盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
五月十五日。
地球連合軍艦であるはずのアークエンジェルは、再びオーブへ入港していた。
アラスカ、ジョシュアでのオペレーション・スピットブレイクに対するカウンター、サイクロプスでの自爆。
その事実を知り離脱したアークエンジェルはそのまま連合を離脱した。そうでなくとも事実を知っている自分らを軍が放っておくわけもないだろうということは容易に理解でき、敵前逃亡で銃殺刑なんてことも考えられる……故に、オーブへとやってきたのだ。
その大天使を救出するため、プラントでラクス・クラインから託された新たなる剣【フリーダム】を持つキラ・ヤマトも共に、である。
彼が、心に深い傷を持っていたのも事実だ。
だが、友人と“慕った者の大事な者”の二つを失い……だからこそ、失ったからこそ強い決意を持ち彼女に託された剣で、キラは再び戦場に舞い戻った。
そしてその結果、キラは“
そのようなことを経ての今、キラはカガリ・ユラ・アスハと共にアークエンジェルの傍で佇んでいた。
自らの居ぬ間になにがあったのか、そしてカガリはキラに話さねばならないことがあったから……。
「そっか、アスランに会ったんだ」
意外そうでもないように、キラは言う。
頷くカガリは、どこか嬉しそうでもある。
「お前を探しに行って見つけたの、あいつだったんだ。滅茶苦茶落ち込んでたぞ、あいつ……お前を殺したって、泣いてた」
その意味合いをキラは強く理解していた。
「あの時、僕は彼の仲間を殺した。アスランは、トールを殺したし、ハイータさんも殺したと思った。どうしようもなかった。僕も……きっとアスランも」
こうした痛み分けだからこそ、今はキラもこうして冷静でいられるのだろう。
未だに許せるかはわからない。だが今、“あの時と同じ怒りがあるか”と聞かれれば、首を横に振る。
「小さい頃からの友達だったんだろ?」
「アスランは昔から凄くしっかりしててさ、僕はいつも助けてもらってた」
カガリがアスランと再度出会った時、アスランを詰めたカガリにアスランはキラのことを語った。その時と同じような声音で、キラも親しい旧友の話をするように語る。
「なんで、その……そんな奴と戦ってまで、地球軍の味方をしようとなんて思ったんだ?」
「え?」
彼女自身、無神経だとは思った。それでも知りたいと思ってしまったのはやはり、アスランとキラ、二人を共に知っているからだろう。
もしかしたら“
キラが不思議そうな顔をしていることに気づいて、ハッとカガリは首を横に振った。
「いやだってさ、お前……コーディネイターなんだし、そんな友達と戦ってまでなんて……なんでだよ」
いつぞやアークエンジェルで話したことと、変わりないことではあるが、あの時とは違う。
あの時は【なぜコーディネイターなのに、地球軍で戦うのか】だったが、今回は【なぜコーディネイターの友達がいるのに地球軍で戦うのか】なのだ。これは大きな差である。
「僕がやんなくちゃ、みんな死んじゃうと思ったから。僕、コーディネイターだし……」
「え?」
コーディネイターだからという理由でごまかしたが、違う。やはり根本は“誰かのために戦っていた”のだろう。
感情の大きさこそ違うものの、ハイータと同じだ。
彼女は【ロマがいるから戦う】というもので、そこにナチュラルだからとか、コーディネイターだからなんてものは無いのだ。
キラはただ【友達がいるから戦う】だった。その結果に対しての予測の甘さは、否めなかったものの……。
「ほんとは……ほんとのほんとは、僕がアスランを殺したり、アスランが僕を殺したりするなんてこと、ないと思ってたのかも知れない」
思っていたのだ。
ともあれ誰も死なず、そのまま全て終わってくれると……。
◇
五月二十五日、未明。
地球周回軌道上には、パナマ基地を攻撃する地上部隊を“援護”するためのザフト艦隊が展開していた。
地上での作戦開始から未だそれほど時間は経っていない。
現状で無理矢理にでも“新兵器”を投入などすれば、高いコストを払ってした“EMP対策”も“新兵器自体”も無に帰すかもしれない故、今はまだ雌伏の時。
しかして、ジン強行偵察型も配置し、可能性は低いが連合からの攻撃に対する対策は用意した。万全の状態で作戦に挑むはずではあったのだ……。
