盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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果てなき思考

 

 アークエンジェルの格納庫に、パンッと乾いた音が響く。

 

 赤くなった左頬を、左手で押さえるカガリ。驚いたような表情から、それが突然起こったことなのだと理解させる。

 目を開いて、自分の“頬を張った”相手に視線を向ければ、そこにはサングラスをかけた男───ロマ・K・バエル。

 

 彼は彼女の頬を張った右手を降ろしてから、サングラスの奥の瞳で彼女を見やる。

 

「っ」

 

 ビクッと震えるのは薄汚れたカガリ。

 

 それもまた、仕方のないことなのだろう……。

 

 

 

 

 

 

 事の発端は一日前の戦闘後の話だ。

 スカイグラスパー二号機、カガリに撤退を命じたロマだったが、アークエンジェルに戻ってきてみればカガリは帰艦しておらず、挙句に信号はロスト。

 無線も通じず、戦闘空域を離脱してから行方が追えないそうだ。

 

 ロマとしては“原作通り”ことが進んだのかどうか、そこが気がかりではあった。別段起きなくても良いとも思ったが、こうなってしまったのならば“原作通り”進んでもらわなければならない。やはり多少の縁があった少女だからこそ……死んでほしくはないのは当然だ。

 あの少女の戦死。ただの“一般人的思考”の持ち主として、認めるわけにはいかない。

 

 故に、彼は機体を降りるなりすぐさま“木偶の坊”を拾って、ブリッジへと入ったのだ。

 振り返った面々が、それぞれ反応を見せるが、マリューは眉をひそめて申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「大尉、すみません。私達がしっかりと」

「いやラミアス大尉、君が悪いのではない。あのじゃじゃ馬娘に関してはお目付け役が悪い」

 

 そう言うと、共にブリッジに来た“キサカ”が顔をしかめる。なにも言えずに眉を顰めているのは、彼自身も自分の過失を理解しているからだろう。

 

「状況は?」

「ハッ! 現在私がMIA認定をするかどうかの相談を艦長に───」

「……早計だな。明日の昼頃まで捜索は続けよう」

 

 ナタルの言葉に反論するロマ。なにかを言おうとするナタルを、平手を出して制す。

 

「スカイグラスパーを一機、撃墜されたかの確認も無しに放置はできんさ、一応は重要機密だろう? それにザフトは我々の反撃で潜水空母まで落とされているし、早々に攻撃はできんよ」

「うっ、そう、ですね……」

 

 さすがに理に適っているので、彼女も反論はできない。一刻も早くアラスカに到着したい気持ちはロマとて理解しているのだが、彼女を今ここで放置するのは得策ではない。

 実際に目の前にしても、本来のルートを壊さぬ意味でも、だ。それに……。

 

 ───さすがにこれは、温厚な俺もブチギレ案件だぞガキ。

 

「ストライクは海中から、私も少ししたらプレディザスターで出る。日没までには戻るということで……よろしいか、艦長?」

「はい、助かります」

 

 マリューが軽く頭を下げると、ロマは片手を上げて踵を返す。

 疲労からか、艦長席に深く座り込むマリュー。それもそうだろう、此度の戦闘は色々と初のことも多かったし“知らないモビルスーツ”が帰ってくるし……。

 最初はかなり焦ったものだが、肩部の装甲についていた“エンブレム”でロマだとは理解したが……。

 

「本当に、何者なのかしら、あの人……」

 

 軽く振り返るが、既に当の本人はいなくなっていた。

 

 

 

 一方、格納庫ではキラ、ムウ、そしてハイータの三人が飲み物を片手に固まっていた。否、ハイータは自分の胸に乗せて飲んでいるが……。

 ムウが『すっげぇ』と零し、キラは顔を赤くして視界になるべくそれを入れないようにしている。

 ハイータはコンテナの上で胡坐をかいて不満そうな表情でズズズッ、と飲み物を飲みほした。

 

「ん~戻ってきませんねぇ」

 

 戦闘終了と同時にロマに突撃しようとしたハイータではあったが、さすがにピリピリした雰囲気を察してやめた。それぐらいの理性は残っている。

 テンションが上がっていようと中身はハイータなのだ。気遣いぐらいはできるのだ。

 

 カガリが行方不明と聞いたキラは、今にも飛びだしそうな勢いだったのだが、ハイータはしっかりとロマが戻ってくるまでと止めた。

 

「にしても、こっちも大変そうだったな。二人ともご苦労さん」

 

