盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

34 / 80
オーブ再び

 

 

 オーブ本土を戦火が包む。

 大量のストライクダガー、中にはコーディネイター専用機ロングダガーやエースにのみ配備される105ダガーすらも混じり、オーブの量産機M1アストレイと交戦、その圧倒的な物量で徐々に前線を押し上げていく。

 しかし、オーブもやられるだけではない。

 

 やけに連携のとれたM1アストレイ三機が、一機のロングダガーを撃墜して見せる。

 さらには連合から離脱し、オーブに停泊していたアークエンジェルが出航し、連合の攻撃を凌ぐ。

 そして、エンデュミオンの鷹こと、ムウ・ラ・フラガは“パーフェクトストライク”を駆り、エールストライカーの高機動で空へと飛び上がり、装備したアグニでストライクダガーを薙ぎ払い、地上に降りるなりシュベルトゲベールで切り裂く。

 

 さらにはキラ・ヤマトの“フリーダム”が、空を往く。

 

 

 

 それをモニターに捉えながらも、ロマは素早くウィンダムを操縦。

 正面の陸地に並んだM1アストレイ数機のビームライフルでの攻撃を上昇して回避、前方にいたレイダー、カラミティ、フォビドゥンも然りだ。

 そして三人娘の機体は、一斉に射撃武器を構え、放つ。

 

 レイダーが口部から大口径ビーム(ツォーン)を、カラミティが二連装ビーム(シュラーク)大口径ビーム(スキュラ)を、フォビドゥンが頭部に被った背部ユニットから高出力ビーム砲(フレスベルグ)を放つ。

 それらが陸地のM1アストレイ達を撃墜するが、上昇して避けたM1アストレイが一機。

 

 しかし―――。

 

「良い判断だが……!」

 

 鈍い赤をした機体、ウィンダムがその真上から足をM1アストレイに向けて落下する。

 その蹴りを受けたまま、M1アストレイは大地に叩きつけられた。しかし、まだ動けるらしく腕を上げようとする。

 だが、その胴体に乗ったウィンダムの足、爪先と二又に別れた踵からクローが展開し、その胴体を突き刺した。

 すぐにクローが収納されると、その脚部は“ロマの知るウィンダム”と遜色ない姿に戻る。

 

「しかしまぁ、私向けの機能だな……付け焼き刃でもなんとかなるか」

 

 ぼやきながら、ロマは次を感じ取る。

 

「君か────キラ!」

 

 メインモニターに映るのは、まだ連合側の者が知るはずもないモビルスーツ【フリーダム】だ。

 アークエンジェルからなるべく離れないようにしつつ、連合からの波状攻撃からオーブを守るように動いているところを見て、思わずロマは苦笑を浮かべた。

 まさかその場に自分がいて、しかも連合側など夢にも思わない光景だ。

 

 数多の“ゲーム”をやってきたものの、連合の立場で、などそうそうしたこともない。

 

「……クロト、オルガ、シャニ! アークエンジェル側に行くぞ。奴らがいてはオーブを攻めきれん!」

『意外と動揺してねぇんだな、元仲間だろ?』

 

 痛いところをつかれて、少しばかり反省する。

 確かに多少は動揺して然るべき場合だなと思いつつも、首を横に振った。

 

「構わんさ、さっさと終わらせた方が向こうもこちらも被害が少ないだろう……それと、避難船は攻撃するなよ」

 

 そう言いながら、近場の物陰から現れたM1アストレイの頭部を撃ち抜き、接近と共に腰部のビームサーベルを“ストライクと同型のシールド”を持つ左手で引き抜き、コックピットを刺す。

 それが“知った顔でないことを願いながら”だ。

 

『ってことなんで、やるよ白いの!』

『ハッ、上等ォ!』

『じゃあ私、周りからいくから』

 

 フォビドゥンが海へと潜航し、カラミティがMA形態のレイダーの背に乗るとそちらへと加速。

 少し遅れて、ロマはフットペダルを踏み込んでウィンダムを上昇させた。

 