だが、先を“識る者”がいればそれもまた……。
突如、一隻のローラシア級が爆散。
三機のジンがバズーカを構えるが、次の瞬間にはビームに貫かれ破壊される。
まさかの強襲、そして間髪入れずに撃破されたローラシア級……既にザフト艦隊は混乱に陥れられていた。
『どうなっている!? 敵機の反応があると報告を受けてからまだ二分も経ってないぞ!?』
『そんなっ、接敵してる敵モビルスーツはまだ一機でしょ!?』
『うそじゃない! あのエンブレムっ……“悪魔憑き”だ!』
ザフトにとっては畏怖の対象、それこそが“赤い悪魔”であり、そのエンブレムから“悪魔憑き”とも呼ばれる者。
ロマ・カインハースト・バエル───ブルーコスモス盟主、ムルタ・アズラエルの懐刀。どの程度までザフトが彼を知っているか、答えとしてはほとんど知らないというのが正しい。
だからこそ、正体不明の悪魔、それは圧倒的な恐怖の対象なのだろう。
『こちらガルバーニ! 奴が前にっ、ああぁぁあぁ───』
再びローラシア級が墜ちたのだと理解するザフト兵たち。
混乱するザフト部隊では“ソレ”を抑え込むことなどできるはずもなく、一部を除けば“若者ばかりの兵隊たち”では状況を理解して小隊の再編成すらもまた然り。
ブリッジに“腕を突き立てられた”ローラシア級ガルバーニの甲板の上、爆煙の中、そこに立つのは───たった一機の赤いモビルスーツ。
頭部は所謂“ガンダムタイプ”で、目つきは鋭く、さらに鋭いV字アンテナは四本。頭部にはブレードアンテナも伸びていた。
人型ではあるものの、前腕は他のMSよりも長く、伸ばせば膝ほどまであるだろう。腕部脚部にもプレディザスターと違いしっかりと装甲を纏っている。
胸部装甲は少しばかり前に突き出すような形になっており、上部左右には砲門。
腰部リアアーマーには大型ビームライフルがマウントされており、サイドアーマーはそれほど大きくはないものの厚め、フロントアーマーはストライクのようにシンプルなもの。
肩部の装甲は上腕部分と同等の長さで横に伸びているが、細かなバーニアも装備されておりロマの戦闘スタイルの肝である機動性を増すことはあっても、殺すことはないだろう。
バックパックは上部左右に装備されたポッドにショルダーアーマーよりも一回ほど大きなウイングバインダーが装備されており、下部左右からはテールスラスターが伸びる。
甲板に立ち、真下のブリッジから鋭い爪を引き抜くその姿は、まさに悪魔の様相。
その肩部のエンブレムにザフト兵は畏怖の念を、または激しい敵意を向ける。
しかして、敵意を向けられるだけ、その兵士は場数を踏んでいるベテランなのであろう。連合に比べ圧倒的に数に劣るザフト、若い兵士たちを大量投入している故に、“ソレ”が現れるということの意味は大きい。
だからこそ、銃口を向けるのが遅れる。
その赤銅色の装甲を持つモビルスーツ【ディザスター】のコックピットで、パイロットであるロマは静かに呼吸する。
息遣いを乱さぬように、その視線と感覚で敵機を探っていく。
「さて、問題は私にこの機体を使いこなせるだけの素養があるかどうかだが……」
『オーホッホッホッホ! 素養があるかどうかなど関係ございませんわ! 私がいるのですから!』
「お手柔らかに頼みたいものだな……!」
ローラシア級、ガルバーニの甲板を蹴り加速。さらにガルバーニの爆発で―――加速。
「ぐッ……!」
さらにバーニアを使って加速していることもあり、その速度は“飛行ユニット付きのプレディザスター”と遜色ないだろう。
設計には自分がさんざ関わっている上に、“
なればこそディザスターのことは理解しているが、それでもなお……いやそれ故に使いこなせるか、そこに明確な確信を得られず、それでも戦うしかなく―――。
『悪魔めぇ!』
『落ちろぉ!』
「そうも生の感情を丸出しではな、私を討つには絶望的というものだ……!」
加速していたディザスターを減速、転回させると共にリアアーマーの大型ビームライフルを引き抜き、放つ。
大型ビームライフルの割には、普通のビームライフルとさして変わりない緑色の光が放たれる。
それは敵機であるジンが放ったキャットゥスの弾ごと、放ったジン本体の胸部を貫いて爆散させた。
「通常出力でもやれるものだな……!」
『あなたはいつだってやれましてよ!』
残りのローラシア級の数を確認。
