盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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運命の再会

 

 あれから一日が経った昼。

 

 アークエンジェルの格納庫にて、クルーが集まっている。

 もちろんロマも然り、というよりこの集まりの主役は彼である。

 みなよりも高い位置に立つため、台の上、そこでここまでの旅を共にしたクルーを見据えた。

 

 交流した者から、彼を避けていた者まで、全ての者が集まっているのは確かだ。

 

 マリューやムウやナタルは、そんなロマの立つ台の横に並んでいる。

 

 ロマは息を少し深く吸うと、一拍置いて口を開く。

 

「本日をもって私はこの艦を離れる。本来ならことオーブにおいて降りるということはできないはずではあるのだが……まぁ私の立場もあってな」

 

 苦笑を浮かべれば、クルーの一部は納得したのか苦笑を零す。

 

「厳しい戦いも多かったが、生き残れたのも諸君らの力あってのもので、立場は違えど確かに仲間だったと胸を張って言えると、私は思っている。アラスカ、ジョシュアまではあと少しだ……私は先に去ることにはなるが、諸君らと再び見える日を楽しみにしているよ」

 

 それだけを言うと───敬礼。

 

 合わせるように他のクルーも敬礼をするが、どことなくぎこちない一団を見つけ思わず口元を綻ばすも、すぐに胸と腹に痛みを覚える。

 キラのゼミ仲間、つまりは彼、トール・ケーニヒがいるのだ。

 

 彼は彼自身の選択により、その少年を“殺す”かもしれないのである。

 

 

 

 クルーが散り散りになる中、ロマの元へと駆けてくるキラ。

 フッ、と口元を綻ばすも、その心中は穏やかではない。かの少年が戦死した時の、彼の慟哭を知っている故に、だ。

 だがそれを表に出すこともなく、いつも通り笑みを浮かべるのみ。

 

「キラ、これでお別れだ。まぁいずれ会うこともあるさ……アラスカに着いたらアークエンジェルについても君についても、私から悪いようにしないように伝えるさ」

 

 もちろんアズラエルを通じて、ではある。

 なにか言いづらそうにするキラを、フレイが見ていることに気づく。最初はともかく、やはり彼女は彼に惹かれているのだろう。きっかけなど山ほどあるのだ。

 それをロマは知っているからこそ、キラの頭にポンと手を置く。

 

「えっ」

「フレイと、上手くな……別に元の鞘に、とは言わんが、ある程度はスッキリさせておくべきだ。この先、行く場所は戦場だからな」

「……はい」

 

 コクリ、と頷くキラから手を退かす。

 

「それに、ハイータもいる。なにかあれば彼女を頼れ」

「ハイータさんのこと、信頼してるんですね。すごく……」

 

 その言葉に、素直に笑みを浮かべたロマ。事実その通りだし、自分が信頼するハイータをキラも信頼してくれると思うから。

 

「ああ、私には過ぎたる仲間の一人だよ。それに、私より強い」

「え、そうなんですか?」

「そうさ、彼女には直接は言えんが……天賦の才があるよ。戦いのな」

 

 シミュレーションとはいえど“あの三人”を相手に大立ち回りできるなど、それこそ“主人公(キラ)”や“準主人公(アスラン)”ぐらいのものだろう。

 もちろん勝つまではいかないものの、彼女はそういうレベルにいるのだ。

 

「だが、やはり彼女も一人では勝てまいよ。戦場とはそういうものさ。だからハイータにも頼んだが、君にも頼む」

「……はい」

 

 頷くキラに安心したように笑みを浮かべ、ロマは頷く。

 

「また会おう、君の生還を祈っているよ」

「はい、ロマさんもご無事で」

 

 安心安全に彼が過ごせると思っていない故の言葉、なのだろう。

 だが周囲、というよりは彼の直属の上司は彼を危険な戦場などには送り出したくはないのだ。戦うのはいつだって“彼の意思”や“周囲の空気”のせいなのである。

 なればこそ、彼はまだ戦うのだろう。

 

 踵を返し、ロマはキラと別れる。これがきっと、今生の別れになるのだと思いながら……。

 

 

 

 アークエンジェルが入港しているドック、艦への出入りのためにかけられた橋の近くへと歩いてきたロマ。

 立ち止まり、目の前にいるマリュー、ムウ、ナタルを見やる。

 それなりに感慨深いものがあるのだろう。彼女らも……。

 