「……ッ!」

 

 瞬間───妙な感覚を感じ、ウィンダムをバレルロールさせる。

 

 元居た場所に奔ったビームに、すぐさま視線を動かす。

 

「ゲタ履きのモビルスーツ!」

 

 ロマの視線に映った2機のM1アストレイは、グゥルのようなものに乗って上空からロマを攻撃していた。

 サブモニターにて、他の方向にも、“サブ・フライト・システム(SFS)”に乗ったM1アストレイが出撃を始めたのを確認する。

 再び放たれた二機からのビームライフルを回避。

 

「だが、グゥルのマイナーチェンジにすぎんな!」

 

 ロマの知らぬことではあるが、そのSFSはプレディザスターの戦闘データから、空中戦の有用性がハッキリと示されたから開発されたものである。

 まぁ本来であれば、プレディザスターに随伴する飛行ユニットのようなものを作るはずではあったのだ。しかし、なんの参考にもならないマニューバと戦術データを研究している内に“グゥルのようなもの”に妥協することとなった。

 

 だが、確かにそれは有用ではあるのだ───ただのパイロットが相手であれば。

 

「真下は……ほう」

 

 下に回り込むが、そのSFSの真下に装備された機関砲が放たれる。

 PS装甲ではないウィンダムでその機関砲の直撃を受けるわけにもいかない。ウィンダムを加速させて下から出るが、次は二機のM1アストレイがビームライフルを撃とうとするも、撃てない。

 銃口を向けたときには、既にウィンダムはその場にはいないのである。

 持ち前の機動性だけではなく、ロマによる予測回避。

 

「そこ……!」

 

 ロマがトリガーを引くなり、その一撃はM1アストレイのコックピットを貫く。

 一機が爆散し、もう一機のM1アストレイの動揺を感じ取りロマはビームライフルを腰後部のリアアーマーにマウント、ビームサーベルを引き抜いて加速。

 そして、真下から振り上げるようにビームサーベルを振るい、コックピットを切り裂く。

 

「素直に投降すれば、とは言えんな……!」

 

 理解はしていたことだ。しかし予想外のことでもある。

 

「見つけた……!」

 

 メインモニターをそちらに、サブモニターで三人娘の方を確認すれば、アークエンジェルから少し離れた場所でクロトとシャニは空中で、オルガのカラミティは地上から、フリーダムとパーフェクトストライクの二機と相対していた。

 そちらに三機、いや四機が釘付けになってくれているなら構わない。

 

 だがそれで“その家族が安全”であるのならばいいのだが、そうもいかないだろう。流れ弾はゆうにそちらへと飛ぶ距離である。

 

「っ……思っている傍から!」

 

 ウィンダムを地上へと加速させ、地上へと着地すると共にシールドを構えて飛んできたシュラークを凌ぐ。

 さすがにまともに受けたせいで体勢を崩しかけるものの、なんとか片膝をついて倒れるのは免れた。

 すぐにカメラを確認し、背後を見やった。

 

「……ふぅ」

 

 そのカメラに映るのは───三人の家族。

 

「マユ・アスカ……」

 

 ロマは識っている。彼女らがここで死ぬ“運命”にあると……。

 

 そして少し離れた急な斜面には、黒髪の少年がいるのも見えた。

 

「シン・アスカ、か……しかし!」

 

 戸惑うように立ち止まっている三人と、そこに戻る黒髪の青年シン・アスカは、ロマを、ウィンダムを見上げている。

 すかさずスピーカーを入れた。

 

「そこの避難民! もたもたするな……!」

 

 その声が聞こえたのか、走り出そうとする四人。

 

 だが───運命は……。

 

「なッ!」

 

 現れた三機のM1アストレイが、ビームライフルを構える。

 

「ふざけたことをッ!」

 

 シールドでそれを凌ぐも、すぐに背後を確認。

 固まって伏せているが、このままではマズいとロマは顔をしかめた。

 攻撃に出ようにも、M1アストレイのビームライフルとバルカンにより動くこともできないまま、シールドで凌ぎつつ、徐々に損傷を増やしていく。

 

「くっ、私の後ろを……オーブの民がいるというのに撃つか!」

『赤い悪魔を倒すチャンスだ!』

『悪魔に惑わされるな! 撃て!』

「チィ! 悪魔祓いの贄とするか、貴様らの守るべきものをッ!」

 

 ―――まぁ人質を取ってるようかッ!

