盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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重なり合う道

 

 コロニーメンデルでの戦いから数日が経った。

 

 あの戦闘の後、アズラエルの命により戦艦セラフィムは性急に月面プトレマイオス基地へと戻り、そこからさらに地球へと帰還。

 急ぐわけは、ロマが持ち帰った“ニュートロン・ジャマー・キャンセラー(NJC)”が理由に他ならない。

 

 だが、そのままでは、わざわざNJCを持ち帰ったロマの思惑通りにことは進まないだろう。

 

 ―――ならば、私が状況を動かすほかあるまいよ。

 

 大西洋連邦首都ワシントンへと、アズラエルに着いてくる形でやってきたロマ。

 会議前、前室にてソファに座るアズラエルが携帯型の端末で、色々と情報やらを整理している。

 どこか珍しいその表情に彼女の“悩み”を理解したロマは、サングラスの奥の瞳で、そこにいるもう一人……オルガに視線を向けた。

 

「……ん」

 

 読んでいた小説から視線を上げたオルガと、ロマと目が合う。

 少しばかり赤い顔をして視線を逸らすオルガに、ロマは心の中で小首を傾げながら、彼女に近づいた。

 

「すまんオルガ、少し席を外してくれるか?」

「は?」

 

 思ってたのと違う! と言わんばかりの視線を向けてくるオルガに申し訳なさそうに眉を顰めて頷く。

 不満そうな表情を浮かべるも、すぐにアズラエルの方を見てから溜息をつきながら、不承不承ながら部屋を出て行った。

 扉が閉まるまでの間に、外にいるクロトとシャニの声が聞こえる。

 

「追い出されてやんの~」

「ちげぇよ。オレは空気読めんだっての、お前らと違って」

「……お兄さんたち、えっちなことしない?」

「さすがにしねぇだろ」

 

 バタン、と扉が閉められたがロマは頭を抱えたい気持ちで一杯であった。

 あの三人は自分をなんだと思っているのかと、しかしてまぁ……オルガが誤解を解いてくれると信じつつ、アズラエルの座るソファの向かいのソファに腰を下ろす。

 それによって、ようやくどこか上の空だったアズラエルがロマに気づき……ついでにオルガがいないことに気づく。

 ほんのり顔を赤らめつつ、ジト目でロマを睨む。

 

「……え、ダメですよ前室でなんて」

「俺をなんだと思ってんだ……」

 

 ───ちょっとショック。

 

 咳払いをして、ロマは本題に入る。

 

「なにか悩んでいる様子でしたので」

「……まぁ色々と、どっちにしろ大事だなぁって」

 

 その言葉に、ロマはハッキリと理解した。

 彼女は彼女の利益のため、二択に頭を悩ましているということと、その内容……。

 少しも考えるそぶりを見せずに、ロマはそれを口にする。

 

「核弾頭の用意を推奨するよ、このロマ・バエルは」

「なっ……わかってたんだ」

 

 NJCを手に入れて、核の力をどう使うかとなれば攻撃かエネルギー問題の解決。

 どちらにしろ、彼女にとっては利益しかないことではあるが……。

 

「エネルギー問題が重要なのもわかるが、このままでは“追い詰められた”ザフトの方が、なにをしかけてくるかわからん。エネルギー云々が解決してもこちらがやられてはな」

「そうですねぇ。昨今のプラントの情報を聞く限り、パトリック・ザラは我々を全て討つまで終わらす気がないようだから……」

 

 ロマは識っている。

 既にザフトは、核よりも強力かつ、野蛮な兵器を用意していることを……。

 

「相手も核の力を持っている。ともすれば……」

「撃たなきゃ勝てないでしょうね、この戦争」

 

 彼女とて理解していることだ。だがそれでも、問題はある。

 

「はぁ……絶対に反対意見出るってのがねぇ」

 

 理解はしていても、という話なのだろう。

 ロマの識る“原作”であれば、アズラエルが核での総攻撃を強行するところだが、この世界においてアズラエルのコーディネイターへの私怨やコンプレックス的なものは既に緩和されすぎている。“正史”のように、殲滅戦争を仕掛けるほどでもない、のだろう。

 なればこそ、彼女も強行してまで核攻撃。というのは避けたい……それ故に、あくまで自然に使うように誘導したいところだが、それが難しい。

 

「強行するわけにもいかないだろう。君の今後の立場を思えば」

「だねぇ……」

 

