盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

26 / 80
平和の国で

 

 時刻は早朝、朝焼けの中、霧が立ち込めるオノゴロ島を“二機”のモビルスーツが行く。

 

 前を走る車両を追って歩く二機のモビルスーツ、ストライクとプレディザスター。もちろんストライクを操縦しているのはキラで、プレディザスターにはロマ。

 

 先のウズミからの要求を呑むしかないアークエンジェルは、ストライクとキラ・ヤマトをモルゲンレーテ工場へと派遣することを決めた。ただしそれでも、“保護者同伴”で、という条件をつけてだ。

 交渉した本人、ロマとしては最初にハードルの高い要求をして、そこから少しハードルを下げた要求を通す予定だった。

 

 ―――アンカリング効果ってんだっけか。

 

 つまり、現時点でロマ本人が出向くつもりはほぼなかった。それは後々に、の予定ではあり、当初は保護者としてハイータを同行させるつもりだったのだが、思ったより簡単に通ってしまい、ロマはキラと共にモルゲンレーテの工場へと足を踏み入れる。

 ゲートをくぐり、巨大なエレベーターに乗せられて、二機は地下へと連れられていく。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……それとも、獅子か?」

『ちょっとかっこいいこと言うじゃありませんの』

「やめろ」

 

 チェシャの声が聞こえる。

 彼女は本来、プレディザスターに搭載されているのだから当然なのだが……飛行ユニットをパージした時には、ほとんどのデータをあちらに移行しているので、チェシャがこちらにいるのは戻ってきたと言って良い。

 エレベーターが止まると、目の前のゲートが開く。

 

「ストライクと一緒、だな」

『どういうことですの?』

「里帰りなのさ、父と母の実家があるようにな……」

 

 連合とオーブによりつくられたXナンバー、それをありありと感じるロマ。

 結局はザフトがそのほとんどを奪って行ったわけではあるが……。

 

『ところでわたくしをわざわざ戻して連れてきた理由はなんですの?』

「本来なら“コレ”から離すことを想定して設計されていない。不安要素は廃したいとは思わんか?」

 

 軽く後ろに指を向けて言うロマ。

 

『あら! 心配してくださってますのぉ~? かぁいいとこありますのね~』

「それにここでは存分にこき使わせてもらう予定だ」

『前言撤回ですわ!』

 

 叫ぶチェシャに、微笑するロマ。

 

『なに笑ろてんですの!?』

「いや……まぁしかし、頼む。この機体の情報、戦闘データや機体構造などはともかく“深い部分”までは知られるわけにはいかんからな」

『別に良いと思いましてよ?』

「良くは無いさ、金がかかっている」

 

 そう言えば、少しばかりの沈黙。

 

『……まぁ、そうですわね~。ある程度はロックかけときますわよ。まぁあちらも無理矢理データを引き抜くなんて真似をする気はないとは思いますけど』

「そうだが、な」

 

 ただでさえ“ロマを敵に回すかもしれない”という賭けに打って出ているのだ。それ以上をする気がウズミ・ナラ・アスハにあるとも思えない。

 あくまでロマをブルーコスモス盟主の懐刀と正しい意味で理解していれば、の話ではあるが……。

 

 とはいえ、ロマ自身は今回の件については相変わらず“識っている”ので、それほどの心配はしていなかった。

 

『ん、どうやらあちらは降りるようですわね』

「私も降りるとする……では頼んだ。勝手に弄られることは、ないとは思うが」

『了解ですわ』

 

 ハッチを開き、ロマは空気の違いを感じる。明確にオーブにやって来たのだと視覚、嗅覚で理解した。

 下に降りれば、ストライクから降りたキラが速足で近づいてくるのが見える。やはりアウェーな空間での心細さ故だろう。フレイもいなければ学友たちもいない。頼れるのはロマのみ。

 

 そんなキラには、ロマは相変わらずいつも通りのように見える。見えるだけだが……。

 

 ―――さすがに知ってる顔はねぇよなぁ。

 

 余計なことを考えつつ、サングラスの奥の瞳を右へ左へ、だ。

 

「ロマさん、ここって……」

「ここなら“ストライクは”完璧な修理が出来るわよ。いわば、お母さんの実家みたいなもんだから」

 

 キラが質問をしようたした矢先に、女性の声が聞こえてくる。キラとロマがそちらを向けば、そこには明るい茶色の髪をもった女性。

 