ロマにとっての今作戦の目的は、別段“敵機の殲滅”ではない。“パナマを落とさせない”ことにあるのだ。
ならば撃つべきは“赤い悪魔”に怯える“
彼の地に“神のいかずち”を放つ力を持つ“
十数機のジンたちが銃口を向けるも、ロマはフットペダルを踏み込んでディザスターを加速させた。
攻撃されるより早く、敵群の中へと入り込む。
集団の中に入り込んでいることにより、他からの攻撃を牽制させるという効果を狙ってだが……。
『こいつ、集団戦になれた動きをっ』
『敵に対して対角線上に入るな!』
『無理です!』
その思惑は功を奏す。
左右から重斬刀を引き抜いて接近しようとするジン二機。
「ええぃ、邪魔をする……!」
大型ライフルを手放し、先端が鋭い爪となった五指と両腕を真っ直ぐと伸ばしたディザスター。
すると迫るジン二機へと、その両腕、前腕付け根部分から先が―――射出された。
「出てくるからそうなるッ!」
射出された“有線アーム”が真っ直ぐにジン二機の腹部を貫く。
両腕が即座に回収されるなり、身を翻し他の敵機からの攻撃を避けつつ、手放したライフルを拾い、目標のローラシア級へと速度を上げる。
その速度は凄まじく、並の兵士では銃口を合わせることもできないだろう。
「チィ……チェシャ!」
『こっちも準備っつーもんが必要であらせられるでございましてよ!』
ローラシア級の機関砲と、その周囲のジンによるライフルやミサイル。
向かう先から放たれるその波状攻撃を、加速しながら回避するディザスターが、ローラシア級から見て上方に加速。真上を取る状態になるなり、ブリッジにライフルを向ける。
その銃口に収束する光。
そして……引かれるトリガー。
「墜ちるがいい……!」
最大出力で放たれた大口径ビームが、船体とジン一機を穿つ。
ブリッジに直撃でないとはいえ、大口径ビームの直撃を受けて大穴が開いたローラシア級は既に誘爆を待つのみといったところだろう。今更脱出されたところで問題もあるまいと、ロマは次の敵機を見やろうとするが、殺気に気づき即座に加速する。
立ち止まっていては、大型対艦ミサイルの直撃を受けていたところだろう。
「D型装備かッ!」
対艦装備のジンを見つけるなり、即座に大型ビームライフルを向けて放とうとするも……ジンは動き出す。それを理解するなり、ロマは即座に銃口を逸らしてからトリガーを引く。
放たれた出力を絞った通常のビームが、動いたはずのジンの胸部を貫く。
「やってやれるものだな!」
しかし、鋭い敵意を複数方向から浴びる。
「くっ!」
『ちょっとあなた!?』
即座に加速し攻撃を回避するも、20を超えるジン、ジン・ハイマニューバ、ジン強行偵察型からの波状攻撃すべてを避け切ることはかなわず、ライフルの数発が掠る。
PS装甲により致命的な攻撃ではないものの、僅かに怯みさらにスナイパーライフルでの攻撃を受けた。
さらに、迫るキャットゥスに気づく。
「好きに、やらせるものか!」
胴体に装備された砲口からバルカンを放ち、それを迎撃するも爆散。
広がる爆煙から即座に抜け出したディザスターは、最も近いジンへと接近。超至近距離まで接近すると同時に左腕でその胴体を貫き、右手に持ったライフルで近くのジンを狙い撃つ。
他のジンが放ったライフルを左腕で貫いたジンで防ぎ、風穴まみれになったジンを蹴って加速。
さらに他のジンへとライフルを向けてビームライフルで敵機を貫く。
「チェシャ、まだか!」
『おぉ待たせいたしまぁしたわぁ! 完了ですわよ!』
「っし!」
口元に笑みを浮かべながら、残り四隻のローラシア級を睨みつける。
攻撃を無理矢理に抜けて、加速する。
『なんで止まりませんの!?』
「止まれる場所に、いくのさッ!」
真っ直ぐ加速し、大型ビームライフルを通常出力で放ち上部に搭載された主砲を破壊。
さらに加速し、狙いのローラシア級の甲板へと勢いよく着地する。振り返ればジン・ハイマニューバが重斬刀を持ち接近してくるが、ロマは素早くライフルをそのジン・ハイマニューバへと投げた。
それに反応し、重斬刀で切り裂く。
「目の良さが命取りだな……!」
片手を軽く開いてそちらに向けるディザスター。その手首には―――小さな銃口。
その銃口から放たれた弾丸がジン・ハイマニューバを貫く。
コックピットのロマは、爆発が起きるわけでもなく力なく浮遊する敵機からすぐに目を逸らすと、残り二門の主砲へと意識を向ける。