 それに、ここでアズラエルが強行すれば、後々にどういう影響が出るかもわからない。

 戦後、彼女たちが生き残っていて安定した日々を過ごすためには、ここで余計に立場を危うくするような行為をするわけにもいかないのだ。

 しかしロマは今回、一人の男が動く可能性に賭けてみることにした。オーブ解放作戦時のように、上手く暗躍をしてくれれば言うことは無いだろう。

 

「まぁ、ブルーコスモスの中で核の使用を推奨してくる人物がいればそれに乗っかればいいさ」

「……確かに、責任とか全部おっかぶせてやればいいってことね」

 

 ―――頼むぜ……ロード・ジブリール。

 

 

 

 

 

 

 アズラエルにとっても、ロマにとってもストレスフルだった連合首脳会議が終わった。

 少しばかりの予想外などはあったものの、大凡はロマの思惑通りに事が進み、極秘裏に核攻撃部隊こと“ピースメーカー隊”の編成が決定し、二ヶ月後には作戦開始だそうだ。

 ロマも自身の記憶しかないので曖昧ではあるが、おそらく原作から大きく外れてはいないだろうと信じつつ……。

 

 その後のロマは、ロドニアのラボでステラたちの相手をしたり、アズラエルと朝帰りがあったり、それを知ったハイータが暴走したり、ついでにクロトたちも暴走したり、と平和(のようなもの)を享受していたわけである。

 そして、件の会議から二週間が経った今日、ロマは───。

 

「……水着回とな?」

 

 なんかプールだった。

 

「なんか言いました?」

「いえ、なにも」

 

 アズラエルの持つ高級ホテル、その屋上。

 プールサイドにて黒い海パンと赤いパーカー姿のロマが、パラソルの下でサマーベッドに腰掛けていて、その隣では赤いビキニを纏う女、ムルタ・アズラエルがサマーベッドでゆったりと足を伸ばしている。

 そろってサングラスをつけているが、ギラギラと照りつける太陽の前には必須アイテムであろう……でなくともロマはいつも装着しているが。

 

 ホテルの従業員がやってくるなり、二人の間にある小さなテーブルに“それっぽい”飲み物が入ったグラスを二つ置いて去っていく。

 

「久しぶりですねぇ、プールなんて……」

「私もさ」

 

 なんだかんだ数年の付き合いではあるが、プールに来ることなど一度も無かった。

 彼女の……否、彼女たちの裸すら見たことがあるのに水着姿を見ることが初めてとは……と、おかしく思う。

 プールの上、浮き輪に気怠そうに乗りながらもプカプカ流れるシャニ。

 楽しそうにはしゃぎ泳ぐクロト、その相手を仕方なくしている風に見えておそらく内心はしゃいでいるオルガ、他にも“セラフィムのクルー”がそれぞれ、この休暇を満喫している。

 

「しかしまぁ、意外だったな。君がこんな慰安をするとは」

「私をなんだと思ってんの……と言いたいとこだけど、まぁハイータの提案」

「ああ、そういうことか」

 

 妙に納得してしまった。

 ロマは少し離れた場所でクルーと話をしているハイータに視線を向ける。

 車椅子をフレイに押してもらっているハイータはパーカーを着ているが、おそらく内側は水着なのだろう。

 そんなハイータを視界に入れながら、ロマはジッとそちらの一点を見つめ……。

 

 ―――デッッッッ!!!

 

「……おっぱい見てるでしょ」

「なにを言う!」

「必死……」

 

 語るに落ち過ぎた。平和であればあるほどこの男はダメになっていく……皮肉な話である。

 

「言っときますけど私も結構大きいと思いますよ?」

「知ってるさ、隅から隅まで」

「っ……言うようになりましたね」

 

 頬を染めて言うアズラエルに、ロマは微笑を浮かべた。

 今更はしゃいで泳ぐような歳でも、それを楽しめる人間でもない。そこまで“陽の側”の人間でなかった……故に、プールサイドで誰かと雑談でもしながら、クロトたちを見守るのが丁度良い。

 

 サングラスの奥の二色の瞳が、識ることのない今を見つめる。

 

「……あ、シャニちゃんが落とされてる」

「キレてるな」

「キレてますね」

 

 いつの間にやら隣へとやってきたハイータ。車椅子の隣でプールサイドに座るフレイ。

 

 ハイータの着ているパーカーの胸部分の主張が凄まじく、他のクルーもその魔力に視線が吸い寄せられるようでチラチラと見ている。ロマとしては嫌ではない……器が小さいんだか大きいんだか、むしろ優越感すら抱く。

 視線の先、浮き輪から落とされたシャニがクロトを追いかけ、暴れて跳ねた水がオルガに直撃。オルガは気管に入ったのか咳き込みながらクロトとシャニを追い掛け回す。

 そうしていると、ごく普通の姦しい思春期の少女たちのようで……。

 