 ムウの言葉にハイータが軽く頷く。

 アークエンジェルはバレルロールまでして主砲<ゴットフリート>でグーンを撃破し、ハイータはジン・アイズの狙撃で数機を撃破。キラは隊長機であるゾノまで葬ったとのことだ。

 苦しい戦いだったのは違いない。

 

「いえ、ムウさんとロマさんも、潜水空母三隻もあったって……」

「まぁ奴さんが“あのモビルスーツ”でなんとかしてくれたよ」

 

 そう言って笑うムウの視線の先、キラもそのモビルスーツ、プレディザスターを見やる。そんな二人に気づいて、ハイータはストローを噛むのを止めて、口を開いた。

 

「あのモビルスーツが、本来のプレディザスターなんですよ」

「へぇ、じゃあ……いつものっていうか、下のは?」

「追加ユニットというか、大気圏突入ユニットの試作型的な……」

 

 ハイータが言い淀むのは、それ以上は機密事項だからである。

 

 プレディザスターの持つ飛行ユニットは、第2期GAT-Xシリーズの量産機である『レイダー』の専用オプションである<副翼>の試作型でもあった。

 だが当時<副翼>はともかく、機体自体が設計段階であったレイダーは開発できないからこそ、従来のモビルスーツに近いものを改良するだけで同時運用できるものを作ろうという計画から始まり、なぜかできあがったのがあれだ。

 完全に趣味に突っ走った技術畑の人間たちにアズラエルは頭を抱えたのが記憶にある。

 実際のところ、ロマはかなり乗りこなしてはいたが、並の人間に扱えるものでもないだろう。それに本来の<副翼>であればほぼ使い捨てで、あそこまで高コストのものにはできまい。

 

「……まぁ、私もロマ君に怒られたくないのでここまでで」

「あ~なるほどね。そういうの聞くとお前らがお偉いさん直属なんだなって実感するよ」

 

 苦笑するムウに、同じく苦笑で返すハイータ。

 薬の効き目が薄れてきたのかテンションは徐々に落ち着き、少しばかり赤い顔で胸の部分のファスナーを上げた。

 そこでようやくキラも安心してハイータの方を向けるようになる。

 

 キラが口を開こうとしたその瞬間、ハイータがバッ、とキラでもムウでもない方向を向く。

 

「ん、ロマ君だ」

 

 ハイータが向いた方向を向けば、ロマとキサカの二人が歩いてきていた。

 

 艦長たちへの話は済んだのだろうと三人が理解するものの、ハイータだけが彼がどことなく不機嫌なのを察していた。

 一応、彼はそういうものを隠すのが上手い方ではあるのだが、おそらくアズラエルや三人娘なんかにも呆気なく看破されることだろう。

 ともあれ、ロマは三人の前で止まる。

 

「艦長からの許可は下りた。キラ、疲れているところすまないが……」

「はい、やります! 僕は大丈夫ですから!」

 

 サングラスの奥のロマの瞳をしっかりと見やり言うキラに、ロマは口元を綻ばせその肩に軽く手を乗せた。

 

「頼んだ。私もプレディザスターと飛行ユニットで空から調べる。ここらは無人島も多い、救難信号が出てても電波状況は悪いし、なにがなんでも二時間後には一度帰投だ。いいな?」

「……なんの手がかりが、なくってもですか?」

「ないということは無事ということさ、緊急用の食糧なども積んである」

 

 それが無事かどうかはともかくとして、だ。

 

「キラ、いいな? お前が倒れては我々も苦しい」

「……はい」

 

 渋々ながら、キラは頷いた。

 軽く視線を動かせばムウが自分を指さして出るかどうか、と言った表情をするが彼は待機ということを伝えるために首を横に振る。頷いて、ムウは更衣室へと歩き出した。

 そして次はハイータだが、昂揚している様子もなくロマは少し安心する。

 

「ロマくん、私もカガリちゃん、探さないとですよね」

「いや、ハイータも待機だ。私とキラが出る以上は即座に対応できる戦力は残しておきたい」

 

 それほど遠くに行くわけでなくとも、だ。

 ハイータが少しばかり不安そうにしているのは“カガリの正体を知っているから”か、それとも“年頃の少女が放り出されているから”か……。

 どちらにしろ、ロマとしても無視できる状況ではない。探す以上は“ザフトと一緒にいようと”構わず連れ帰る算段ではある。

 

「さて、いくぞキラ、体調に異変があればハイータと交代しろ」

「やります!」

「……いい返事だ」

 

 軽くキラの頭を撫でると、ロマは格納庫に立つプレディザスターへと向かう。

 そんなロマの背中を、キサカは黙って見送った。

 

 

 

 

 

 