「オーブの技術主任か……ご存知の通り、ロマ・K・バエル大尉だ」

「あ、キラ・ヤマト少尉ですっ」

「これは御丁寧に……エリカ・シモンズ技術主任です。あの赤い悪魔と呼ばれるバエル大尉とお会いできるとは思いませんでした」

 

 スッと差し出された手を、ロマは握り返す。

 

「……意外と、普通なんですね」

「単刀直入、ですね。言われ慣れてはいますが」

「あっ、ごめんなさいっ」

 

 本当に漏れ出てしまった言葉だったのだろう、エリカは少しばかり焦った表情で言うが、ロマは微笑を浮かべて片手を上げた。

 問題ない、と意を示す。

 

「いや、もっと砕けた言葉でかまいませんよ……私の方が歳も下です」

「えっと、そう……かしら?」

 

 そう聞くエリカに頷くロマ。

 キラとしてはその内心を知ることもなく、尊敬するような表情で『大人だなぁ』とか思っているが、その実ロマはドキマギとしている。そりゃもちろん目の前の美人人妻にだ。

 ロマはいつだって女に弱いのである。もちろん前世の頃から。

 

「それじゃ、こっち……二人には見てもらいたいものがあるの」

「行こうか、キラ」

「あ、はい!」

 

 エリカの後を追って歩く二人。それほどの距離があるわけでもなく、すぐに“ソレ”が視界に入り込む。

 

「……モビルスーツか」

「ガンダム?」

 

 そのハンガーに立っているのは、モビルスーツが数機。

 V字アンテナにツインアイ、Xナンバーの特徴と一致するから、だからこそキラは無意識にその名を口にした。

 だがロマは識っている。かの機体はガンダムではない。

 

「どう?」

「これが中立国オーブという国の本当の姿だ」

「あ、カガリ……」

 

 そこに立っていたのは、カガリ・ユラ・アスハ。いつもと変わらぬ見慣れた格好ではあるが、どこか小奇麗だ。

 当然ではあるが、獅子の怒りに触れたようで、その頬は赤くなっている。

 

「……これはM1アストレイ。モルゲンレーテ社製のオーブ軍の機体よ」

「これを、オーブはどうするつもりなんですか?」

 

 キラの質問も尤もなものだ。

 中立国オーブの保有するモビルスーツ……その意味を分からぬ者たちでもないだろう。

 

「これはオーブの守りだ。お前も知っているだろ?オーブは他国を侵略しない。他国の侵略を許さない。そして、他国の争いに介入しない。その意志を貫く為の力さ」

 

 必要なものだとは思う。ロマとて、この戦時下でそれを貫くことの“愚かさと賢明さ”を理解できないわけではない。

 

「オーブはそういう国だ。いや、そういう国のはずだった。父上が裏切るまではな」

「……ほぉ」

 

 それでもロマは識っている。ウズミ・ナラ・アスハとヘリオポリスの事情を……オーブが一枚岩ではないことを、そして自らが主と繋がっている者がいることを……。

 

「あ~ら、ま~だ仰ってるんですか、そうではないと何度も申し上げたでしょ? ヘリオポリスが地球軍のモビルスーツ開発に手を貸してたなんてこと、ウズミ様は御存知───」

「───黙れ! そんな言い訳通ると思うのか! 国の最高責任者が、知らなかったと言ったところでそれも罪だ!」

 

 怒りに叫ぶカガリに、エリカは肩を竦めて呆れたように言う。

 

「だから、責任はお取りになったじゃありませんか」

「職を叔父上に譲ったところで、常にああだこうだと口を出して、結局何も変わってないじゃないかっ」

「仕方ありません。ウズミ様は、今のオーブには必要な方なんですから」

「あんな卑怯者のどこが!」

 

 仕方がないと、ロマは軽く一歩前に出る。二人の視界の端でロマが動いたせいか、少しばかり沈黙が生まれ、そこですかさずロマは口を開いた。

 

「……いいのか、私の前でオーブの内情を明かして」

「うっ」

 

 言い淀むカガリ、大人しく口を噤むが、どこか不満そうではあった。

 エリカは深いため息をついて、ロマとキラに視線を戻す。

 

「さ、こんなおバカさんは放っといて、来て!」

 

 この国の姫とは言え、ずいぶん気安い人間ではあるようだった。嫌われてはいないし、トップになれば一部の人間は確かに付いてくるのではあろうが、それでも子供だからだろう。

 どうせ“オーブが戦火に巻き込まれるにしろしないにしろ”、彼女は子供のままではいられなくなるのだ。ロマはどこか遠い場所を見るような目をして、乾いた微笑を零した。

 

 

 

