盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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それぞれの道

 

 

 オーブ本国。

 展開したストライクダガー部隊を押さえるために、M1部隊は戦闘を続けているものの、すでに105ダガーやコーディネイター部隊のロングダガーが展開している状況では、やはりそれらも時間の問題だ。

 そして、マスドライバーカグヤから最も近い戦場、上空ではレイダー、カラミティ、フォビドゥンがフリーダムとジャスティスを相手に戦い、地上では───。

 

 一機のM1アストレイを、“赤銅色の右腕”が貫く。

 

「この程度で私達に勝てるはずもない……いや、時間稼ぎ故か……!」

 

 明らかに、戦闘している雰囲気も感覚も、若い兵のものではない。

 

「老兵は黙して去るのみか、もう少し黙して頂いた方が楽ではあるが、な!」

 

 腕を突き刺したM1を蹴るようにして離れて、左手に持ったビームライフルで一機を撃墜。さらにエールストライカーのスラスターを使ってホバーするように移動し、その爪で一機の脇腹部分を切り裂く。

 M1の数も減ってきて少しばかり余裕がでてきたのか、ロマは上空の戦闘をモニターに出すが、戦闘は拮抗……いや、僅かにクロトたちが勝っているように見える。

 

「しかし、決め手に欠けているか……」

 

 だが、それで良い。

 

「それでも、やらねばならんよ」

 

 周囲のM1が接近してこないことを把握し、上空へと加速。真下から迫るビームライフルを回避しながら、目標はフォビドゥンにレールガンの銃口を向けるフリーダム。

 真後ろから迫り、蹴りを打ち込むつもりだったが、敵意に顔をしかめて急停止。

 眼前に現れる赤い装甲、ジャスティス。

 

『おにーさん!』

『うぁっ!』

『シャニ!?』

 

 レールガンを受けたシャニの声が聞こえ、彼女を心配するオルガの声もまた然り。

 だが、眼前のプレッシャーにロマはそちらを気にする余裕もなく、即座に動き出し、ビームライフルを放つ。ジャスティスとフリーダムを一直線に狙ったものだが、当たるわけもない。

 凄まじい反応速度による回避、ロマはフリーダムからの戸惑うような感覚を余所にジャスティスからの敵意だけを感じ取り、即座に接近し振るわれたビームサーベルを回避。

 

「えぇい、SEEDとはこういうものか……!」

 

 眼前のジャスティスにビームライフルを構えるが、ジャスティスの振るいきったビームサーベルの柄が僅かに長いことに気づいたロマは、素早く下がる。

 そのビームサーベルの柄尾から突如として伸びたビームの刃がウィンダムの持つビームライフルを貫く。

 それを手放してさらに背後に加速しながら、ロマは顔をしかめた。

 

 フリーダムとジャスティスの持つ<ラケルタ ビームサーベル>は柄同士を連結させて双刃にすることができる。

 

「アンデなんたらか……!」

 

 アンビデクストラス・ハルバードモード。

 そう呼ばれる状態のままのビームサーベルを持ち、ジャスティスはウィンダムとの距離を詰めていく。

 

 しかし、ジャスティスのコックピットでアスラン・ザラは驚愕を隠せないでいた。

 まさか、不意をついたはずの一撃を回避されるとも思わなかった故だ。イージスを駆りアークエンジェルを追っていた時から“赤い悪魔”がいかに常識はずれかは味わっていたはずだが、それでもまだ驚愕させられる。

 友人であるキラは彼を仲間で頼りになる兄のような存在だと言っていたが、自分にとっては今も昔も最大の脅威と言って過言でない。

 キラや他のコーディネイターたちとも違う―――“攻撃される前に回避”。という戦い方にいつまで経っても慣れない。

 

「くっ、赤い悪魔……ジャスティスで押し切れないだと!?」

 

 ビームライフルだけは破壊したが、他にどのようなギミックが隠されているかもわからない新型機。

 アスランはさらに素早くサーベルを振るうが、それも回避されてしまう。

 

「なら、避けられないように追い詰めれば……!」

 

 背部ユニットファトゥム-00からビームを放ちウィンダムを牽制し、さらに肩部の<バッセル ビームブーメラン>を投擲。

 それを回避されるも、さらに<サジットゥス 20mm近接防御機関砲(頭部バルカン)>を放ちながら接近、ファトゥムからもさらにビームと機関砲を放ち、ウィンダムの移動を制限。