 ムルタ・アズラエルは連合基地の一室で見ていた資料に眉を顰めた。

 そしてそれを横目で確認するなり、三人娘も少し気になっている様子でありながらも興味なさげなふりをして目を逸らす。

 

 アズラエルがどこかへと通話をしているが、十中八九基地内の人間だろう。

 今回、こちらに来たのはアズラエルと三人娘だけではない。彼女お抱えの技術スタッフ数名も共に来ていて、おそらくそちらであるということは三人娘も即座に理解した。

 すぐに通信が繋がったのか、アズラエルが口を開く。

 

「設計図は確認しましたが、なんですかあれ……当初のものと少しばかり変更があるとは聞きましたが、誰が乗るんですあれ」

『そりゃぁ我らが悪魔様ですよ。“こんな素晴らしいもの”大尉ぐらいしか乗りこなせませんって、チェシャセットで』

 

 女性スタッフの声が聞こえる。アズラエルがどこぞの基地から引っ張ってきた技術者。

 結果、本来作る予定であった“ディザスター”とは全く別の、モビルスーツと飛行ユニットの融合機である“プレディザスター”などと言う変態機体が完成したわけだった。

 故に、アズラエルは今度はしっかりと確認して許可を出そうとしたつもりであったのだが、当初出された設計図から変更点があるということで、再び確認すれば“それ”である。

 

 うちの技術者はロマをモルモットかなにかだと思ってるのだろうか、と頭が痛くなってくるのだが、それでもそれを乗りなんとかするのが“彼女のロマ”なのである。

 アズラエルは深いため息をつきつつ、頷いた。

 

「これ一旦止めてください。例の次期高級量産機の試作機の方に集中して頂いて」

『え~! ようやくおもしろくなってきたのにっすか!?』

「ともかく! 彼が帰ってきてから彼と相談してください。いいですね?」

 

 盟主の言葉に、これ以上はまずいなと判断した技術スタッフは素直に頷く。

 それにおそらくロマの方が“説得”しやすいと判断した上である。

 

『それじゃ“ウィンダム”の方に取り掛かるっす!』

「はい、お願いしますね」

 

 それだけ言うと、通信を切るアズラエルだが、すぐに大きなため息をつく。

 

「おば、おねーさん、ため息ばっかついてると幸せが逃げますよぉ?」

「余計なお世話です」

 

 寝転がりながらゲームするクロトの言葉に、そう返してから再び溜息をついた。

 このままでは幸せが逃げていく一方である。このままでは、小さな幸せから大きな幸せまで逃げかねない。そう思ったシャニが、呟く。

 

「お姉さん、このままじゃ結婚できなくなっちゃうよ」

「う゛っ……」

 

 シャニの何気ない一言がアズラエルにクリティカルヒットした。

 さすがに一番大人であるオルガはマズイと思いつつも、止められなかったので関わらないことにする。三十歳の初心なキャリアウーマンに対して決して言ってはいけないことがある。それはその一つと言っても過言ではないと、オルガは確信した。

 テーブルに顔を突っ伏してアズラエルがなにか呟いている。

 

「私だって、母さんからもプレッシャーが凄いですし、お見合いとかどうたら言われて……そもそも私が優秀すぎるから男どもだって……」

 

 ぶつぶつと言葉を零すアズラエル。

 クロトもさすがにあの発言はまずかったのだろうと察し、オルガは相変わらず我関せず。時には撤退も必要なのである。

 原因といえるシャニはというと、きょとんとした表情でアズラエルを見やり呟く。

 

「壊れちゃった?」

「壊しちゃった、だろ」

 

 思わずツッコミを入れてから、オルガはバツの悪そうな表情をして再び本に視線を戻した。

 彼が帰ってきた時、おそらくろくでもない展開になるのは目に見えている。

 とりあえず自分ぐらいは多少は優しくしてやろうと思いつつ、再び“読んでいて胸焼けするほどのジュブナイル小説”に視線を落とした。

 

 

 

 

 

 

 結局、二時間の捜索でも手がかり一つ見つからず日の出を待つこととなったアークエンジェル。

 

 翌朝の早朝からの捜索の甲斐もあって、無人島にてカガリをあっさりと発見、救出。

 スカイグラスパー二号機もほぼ無事であり、ストライクはカガリごとそれを回収。格納庫へと戻ってきた。

 膝をついたストライクがスカイグラスパーをおろし、ハンガーへと向かっていく。

 

 そしてスカイグラスパー二号機から、金髪の少女が降りた。

 どこか申し訳なさそうな表情を浮かべ、周囲に視線を送るものの、一点でその視線が止まった。

 

