、やはり不服そうではあった。仕方あるまいとそこは理解して、再び軽く頭を撫でる。
手を振り払おうとするカガリだが、ロマはその前に手を下げて回避。さらに強く睨まれるが、ロマは軽く笑って踵を返し歩き出す。
後ろに軽く手を振ってプレディザスターへと向かうロマを見て、カガリは不満そうに床を蹴る。
「なんなんだよ、保護者かっての……」
深いため息をつくと、カガリは格納庫の出口に向かって足を進める。
プレディザスターへと乗り込んだロマが、静かに息を吐く。
それっぽいことを言っているだけで、実際にカガリの立場などよくわかっていないまま投げかけた言葉である。彼女の“無断出撃”を知っているからこそ、だ。
原作で見たキャラクターではなく、今を共に生きる人間、だからこそ危険な目に合わせるわけにはいかない。なんてことはない一般的な思考、ではあるのだが……。
「キラたちを戦わせておいて、よくもまぁ言えたものだ」
自嘲するように笑う。
『あら、珍しい顔をするんですのね。的を射たことを言っていましてよ?』
「あのような、説教とも言えんよ。ただの屁理屈さ」
『嫌われても文句は言えませんわね~』
「……そうだな」
『まぁ嫌われてないからこそ、あんな感じなんでしょうけど』
チェシャのAIらしくもない言葉遣いに慣れたつもりではあったが、人の心の機微までも感じるのだから、流石に驚いた。それに嫌われていないからこそ、ということもだ。
だが、アークエンジェルを落とさせないと約束はした。故に彼女も“無茶”を冒してまで戦うとは考えない。
素早く機体のチェックを済まして、深く息を吐く。
機体に、否。艦全体に振動。
「戦闘が始まったな……浮上したか?」
『そのようですわね。バリアントなんかも、バシバシ撃ちまくってますわ』
「なによりだ。さて、こちらもそろそろだな」
そうしていると、突如サブモニターにキラが映る。
『ロマさん、僕はソードストライカーで海に降ります。前回みたいに……!』
「水中の戦力も増しているかもしれん……以前と比べてな」
―――あぶねぇ! 原作と比べてとか言うとこだった!
なんとか違和感もない言葉にはなった。問題もないだろう。
『はい、危なそうなら上がるつもりです』
「そうしておいた方が良いな。我々は海には入れん」
そう言うと、キラが深く頷く。
通信が切れると、ストライクが海へと入ったことがアナウンスで知らされ、プレディザスターはリニアカタパルトへと運ばれていく。
すると、再び通信、サブモニターにはハイータ。
既にヘルメットは放り出しているし、ノーマルスーツは胸元を大きく開けていた。下着はつけていないのか胸の間がしっかりとロマの“
しかし冷静に、至って冷静にロマは対応しようと表情も態度も崩さない。そもそもそんなもの研究所の方で散々見ているはずなのだ。にも関わらず未だに動揺しそうな方がおかしいのである。
なにはともあれ、サブモニターでニコニコしているハイータ。
「ん、どうした?」
『顔見たくなっちゃっただけですよぉ♪』
───かわいいかよ。
『たっくさん殺して帰ったらぁ、たっくさん褒めてくださいねェ!』
「……了解した」
微笑を浮かべてそういうロマに、ハイータが瞳を輝かせる。
『約束ですからねッ♪』
「あぁ、また後で、だな」
―――俺が、お前に殺させるんだから、ある程度の責任はもつさ。
プレディザスターがリニアカタパルトへと運ばれる。視界の先には光。
『そんな捨てられた子犬みたいな顔しないでくださいまし、縁起が悪くってよ』
「わかっているさ。ちょっと迷っただけだ」
『貴方みたいな人間が迷うと死にましてよ?』
「理解しているから、迷うのさ」
苦笑しつつも、グリップを握りしめ、フットペダルにかけた足に力を込める。
全身の血が流れる速度が速くなるような妙な感覚、そして昂揚感。震えていた手は止まり、昂揚はしているにも関わらず、やけに冷静。戦闘になるといつもこうだ。
今更違和感もないが、おかしなことだとは思う。
だが、それでもそれはロマにとって───助かることではあるのだ。
『プレディザスター、どうぞ!』
「ロマ・カインハースト・バエル。プレディザスター……出撃する!」
リニアカタパルトによりプレディザスターが、アークエンジェルから海上へと射出される。
主翼を展開するなり、ロマは自身に集まる敵意を感じて即座に動き出す。フットペダルを踏み込み───加速。
背後を通るのは“ディン”の攻撃。
『出待ちはマナー違反でしてよ!?』
「さて、私には良いハンデだ……!」
『大きく出ますのね!』