 そして、帰ってきたバッセルを回避したところを狙い―――ビームサーベルを振るう。

 

「ここまでしてこれかっ!」

 

 ウィンダムは、そのビームサーベルにて左腕を斬りおとされる。

 

 迫るジャスティスを見やりながら、ロマは冷や汗を額に浮かべた。

 

「くっ、化け物か!」

『くそっ、おいロマ!』

「少女に心配されては物笑いの種だな……!」

 

 振るわれたビームサーベルを回避しながら隙を探すも、シールドも持っていない今のウィンダムではいかんせん勝機が見えない。

 ロマ自身も理解していたことではあったが、ここまで散々戦ってきたというのに“彼ら”を相手に同格に戦うこともできないのかと、歯噛みしたくもなる。

 それでも、ジャスティスが振るうビームサーベルを回避しながら、ロマは素早い操作でウィンダムを加速させ、ジャスティスがビームサーベルを振るった瞬間に、その脇を抜けた。

 

「なにっ!?」

 

 ジャスティスのコックピットでアスランは驚愕。

 

「ぐぅっ、これならばさすがになッ!」

 

 脇を抜けたところで反対方向にバーニアを吹かして全力で急停止。

 コックピットのロマがそのGに顔をしかめながらも、さらにスラスターを使い反転しようとしたがその瞬間───バックパックが爆発を起こす。

 衝撃に驚愕しながらも、ロマはウィンダムが予期せぬ自由落下を始めたことに気づき、すかさず破損したエールストライカーをパージし、スラスターを使い体勢を整える。

 隙を晒した今では攻撃もなにもできまい。

 

「えぇい、慣らし運転もしないで使うからこうなる……!」

 

 こういうときに限って“ニュータイプのなりそこない”のような能力が発動しないことに、苦々しく表情を変えつつ、ジャスティスから放たれたビームを回避しようとするが、その一撃は頭部を破壊する。

 さらに追撃しようとするジャスティスを、カラミティのシュラークが妨害。

 

 無事に地上へと降りたウィンダムのコックピットで、ロマはマスドライバーを確認。

 

「……終わりか。いや、始まるのか」

 

 マスドライバーから射出されるクサナギと、それを追うように前線を離脱したフリーダムとジャスティス。

 追うのはレイダーとカラミティとフォビドゥンの三機。

 少しばかり心配だが“原作通り”進めば、このままフリーダムとジャスティスはクサナギと共に宇宙へと飛び立つはずだ。

 

 瞬間───爆発。

 マスドライバーの一部と、離れた場所にあるモルゲンレーテの工場をオーブ軍が爆破したのだろう。連合に技術を渡さぬため、マスドライバーの一部を破壊したのは即座に追うのをできなくするため。

 周囲に敵機がいないことを確認して一息を吐くが、そうしていると、妙な感覚を感じ―――そちらを向く。

 

「M1アストレイだと、まだやるのか……?」

 

 サブカメラにて、そこに現れたM1を捉える。

 

「なんのつもりだ、今更でてきて……弔い合戦のつもりか?」

 

 おそらくウズミもオーブの翁たちもまとめて爆散したのだろう。だが、それでも戦うつもりのようだった。

 感じる敵意でもない妙な感覚に戸惑いながらも、ウィンダムの残った右腕を構える。

 敵のM1はシールドもライフルも持たないまま、ビームサーベルを両手で構えた。

 

「死ぬ気か……?」

 

 そのつもりだとしても、こちらが負けてやるわけにもいかない。

 

「……っ!」

 

 瞬間、敵のM1がバーニアを吹かし、ビームサーベルの切っ先をこちらに突っ込んでくる。

 同じくロマはウィンダムを加速させ、その勢いのままビームサーベルを回避し、そのM1の脇腹をクローで切り裂きつつ、少し離れた場所で停止。

 当然、負ける気はしなかった。ただ、敵意も殺意もないことだけに違和感を感じる。

 

 背後のM1アストレイはビームサーベルを両手で持ったまま、両足を地につけているものの、その脇腹は抉られておりバチバチと漏電し、いつ爆発してもおかしくはないだろう。

 ともすれば、コックピットも無事では済んでいないかもしれない。

 

 だがその瞬間、オープン回線での通信。周囲にはその通信を聞く者はいないことは確かである。

 

