盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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おだやかだった日々に

 

 あれから、再び半月ほどが経ち五月。

 

 ロマ・K・バエルはムルタ・アズラエルと共に、いつもの車の後部座席にいた。

 いつも、と言えばクロトとオルガとシャニの三人だが、今日は一緒ではない。彼女らもとうとう“専用モビルスーツ”ロールアウトの目途が立ち、最終調整を行っているところだ。

 結果、ロマとアズラエルは二人でいつもの拠点への帰路についているわけである。

 

 しかし、その表情はどこか暗い。

 

「……本当に、良いんですか?」

「理解しているよ。自らが言っていることは……いや、言わなかったことと言ったほうが良いかな?」

 

 アズラエルが再度確認するように言うが、ロマは微笑を浮かべたまま首を左右に振るのみ。

 

「JOSH-Aをザフト諸共吹き飛ばすということは、あそこにいる貴方が長いこと乗ってた船ごと……ということになるんですよ?」

 

 アラスカはJOSH-Aへのザフトの攻撃。

 ザフトの内通者による情報により判明したその【オペレーション・スピットブレイク】へのカウンター、それこそが“囮を使ってのサイクロプスでの自爆”である。

 公には“ザフトの新兵器による敵味方関係なしの無差別攻撃”ということにするそうだ。発案は大西洋連邦のウィリアム・サザーランドであり、不利益もないので別段こちらが口を出すことでもないのだが、問題はその作戦自体ではなく……“アークエンジェルも囮”というところである。

 

 彼女、アズラエルはロマの性格をよく理解しているからこそ、『放っておいていいのか』と聞いたのだ。

 だが彼は、彼女の予測に反してその問いに対して首を縦に振った。

 

「ああ、そういう運命だったということさ」

「……意外、ですね」

 

 訝しげな表情で目を細めて言うアズラエルに、ロマは微笑を浮かべる。

 

「生存確率、万に一つもありませんよ?」

「……そうかも、しれんな」

 

 そう返すロマの顔を覗き込むアズラエル。

 

「ホントに良いんですね……なにかありました? あっちで」

「……なにも無かったさ。ただ、な」

「……そうですね。クルー数名は、転属させるそうですが」

 

 頷くロマは、理解していた。

 ムウ・ラ・フラガとナタル・バジルールとフレイ・アルスターの転属、そして“オペレーション・スピットブレイクとアークエンジェルの顛末”を……。

 アズラエルからの話によれば、ストライクは撃墜されたようではあるし、パイロットはMIA。そのあたりは原作通り、問題はなにも感じない。

 

 しかし、それ以上の問題がサザーランドからもたらされた。

 

「ハイータ、ですか……」

「……だからと言って恨んでいるわけでもないが」

 

 少しばかり暗い顔で呟くアズラエルに、ロマは苦笑。

 数日前、アークエンジェルがジョシュアに到着しもたらされた情報。

 

「俺の甘さが、ハイータを……」

 

 ストライクとそのパイロット、そしてハイータ・ヤマムラの───。

 

 

 

 

 

 

 宇宙、プラントはアプリリウス市。

 

 プラント評議会の議員であり穏健派のトップでもあるシーゲル・クライン。彼の持つクライン邸にて、目を覚ます少年がいた。

 

 キラ・ヤマト───“旧友(アスラン・ザラ)”との“殺し合い”を経て、なんの因果か彼はここにいる。

 

 あの島はとある伝道師、マルキオの暮らす孤児院が存在しており、彼と会うためにやってきた“ジャンク屋”があの戦闘を目撃し、傷ついたキラを見つけ、マルキオへと預けた。

 そして、ザフトにも顔が利くマルキオは預けられたキラが“知人の友人”であるということを理解するなり、ここに運び込んだのだ。

 キラは目を覚まし、アークエンジェルがまだ宇宙を飛んでいた頃に出会った少女、ラクス・クラインと再会、今はここで心の傷を癒しつつ過ごしていた。

 

 

 

 庭にて、緑豊かな景色を見ながらボーっとするキラに近づくラクス。

 

「キラ、また悲しい夢を見たのですね」

「ラクス……僕は、僕だけがこんな……」

 