「あとは任せた。ハイータも残る……戦いは上手くやってくれるだろうさ」

「それは安心なんですけれども、大尉。今までありがとうございました」

 

 穏やかな笑みを浮かべるマリューに、ロマもまた笑みを浮かべて頷いた。

 

「にしても、お前さんがいなくなるんじゃ、やっぱ心配だけどなぁ」

「大丈夫さ。キラもハイータも、スカイグラスパー二号機だってあるん、だろ?」

「……ええ」

 

 少しばかり憂鬱そうな表情で頷くマリューは、やはり新たに少年を戦場に送り出すからだろう。

 ナタルの方へと視線を向けるが、彼女は相変わらず生真面目な雰囲気で敬礼をして見せる。

 

「君も、もう少し柔軟にな。現場はマニュアルだけでは生き残れんよ」

「ハッ!」

 

 そういうところだぞ。とは思ったが野暮なことは言うまいと、笑みを浮かべて軽く敬礼を返す。

 

「幸運を祈るよ。ハイータを頼む」

「俺もこのまま情けないままじゃいらんないからな、任せとけよ大尉」

「頼んだ少佐」

「大尉、またいずれ……」

「ああ、世話になったなマリュー艦長」

 

 歩き出すロマ、やはり“今後のことを識っている”と、ナタルを意識せざるを得ないからこそ、彼女と一瞬だけ視線を交わせてから、歩き出す。

 鉄の床を靴底が叩く音が響く。

 アークエンジェルの甲板を見れば、ハイータが立っているのが見えた。

 

「……いずれ、な」

 

 ただそれだけを、伝わるはずのない言葉を呟いて歩く。

 

 ドックを抜ければそこには、すっかり見慣れた金色の髪を持つ少女。この国の姫、カガリ・ユラ・アスハが立っていた。もちろんその隣にはキサカだ。

 帰路につくにあたっての案内役、と言ったところだろう。

 ロマが来たことに気づいて、カガリはハッとした表情を浮かべた後に、一拍おいてその瞳を鋭く細める。

 

「お前、どんな手品を使ったんだ! どーやってオーブ経由で帰るなんて真似できるんだよっ!」

「五大氏族が一枚岩でないことぐらいは勉強しておくべきだな。それに君の義父とて承知のことだよ」

「そういうことじゃなくてっ、ああもぉ! あんたっていっつもわかったようなことを……」

 

 実際、理解(わか)っているのだ。識っていると言っても良い。

 

「まぁなにはともあれだ、わざわざ案内をしてくれるのだろう。てっきりサハク家かとも思ったが……」

「どこからどうやって繋がって連絡取れたんだよ」

 

 さすがに“エリカ・シモンズ”からとは言えない。キサカの方も気にはなるのだろうが、聞くわけにもいかないのだろう。

 どうせ答えなど返ってこないのだ。

 

「まぁいいさ、頼む。お前にも世話に……なってないか」

「むしろ世話をかけた」

「キサカっ!」

 

 顔を真っ赤にして抗議するカガリに、笑みを零すロマとキサカ。

 カガリは怒りなのか羞恥なのか、その赤い顔のまま歩き出す。それに追従する形でロマとキサカも歩き出す。

 目の前の少女とも、おそらくはこうして会うのは最後なのだろうなと、どこか感慨深さを覚えた。

 

 

 

 目的地、空港へと辿りつく。

 彼がここから飛び立つなど公になるわけにもいかないからだろう、そこには誰もいない。閉鎖しているというよりは、VIP専用と言ったところである。

 自動ドアの前で別れることになり、ロマはその前で立ち止まり、振り返った。

 

「さて、ここで別れることにはなるが……まぁ、先程ああは言ったが、やはり世話になった」

「こちらこそだ。貴方の機体のブラックボックスはパージしてすでに輸送機に搬入済みとのことだ」

「それは助かる」

 

 もちろん“プレディザスターに積んでいるモノ”の話である。

 

「なぁ、また会えるか?」

「戦争が終わっているかは定かではないがな、できればまた会いたいとは思っているよ」

 