 エリカ・シモンズに案内され、キラとロマ、ついでにカガリが移動したのは地下に用意された管制室。

 その窓の向こうには広い空間があり、そこに三機のM1アストレイが立っていた。なにをするのかと思うキラだが、これももちろん識っている。故に、腕を組んでただ見るのみ。

 

 エリカが、マイクにて指示を出す。

 

「アサギ、マユラ、ジュリ……やって」

『はーい!』

 

 気の抜けるような少女たちの声が聞こえた。

 もちろん、内心でロマは興奮を抑えきれないのだが、端から見ればなんでも見通したような眼で冷静に立つのみ。

 

『あっ、カガリさま!』

『あらホント』

『なに、帰ってきたの?』

「わるかったなぁ」

 

 マユラ、ジュリ、アサギからの言葉に、カガリは不満そうな表情を浮かべる。

 やはり気安すぎるのも問題かもしれんと、ロマは思考した。

 

「はじめて!」

『はい!』

 

 エリカの宣言があるなり、ゆっくりと動き出すM1アストレイが、武術の型のようなものを見せるのだが……。

 

 ―――遅い。遅すぎる……知ってたけどこんなに遅いか。

 

 ゆっくり、ゆったりとした動きをみせるM1アストレイに、ロマはため息をつきたくもなる。

 なまじコーディネイター用のOSでも機体を動かせる人間故に、それを理解できないのだろうとロマは自分自身を判断してみるが、それでもあんまりである。機体を動作させるためのOSがまともでない。

 故に、ウズミ・ナラ・アスハはキラを呼び寄せた……彼が並のコーディネイターが動かせるOSを作れるかどうかとして、だ。

 

「相変わらずだな」

「でも、倍以上も早くなったんです」

 

 カガリの不満に、エリカは困ったように返す。

 ロマは心の中でエリカに同意する。彼自身、そちらの方はからっきし故に、ナチュラルに動かせるOSを作るということの苦労はわからないが、それでもプレディザスターのコーディネイター用のOSをロマのために調整するという作業ですらも、ブルーコスモスの多数のコーディネイターやハイータが関わっている。

 並の労力ではないだろう。

 

「けどこれじゃぁ、あっという間にやられるぞ。何の役にも立ちゃしない、ただの的じゃないか」

 

 カガリの声に、アサギ・マユラ・ジュリから不満の声が上がる。

 

『あ、ひどーい!』

「ホントのことだろーが!」

『人の苦労も知らないでっ!』

「敵だって知っちゃくれないさ!」

『乗れもしないくせに!』

「なんだとぉ!? じゃあ代わってみろ!」

 

 少女四人の言い争いに、ため息をつくエリカ。

 仕方あるまいと、ロマはカガリの頭に手を置く。

 

「カガリ、明け透けにモノを言うのが正しいわけではないぞ……上が下の士気を下げてどうする」

「こ、子供扱いするなって!」

 

 腕が払い落とされるも、ロマは別に気にした様子もない。

 

「子供でないなら余計に、だろう?」

「うっ……す、すまない」

『怒られた~!』

 

 アサギの言葉に、ロマはため息を吐きたくもなる。

 

 ―――煽ってどうする。

 

「ぐっ、お前らぁ!」

「はいはいはい、止め止め止め!」

 

 エリカがそこで止めに入る。ロマは内心ありがたいと、一安心。

 

「でも、カガリ様の言うことは事実よ。だから、私達はあれをもっと強くしたいの……貴方のストライクや、大尉の機体の様にね」

「えっ!?」

 

 驚愕するキラだが、それもそうだろう。ストライクのように強くしたい。そんな風に言われても本人は困るというものだ。ただ必死にやっていただけ、なのだから……。

 それにストライク、プレディザスターにしてもパイロットの良し悪しがあるが……まぁ突っ込むところではないだろう。

 

「技術協力をお願いしたいのは、あれのサポートシステムのOS開発よ」

「ああ……なるほど」

 

 キラはようやくそこで納得した。自身を呼んだ理由を……。

 

「ロマさんは、わかってたんですか?」

「わかるさ、キラとストライクを呼ぶ理由などMSの解析やらだが、オーブには必要ないだろうしな」

「へぇ」

「さすがですね。大尉」

 

 関心するようなキラとエリカに、カガリは不思議そうな表情を浮かべた。

 

「良いのかよ、オーブが強くなって」

「構わんさ。敵にならんのであれば……地球をザフトの好きにはさせられんからな」

 