 中途半端に真人間であるロマの罪悪感のようなものが、妙に主張してくる。

 

「ま、貴方とハイータがいなければあの娘たちも、こんな楽しそうにできやしなかったんですよ」

「私か?」

「そうでしょう。貴方が状況を変えたんでしょ……ブーステッドマンの在り方についても、少し思うところがある研究員たちも増えましたから」

 

 肉体改造はしているし薬物強化はしている。

 それでも、少しはロマのようにした方が成績も上がると言うことは証明になった……それは、かなり手間ではあるし、効率的ではないものの、確かな事例の一つなのだ。

 ステラ、アウル、スティングの三人も少しは状況が改善された。

 故に、アズラエルはそれをロマのおかげと……そしてクロトたちがそうしてはしゃげているのはロマとハイータの二人のおかげと、そう言う。

 

「私ってなにもしてない気がしますけど」

「……良いお姉さん、やってると思うけど」

 

 意外にも、ハイータの疑問に返すのはフレイだった。

 

「え、そうかな?」

「うん……アークエンジェルでも、そうだった。私にできないこと、キラを支えること、ハイータさんや大佐がやってくれたから」

 

 寂しそうに笑うフレイに、ハイータはそっと左手を伸ばす。

 頭に置かれたハイータの手に驚くフレイだが、振り払うこともなくそのままいれば、ハイータはその赤髪をそっと撫でる。

 そんな光景を見ていたロマは、やはり“良いお姉さん”をやっていたのだろうと理解し、笑みを浮かべつつアズラエルの方を向いた。

 

「……ん?」

 

 彼女の視線の先は、クロトたち。

 状況は落ち着いたようで、いつの間にやら浮き輪に乗って浮かぶオルガ。そしてその浮き輪に掴まってゆらゆらと漂うクロトとシャニ。

 セラフィム内でもすっかり三馬鹿、マスコット扱いですらあるかもしれない。

 微笑ましく見るクルーたちもいる中、アズラエルが如何ともしがたい表情。

 

「どうしました?」

 

 そんなロマの問いに、周囲を見回すアズラエル。

 

 ハイータとフレイはと言うと、少し離れた場所でプールに入ろうとしているようで、アズラエルはもう一度周囲に誰もいないかを確認してから、肩の力を抜いてプールベッドによりかかる。

 再びクロトたちに視線を向けるなり、ぼやくように、ロマにしか聞こえないような音量で話し始めた。

 

「唐突にね、不安になるんですよ」

「ほう……なにに?」

 

 彼女がここまでしっかりとした弱音を吐くとは思いもしなかっただけに、ロマも驚く。

 

「あの娘たち……生体CPUに本気になっちゃいそうで」

 

 ───あ、本気じゃないつもりだったんですか。

 

 しかし、アズラエルがクロトたちに情が湧いているということに葛藤しているのだとロマは理解する。

 クロト、オルガ、シャニを始めとした“強化人間”の作成に携わっているにも関わらず、という感情があるのだということも……。

 

「悪いこととは、思わんがな」

「悪いことですよ。私みたいな立場の人間だと特に」

「……あの三人に本気になったとしてどうなる。変わらんだろうさ、別に」

 

 悪い意味ではない。

 生体CPUというものが外道の所業だということはロマとて理解しているのだが、罪悪感はあってもそれ以上の手出しをするつもりはないのだ。

 それに、生体CPU全体とクロトとオルガとシャニの三人は、ロマにとってはまた別の話である。

 

「犬を飼いだしたら他の犬も可愛く見えるっていうじゃないですか」

「言いえて妙だな……言いたいことはわからんでもないが。それぞれだろう?」

「死んで来いって命令、できなくなりそうです」

 

 そういうアズラエルの横顔を見て、ロマは顔に出さぬように、内心で苦笑を浮かべた。

 どこかで聞いた、“似て非なる人物(・・・・・・・)”の言葉が、脳内で再生されたからだろう。

 

「元々言わんよ、君は……。効率や戦略がどうとかいう話ではない。人間という資材、その価値を正しく理解しているというのは勿論だが……」

 

 その言葉、その想いにはきっと、ロマ自身の願望も入っているのだろう。

 目の前の相手が……“前の生”と“今生”を含めて、初めてその腕に抱いた女性が、この数年間で知ってきたどおりの人物で、重ねてきた関係通りの女性であれば、という願望。

 だからこそ、はっきりとそれを口にするのだ。

 

「───純粋なのだよ」

「え?」

 

 唖然としながら、アズラエルはロマの方に視線を向けた。

 

