盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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ソラの傷跡

 

 地球軍、戦艦セラフィムのブリッジ。

 物々しい雰囲気の艦内……いや、それはセラフィムだけではないだろう。

 月基地から出航した連合の大艦隊、それら全てにその緊張感は漂っている。

 

 艦長席に座ったナタル、少し離れた場所に座るアズラエル、その間に立つロマ。

 

「例の兵器は?」

「ガンマ線レーザー砲ね。ヤキン・ドゥーエの正面にある馬鹿でかいのがそれらしいけど……連射できないのが唯一の救いってとこかな」

 

 宇宙要塞ヤキン・ドゥーエをモニターに、赤いノーマルスーツを着たロマは顔を顰めていた。

 ボアズを核攻撃での攻略した直後、連合艦隊は即座に転回し進行を開始、あれからそれほど時間も経っていないし、艦隊は30%が壊滅したといっても、まだ70%が残っている。

 本来であれば月基地の増援を待ってからという手筈ではあったが、撤退し補給や再編などと言っていられる状況でもない。かく言うアズラエルも先ほどまではかなり焦っていたし、ロマもまた然り。

 まともな対策方法もないため、艦隊をかなり広範囲に拡大して進行しているが、やはり気が抜けるわけもない。

 ナタルが、ロマの方を見て口を開く。

 

「先ほどのエザリア・ジュールの演説が、ザフトの士気を上げていますので、敵からの圧はボアズの比でないでしょうね」

「まぁ構わんさ、やることは変わらん」

 

 ―――問題は、三隻同盟がどう動くか、だな。

 

 ロマとしては、核を使わない限りは邪魔をしてこないと思いたかったが、既に撃ってしまった。

 ともなれば、アチラもこちらを攻撃してきて不思議ではないが……核を使うまでは向こうもこちらを攻撃する理由がないはずだ。それにプラントに核を撃ちこむわけでもない。

 

 逆にジェネシスを討つ手伝いを期待したいぐらいなのだが、連合の味方になるような行為をこの状況でできる三隻同盟でもないだろう。

 使うタイミングを見計らうだけで核を持っていることには変わりない。

 

 となれば、三隻同盟が邪魔をしてくるより前に、核を通すまでの道を作って……最悪、自分がディザスターで“撃ちこみに行く”という選択肢もとれる。

 

 ……などと思考していれば、アズラエルが肘置きを叩いた。

 

「なにがナチュラルの野蛮な核だっ、くっ……あそこからでも地球を撃てる奴等のこのとんでもない兵器の方が遙かに野蛮じゃない! そしてもう、いつその照準が地球に向けられるか解らない。撃たれてからじゃ遅い……!」

「わかっていますよ理事、だからこそ我々も最速でここまで来た。あとはボアズと一緒です」

 

 だが、プラント本国と共に視線の先にある要塞は、ボアズの比ではない防衛力を誇り、ザフトもその防衛のためにはどんなこともするだろう。

 

「前だってそう、奴らは“核を使わない”んじゃない……“使う必要がない”だけ、それ以上に、こっちに被害をもたらす方法があるから……ッ!」

「……落ち着きましょう理事、私もそろそろ出撃準備があります」

 

 肩に手を置いて頷くと、アズラエルは頷いて立ち上がる。

 ロマがナタルの方に目配せして頷くと、彼女もまた静かに頷いた。出て行く直前で、不安そうな表情を浮かべるフレイが見えるので、彼女にも微笑を浮かべつつ頷き、ブリッジを出る。

 そのまま無言でハンガーへの道を向かうが、人気のない通路で突如、アズラエルがロマの腕を掴む。

 

「ムルタ……?」

「っ……これが終われば全て終わるんです」

「ああ、そうだ。少なからずこの大きな戦争は終わるだろうさ」

 

 二年は安泰と思いたいところだが、もっと言うならここからずっと平和であればいいとも願っている。

 サングラスを外したロマがそっと笑みを浮かべる。

 赤と青の瞳が、目の前のアズラエルを見据えた。

 