戦いともなると気が大きくなるが、それもまた仕方のないことだ。
海中ではキラが戦っているのだろう。空ではムウが飛んでおり、ハイータはアークエンジェルから射撃を行っている。だが、ディンの数は10機。
母艦も一隻ではないだろう。ここで手をこまねいていてはしようがない。
『落ちろ、赤い悪魔ッ!』
「フッ、挑発とは……若いな!」
実際のところ、敵兵がロマより年下であるパターンの方が低いが、そう思わせられるだけのことはあるのだろう。
ディンからの散弾での攻撃を加速して回避、追加ブースターもなく無茶な機動はできないが、ビームを放ち一機を撃破。
しかし、迫るミサイル。
「チェシャ!」
『迎撃ですわ!』
プレディザスターが放ったミサイルがミサイルを迎撃するも、多方向から一斉に放たれたそれに対処しきれるはずもなく、さらに放たれたライフルがプレディザスターを被弾させる。
衝撃に揺れるコックピット、ロマは顔をしかめつつ、ライフルを放ったディンに向けて機関砲を放つ。
しかして、それが当たるでもない。
「機首の方にしか撃てなくてはな……!」
『どうしますの!? って、出撃ぃ!?』
「な、なんだとっ……!」
モニターに映るスカイグラスパー二号機。
「カガリッ……えぇい、じゃじゃ馬娘め、なにをするッ!」
『どうしますの!?』
彼女を守りながら戦えるかと聞かれて、今の状態では自信満々で頷くことはできない。
だからこそ、ロマは操縦桿を握りしめてその瞳を細める。彼女の決意など知らないロマだが、それでも彼女は守らなくてはならないのだ。
故に、プレディザスターは加速した。
「やるぞ、チェシャ……!」
『やるんですのね、あなた! 今、ここで……!』
◇
アズラエル財団研究所ではない連合の拠点にて、アズラエルが手に持っていた端末をテーブルに置いて溜息をついた。
もたらされた情報は有益なものではあった。だが、今のアズラエルとしてはそれを知ったとしてもより必要な情報があるのだ。所詮パナマ基地が攻撃されるとかそんな話である。
必要ではあったが、最重要ではない。彼女の最重要はもっと私情的であった。
ちゃんと仕事はこなそうとも、思考の中には常に……。
「はぁ~」
VIP用の部屋に、その溜息の声が響く。
そしてそんな溜息を聞いた三人の少女が、顔をしかめた。
「溜息つかないでよ。こっちまで気が滅入るじゃん」
近くにいたクロトが不満そうに言う。連合の制服すら着用せずにシャツ一枚とズボン、髪は珍しく後ろで束ねており、どこか印象が違う。
まぁなにはともあれ、アズラエルはそんなクロトすら別に気に留めるわけでもなかった。
「……一応、アークエンジェルがアフリカを発ったという情報はきたんですが、それ以来すっかりですねぇ」
しっかりとアークエンジェルに赤い悪魔が同行しており、共に右腕が赤いジンがいたとの情報もあった。とりあえず安心はしたものの、やはり紅海を通ってともなればザフトの追撃が気になるところである。
カーペンタリアから直接、ではないもののあそこが本気で戦力を送れば潜水空母数隻が一気に襲い掛かってきかねない。そうなればプレディザスターでどの程度戦えるのか……。
ジンは水中も空中もどうにもならないので、考えるまでもない。
「“フォビドゥン”の開発がもう少し早ければ、だったんですが」
「そんなこと言ってもしょうがないじゃん、私も行きたかったけど……」
ソファに膝を抱えて座るシャニがむすっとしてそう言うと、アズラエルも頷く。だがそうはならなかったのだ。故にロマに頼るしかないのだが……心配は心配なのだが、どこか大丈夫だという妙な予感もあった。
あのプレディザスターには“それなりの機能”も付いているし、“高性能特殊支援AIチェシャ”も積まれており、ハルバートンの言うようにストライクのパイロットが“
最悪、ハイータがストライクにでも乗ってくれても水中戦ぐらいはこなすだろう。
「ん~鯱、ですか」
「……シャチ?」
「ザフトのエースですよ。水中仕様のジンでブイブイ言わせてたそうです」
そう言って苦笑するアズラエルに、三人娘が首を傾げる。
「……ぶいぶいって、なに?」
アズラエルは答えない。何事も無かったかのような表情で続けた。
「まぁあの子が負けるとも思えませんが、プレディザスターのアレを使えば」
「バレちゃっていいの?」
「所詮は試作機ですよ。その機能を今後使う予定もありませんし、それでザフトのエースを撃破できるなら上々です」
そう言いながら、端末を軽く叩いてとあるデータを開く。
「脱いだら凄いんですって、ね?」
「……おば、おねーさんのこと?」