「……君は、純粋で、優しいのさ」

 

 純粋の意味はそれぞれある。邪気が無い者という意味ではそうなのかもしれないが、ことここに至ってロマが発した“純粋”の意味はそれとは異なる。

 彼なりに考えて、“それっぽく”放った言葉。

 アズラエルの所業や、内心や思惑は、控えめに行っても純粋とは言い難いことが多いが、やはり共にいたからこそ感じるものもある。

 

 映像作品(アニメーション)で識る“ムルタ・アズラエル”が目の前の“ムルタ・アズラエル”と同じ思考をしていたかどうかは識らない。

 実際には同じだったのかもしれないし、実際に違うのかもしれない。だが、そんなことはどうでもいいのだ……。

 

 サングラスを外し、ポカンとしているアズラエルをしっかりと見つめる。

 

「こういう立場だから“こうだからこうでなくてはならない”、など、自ら器になる行為さ……それでは道化だよ」

「……そうなろうとする私は、道化だと?」

「ああ、“その立場の人物”などでなくて良い。今まで通り“その立場の君”でいてくれれば……“私達”はついていくのさ」

 

 今、ロマは素でそう言っているのだ。

 役者でも道化であろうともしていない。彼もまた純粋にそう述べる。

 視線の先のアズラエルは、ため息をついて 

 

「ホント、そういう台詞をよく恥ずかしげもなく言えますね……っ」

「自分でもそう思う」

 

 ───めっちゃ恥ずかしぃぃぃぃぃ!!

 

 内心はともかく、ロマは涼しい顔をしてサングラスをそのままミニテーブルに置く。

 

「でも……ありがとう」

「フッ、礼を言われることでもないさ」

 

 彼女もこれで吹っ切れると思いたいなと、ロマは静かに息を吐いた。

 どこか赤らんだ表情のアズラエルを見ていると、さすがのロマも雰囲気で察する。今夜は寝られない感じだと……。

 未だに慣れないことではあるので、気恥ずかしさから視界を泳がせれば、ハイータが浮き輪を使ってプールに入っており、そんなハイータをフレイが誘導しているのが見えた。

 彼女にも後で礼を言っておかなければならないなと思いつつ、冷静さを取り戻し再びアズラエルの方へと視線を戻す。

 

「元気ですねぇ。大人には真似できませんよ」

 

 ―――まぁプールに入ってるの年上結構いるけどな。

 

 連合の正規軍なのだから当然と言えば当然である。

 

「さっさと戦争終わらして、もう一回来ましょうか」

「……そうだな」

「今度はナイトプールもいいですね。そのまま、貴方とベッドに沈むのも雰囲気あって」

 

 ストレートなそんな言葉に、さすがのロマも眉を顰めて苦笑を浮かべた。

 決して、断じて、嫌なわけではない。ただ……そう真っ直ぐに彼女が言葉にすることに驚いたのだ。

 ロマ的には大人らしいと言えば大人らしい会話だな、などと思わないでもないが……。

 

「酔ってるのか?」

「さぁ、お酒もありますし、そうかもしれませんね……」

 

 薄く笑うアズラエルが上体を起こし、ロマと向き合うように座ると、ミニテーブルの上にある“まだ一度も口を付けていない”グラスを持つ。

 ロマも微笑を浮かべながら、運ばれてきた時から減っていないグラスを手に持った。

 

「乾杯……」

「ああ、乾杯……」

 

 アズラエルの言葉にロマは真っ直ぐにそう返し、お互いが同時にグラスを口に付け、傾ける。

 話し疲れて喉も乾いているので一気に中身を半分ほど飲みほしてから、グラスを同時に口から離す。

 

 コトッ、と置かれたグラス。

 

 そして、二人は同時に口を開く。

 

「麦茶だコレ!」

 

 

 







今回は閑話というかそんな感じなので短めになってます
あとはシリアスばっかなので今の内にラブコメ要素的なものは入れておきたい願望が顔を出している……
特に新情報もなにもないんですが、日常回なのでそんな感じですね
フレイやハイータの関係が良い感じ……これ百合ルートあるのでは?(迷推理)

次回はこれの続きからで、今回出番が無かったナタルとか、三馬鹿娘も

立場上、ちゃんと出番作ろうと思わないと、アズにゃんとの会話ばっかになるので地味に難しいことに気づく……

にしてもロマ、案外他のガンダム世界でものらりくらり生きていけそうになってきた……
スパロボとかエグバの掛け合い集みたいなの考えるの好き……

ということで次回はなるべく早く更新したいとこで
お楽しみいただければと思います
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