 だがやはり、戦争が終わっていなければ会うことなどないのだろう。

 オーブと連合、しかもアスハの人間ともなれば出会うことも無い……ロマの識る“ソレ”があるにしろないにしろ、だ。

 いずれ焼き払われる“かもしれない”国、しかもそれは連合の手によって、だ。

 

 それに、そうなったとして“そちら側”に行く気もないのだから、出会うことなど無いと確信している。

 だからこそ彼は“会いたいと思っている”とだけ言うのだ。

 

「その……ありがとな、感謝している」

 

 カガリからの言葉に、少しばかり驚かされる。

 

「……意外、だな」

「な、なんだよ。これでも色々とその……思うことがあるんだよ。お前とあの船で話したこと、沢山」

「……そうか、なら色々と勉強はしておくべきだな」

 

 そう言ってカガリの頭を軽く撫でるロマ。彼女は素直に頷いた。

 隣のキサカは少し驚いたような表情を浮かべるが、ロマはそちらを気にすることも無く今度こそ自動ドアの方へと歩き出す。

 近づくなり扉が開き、振り返ることもなくそのままロマは自動ドアをくぐって歩いていく。

 

 施設内は静かであったが、少しばかり進めば黒いスーツを着た男女が立っていた。

 案内役だと即座に察し、そのまま誘導に従いさらに歩き出す。

 

 ―――まるでVIPじゃん。

 

 まんまVIPなのである。

 

 

 

 そうして案内されるままに、ロマは空港内を行き、輸送機へと辿りつく。

 スーツの男女と別れて機内へ入れば、背後でハッチが閉じる音を聞く。

 軽くコックピットの機長に挨拶をしてから、やけに豪華な個室へと入ると……。

 

「っ!」

 

 サングラスの奥の瞳が、見開かれた。

 

「あ! おにーさんだ!」

「ん、久しぶり、だな」

「ハァン、びっくりしてる……?」

 

 見慣れていたはずの、久しく見てなかった三人がそこにはいた。

 

「……クロト、オルガ、シャニ」

 

 三人娘が、そこにいた。数か月ぶりの再会、ようやく自らが帰る場所に戻るのだという実感……。

 

「はぁ~……」

 

 気の抜けたように息をついて、近くの椅子に腰かける。

 

「へ、ど、どうしたのおにーさん」

「ど、どっか痛いとかか!?」

「ん、気ぃ抜けただけじゃない?」

 

 シャニの言う通りではある。シンプルにそれが答えだ。

 なんだかんだとアークエンジェルでは気を張り詰め過ぎていたのかもしれない……別に常に疲れていたとかいうわけではないだろうが、心の底から安心できたのはやはり、彼女らがいるからだろう。

 アズラエルもいたらそのまま腰を抜かしていたか、倒れてぐっすり眠っていたか……。

 

 なにはともあれ、“格好つける(いつもどおり)”というわけにはいかないだろう。

 

「いや、安心したんだ。ただ単純にな……」

「え~ハイータ(おねーさん)だけじゃダメだったわけですかぁ?」

 

 そんな言葉に、微笑を浮かべて首を左右に振る。

 

「そういうわけでもないさ、ただやはりあの艦は私に向いていないということだろう」

「それじゃ、なんでハイータの奴残ったんだよ」

「彼女には向いている」

 

 オルガのそんな疑問に、ロマは明確に理解していないものの、答える。

 

 彼女と違い、ロマは識りすぎているのだ。数多の事情を、碌でもない未来を……。

 そして、戦闘になり危険が増えれば増えるほど、無意識下でだが、“本来なら生きている人が識るべきでない終わり”を“思い出し”ている。それがどれほどの負担かも知らないままに。

 

 ロマは、これからの戦いに身を投じるハイータを思う。“正史通り”であれば問題はないが、と。

 

「まぁ、考えても仕方がないことか、今は任せるとしよう」

「ん、おにーさん……せっかく久々なのに寝そうだ」

「クロト、コイツも疲れてんだろ」

「おにーさん、ベッドで寝ないと体痛めるよ?」

 

 椅子に座ったままだったロマが、肘置きに手を置いて立ち上がる。

 

「っと……そうだな、私は寝るとしよう。せっかくの再会だが、悪いな」

「ま、いいよ、こっからはしばらく一緒だしねぇ」

 