 その視線の先には一人の男。そして、そんな男の隣から“カガリ”を見ていたムウが、表情をひきつらせつつ言う。

 

「ひとまずこれで安心……ではないけど、ほどほどにな?」

 

 隣に立っていた“ロマ”が歩きだし、その隣のハイータはロマについていく。

 歩き出したロマの方をじっと見ているカガリ、キサカも駆けよる。

 

 カガリの前で止まったロマ、ハイータ、そしてキサカ。

 

「えっと、その、機体壊してごめ───」

 

 乾いた音が響く。

 

「えっ……」

 

 カガリの戸惑うような声、熱を持った左頬を左手で押さえ、右平手を振るった“ロマ”を見やる。

 キサカは何を言うでもないし、ハイータは一瞬だけびくっとしたがすぐに納得したようで、特になにも発言しないまま立っていた。

 ストライクから降りたキラも驚いた表情でロマを見ている。

 

「機体を壊したこともそうだが、そうではないな。わかっているだろうに」

 

 そう言うロマに、カガリは少しばかり縮こまっているように見えた。

 

「文句は言えんぞカガリ・ユラ……!」

「……っ」

 

 左頬を押さえたまま、目を泳がせながらも頷くカガリ。

 帰ってきたばかりなのだから説教は後で、等と言うものは存在しないし、言わせはしない。それだけの雰囲気はあった。

 だからこそ、キラもムウもハイータも、黙って成り行きを見守るのみなのである。

 

「お前が一般人だから? 軍属ではないから? 勝手にスカイグラスパーを持ち出したから? そうではない、確かに“建前上”はそれで怒ってはいるが、マリューが、ムウが、キラが、ハイータが、どれだけ心配したと思う」

 

 それらは感情的な言葉である。

 カガリは恐らく、キラやこの艦の者たちを守りたいのだと、ロマは察した。いや、ロマでなくても、キサカとて理解していることだ。しかし、これとそれは話が別なのだ。

 ロマにとっては彼女とて現状にありては“守る対象”である。

 

 それに……。

 

「理解しよう。お前の気持ちは……だが、気持ちだけで一体なにができる……!」

 

 勢いよく、カガリの胸倉を掴む。小声で、呟くように言う。

 

「それにお前は、気持ちだけで動いて良い立場ではないだろうに……!」

「うっ……」

「お前にとってはそれでいいと思った行動かもしれんが、もう少し立場をわきまえろ。それがいずれ……自らを殺すぞ」

 

 そう言うと、手を離す。

 変わらず左手で左頬を押さえているカガリを見つつ、ロマは踵を返して去っていけば、カガリとキサカはなんともいえない表情で、彼の背を見送る。

 残されたカガリに、ハイータが軽く駆けて近づく。

 

「その、ロマ君も、心配してたんですよ」

「えっ……」

 

 意外、という表情を浮かべるカガリだったが、すぐに考えなおす。彼は別段人でなしではないし、冷たい人間でもない。それを知っている。

 

 あの砂漠で、言い争った言葉を何度も考え直して、そうだろうと理解したつもりだ。

 砂漠の虎だって、キラに撃たせることもできただろうに自らが撃った。

 

「……その、私はっ」

「わかってますよ。ロマ君も言ってたじゃないですか、気持ちは理解できるって……ただその、ロマ君の言うとおりですね」

「っ……わかってるんだ。けどっ」

「けどもなにもありませんよ、死んだら……終わりなんですから」

 

 その言葉に、カガリは顔を悔しそうにしかめる。

 ハイータはロマのようにカガリの頭を軽く撫でるが、振り払われるでもなく……少しして手を降ろすと、気恥ずかしかったのか少しばかり赤い顔でロマを追って去っていく。

 キラもムウも、キサカすらもかける言葉を見つけられず、黙ったままキサカはカガリを“艦長室”へと誘導するのだった。

 

 

 

 一方のロマはといえば、自室で項垂れていた。

 感情的な説教だったと思う。理には適っているようには見えたが、やはり“皆に心配をかけた怒り”からの説教である。無人島で見つかったという話を聞いたときは嬉しく思ったのも事実ではあるが、やはりすぐに怒りの方が来ていた。

 だからこそ、そのまま説教を垂れてしまったことを悔やんでいるのだ。

 

 ―――いやでも、説教、誰かがしないとだよなぁ。

 

 実際に“原作”では誰かが説教でもしたのかもしれないが、その様子は見られない記憶がある。

 だからこそ、というわけではないが……結果的には良かったのだろうと納得しようとして、再び自己嫌悪。ロマはメンタル的には弱い部類に入る男だ。

 故に、余計なことを考える。

 