 嘘ではある。連合にとっても完全に良いことではない。

 だが、今後のためにこれは必要なのだとロマは断言できる。できうる限り“悲劇”は避けたいが、避けられなかった時には、オーブがそれなりに戦えなくてはならない理由がある。

 少なからず、その悲劇に“自分たちが関わる”気はないが……。

 

 管制室を出るエリカに続いて、歩き出すキラとロマとカガリ。ふと、ロマは口を開く。

 

「私がこれらを知って良かったかの方が気になるところだが」

「ウズミ様としては構わないんでしょうね。許可したぐらいですもの」

 

 オーブが強くなっていると知られても構わないと、そういうことなのだろう。

 それかやはり、ムルタ・アズラエルにロマが、“オーブに情報提供した”など、言えないと思われているかだ。ロマ個人としては後者を押したいところである。

 だが、どちらにしろ全て無意味なことではあるのだ。

 

「なるほど」

「それじゃあキラ・ヤマトくん、あとはうちのスタッフに案内をしてもらって……大尉もお付きになるんでしょう?」

 

 エレベーターの前でボタンを押して立ち止まったエリカ。来るまでには少々時間を要しそうだ。

 四人してそこで待つことになるのだが、ロマはただ静かに、エリカの方を向く。彼女もそれに気づいたのかロマの方を向いた。すると、ロマがフッ、と口元に笑みを浮かべて口を開いた。

 

「いや、私は“エリカ・シモンズと個人的に話”をしたいところだが」

 

 サングラスを外しながらそう言うロマに、空気が固まる。

 

 ―――……カッコつけすぎたか?

 

「そ、そのっ……た、大尉? わ、私はその……ふ、父子もいますしっ」

「な、何考えてんだこのタコ! お前、もっと立場ってのを考えてっ」

「いや、私は……」

 

 赤い顔であたふたとするエリカに、真横から滑り込んできてグイッとロマの腕を掴むカガリ。

 

「エリカには旦那も子供もいるんだぞっ!」

「いや、それは私には関係ないが」

 

 そうである。純粋に“話”が必要なロマにとってはまるで関係がない。

 だがいかんせん、周りはそうは思わない。確実に“落としにくる男”の語り方だった故に、そのような事態になっているのだ。そもそも内密な話をするのであればそこまで意味深にしてどうするとも思うが、普段から何事も意味深に語る男なのだから、癖になっていても仕方ないことである。

 カガリは顔も怒りで顔が真っ赤だ。それもそうだろう……理由はわからないが、一々自分の世話を焼く目の前の男が突然、女を口説きだしたのだから。

 

「な、なに言ってんだ!」

「た、大尉、その……こ、困ります……こ、こんなおばさん相手にっ……」

 

 ―――え、なにが?

 

 

 

 結果、誤解は無事にとけた。カガリは顔を別の意味で真っ赤にして、エリカは両手で顔を覆って壁の方を向いて、キラは困ったような顔で笑う。そんな中で、ロマだけが意味を理解しないままであった。

 なにはともあれ、キラはスタッフに連れられ、カガリはそのままキラに付いていき、ロマはエリカと共に、彼女の部屋へとやってきている。

 ちなみにチェシャと繋がっているインカムはキラにつけさせた。彼女から積極的に話かけることはないだろうけれど、なにか問題があれば“警告”は送るだろう。

 

 ソファに座すロマ、テーブルを挟んで向かいにはエリカ。

 

「その、大尉……話とは?」

 

 少しばかりそわそわしている様子なのは、やはり“先の件”の疑いが完全に払しょくされていない故だろう。

 

「いや、折り入って君にしかできない話さ」

 

 少しばかり声音が真剣だったせいか、エリカは深く呼吸した。なにがきても大丈夫なようにだ……いやしかし、なにもないのである。

 確かにロマのストライクゾーンだったとしても、彼は“人妻を口説いてはいけない”ぐらいの道徳心はある。

 

 そして、ロマはそれを言葉にした。

 

「サハク家に、繋いでほしい」

「えっ」

「正確にはその伝手を使って……私の上司に、だがな」

 

 そう言うロマの赤と青の瞳に、エリカは全てを見透かされていることを悟った。

 

 

 

 

 

 

 アズラエルにとってはなんてことない日だったのだ───そう、だったのだ。

 

 今日も今日とて“愛しの悪魔”は音沙汰無しではあるが……便りが無いのは良い便り、とも言う。ロマの情報もハイータの情報もほとんど無いということで、あまり心配はしていない。カーペンタリアからガンガンに敵輸送機やらが出撃しているという情報もあったし、むしろ暴れている証拠ということで良しとしていたのだが……。

 