「おねーさんおっぱいそれ以上大きくなんの!?」
シャニの言葉に食いつくクロト、アズラエルがこめかみをピクピクとさせているのを見て、オルガは小説を顔に乗せて昼寝を決め込んだ。
◇
加速するプレディザスターが、攻撃を回避してディン数機の間を行く。
そのウイングで切り裂かれぬように距離を取ったディンだったが、すぐにプレディザスターを追う。
背後から放たれるライフルやらミサイルを回避していくプレディザスターのコックピット内で、ロマが深く息を吐いた。
正面のモニターに表示される文字の羅列。それらすべてを理解できるはずも、する必要もない。
故にロマは、左右の手元についている赤い大き目のボタンを、拳で叩く。
「ユー・ハブ・コントロール……!」
『アイ・ハブ・コントロールですわ!』
プレディザスターの操作権がチェシャへと移る。
『装甲展開───』
高速で飛行するプレディザスターの背部装甲に亀裂が走り、少しばかり開く。
『───パージ』
その装甲が外れていく度に、背後へと高速で流れるプレディザスターの装甲。特殊合金の破片が背後のディン二機を襲い、損傷させ、傷つけていく。
一際大きなパーツの直撃を受けたディンがそのまま海へと落下していくが、そのディンを気にかけたディンもまた、他のパーツが運悪く胸部へと突き刺さり海へと落ちる。
背部装甲がすっかりなくなったプレディザスターのそこには───“モビルスーツ”。
『いつでもいけますわよ。私にお乗りになって存分に戦いやがりませ!』
「フッ、やってみるさ……!」
軽量化されたプレディザスターの背部に“合体”していたモビルスーツはうつ伏せのままプレディザスターにしっかりと固定されていたのだが、その固定が外れると共に動き出す。
背中側に折りたたまれた脚部の下腿に装備された“ビームライフル”は、先ほどまで撃っていたビーム砲の正体であろう。
たたまれていた脚部が展開され、たたまれていた腕も展開、緩やかに速度を落としたプレディザスター……否、“飛行ユニット”の上に立つのは、ツインアイと後ろへと流れるようなV字アンテナを持つ“G兵器”だ。
下腿についていたビームライフルを、鋭い爪を持つマニピュレーターで掴むと、そのまま腰横部分に移動させ、その全貌をザフトとムウとカガリを前に表す。
スカイグラスパーのコックピットで、ムウは驚愕に目を見開く。
「な、なんなんだよあのモビルスーツ!」
彼が狼狽えるのも当然であろう。
そのモビルスーツには“まともに装甲がない”のだから……。
装備されている装甲といえば、せいぜい胸部、肩、肘、腰、膝ぐらいのものだ。それ以外は黒いフレームがむき出し。
数少ない装甲だけが赤銅色に鈍く輝く。
コックピットの中、ロマが静かに息を吐いた。横向きにされていたコックピットが縦になる感覚に新鮮さを覚えたりもしたが、それも一瞬だ。
素早くフットペダルを踏み込み、プレディザスターの背部と脚部のスラスターを点火。
大空へと舞い上がる黒と赤の悪魔。その緑色のツインアイが輝く。
「まず一つ……!」
空中でバーニアでバランスを制御しつつ、落下しつつも加速。
『悪魔めがぁ!』
「彗星と呼んでもらいたいところだがな……!」
ディンに放たれるライフルを回避しながら、接近。引き絞った右手を突き出してディンの胸部を───貫く。
「良い機体だな……だが付け焼き刃にすぎん。早々に終わらせてもらおうかッ!」
勢いよく引き抜くと、ディンのオイルをその身に浴びる。
プレディザスターはディンを蹴って再び上昇。
二機のディンが同時にミサイルを放つも、胸部左右に装備された機関砲と二挺のビームライフルを抜いて迎撃。
「チェシャ……!」
『───わかってましてよ!』
飛行ユニットが、落下するプレディザスターを背に乗せて加速。ミサイルを撃ったディン二機がプレディザスターを追うが、プレディザスターは背後に向けてミサイルを放つ。
迫るミサイルをライフルで迎撃するディン二機だが、一機が直撃を受けて爆散、もう一機がプレディザスターへと向くが、爆煙の中その姿は確認できない。
『どこだっ、どこだ……!』
「戦いとは常に二手三手先を読むものだ……!」
爆煙の中からそのツインアイを輝かせ、現れるのは黒と赤のモビルスーツ。
ディンがライフルと散弾銃を向けるが既に遅い、プレディザスターが右脚を振るい散弾銃を叩き落とすと、次に左足をディンの胴体に打ち込む。
ただの蹴り───そんなわけもない。
「ただの打撃と思ってくれるな……!」
その左足のつま先から鋭い“爪”が展開される。
「クローならばな……ッ!」