 

 実際、それで手を緩めたからといってM1アストレイを攻撃することもないつもりだが、彼らにとってはそうではないのだ。そのまま撃たれればなす術などないのだから……。

 ロマも反撃のためビームライフルを撃ち、M1アストレイを狙うが決まった方向から来る決まった攻撃など、シールドを使い防ぐのに技術など必要ない。

 ロマのビームライフルはシールドで凌がれる。

 

「しかし……ぐっ!」

 

 跳んだM1アストレイが撃つビームライフルを、シールドを少し上げて凌ぐが、それによりがら空きになった右腕が撃たれた。

 ビームにより溶断された腕が真下へと墜ち、さらにはビームはそのまま真っ直ぐにシン・アスカたちを吹き飛ばす。

 ハッとしてそちらを向くが、砂煙により見失ってしまっており、どうにもならないと即座に動き出した。

 

「貴様ら……!」

 

 左腕のシールドをパージして、サーベルを引き抜いてその場から跳ぶ。

 上空でバーニアを吹かして放たれたビームライフルを回避し、跳んでいたM1アストレイへと加速しすれ違いざまに胴体を斬りさきその背後へと抜けると、さらに地上へと加速。

 それに対応もできずに、M1アストレイ二機の背後へと着地すると共に、一機の胸部を背から貫き、もう一機の胴体に蹴りを打ち込むと共にクローを展開、引き裂く様に足を振り抜けば、その胴体に爪痕のようなものを残してM1アストレイは倒れた。

 砂煙の方を見れば……。

 

「っ……私に、なにができる」

 

 運命はそれを許さない。

 

 先に視界に映った大人が二人……だが、既に人の形はしていない。

 そしてさらに間をおいて、砂埃が晴れた場所に黒髪の青年がいた。その腕に───妹を抱いて。

 少なからず“原作”と違い、その妹は人の形を保っているし、生きていてもおかしくはないように見えた。

 

「……今は、この場にいるべきではないか」

 

 呟くように言うと、バーニアを吹かしてフリーダムとストライクの方へと飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 フリーダムのコックピットで、キラ・ヤマトは顔をしかめていた。

 三機の新型Gからの攻撃、連合が敵の時点でこれは予測できていたことだが……パイロットとしての能力も、性能も、連携も、全てが今までの敵を凌駕している。

 連携は上手く、特徴的な兵器での攻撃、ビームを曲げる兵装を使って避けた攻撃が飛んできた時は肝を冷やした。

 ムウと合流してもこの状態、オーブ軍の援護などする余裕もない。

 

「くっ、どうしてこんな……!」

 

 跳んでくるハンマー(ミョルニル)を回避して、接近するフォビドゥンが振るう大鎌ニーズヘグをシールドで防ぎ、腰部のクスフィアスで怯ませる。

 地上の方から飛んでくるビームをバレルロールで回避すると、頭部を下に向けたままウイングバインダーのプラズマ集束ビーム砲(バラエーナ)と腰のレール砲(クスィフィアス)をカラミティに放つも、牽制程度にしかならない。

 だが、核機動のモビルスーツにエネルギーの心配もなにもないのだろう。

 

「くっ、強い……!」

『キラ、無理するな!』

「はい、ムウさんも……ッ!」

 

 そこで、接近するモビルスーツに気づく。

 

「あれは、まさか……!」

 

 キラの視界に映るのは、赤いモビルスーツ。

 見慣れた赤とはまた違う赤だが、その肩のエンブレムを見間違うわけもない。

 自らの身体を覆い隠すような翼をもつ、悪魔のエンブレム。

 