『ロマ・バエル……聞こえるか?』

「なに───ウズミだと!?」

 

 ウズミ・ナラ・アスハ。

 彼は“本来ならば”自爆するはずなのにも関わらず、なぜここにいるのか……。

 

「なっ、なにやってんだよ!? なんでアンタがM1に乗ってんだッ!?」

『ふっ、その方が、良いではないか……』

「なっ……カッコつけて自分だけ満足して死ぬんじゃねぇ!」

『……頼む、カガリを』

 

 ロマの言葉は既に聞こえていないんだろう、返事は遅れているし、返答になっていない。

 

『世界を……“奴ら”の好きなように───』

 

 瞬間、M1アストレイは脇腹部分から爆発、そのまま地に倒れ伏す。

 オープン回線での通信は切れ、既に声は聞こえない。

 ロマは自らの震える両手を握りしめて、思い切りモニターに叩きつける。

 

「くそっ、これだから嫌いなんだよ、オーブもウズミもっ……!」

 

 項垂れるようにして前のめりになるロマは、悪態を吐き出し、何度もモニターに拳を叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

「いやいや、お見事でした。流石ですわ……サザーランド大佐」

 

 そんな声で、ロマの意識が“あの日”から引き戻される。

 

 現在は輸送機の中、隣に座ったアズラエルとウィリアム・サザーランドが会話をしているのだということを理解した。

 オーブ解放作戦と同時に発動していたビクトリア基地奪還作戦は成功し、今はビクトリア基地のマスドライバーを使い、宇宙(ソラ)へと上がろうというところだ。

 先ほどまではアズラエルが『コーディネイターの捕虜が大量で困る』という話をしていたのを思い出す。本来であればコーディネイターは皆殺しな勢いであったビクトリア基地なのだが、パナマの敗戦もなく下ろすべき溜飲もないのだろう。

 

 ロマは、窓の外を見やりながら聞き耳を立てる。

 

「いえ、ストライクダガーは良い出来ですよ。オーブでアズラエル様が苦戦されたのは、お伺いした予期せぬ機体のせいでしょう」

「まだまだ課題も多くてねぇ。こっちも……よもや、カラミティ、フォビドゥン、レイダーで、ああまで手こずるとは思わなかった」

「しかも、バエル大佐もいて、ですな」

 

 突然の飛び火にそちらに視線を送るが、ウィリアム・サザーランドは本気でそう思っているのだろう。裏の無い表情で笑うのみ。

 彼はアズラエルの側近であるロマを散々見てきている故に、その実力を理解しているからだろう。

 ザフトに打撃を与え続けた男、ロマ・K・バエル。だからこそ、本気でウィリアム・サザーランドはオーブが驚異的な戦力を持つと考えている。

 

「本当にとんでもない国だね、オーブは……何考えてたんだか」

「上手く立ち回って、甘い汁だけ吸おうと思っていたんでしょう……卑怯な国です。プラントの技術も相当入っていたようですからなぁ。いや、もしかしたらその2機、実はザフトのものだったのかも知れない」

 

 そんなサザーランドの洞察力に、ロマは心の中で思わず苦笑を浮かべる。

 

「どちらにしろあれは何とかしなきゃねぇ」

 

 目的はあの二機の捕獲、ロマは前もって聞いていた。

 しかし、それをウィリアム・サザーランドには言えない理由がある……。

 

「それでご自身で宇宙へと?」

「あの機体もしかしたら、核エネルギー、使ってるんじゃないかと思ってね」

「なんですと!?」

 

 さすがのサザーランドも大きな声で反応を見せた。

 ミョルニルを真っ二つにして、あれだけの火力を出しながらの戦闘の継続……おかしいとは思っても、核動力という発想は真っ先に否定されて然るべきだが、彼女はそれを見抜く。

 ロマはこうなることを知っていたものの、何年も彼女の傍らにいたからこそ、むしろ気づかないはずがないという確信を持っていた。

 

「確証はないけど……でもあれだけのパワー、従来のものでは不可能だ」

「Nジャマーも、コーディネイターの作ったものですからなぁ。確かに奴等なら、それを無効にするものの開発も可能でしょうが、それが本当なら由々しき事態ですな」

「ん、国防産業理事の私の目を疑うの?」

「いえ、そのようなことは……」

 

 アズラエルが笑って言うと、サザーランドは苦笑を浮かべながらそれを否定する。

 