 苦悩するキラ。その身体の各所には包帯が巻いてあり、彼の身体がいかに傷ついたかがわかる。

 

「ご友人ですわね。それと……」

「ハイータさん、僕は……ロマさんに、なんて言えばっ」

 

 顔を押さえて、キラは吐き出すように零す。

 

「……ブルーコスモスのコーディネイター、ですわね」

「僕は……うぅっ」

 

 嗚咽するキラをそっと抱き寄せるラクス。彼は涙を堪えつつ、彼女に抱かれた。

 

「キラのせいではありません。それに……守れたものも、確かにありますわ」

「ぐぅっ……でもっ、それでもっ」

「その方も、“守るために戦っていた”のでしょう?」

 

 その言葉に、キラはラクスの胸の中で慟哭する。

 起きてすぐに“友人(トール)と違い”生死不明であった“戦友(ハイータ)”のことを問い、ラクスは逆にハイータ・ヤマムラという女性について問うた。

 彼女がハイータを知らないという時点でその答えは出ており、キラは彼女の死を確信した。

 

「いいんです。貴方は今、泣いていい」

「ぼくはっ、ぼくはっ……っ!」

 

 僅かばかりの休息かもしれないが、それは確かに、今のキラには必要なことなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 施設内を歩くアズラエルとロマの二人。

 彼女と二人きりを許されるなど、かつてからその役割を担っているボディーガード二人か彼、または三人のブーステッドマンか“コーディネイターの娘”ぐらいである。

 まぁ今に至っては、ほとんどロマと二人きりのパターンが多いのだが……彼女もまた彼といるとずいぶん気軽に、肩の力も抜けて丁度いいのだろう。

 

 しかし、今回に至ってはその空気は重い。

 

「そういえばですが、チェシャの方は新型機の方に積み込み完了だそうですよ」

 

 空気を変えようとしたのか、アズラエルが思い出したように話を振る。

 

「そうか、となれば戦い様はある……」

「まだ貴方も、前線に行きたいと思うんですね」

 

 自制も働かぬままにその言葉を口にして、アズラエルは立ち止まり顔をしかめた。

 彼女自身が空気を変えようと思っていたのに、ついつい口に出してしまったのは、やはり“彼女の状況”を引きずっているからなのだろう。コーディネイターで自らの一兵士であるだけの彼女を……。

 だからこそ、彼に“まだ戦うのか(死ににいくのか)”と言ってしまったのだろう。

 

 そしてロマとて彼女が言いたいことを理解しているのだ……理解できるほどに、彼女を識っている。

 

 故に、答えは一つであると、ロマも立ち止まった。

 

「あまり格好つけるつもりはないが、やはり君たちを守りたいからこそ……私は戦うさ」

 

 なにか大きな使命があるわけでも、復讐を誓ったわけでもない。ただ今はその目的を、ささやかなその願いを叶えるためだけに戦うのみだ。

 結果、その目的に必要な一人が、ブルーコスモス盟主であったというだけ……。

 そして三人の、それほど先が長いわけでもないであろう少女たちと───コーディネイターの少女。

 

 そういった想いをこめて、この世界において珍しくもなんともないだろう、そんなくさい言葉を口にした。

 しかし、“生まれたときより特別であった彼女”は、そんなありふれたくさい言葉で、その綺麗な白い肌を真っ赤に染めていた。

 慌てたように顔を背けるアズラエルに。

 

「だいぶ、カッコつけてると思うんですけど……っ」

「そうかもしれん」

 

 自嘲するように笑うロマ。

 その理由は彼自身もそれがらしくないとは思っており、形にしたその言葉に絶対の自信がない故なのだろう。いや、自信がないというより、自信が無くなったという方が正しい。

 

 アズラエルは深呼吸をして自らを落ち着かせようとするも、やはりほんのりと赤い顔で話を再開する。

 

「地上の作戦ですが、次の作戦で言えば……ビクトリア基地奪還でしょうかね」

「その前に、ザフトが動くだろう?」

「……アラスカの次、パナマ攻略に乗り出してくると?」

 

 その言葉に、ロマは頷いて笑う。

 