「ロマさん!?」

 

 だが、そこに存在する可能性は皆無ではない。

 片腕は損傷しているのを見て、ロマでない可能性を模索するも……。

 

『下がれキラ、コイツは俺が!』

 

 ムウも気を遣ったのだろう。彼がロマに懐いていたのを傍で見ていた故に……。

 

 

 

 

 

 

 ロマがウィンダムを駆り、フリーダムに近づいていくもその前にストライクが飛びだす。

 すぐにバルカンを撃ちながら距離を取るも、PS装甲により構わず接近するストライクはシュベルトゲベールを振るう。それを回避し、素早く脚部を振るう。

 それを横腹に受け、怯んだストライクに向けてビームサーベルを振るったが……シュベルトゲベールとアグニを捨てて、ストライクはウィンダムから少しばかりの距離を取る。

 

 追撃をせず、そのままの位置で止まった。

 

『おい! ロマならなんでこんなことをする!』

 

 懐かしい声に、戦場にも関わらず頬が緩みそうにもなる。

 

「軍人ならわかるだろうに……やむを得ない事情というものも、責任もあるものさ」

 

 ガンランチャーでの攻撃をビームサーベルを持つ左手首を回転させ、シールドのようにして凌ぐ。

 

『じゃあお前自身はどう思ってんだよ! 俺らは……』

「知っているさ、サイクロプスの件はな……!」

『なっ、じゃあなんで!』

「連合全てが腐っているわけではないさ、いや……そうでなかろうと私はアズラエル理事と往くのみだ」

 

 投擲されたマイダスメッサーをサーベルで弾くが、ストライクは腰から抜いたビームライフルを構える。致し方なく片足ぐらいは犠牲にする心持でいたものの、ストライクが即座に下がった。

 その場に下方からビームが奔る。

 

「オルガか!」

『なぁにやってんだテメェ! 片腕ぶっつぶされてんだから下がってろ!』

「そうもいくまいよ……!」

 

 フリーダムをクロトとシャニが押さえているのを確認して、ウィンダムを加速させた。

 左右のバランスが悪いものの、即座に偏り方などを理解して加速させ、カラミティの攻撃を回避するストライクへと背後から接近し、ビームサーベルを振るう。

 だがその一撃は、ストライクの背部に装着された追加バッテリーだけを切り裂くことしかできない。

 

「チィ……!」

『あらぁ、腕が墜ちたんじゃない少佐殿!?』

「今の私は“大佐”だよ。ムウ……!」

 

 そのままストライクへと蹴りを打ち込めば、地上へと落ちていく。

 途中で体勢を整えて、カラミティからの追撃を避けるストライクを見て、少しばかり安心するロマ。撃ちたくはないが、撃つつもりでいかなければこちらが危ない。

 それにオーブはSFSにより少なからず強化されており、長期化して連合がなりふり構わなくなれば余計な被害も出る。

 

 なるべく“原作通り二日”で落としたいところだ。

 

『やるぞロマぁ!』

「わかっているさオルガ、脚は引っ張らないようにする……!」

『ハッ、いいねぇ!』

 

 カラミティとウィンダムでストライクと相対する。

 明らかにストライクが不利ではあるが―――直後に敵意。

 

「ッ!」

 

 すぐに後ろに下がって攻撃が放たれた砲口を確認すれば、そちらにはM1アストレイが三機。

 

『少佐下がってください!』

『バエル少佐は私達が!』

『嬢ちゃんたちにゃ早い! さっさと下がれ!』

『だからって放ってはおけない!』

 

 ウィンダムはそちらを向く。

 

「オープン回線で姦しいことだな、オルガ! ストライクを頼む!」

『はぁ!? 片腕で三機がやれんのかよっ』

「やってみるさ」

 