ディザスターは、両腕をそちらへと向け弾丸を放ち主砲を破壊。
「これで敵機は攻撃できまいよ……僅かだがな?」
『赤い悪魔が、止まった!』
『く、だけど攻撃はっ!』
まだローラシア級は破壊されていないが、時間の問題だと理解し、なおかつ味方ごと撃つ判断さえできれば攻撃は飛んでくるだろう。
だからこそ“僅か”と言ったのだ……だが、それで十分である。
「チェシャ!」
『General Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuver Synthesis System……接続、有線式サブアーム【ファウスト・ヌル】起動』
ディザスターのツインアイの色が緑から赤に変わる。
『なんだ、悪魔憑きの様子がっ』
『目が、赤く……?』
バックパックのウイングバインダーが展開されると、内部に向けて折りたたまれていた“四本のソレ”が───現れた。
その間、ザフトのMSたちは動くのを忘れる。
『あれは、腕か!?』
『な、なんだあのモビルスーツはっ!』
ウイングバインダーから現れたのは―――サブアーム。
延長するようにバインダーの先に一本、下部分に一本、二対四本の隠し腕。前腕部分の型はディザスター本体とほぼ一緒のものであるように見えた。
『あ、悪魔よ……』
『これがっ、赤い悪魔……!?』
『て、撤退しましょう! これじゃぁ、ぜ、全滅ですよぉ!』
その四本の腕を翼の如く広げたディザスター。
見ていた者は恐れ慄き、聞こえぬはずの咆哮が聞こえるようだった。
ジン・ハイマニューバの一機が重斬刀を引き抜き、前に出る。
『恐れるなよ若造! 所詮見かけ倒し……我々コーディネイターがナチュラル如きにィ!』
飛びだしたジン・ハイマニューバを認識するなり、ローラシア級の上に立っていたディザスターはその脚部底からクローを展開しブリッジを刺し貫く。
そして、甲板を蹴り加速。
さらに爆風で加速し、凄まじい速度でジン・ハイマニューバへと接近。
爪を真っ直ぐに伸ばした右腕を振るうが、ジン・ハイマニューバはその刺突を重斬刀の腹で凌いで見せる。さらに、ジン・ハイマニューバは片手を重斬刀から離し右腕を掴む。
『その動きも見飽きたわぁ!』
隊長機のそんな行動に、当然のように他兵士の士気も上がる。
『隊長!』
『俺たちもやるぞ!』
続くようにディザスターへと加速するジン六機。
ディザスターが左腕の爪を隊長機のジン・ハイマニューバの胸部へと向けて、振るう。
『俺の死を無駄にしてくれるなよ小童ど───』
ジン・ハイマニューバを貫いた腕を引き抜けばオイルがディザスターを汚す。
素早く腕は引き抜いたが、すでに周囲には六機のジン。
『もらったぁ!』
『悪魔退治の時ィ!』
『往生しろやぁ!』
だが―――腕は二本ではないし、それは飾りではない。隊長機の活躍に昂揚したのか、既に錯乱していたからか、判断能力は既に失っているのだろう。
四本の腕が動きだすと、前腕付け根部分から先が───射出。
当然、ほぼ同型の腕ができないわけがない。
『えぇっ―――』
『いやぁ―――』
『かあさ―――』
即座に四機が貫かれ、さらにそのサブアームは───自在に動いていく。
『ここからわたくしのショータイムですわ!』
「ローラシア級を落とす、手短にな……!」
『有線アームに難しいこと言いますわねぇ!』
メビウス・ゼロの有線式オールレンジ攻撃兵装【ガンバレル】の技術を応用した新武装、サブアーム四機はロマの使う腕と違い、文字通り自由自在に動きだす。
ジンを貫いた四機のサブアーム【ファウスト・ヌル】がさらに動きだし、迫るジン二機を狙う。
『い、いやぁ! 助けてパパぁ!』
『そんな、こんなのどうやって!』
二機のファウスト・ヌルにより腕をもがれ、最後にコックピットを貫かれるジン。
「いくぞチェシャ!」
『今の私はあなたと一つ、身体はディザスターそのものですわぁ!』
ロマはポケットから取り出した“筒状の注射器”を首に突き刺しスイッチを押す。
中の液体が注入されると、その注射器を“既に使用済みが一本入っている”別のポケットに入れ、ファウスト・ヌルが回収されるなり、フットペダルを踏み込む。加速するディザスターの先、ローラシア級。
「邪魔をしてくれる……まだいるか」