 だが突然、扉が開く音に思考を中断された。

 

「ロマ君」

「ハイータ……」

 

 どちらも“鍵をかけてない”ことや“勝手に入ること”についてなにも思わないあたり、関係性は並ではないのだろう。

 無論、アズラエルや三人娘にも言えたことではあるが……。

 

「なんだか、落ち込んでます?」

「らしくもない説教をしてしまったんだ。後悔もするだろうさ」

 

 サングラスを外し胸ポケットに入れると、静かに息を吐く。

 

「間違ったことは言ってませんでしたよ。それにたぶんこの艦でしっかりとカガリちゃんをああやって叱ってあげられるのって、ロマ君しかいないでしょう?」

「……」

「大丈夫ですよ。みんなわかってますから」

 

 ハイータがロマの前に立つと、その後頭部へと手を回し、そっと自らも近づきロマの頭も近づけ、その胸にロマの頭を抱く。

 ナイーブだかセンチメンタルだからか、ロマも別段“キョドる”わけでもなく、腕をハイータの腰へと回す。

 

「ハイータは優しいからな」

「ロマ君ほどじゃ、ありませんけど、ね」

 

 そう言って笑うハイータの胸で、目を閉じるロマ。

 

「それに優しいっていうか、ずるいかも……」

「ずるい、か?」

「あ~っと、えへへ、なんでもないですよぉ」

 

 ギュッと抱かれる手の力が強くなり、ロマの顔半分がその胸に埋もれる。

 

「しかしまぁ、私は阿漕なことをしているな。これでは道化だよ……」

「ロマ君がどんなに今の自分が嫌でも、私はロマ君についていくだけですよ。たとえどんな道でも」

 

 その言葉に、ロマは少しばかり胸の中にしこりを覚えた。それは罪悪感からか、それとも……。

 

「……いいのか?」

「ロマ君が、私を傍に置いてくれるなら……」

「いてくれなければ困るよ、ハイータ」

 

 疲れたような声音に、少しばかり可笑しそうに、それでいて憂うように笑う。

 

「無理にお父さんを演じるから疲れるんですよ。ロマ君が大人なのはわかってますけど、そういう無理するタイプではないでしょう?」

 

 そんな言葉に、ロマは顔をフッ、と口元を緩めた。

 ロマも“当初”は大人を演じていたのだが、すっかりそれが素になっている自分もいる。故に、それ自体に不満も疲労もないのだが、それとこれとは話が別だ。今回のことのように“叱る役”など、無理してやるのはまた別なのである。

 

「叱る役をやるのは辛いな……君のような支えがいる」

 

 一瞬、ハイータが止まったことに違和感を覚えるロマが顔を離して何かを言おうとしたが、それより早くハイータがロマを強く抱きしめた。

 完全に顔が埋まり呼吸困難になるが、“顔が茹蛸の如く真っ赤に染まったハイータ”には、それを気にするような余裕はない。

 

「なっ、なんでそういう歯の浮くような台詞を平然と言えるんですかっ!?」

 

 だが答えは返ってこない返ってくるはずがない。ロマは現在酸素欠乏により帰らぬ人となりかねないのだから。

 

 ともあれ、薄れ行く意識、温かで柔らかな感覚、先ほどの悩みを抱える余裕などどこにもなく……。

 

 

 

 

 

 

「言葉が走りましたよ!」

 

 連合基地にて、アズラエルがふと言った。

 クロト、オルガ、シャニの三人は『はぁ? 何言ってんだコイツ』的な表情をするので、アズラエルは目を細めた。その扱い、普通に考えてブルーコスモス盟主にするものではない。

 私室でなければ、他の兵士たちの顔が真っ青になることだろう。

 

「……なぁんか、嫌な予感がしたんですよねぇ」

 

 年甲斐もなく───ではなく、柄にもなく可愛らしく頬を膨らませて言うアズラエル。

 

「絶対、あの子が原因ですね」

 

 そう言われてみればと、三人娘もが顔をしかめた。

 

 

 

 “女の勘”というのもバカにできたものでもない……らしい。

 

 

 





まぁ繋ぎ回といったところです
一応大事な話でもあるんですが……真面目な話をギャグで濁してしまうのは悪い癖
とりまちょっとパロったりなんだり

次回はなんやかんや、ここまできたか感

では次回もお楽しみいただければと思います


PS
アンケート閉め切りますーぅ
そうだね。女の子だね

アウルとスティングは……?

  • 女の子だよ!
  • 男の子だよ!
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