 ロマはウィンダムを三機のM1アストレイへと加速させた。

 パイロットが誰かなど先ほどの声で理解できている故に、撃つことはできないが……戦闘不能にさせるぐらいならば、可能なはずだ。

 アサギ、マユラ、ジュリが駆るM1からのビームライフルをそちらに加速しながら機体を翻して回避しつつ、接近。

 

『えぇっ!?』

『これが赤い悪魔なのっ?』

 

 顔を苦々しく歪めつつ、通信のチャンネルをロマもオープンに変えた。

 

「エース相手にはできんさ……!」

『少佐、ばかにしてぇ!』

「だが正しいものの見方だ!」

 

 そう言うなり、最接近。すれ違いざまにサーベルを振るってマユラとジュリの乗ったM1の腕を斬り落とす。

 即座にバーニアを逆噴射して急停止させつつ、機体の向いている方向を変えつつ背後からアサギ機の足を切り落とす。

 

「ぐっ……!」

 

 Gに顔を歪めながらも、そのままウィンダムでアサギ機の腕を踏むとクローで切断。

 

『うそっ、こんな簡単にっ』

『バエル少佐っ、なんで!?』

「戦場で戦う意味を問うとはナンセンスだ……!」

 

 それっぽい言葉を使っているが、ただ聞かれたくない故の言葉だ。

 

『嬢ちゃんたち! くっそぉ!』

 

 ウィンダムのモニターに映る上空での戦闘は、すでに佳境。

 それと共に、ロマが感じるのは強いプレッシャー。

 

 彼自身は自分の中に安心と共に妙な不安と、さらに奥底に怒りのようなものを感じる。

 

 シャニのフォビドゥンが作った隙を突き、レイダーがフリーダムにツォーンを放つ。

 

 しかし、それは―――赤いモビルスーツのシールドに凌がれた。

 

「っ……!」

 

 ───アスラン・ザラ、ジャスティス! 

 

 フットペダルを踏み込むと、上空へと加速するウィンダム。

 そのまま、レイダーとフォビドゥンより、少しばかり二機に近づいた状態で止まった。

 

『くそぉ、なんだアイツ!』

『へぇ、まだいたんだ……変なモビルスーツ』

「油断するな。妙なプレッシャーだ……私も片腕を貸そう」

『大人しくしてろよおにーさんはさ!』

「そうもいくまい。大人で大佐だからな……!」

 

 そう言いながら、下で拾ったM1アストレイのビームライフルをフリーダムとジャスティスの二機に向ける。

 レイダーとフォビドゥンも同時に射撃攻撃を放つが、二機はあっさりと回避。

 戦闘を開始しながらも、オープン回線で声が聞こえてくる。

 

『こちら、ザフト軍特務隊、アスラン・ザラだ。聞こえるかフリーダム! キラ・ヤマトだな?』

『アスラン……どういうつもりだ! ザフトがこの戦闘に介入するのか!?』

『軍からはこの戦闘に対して、何の命令も受けていない! この介入は……俺個人の意志だ!』

 

 フリーダムとジャスティスがレイダーとフォビドゥンの攻撃を回避していく中、ロマはジャスティスへと接近してビームライフルを放つ。

 だが、それをギリギリで回避するなりジャスティスが蹴りを放ってくるので、ロマも蹴りで応戦。

 内心で“足にサーベルが付いた機体”であればおしゃかだったと肝を冷やす。

 

「ザフトが介入とは、これで連合はオーブへの攻撃に遠慮が要らなくなるようだな……!」

『くっ、そもそもなぜ連合がオーブを!』

「出資者はいつも無理難題を仰るものさ、アスラン・ザラくん……!」

 

 その脚を下げつつもう片方の足で蹴りを放つも、ジャスティスはそれをシールドで凌ぐ。だが、衝撃は殺し切れずに僅かに後ろに怯んだところでビームライフルを撃つが、それもシールドで弾かれた。

 舌打ちをしつつ、さらに追撃をかけようとしたところで、妙な感覚を感じ背後に下がろうとするが―――。

 

「間に合わんかっ」

 