周囲から感じる敵意、追加で前方に現れる二機のジンがライフルを放つも、それを回避。
『露払いはお任せですわね!』
再び射出された四本のファウスト・ヌルが敵機の迎撃に飛ぶ。
前方にいる二機のジンの攻撃を回避し続けつつ接近していると―――。
「そろそろか、新兵を殺すとは……気が滅入ることだ」
―――弾切れを起こす。
「甘いな……!」
両手を前へと向け、射出する。
放たれたそれがジン二機の頭部を掴み、そのまま前方のローラシア級へと叩きつけた。
繋がれている腕を追うように加速したディザスターが、そのままローラシア級の甲板へと着地、即座に腕を引いて二機のジンの胸部に手首から弾丸を撃ち込み、さらに片腕をブリッジへと伸ばし突き刺す。
甲板を蹴って加速、またしても爆風で加速し、次なるローラシア級へと飛ぶ。
ザフトの地上部隊は―――未だ“新兵器落下地点”を制圧もできないままであった。
◇
地上、パナマ基地。
ディンが爆散し地上に落ち、その落下地点近くでゾノが“剣のようなもの”に貫かれて倒れる。
その“剣擬き”がワイヤーのようなもので回収されていくと、その先には一機のモビルスーツが立っていた。
近くにはバクゥ二機とジンオーカー一機の残骸。
そして一機のジンが、片足をその胴体に乗せられ、胸部に弾丸の雨を浴びる。
ディザスターに似たモビルスーツが、そこにいた。
そしてそれを駆るのは一人の女。
「アハハハハッ! 凄いよロマ君! この機体はァ、まるで失った私の手足みたいだァ!」
高笑いする女、ハイータ・ヤマムラ。
失った右腕と左足を取り戻したかのように、喜ばしそうに、狂気的に、楽しそうに笑う。
地上で彼女が戦っていたなどと、ロマは夢にも思うまい。もちろんアズラエルは既知のことではあるが……。
「んぁ~みんなも頑張ってるねぇ~♪ 理事も喜ぶよォ~」
連合の量産機、ストライクダガーがザフトのモビルスーツを破壊しているのを横目に見る。
「フフフッ、私の機体鬼強い! このままかかってくるザフト軍皆殺しにしよーっと!」
黒煙より、朱色のモビルスーツが―――加速する。
◇
宇宙にて、半壊したローラシア級の甲板に立つディザスター。
既にファウスト・ヌルもウイングバインダーに格納されており、周囲にはモビルスーツの残骸。
全滅させたわけではないものの、最後のローラシア級を倒す直前には、既に撤退を開始していたザフト部隊。
ディザスターはフェイズシフト装甲の展開を解除し、その装甲は灰色に戻っている。
「……ぐっ、気持ち悪りぃ」
『ほらぁ、無理して薬なんて使うからそういうことになるんですのよ?』
「じゃなきゃ、一人で敵艦隊とやりあえんだろっ」
しかも、さらにかなり奇を衒った戦い方をして、損傷ゼロとはいけなかった。
フェイズシフト装甲が無ければ死んでいただろうと、苦笑する。
『……お疲れ様ですわ』
「ああ、戦争はまだ終わらんが……な」
そう言いながら、遅れてやってきたアガメムノン級を見やった。
「とりあえず……また怒られるな」
『腹上死なんて笑い話にもなりませんわよ~?』
「……なんで知ってる」
『オホホホ! マヌケは見つかったようですわね!』
生の脳で演算やらをしているとはいえ、AIに隠し事を看破されたことによりロマは顔をしかめる。
『まぁ、冗談はさておき……これでもしっかり見てますのよ』
「……そうか」
照れたような声音を出すAIに微笑を浮かべ、ロマはフットペダルを踏む。
脚部から展開された爪が収納され、ディザスターが宙を浮き肩部やテールスラスターを使い体勢を整えると、アガメムノン級【メネラオス】へと向かっていく。
気分の悪さが徐々に収まっていくのは、その副作用が切れてきただけということでもないだろう。
「さぁ、帰るとしよう……」
場所ではない、今その時───彼女らの元こそが、帰る場所なのだ。
こうして彼の思惑通り、パナマは───マスドライバーは守られた。
最近忙しくて書く時間とれないので結構急ぎめに
変なとこあったらすんませんー
とりあえず新型機ディザスターお披露目
ちゃんとしたガンダムタイプ乗らせるつもりは企画段階ではなかったんですが、連載前に急遽決めました
トンデモ兵器のような、案外そうでもないような
お薬パワーとチェシャパワーで強く見えるのかもしれないです
さらっと地上でもなにかあったようなそうでもないような
では、次回もお楽しみいただければと思います