 クロトの言葉に、それもそうかと笑みを零す。

 あとはアークエンジェルが無事にジョシュアまでたどり着き、ハイータが戻ってくればそこで一安心はできる。

 その後のことは……。

 

「とりあえず、寝てから考えるとするよ……」

 

 そう言うなり、ロマはサングラスを外し、上着を脱ぎ椅子に置くとそのままベッドで横になる。

 クロトもオルガもシャニも、何を言うでもなく部屋を出ていくのは、やはり彼に気を遣ってはいるからだろう。

 一人になった部屋で、ロマは静かに息を吐く。

 

「……次は、オーブか?」

 

 ―――冗談じゃねぇぞ、オーブと戦うなんて。

 

 

 

 

 

 

 オーブ、モルゲンレーテの工場。

 

 夕方、地下故に日が沈んだかもわからないながらも、スタッフはそれなりに仕事の詰めにかかっている。

 もちろんキラとムウとハイータ、それにマードックたちそしてそんな中、アサギの声が響く。

 

「えぇ!? 大尉がいなくなったってど~いうことですか少佐ぁ!?」

 

 詰め寄って聞くアサギに、ムウはたじたじであった。

 

「い、いやぁ~泳いで帰ったって噂だぜ?」

「そんなわけないじゃないですかぁ! あ~もぉ! コンビネーションの話とか途中だったのにぃ!」

「まぁまぁアサギ、いないんだから仕方ないじゃない」

 

 苛立つアサギを宥めるマユラ、ジュリは肩を竦めて呆れた様子である。

 

「えっと、よければ私が補足しましょうか? ロマ君が教えてたコンビネーションなら、たぶん私でも多少は」

「ほんとですか!?」

「ふぇあっ!?」

 

 フォローしようとしたハイータではあったが、あまりの勢いにビクッと怯えた。

 

「良かったぁ~いいとこで行っちゃうんだもん大尉ぃ」

「ま、まぁロマ君ほど上手くはできないんです、けど……」

「大丈夫です! とりあえずやり方だけでも教えていただければ!」

「ひゃっ、は、はい……っ」

 

 鼻息荒く顔を目の前まで持ってきたアサギに、ブンブンと首を縦に振るハイータ。パーソナルスペースなどあったものではない。

 

「ありがとうございます! それじゃあとでシミュレーションルームで!」

 

 嬉しそうに去っていくアサギ。マユラとジュリの二人は申し訳なさそうにしながらハイータに軽く頭を下げ、アサギの後を追って行く。

 

 とんでもない圧であったと思いつつ、胸をなでおろすハイータ。

 そんな様子を見ながら、キラがハイータへと近づき、傍にいたムウは後頭部を掻いて溜息をつく。

 

「たく、アイツって女の子人気あるよなぁ~そんなにいいかね~悪魔さんが」

「はい、ロマ君は最高です!」

「っ、そう素直に言われると返す言葉もねぇな」

 

 ため息をついて去っていくムウ。

 

「ハイータさん、大丈夫なんですか?」

「まぁロマ君ほど上手くはやれないと思いますけど……」

「え、でもロマさんがハイータさんの方が強いって」

 

 そんな言葉に、ハイータは苦笑を浮かべた。

 

「まぁシミュレーションならですよ。ああいうのってガチンコじゃないですか……実際の戦場じゃ当然そうはいきませんし」

「そっか、そういうことだったんだ……」

「はい、ロマ君は最高です!」

 

 先ほど聞いた気がするがもう一度言われた。ロマ本人にそういうことを言えたら100点なのだが、言えないので結果0点である。

 しかしふと、キラは思った。このあとするのはシミュレーションではないかと……。

 

「あ、まだ余裕あるしお薬飲んでからお相手しようかな」

 

 そしてオーブの三人娘は───地獄を見るのだ。

 

 

 

 

 

 

 ふと、目を覚ますロマ。

 視界に映る天井は、十中八九機内であることを理解させるには十分であり、眠る直前の記憶もある。オーブについて、今後について考えていたのだ……。

 そこでふと、起き上がろうとして気づく。

 

 ―――身体が重いな。金縛りか!? Iフィールドバリアで金縛りにされているのか!?