「勘ではないさ。ザフトの傾向からしてジョシュアを落とし損ねてそのまま、ということはあるまいよ」

「そうですね。そこは貴方の方が詳しいかもしれません」

「散々、殺りあってはきたからな」

 

 アークエンジェルでも、その前でも然り。

 これからもきっと両手足の指では数えきれないほど、人を殺し続けていくのだ。最初とは違いすっかり慣れて、いまでは進んで殺しに行く。

 戦うことでしか食う術を知らないということもあるが……やはりそれも、ただ彼女らと生きていくため、である。

 

「……やっぱり、行ってほしくはありませんけど、ね」

 

 彼女の言葉に、ロマは彼女としっかりと向かい合う。

 

「私をそうまで心配する人間も数少ないな」

「みんな、貴方は負けないと思いすぎなんだよ……」

 

 いくら強かろうと、人は死ぬ。今回で思い知った。

 あと一週間もあれば、彼女とて持ち直すのだろうけれど、“ハイータの死”を突きつけられてまだ僅かの彼女には、重いことである。

 心配そうに眉をひそめて自らを見上げるアズラエル。

 ロマは微笑を浮かべながら、そんな彼女の頬に左手を当てた。

 

「私は……俺は死ねないし、死なないさ」

「そんなこと言って生き残れるほど戦場は甘くないって、知ってるでしょ……我々に限らず、人はか弱い生き物なんだから」

 

 ナチュラルにしろコーディネイターにしろ、だろう。

 どこか不安そうなアズラエルに、ロマはゆっくりと顔を近づけていく。ハッとしたアズラエルが視線を左右に泳がせるも、意を決したように目を伏せる。

 そっと近づいていき、ロマは彼女の額に自分の額を合わせた。

 

「わかってる。死ぬのは怖いよ……」

 

 人の生において、二度と味わうことなどないであろう感覚を識っている。

 故に、“それ”への忌避の心は強い。痛み、熱さ、寒さ、無音……思い出すだけで身震いするような、圧倒的な孤独。

 だからこそ、彼は今生ではそれを回避しようとしてきていたのだ。

 だが、今では進んでその戦場へと足を踏み入れ、悪夢に神経を削られながらも戦う道を選んでいる。

 

 彼女らを救いたいという、ただ一心。

 

「エゴだな、これは」

「な、なに言ってんですっ、あなたっ……」

 

 額を合わせている故に些細な吐息すら感じるまでの、超至近距離。

 

「あ~! おばさんとおにーさんがイチャついてる!」

「ひぁっ!?」

 

 突如の大ボリュームの声に、素っ頓狂な声を上げてロマから離れるアズラエル。

 顔を真っ赤にして壁に背をつけてそちらを見る……と言っても、聞きなれたその元気な声が誰のものかなど、考えるまでもないし確認するまでもないのだが。

 

「おいクロト、お前空気読めよ」

「そうだよ、あのままヤらせちゃったらよかったじゃん……私たちもやりやすくなるし」

「オレを一緒にすんじゃねぇよ」

「シャニ、頭の中まっピンクかよ」

 

 そう話す三人娘の会話の内容はロマとアズラエルには届いていない……が、こぞって見ていたことを理解して、アズラエルがさらに顔を赤くするのもまた仕方なきことなのだろう。おそらく、しばらくはこれで弄られる。

 近づいてくる三人に、片手を上げるロマ。

 アズラエルは未だに真っ赤な顔で口をパクパクと開閉している。

 

「なんの話をしてたんだ?」

「ううん、なんでもない……」

 

 シャニがロマの腕に抱き着く。

 柔らかな感触に危うく鼻の下が伸びそうになるが、それが自制できていなければ今頃大惨事であるので、上手く隠す。クロトが羨ましそうにシャニを睨むが、シャニはクスッと笑みを浮かべてそのまま離れるわけもない。

 それに業を煮やしたクロトが、ロマの背中に回り込んで飛びつく。

 

「クロト、少し苦しいが」

「んしょ、えへへ、かまいませんよねぇ?」

「……かまわんよ」

 

 左腕にシャニ、背中にクロト。相も変わらず懐かれている自分がどうだとか思いたいところではあるが、それどころではない……赤い悪魔の弱点はいつだって胸である。いや、女と言っても良い。