 真下から上がってきたフリーダムにもう片腕も持っていかれる。

 

『ロマさんっ……なんでなんですかっ!?』

「軍人だからさ、勝手気ままはできんし……その本質はキラ、お前と同じかもしれんよ」

『それってどういうっ……!』

「ともあれ今の私は君の敵、それにハイータの分もやらせてもらわんとな……イージスのパイロットくん」

『なにを……!?』

 

 アスランが驚愕の声を上げるが、構わぬと言う風にロマはその双眸でジャスティスを見やる。そして前方に出てきたフリーダムを見て、喋りすぎたことに顔をしかめた。

 フリーダムがビームサーベルを引き抜いたのを見て、回避行動をしようと試みるがそうもいかない。

 おそらく今のキラの技量とロマの機体状況では、この状態から回避はできないだろう。

 

『喋ってる前にさっさと退いてろよ!』

「言葉も出んなっ」

 

 さらに砲撃、フリーダムが回避しなければ今頃レイダーに乗ったカラミティが放った砲撃の餌食になっていた。

 そこにはロマも内心で一安心するが、やはりこうなってはどうしようもない。

 少しばかり距離を取れば、三人がフリーダムとジャスティスに攻撃を始める。

 

 ロマがサブモニターで下の状態を見やれば、そちらではM1三機からアサギ、マユラ、ジュリが脱出している様子が見えた。

 

「人でなしがなにを今更……っ」

 

 自ら攻め込む意思を見せておいて、攻撃しておいて、心配するなど烏滸がましい。

 そういう思考に至るのもまた仕方のないことなのであろう。

 

「しかし、攻めあぐねるか……!」

 

 他の方面を確認しても、やはりどこも攻め切れておらず今日中に、とは結局いかないだろう。

 そもそもフリーダムとジャスティスが揃ってしまっている時点でクロト、オルガ、シャニはそこに縛られてしまう。いくら“原作”よりも三人が強かろうと、圧倒はできない。

 ともなれば、そうなるのもまた仕方のないことなのだろう。

 

 などと思考している内に、ウィンダムのコックピット内にタイマーのような音が響く。

 

「チィ……クロト、オルガ、シャニ……撤退するぞ!」

『えぇっ!?』

『チッ、もぉ時間かよ!』

『ハァン、おにーさんが言うなら……いいよ』

 

 即座に攻撃行動を中止するなり、三機はフリーダムとジャスティスを相手に牽制用の攻撃を撃ち、撤退。

 三機から遅れてウィンダムを帰還ルートに向けるロマ。

 

『ロマさん! なんでオーブに攻撃なんてっ!』

「そういうものさ、割り切れ。でなければ……死ぬぞ」

 

 それだけを言うと、ウィンダムをアズラエルが待つ艦の方へと加速させた。

 

 

 

 

 

 

 アズラエルと今作戦の司令官である連合の将校が乗る艦。

 

「レイダー、フォビドゥン、カラミティ、ウィンダム帰投します」

「なに?」

 

 その報告を受けるなり怪訝な顔をする司令官だが、アズラエルは飄々とした面持ち。

 

「ふむ……時間ですか」

「これはどういうことだね?」

「止め止め、ちょっと休憩ってことですよ、艦長さん。一時撤退です。全軍撤退」

「なんだと!?」

 

 突然の作戦中断宣言。

 ブルーコスモス盟主、ロゴス代表に逆らう力はないが、でなくともなにか聞いておかなければ納得はできない。

 だが、アズラエルは別段表情を崩すことも無く、しっかりと戦況は見ていた故に言う。

 

「どうせストライクダガーだけじゃどうにもなりません。オーブの底力、思っていた以上ですね」

「ぐっ」

「それに……あの子たち抜きで戦ったら全滅しますよ?」

 

 司令官は言い返せない。

 先ほどのフリーダムの動きを見ていればそれもそうだろう。

 それに、ストライクにバスターとXナンバーが出撃し、オーブ防衛……今の戦力であれと対抗できる力がどれほどあろうか……。

 つまり、アズラエルの部下たちの力はそれほどのものなのだろう。

 