 まさか“オーブから”彼についての報せが届くとは思わなかった。

 

 どういう経緯かの報告は無かったが、まさか件の大天使ごとお世話になっているとは盲点である。しかし、盲点という意味では“オーブの獅子”も、すべて知られているとは思うまい。

 彼女は今更“大天使”をどうこうしようなどとは思っていないし、オーブの協力者との関係もあるし今すぐオーブに対してなにかを、とは思っていないものの……少しばかり思うところがないでもない。

 まぁ全ては、彼が帰ってきた後、の話になるだろう。

 

「ということで!」

 

 アズラエルはクロト、オルガ、シャニの部屋にて、ソファに座って脚を組んだまま、その顔に不敵な笑みを浮かべる。

 彼女らは、アズラエルがいることをなんとも思っていないのか、テーブルを挟んで向かいのソファで横になってゲームをしているクロト、ヘッドフォンを首に下げて音楽を聞いているシャニ、カウンター式キッチンにて料理をしているオルガ。

 

「まぁとりあえず座りなさい」

「ん、オルガ~」

「ちょっと待て」

 

 つけていたエプロンを外して、歩いてくるオルガ。

 強化人間、ブーステッドマンたる彼女らがなんて健全なのだろうと、アズラエルは少し複雑な心境であった。彼女らの本分は戦うことにあるのだ。

 生きる楽しみなど見つけるべきではない。と合理的な理性は訴えかけてくる。あくまで理性は……。

 

「はい、とりあえず君たち……見つかりました。彼とハイータ」

 

 アズラエルが手を叩いてそう言うと、ワンテンポ置いてから三人がそれぞれ反応を見せる。

 

「え、どこなんですか!?」

「行く? 迎えにさ……」

「たく、心配かけやがって……」

 

 前のめりになるクロト、シャニは冷静に質問を投げかけ、オルガはそっぽを向いて呟く。

 

「……で、これからについて話しましょうか」

 

 そう言って、アズラエルは頷く。

 感情では、自らがしたいことではある。だが、それらは彼女らがするべき仕事であり、でなければ彼女らの存在理由すら奪う行為で……。

 今ここで、感情で動くわけにはいかない。それは自分の仕事ではないのだ。

 

 故に、アズラエルは三人娘に、此度の任務を与える。

 

 ―――寂しい思い、してるかもしれませんしね。

 

 

 

 

 

 

 アズラエルがそんなことを思っている一方、ロマは……。

 

「む、こんなものか?」

「大尉すごーい!」

「フッ、造作もないことだよ」

「さっすが赤い悪魔!」

「ホント凄い……」

 

 オーブ三人娘、アサギ・マユラ・ジュリに囲まれて、心の中で鼻の下を伸ばしていた。

 

 シミュレーターから降りて胸ポケットにいれていたサングラスをかけ直すと、表示されるスコアを確認。ぶっちぎりの一位だが、それもそうである。モルゲンレーテの関係者しかやっていないものだし、なによりも、シミュレーターは“やり慣れている”のだ。

 

「だがしかし、私がこれに触って良かったのか?」

「良いんですよ。ほら、大尉の腕を直で見た方がためになりますし!」

「……なるものか?」

「絶対ならない」

 

 ジュリが冷静にツッコミを入れるなり、アサギとマユラが彼女をジトっと見る。

 

 実際のところ、ロマの操縦のなにが役に立つのか……。先ほどのシミュレーションも“予定通り完成したM1アストレイ”を使ってのものだったが、あまりにも無茶な操縦であるし、度々、シミュレーションの反応は遅れていたものだ。

 機体特性自体が、ロマのスタイルと相性がよろしくないのも事実だ。

 故に、それほど凄いことはできてなどいない。

 

「いずれ、M1が完成した暁には訓練ぐらいは付き合うさ」

「大尉、約束ですよ~?」

「ああ、しかしまぁ……」

 

 

 

 ―――それまで、連合とオーブが仲良ければ、の話だけどな。

 

 

 





オーブにて、でしたね
地味に暗躍っぽいことしてたりします
ロマがあっさり入場許可が出てビビってましたが特になにもなく……

危うくエリカ・シモンズと薄い本が始まるところでしたわ~!

プレディザスター関係については次回辺りですね
ちなみにシミュレーターを使ってデーターを取られてますがまるで役に立たないのは間違いない

まぁ繋ぎみたいな回が続きますが……次回はしっかり話が動く、はず

では、次回もお楽しみいただければと思います

アウルとスティングは……?

  • 女の子だよ!
  • 男の子だよ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。