爪がディンの胸部と腹部に突き刺さり、再び元に戻り収納された。ディンを蹴って跳ぶプレディザスターを、再び飛行ユニットが回収。
ロマは素早い操作でビームライフルを両手に持つと、カガリの乗るスカイグラスパー二号機を追うディンを撃ち抜いた。
『狙いもバッチシでしてよ!』
「じゃじゃ馬娘にも困ったものだ……!」
既に被弾しているスカイグラスパー二号機とすれ違うプレディザスター、そのコックピットでロマはカガリを視界に入れる。
彼女もこちらを見ているのを感じつつ、ロマは素早く敵を視認。しかし、すぐさまムウのスカイグラスパーがそれを撃破してみせた。
「やるな、ムウ!」
『お茶の子さいさいってねぇ! たく、それよりも空母だ……あっちのお嬢ちゃんはどうする!?』
「さっさと帰したいとこだが、引き下がるような娘でもあるまいよ。私が下がらせる」
『いい兄貴分だねぇ』
自分の立場で兄など、考えたくもないことだった。しかも強気な妹など以ての外だ。妙な“兄妹”を思い出してしまう。
まぁあの“兄”ほど自身がなにかをできたり、やらかせるとも思えないが……。
なにはともあれ、空母が一隻とも限らない現在、カガリを放置するわけにもいかない。
残りのディンの数は2機だが、既に撤退を始めようとしている。
「ムウ、追撃はほどほどにな……!」
『えっ、なんで!?』
『奴さんの艦を出させなきゃだから、だろ……てか増援が出てきたりしてな』
反論しようとするカガリだが、ムウの説明で納得してか黙った。
「頭を出せば私が潰すさ……それとカガリ、撤退しろ。無理を道理でこじ開けられはせんよ。そうするには君はまだ未熟」
『わ、わかってるよ……くそぉ』
弱々しくつぶやいたカガリのスカイグラスパーが旋回して去っていく。
それと共に、視界のディン二機が高度を落としていけば、海上に浮上するのは三隻の潜水空母。
その瞬間、プレディザスターは───加速。
『おいおい、大丈夫かよ!』
異常な速度で加速したプレディザスターの飛行ユニット。大量のミサイルを放ちつつ、ビームで着艦しようとしていたディンを貫き、誘爆させて空母を破壊する。
横についていた二隻の潜水空母がハッチを開き、ディンを出撃させようとするも既に遅い。ムウのスカイグラスパーの装備していたアグニが一隻を沈め、もう一隻へとプレディザスターが、跳ぶ。
「逃げられはせんよ……ッ!」
跳び上がったプレディザスターが出撃しようとウイングを展開したディンを蹴り倒し、そのままその胴体に爪を突き刺す。
ビームライフルを持つなり、即座に真下へと数発を撃ちこんで、再び跳ぶ。
空中にてプレディザスターを拾った飛行ユニット。
それと共に、空母は爆発。三隻の空母が沈められた。
『やったぜぇ!』
「見事な手際だ。さすがだなエンデュミオンの鷹」
『おいおいよしてくれよ赤い悪魔さん……ていうかキラは!』
カガリは戻った。故に今の心配はキラということだろう。
ロマとしてはカガリも心配なのだが、今ここでよそに行くのもおかしな話だし、なによりキラは一人で海にいるのだ。そこが心配でないわけもない。
だからこそ、今やるべきことをやる。
「アークエンジェルに戻らんとわからんな」
そう言うなりプレディザスターはアークエンジェルへと加速していく。
少しすれば、被弾し損害を受けながらも飛んでいるアークエンジェルを確認。
カタパルトで手を振っているジン・アイズも視界に映る。
フッ、と頬を綻ばしながらも、その様子にストライクも無事だということを理解し、静かに息を吐く。どうせ手を離そうと進路はチェシャが取るのだから別段問題もないだろう。
気がかりもあるが、なにはともあれ緊張感から解放されたことにより一気に眠気が襲い掛かってくるも、無事に戻ってしっかりと話が一区切りつくまでは気を抜くわけにもいくまい。
アークエンジェルが近づいてくる。
───そして、そこにはやはり、カガリの姿はないのだ。
難産でしたわ~!
ようやっとプレディザスター(MS)を出せた
まぁ出番はそんなにないんだけども
キラ側がどうだったかについての話は次回、本当に軽く話すだけですが
とりあえず原作通りカガリが消えて、なにも変えられない男ロマ
まぁ本番はもうちょっと先からなので多少はね?
では次回もお楽しみいただければと思います
アウルとスティングは……?
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女の子だよ!
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男の子だよ!