 ふと、左足に“軽く蹴られた”ような痛み。

 その痛みを感じた方向を見れば、アズラエルがムスッとしている。

 

「なるほど」

 

 理解した風なロマ。“注意するために軽く蹴った”のだと……。

 しかし、その理解は浅い。彼女は割と強めに蹴った。そういうところである。

 

「君を蔑ろにしたつもりはないがな」

「当然です……あなたの敵意だとか察知する“能力(チカラ)”ってこういう時、使えないんですか」

「殺し合いにしか役に立たんつまらんものさ」

 

 だが、と一呼吸置く。

 

「人の好意ぐらいは、わかるものだよ。そんなものなくてもな」

 

 微笑し、そう呟く。

 驚いたように目を見開くアズラエルと三人娘。

 

 しかし、次の瞬間のその表情は冷たい。

 

「……いや今さらじゃねぇか?」

「ですねぇ」

「おにーさん、遅いよ?」

「……ってことですが?」

 

 ―――あれ、思ってたのと違う。

 

 

 

 

 

 

 ふと目が覚めれば、無機質な機械の天井が見えた。

 体を動かそうとするが、鈍い痛みに顔をしかめて“しばらく使っていなかった喉”から掠れた呻き声が出る。もんどりうつこともできずに、上を向いたままの体勢でいると、少しして痛みは治まった。

 記憶を整理しようとするが、やはりいまいち曖昧で、最後の記憶は“何人もの人間が大騒ぎしていた”というところだ。

 視界に妙な違和感を感じながらも、視線で周囲を見渡そうとする。

 

「え、お、起きたの!?」

 

 声が聞こえた。聞き覚えのある声だ。

 

「う、ぁ……」

「ちょ、ちょっと待って! もぉ、なんでこういう時に席外しちゃうのっ」

 

 慌てるような声音が聞こえ、視界に紅い髪の少女が映る。

 

「ぁる、すたー、さ……」

「む、無理して喋らないでっ、ここちゃんとした医療設備とか、ないみたいだからっ」

 

 少女、フレイ・アルスターがそう言って周囲を見渡す様子が確認できた。

 

「い、痛いとかある? その、鎮痛剤ぐらいなら」

「ん、んぅ……」

 

 どうにか、首を左右に振る。それは自分でもわかるほどに弱々しい動き。

 それを見るなり安心したような表情で頷くフレイ。

 

「そ、そっか、あの後、みんなが頑張って時間ギリギリまでって探してくれて……それで」

 

 突如、扉が開く音が聞こえた。

 

「アルスター二等兵、どうし……起きたのか!?」

 

 その声は、フレイに似ている。

 

「意識は?」

「だ、大丈夫そうですっ……痛みも無いって」

「そ、そうか……はぁ」

 

 新たに入ってきた女性、ナタル・バジルールの顔が視界に映る。

 

「意識ははっきり、しているか?」

「は、ぃ……」

 

 返事を返すとナタルも安心したような表情を浮かべた。

 

「ここは地球連合の潜水艦だ。君が撃墜された後、航路上にどうにか発見できて回収したんだ……」

 

 つまりアークエンジェルがジョシュアに辿りついたのは確かなのだろう。その後、転属命令かなにかで今はそちらから移動しているのだと察する。

 結果的には上手く転んだのだと考えたい。

 

 だがようやく、帰ることができる。自らの帰りたい場所へ―――彼と彼女たちの元へ。

 

「ハイータ・ヤマムラ中尉……その、言いにくいのだが」

 

 ―――でも私は、戦えますよ。ね、ロマ君。

 

 

 

 

 

 

 真っ暗な部屋、なんとか目を慣らして自らの服を拾って着ていく。

 シャツの上から制服に腕を通したところで、ボタンをしめながらデジタル時計を見れば時刻は午前の6時過ぎ、日付は五月二十五日。

 ボタンをすべてしめたところで、テーブルの上に置いてあるサングラスを胸ポケットにかける。

 

 ふと気配を感じて振り返れば、ベッドの上で上体を起こしているのは彼の主、長いブロンドに青い瞳───ムルタ・アズラエル。

 

「ん、まだ早いんじゃないですか?」

 