「大体我々は弱い生き物なんだから、強い牙をもつ挙句凶暴なのは……ちゃんと繋いでおくかしないと、でしょ?」

「宇宙に野放しにした挙げ句、これでは……ですな」

 

 コーディネイターはナチュラルよりも強い。それは生物的に仕方のないことなのだ、だがそれでこちらに牙をむくなら容赦はしない、ということだろう。

 まぁ、コーディネイターが、というよりは“ザフト”は……だ。 故に“凶暴なのは”と言ったのだろう。

 

「頑張って退治してくるよ。私達も」

 

 そう言ってから、どこか複雑そうな表情をしているアズラエルを見て、ロマはサングラスの奥の瞳を細めた。

 

 

 

 その後、サザーランドと別れてジープにて空港へと移動したロマとアズラエル。

 レイダー、カラミティ、フォビドゥンを輸送機からシャトルに移したクロトたちも直に合流するだろうと、二人はシャトルへの道を行く。

 無言のアズラエルを見てから、周囲に人がいないことを確認しロマは静かに口を開く。

 

「……どうしました」

「いえ、昔のことを思い出して……私も大概クソガキだったなぁ、とか」

 

 ―――今ではメスガキムーブかましてくるけどな。

 

 などとは、とてもじゃないが言えない。

 

「センチメンタル的だな、ムルタ」

「たまにはそういうこともあって当然でしょ、私だって人間だし……ナチュラルの子供なんて、大概そういうことを親に言っちゃうもんでしょ」

「……違いない」

 

 苦笑するロマ。言ったことは無いが、やはり思ったことはある。

 自分が“コーディネイターであったなら”と……。

 

「すっごい怒られたけど、っていうか……泣かれた」

「ハハハ、それは苦い記憶だな」

「笑い事じゃないから……はぁ、いやまぁ、少し言ってスッキリしたけど」

「それはなにより」

 

 彼女の言葉にウソはないのだろう。先ほどよりもスッキリしたような表情をしている。

 こういう時に能力(チカラ)を使えないからこそ、“ニュータイプモドキ”なのだと、逆にロマが顔をしかめたくもなるが、今更と言うものだ。

 三人娘が合流する前に、彼女がいつも通りに戻りそうで良かったと思いながら、ロマはアズラエルと共にエスカレーターに乗る。

 ふと、アズラエルが声を上げた。

 

「あ、そういえばサザーランド大佐と居た時、全然喋らなかったけど、結構貴方の話題出してましたよ?」

「いえ……理事と大佐の真面目な話の邪魔をするわけにもいかなかったので」

「別に良いでしょ。貴方の意見って結構大事なんだから……」

「……理事が楽しそうに話してらっしゃったので」

 

 そう言っている最中にアズラエルを見れば、なぜだか口に手を当ててニヤリと笑っているのに気づく。

 

「もしかしてぇ~嫉妬しちゃってますぅ~?」

「なっ!? そういうわけではっ」

「えぇ~あやしぃ~、いやですねぇ、ただの業務じゃないですかぁ~♪」

 

 なぜだか嬉しそうなアズラエルに、これ以上は“誤解”だと言うのも難であるなと、ロマは黙る。それに、その感情が完全に無かったかと問われれば自分でもわからないところでもあるのだ。

 ニヤニヤと笑いながら肘で突いてくるアズラエル。

 

 ―――メスガキ、わからせたらぁ……。

 

 余計なことを思考していれば、エスカレーターの出口付近。

 一歩踏み出すロマを肘でつついていたアズラエルは、それに気づかず、つまづく。

 

「にゃぁっ!?」

「おっと」

 

 不意の事故に、素っ頓狂な声を上げてこけそうになったアズラエルを支えるロマ。

 抱き合うような形になったのもまた仕方のないことなのだが、それ以上の問題を抱えたせいでアズラエルは顔を真っ赤にしており、挙句体勢が体勢なものでロマと顔があった状態。

 不備の事態にロマも混乱しているせいか、必死にフォローをする。

 

「……えっと、かわいい声だった」

 

 フォローはした。明後日の方向に。

 

「なっ、あ、貴方ねぇ!?」

「い、いやその! 事実だ!」

 

 そういうことではないが、もはや止められまい。当事者たちでは……。

 故に、第三者の介入が必要なのである。

 

「迎えに来たらなにイチャイチャしてやがるんですか?」

 

 ただし武力介入。

 