「まぁ全滅は言い過ぎでも、赤い悪魔も抜きで戦いますか?」

「……信号弾撃て! 一時撤退!」

 

 その言葉と共に、各艦が撤退の信号弾を打ち上げた。

 

「ウィンダム、かなりの損傷のようです。アズラエル理事、バエル大佐が対応を求めてます!」

「っ……後で行くと伝えておいてください」

 

 決して表情は崩さなかった自分を、アズラエルは褒めたい気分であった。

 

 

 

 格納庫で、薬を飲む三人娘と、コーヒーを飲むロマ。

 妙な威圧感を感じて、苦笑しつつもそちらを向けば、見慣れた金髪の女性がやってきていた。

 ニコニコとしているのは、良いことなのか……。

 

 少しばかりセンチメンタルになっているロマにとっては、なんとも言えない気分であった。

 

「すみません、理事」

「あなたたちねぇ……三人は?」

 

 その言葉に、三人共首を傾げる。

 

「はい大丈夫、貴方は?」

「……怪我はありませんよ」

「口の端、血がついてますけど」

 

 Gにやられたであろうことは容易に想像がつく。

 フッ、と微笑を浮かべたまま頷くロマ。

 

「……いつものことです」

「あなたノーマルスーツ着てましたよね。マシになったらそのぶん無茶して良いと思ってる人ですか?」

 

 それは否めない。

 

「……腕の修理をお願いします。機体の」

「貴方の頭の修理の方が先だと思いますけど」

「手厳しい」

 

 ハハハ、と笑うロマに腕を組んで顔をしかめるアズラエル。

 

「ともかく、一応別パーツで修理は進めますけど……使うかわかりませんよ」

「ん、というと?」

「オーブからの会談要請があれば飲みます。このレベルの国、今の連合が無理してやりあったってなんの得もありませんよ」

 

 ジブリールに余計なことをされたからせざるをえなかっただけで、本来なら戦争を終わらせるのに、必要のない戦いなのだ……。

 故に、アズラエルは早々に終わらせるつもりであった。

 いたずらに戦力を消耗する必要もない。

 

「……やるとしたら一緒に来ます?」

「遠慮させて───」

「きますよね? 私一人で行かせるなんてことないですよね?」

「……お供させてもらいます」

 

 そう言ったロマの顔を覗き込むようにして、アズラエルはニッコリと本物の笑顔を浮かべた。

 

「それでよし♪」

 

 少しばかりセンチメンタルに浸っていたロマだったが、少しばかりその笑顔で救われるものはあるのだろう。

 フッ、と笑みを浮かべて、軽く頷いた。

 

 

 

 目的を忘れてなどいない。

 だがやはり、人の心とは移ろうもので、その場で流され揺らがされるもので……。

 

 それでも毎度のように、彼は傷つきながらも自らの願いを思い出す。

 

 自分だけが安心安全に暮らすこと?

 自分だけが平和に裏方で生きること?

 自分だけが前線に出ないために努力すること?

 

 どれも否だ。断じて否。

 

 その“原作からの乖離(目的)”故に、自らのやるべきことは……。

 

 

 

 ―――運命を切り開く、か……。

 

 

 







とりあえず半分で重要なポイントなのでこんな感じに……打ち切りエンドっぽいですねこれ
ロマの戦いはこれからも続く

民間人を盾にする汚い悪魔を討伐しようとしたM1はぼこぼこにされました
そしてちゃっかりSFS、たぶんシュライクを平べったくしたような奴

シンは無事に運命ルートにいきそうですかね
でもマユはちゃっかり生存ルート

ロマは珍しくちゃんと損傷ですが、たぶん今後は増えていきそうですね
とは言いつつアズにゃんは和解ルート突っ走る気満々のようです

……原作みたいに放送されてたらロマの「なんだこいつ」感が凄いっすね

では次回もお楽しみいただければと思います

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。