 一糸纏わぬ姿の彼女は、シーツで体を隠しながらベッドから立ち上がる。

 そんな彼女を見て、別段驚くでもなく彼は笑みを浮かべた。

 

「落ち着かんのさ、戦場が近いのにこうしているのは……」

「知ってるからこうしたんだけど?」

 

 その言葉に、彼───ロマ・K・バエルは“らしくもない”表情で破顔した。

 

「ははっ、まぁ……やっぱり怖いものは怖いんだろう。それにチェシャの機嫌も取らないとだ」

「なかなか最低だぁ~?」

 

 ニヤッと笑みを浮かべながら言う彼女に、ロマも言葉を失う。AIとはいえおそらく女性であるチェシャに、アズラエルと過ごした後に会いに行くというのはよろしくはないだろう。

 だがしかし、アズラエルも理解している。あれは戦友やその類なのだから、戦闘前にコミュニケーションを疎かにするわけにもいかないだろうと、ましてや今回は“新型機”である。

 だが、ロマは素直に言葉を受け取ったのかバツの悪い表情で視線を逸らしていた。

 

「……ぷっ、な、なんですかその顔ぉ~」

 

 ケラケラ笑うアズラエルに、ロマはようやく揶揄われていたのだと理解。別の方向にバツの悪い表情を浮かべるが、そんな彼に近づくアズラエルがそっと背を伸ばし、彼の唇に自らの唇をそっと重ねた。

 “数時間前とは違う”触れるだけの口づけに、ロマは微笑を浮かべてアズラエルの頬に手を添える。

 

「ちゃんと無事に帰ってきてくださいよ? ハイータもせっかく戻ってきたんですから」

「私はモビルスーツに乗っても、必ず帰って来る主義だ。死にたくない一心でな」

 

 そう言って頬を軽く撫でると、ロマは手を降ろして踵を返す。

 

「いってくる」

「……いってらっしゃい」

 

 そう言ってほほ笑むアズラエルの柔らかな笑顔に、ロマは変わらず“らしくもない”笑顔で返した。

 

 

 

 そうしてロマは、出撃前のことを振り返っていた。

 コックピット、メインカメラの映像はハンガー内で、機体がカタパルトに運ばれていくのを確認できる。

 相も変わらずノーマルスーツを着ていないが、そろそろ身内に怒られることも増えたので考えを改める日も近いだろう。死にたくない故にノーマルスーツを着ないという矛盾もあったが、そうも言っていられない。

 

 つけていたサングラスを外して、息を吐く。

 

「チェシャ、細やかなことは任せる」

『お任せあれですわ!』

 

 相も変わらずテンションの高い声が聞こえた。気のせいか背後(脳髄)の方から聞こえるような気すらする。

 そんな彼女の変わらぬ様子に、心の中がどこか落ち着く。

 手の震えも相変わらずだが……。

 

『かまいませんけど……どうなってますのこの機体! やっぱりミサイルがどこにもないじゃありませんの!』

「新しい“得物”があるだろう?」

『でかしましたわ!』

 

 ずいぶん前からわかっていただろうに、生の人間であればリアクション芸人になれただろう。

 

『おっと、そろそろ出番ですわよ。準備はできてまして?』

「当然だ。パナマはやらせんよ」

 

 操縦桿をしっかりと握りこむと、彼の雰囲気はどことなく変わる。

 

 それと同じように、ロマ自身も自分の変化を感じていた。

 手の震えは収まり、昂揚感と熱い血が体を駆け巡るような感覚。

 

 いつもと同じだ……ならばいつもと同じように、帰るのみ。

 

『進路クリア、バエル機……発進どうぞ!』

 

 フレイ・アルスターの声に、応える。

 

「ロマ・カインハースト・バエル───」

 

 

 

 ―――ディザスター、出撃する!

 

 

 







水星の魔女が百合いい……


ってことで今回は書くのかなり苦戦しましたわ~

もっとゆっくり時間を進めようとも思ったんですが長くなりそうなので割愛です
ハイータもなんやかんやで僅か一話で生存確認
他にもなんか言うことある気がするけど気のせいってことで

次回はもうちょっと早めに更新したいとこですね

では次回もお楽しみいただければと思います
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