「ッ!?」

「は、ハイータっ」

 

 真っ赤な顔で絶句するアズラエルと、声が裏返るロマ。

 エスカレーターの出口から少し離れた場所、車椅子に座したハイータがそこには居た。

 

 

 

 

 

 

 宇宙(ソラ)、クサナギのハンガーにキラ・ヤマトとアスラン・ザラはいた。

 ウズミとの別れの時、カガリに手渡された写真。それは双子を抱く女性、その裏に書かれたカガリ、そしてキラの名、ウズミが言った『兄妹』もいる。と言う言葉。

 オーブは代々養子を取るものだし不思議はないが、キラはそうではない。今まで母と思っていた相手が母でない、それにカガリと兄妹かもしれない可能性。

 なにも考えない方が異常というものだ……。

 

「こんな時、ロマさんがいてくれればな……」

「ロマ、赤い悪魔が?」

 

 隣のアスランがキラの言葉に反応する。

 

「あ、いやすまない……バエル大尉、だったか?」

「今は大佐だって」

「……スピード出世だな」

 

 茶化すつもりはなく、純粋に出た言葉なのだろう。キラは思わず微笑する。

 

「凄い人だから、ムウさんより階級が下だった方がおかしいんだよ」

「……ん?」

 

 それはそれでムウに失礼じゃないか? とも思ったが、そういうものなのだろうと思うことにした。

 

「強くてカッコ良くて優しくて、アークエンジェルだってロマさんがいなければ……」

 

 ザフトの戦力が増したのはロマがいたからだ。

 それを知っているアスランではあったが、言わない方が良いと判断した。さすがのアスランもそのぐらいはわかる。

 だがやはりというべきか、キラはずいぶんロマを慕っており、戦わせるのは酷なのだろう。

 

「……だがキラ、これからおそらく」

「うん、そうだね。きっと……戦うこともあると思う。ううん、僕らが戦いを続けるなら、絶対に戦うことになるんだ」

「その時、お前は……いや、その時には俺が」

 

 代わりに戦う。そう言おうとしたが、それをキラは首を横に振って遮る。

 

「戦うよ。それでも僕は」

「そうか、強くなったな。お前は……」

「そんなことないよ」

 

 微笑を浮かべながら、キラはそれを否定した。

 

「それにロマさんなら、きっと言うと思うんだ……“戦え”ってさ」

 

 事実、ロマはそう言うのだろう。彼らではなく、“彼女ら”を助けるために……。

 

 

 

 

 

 

 月へと向かうシャトルの中、ロマはアズラエルとハイータに挟まれ座っている。

 向かいには座席を回転させて向き合う形となっているクロト、オルガ、シャニの三人。

 アズラエルがいる側の窓を見れば、その向こうは宙域。すっかり宇宙にも慣れた自分に、ロマは思わず笑いそうになるが、変な目で見られるのは確定なので耐える。

 ふと、窓の向こうを見ていたアズラエルが振り返りロマの方を向く。

 

「そういえば、これから月に行って新造艦に同行する形でアークエンジェル(あの船)を追います」

「ああ、なるほど」

 

 ―――ドミニオンか。

 

 アークエンジェル級二番艦、黒き天使、ドミニオン。

 原作でもアズラエルが乗艦しており、その艦長は『ナタル・バジルール』であり、アークエンジェルと死闘を繰り広げ、最後は撃たれる。

 ロマにとっては縁起がいい艦ではないが、それでも必要なものだ。

 

「まぁ貴方とハイータにとっては慣れ親しんだ内装の艦ですがね」

「え、それじゃアークエンジェルと同型艦ってことですか?」

 

 ハイータの疑問に頷く。

 

「そう、アークエンジェル級三番艦」

「え?」

 

 ―――三番艦?

 

 

 

 原作(未来)を知るはずのロマの知らぬ、新たな天使。

 

 

 

 その名は―――熾天使(セラフィム)

 

 

 







前回お待たせしたのでちょっと急いで書きあげてみましたわ
オーブ戦が最初の少しで終わってしまったので、印象が薄くなりそうです
まぁウズミがM1で突っ込んできた以外に改変はないので問題なし、かも

なにはともあれ色々あってまさかの三番艦でした

次は戦場は、ようやくメンデルですね
そしてAI娘も久々に出番

ロマの立ち回りもどうなるか、とかお楽しみいただければです
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