 

 ロマは心霊現象を疑わない男だった。

 

「……ん?」

「んぅ」

 

 別の声が聞こえた。隣を見れば───薄緑の髪。

 

「シャニか……」

 

 ―――シャニかぁ。

 

 意識すれば柔らかい感触。完全に抱き着かれて動けやしない。

 

「いや待て、動けるはずだ……」

 

 それが“片方だけなら”の話である。

 

「クロト……」

 

 なんの因果か、両脇に少女を侍らせて寝ていた童貞(ロマ)は、やけに冷静だった。心の中でも冷静なのは、おそらくこのあとどうなるパターンか読めているからだろう。

 彼なりに、なにかの間違いでラブコメの神様と(ダンス)っちまったのかとも予想するも、自分に限ってそれはあるまいと確信する。どこに根拠があるかはわからないが確信したのだ。

 

 ともあれ、結局ロマの予測通りのパターンであった。

 

「おい、シャニとクロト来てな……」

「……やぁオルガ、来ているとも」

 

 予測通りオルガが来た。そしてさらに予測通りにオルガは目を点にした後に、顔を真っ赤にして今にもキレそうになっている。

 ニュータイプでなくたって読めるパターンである。

 

「これでは抱き枕だよ」

「そういう問題じゃねーんだよ! クロトォ! シャニィ!」

 

 オルガの怒声に、起き上がるクロトとシャニ。勝手に抱かれていたロマの両腕は少しばかり痺れていた。

 

「んぁ、オルガぁおはよ~、ふあ~」

 

 大欠伸をするクロト、そしてシャニはまだ眠そうな目を擦っている。

 

「オルガ、うるさぁい」

「お前らは目ぇ離したらすぐソイツにくっついてやがる。もうちょっと男女の距離感ってもんをだなぁ!」

 

 凄くまともなことを言う人間の存在に酷く安心したロマ。

 

「オルガの言うとおりだぞ、嫁入り前の娘がこういうことをするものでもないさ」

 

 嫁入りするような将来があるわけでもないが、そう諭す。

 まぁもちろん二人ともその気はないし、そういう未来も夢見ているわけでもないが、ロマが言いたいことは素直に理解した。そして理解した上で……。

 シャニはロマの腕にもう一度抱き着く。

 

「おにーさん、一緒に寝よ?」

 

 ───おっぱいやらけぇ!

 

 ダメだった。

 齢20を超えようと、どれだけ“大人の男(赤い彗星)”を真似ようと、所詮は童貞(ロマ)なのである。中身はいつまで経っても変わらないのを、今回のオーブで悟った。

 だがそれでも、外面を取り繕うなど造作もない。

 

「フッ、私はそろそろ起きるよ」

「ん、それじゃ私、一人寝る」

「ボクももうちょっと寝てますねぇ~」

 

 ロマの腕を離して、横になるクロトとシャニの二人。

 手前のシャニに触れないようにベッドから出ると、立ち上がって背を伸ばす。体中からボキボキと音が鳴るが、まぁそれも悪い気分ではない。

 落ち着いた様子で、ロマが周囲を見渡す。

 

「私の上着は……」

「あ、これ、ほら……」

 

 オルガに渡された制服を受け取り、袖を通して胸ポケットにあるサングラスをかける。

 振り返ってベッドを見るが、既にシャニとクロトは眠ってしまっているようだった。彼女たちにも、これから帰って会う彼女にも心配をかけただろう。

 誠心誠意、謝る準備はしておかねばと、胸に誓い、同時に怒られる覚悟はする。

 

「そのさ……」

「ん、どうした?」

 

 目の前のオルガが、少しばかり赤い顔で目を逸らしながら、口を開く。

 

「お、おかえり、な」

「……ああ、ただいま」

 

 微笑を浮かべるロマに、オルガもぎこちないながらも笑みを零す。

 

 こんな流れになった故にとても言いだせないが、ロマの頭の中には一つの疑問。

 

 

 

 ―――なんで俺の上着、着てたの?

 

 

 







ちょっとずつロマの闇を放出していくスタイル

ともあれ、ようやっと三馬鹿娘登場、ちょっとロマとの絡み書くの久々で心配です
とりあえずラブコメの波動……次回はアズにゃんと再会ということで
ハイータは向こうで楽しくやってるようです

数話は本筋進まないけど、気長に見てやってつかぁさい

では、次回もお楽しみいただければと思います

アウルとスティングは……?

  • 女の子だよ!
  • 男の子だよ!
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