「だからこそ、行かないわけにはいくまい。新しい時代を作るためにもな」

「貴方が先陣切って、そんな危ないことしなきゃいけない理由があるんですか?」

 

 いつもと違う声音で、アズラエルにそう聞かれればロマは頷く。

 

「……趣味ではないが、期待を、想いを背負ってしまっている。器という人間でもないが、それでもやらなければならんのさ」

「貴方のやることじゃないでしょう、そんなのっ……!」

「ああ、らしくないことをしているが、君らと生きるためには必要なことだろう」

 

 そんな言葉に、アズラエルが飛びだす。

 無重力の通路で、アズラエルがロマの首に手を回し、そのまま───唇を重ねた。

 

「っ……」

 

 少しばかり眼を見開いたロマだったが、すぐに彼女の背に手を回す。

 

 今やるべきことは理解している。

 目の前の女と、少女たちと戦い抜き、なおかつ彼女たちを守り切るということだ……。

 そのためであれば、既に“間に合わないもの”や、自身でどうにもできないことに気を取られるわけにはいかない。

 切り捨てるものと拾うものはしっかりと

 

 ―――選択しなければ……か。

 

 

 

 

 

 

 セラフィム格納庫、ディザスターのコックピットにロマが乗り込む。

 

 ノーマルスーツはいつも通りの赤い専用のもので、その姿の彼が機体へと乗り込む姿だけで充分、他のパイロットたちの士気は上がるのだが、今回に至ってはその効果もそれほど高くはない。

 先に見せつけられた“ガンマ線レーザー砲(ジェネシス)”により、かなり士気は落ちており、次がいつ放たれるかと怯えている。

 それはロマとて理解しているが、次の一撃の狙いは既に“月基地”ということでブリーフィングでは結論づいた。

 

 今、前線に出ている艦隊であれば直線状から退避するだけで済む話であり、増援部隊もまた然り。

 だが、月部隊の退避については……。

 

『オールグリーン……ディザスター、発進どうぞ』

 

 フレイの声が聞こえ、ふと意識を戻す。

 

「……フレイ」

『え、はい』

「早く終わらせれば、キラと会うこともできるさ」

『……はいっ!』

 

 笑顔を浮かべるフレイに、ロマも微笑で返し頷く。

 保証なんてないが、それでもフレイにとっては唯一縋るべき希望であった。

 

 彼女を守ることもまたロマにとって今作戦での大事な目標の一つだ。アズラエルを守ると言うことは必然的に彼女もナタルも守ることになるのだが、それはそれ、これはこれ。

 彼女が死ねばキラもそうだが、おそらくハイータも悲しむ。

 

 故に、と……フットペダルを踏み込む。

 

「ディザスター出撃()るぞ……!」

 

 セラフィムから射出されたディザスターが、その宙域に赤銅色の装甲を鈍く輝かせる。

 

 既にモビルスーツ部隊、そしてピースメーカー隊を除くモビルアーマー部隊も展開しており、艦隊の前線付近にいたセラフィム、そしてその隣の黒きアークエンジェル『ドミニオン』の周囲に陣形を展開している。

 最前線、その中央にはディザスター、そして左右にゴエーティア隊。

 

 ロマは苦笑する。

 

 自身はその器ではないと、だが……それでもやるべきであると理解した。だからこそ……。

 

「我々はこれよりザフト最終防衛拠点ヤキン・ドゥーエを攻略。そして、あのガンマ線レーザー兵器を破壊する……!」

 

 その通信は周囲の連合機すべてに届いている。

 艦を中継地点に陣形の端に展開した部隊にも、それはまた聞こえているのだろう。

 

「二発目はおそらくプトレマイオス基地を狙うと予測されるが、おそらく退避は間に合わないとのことだ」

 

 優先されるべき人間とそれ以外、というものがある。

 下の方にはその警告すら出されぬままということだって考えられるだろう。

 ジョシュアの件もあるから当然だ。だが、ここで引き返すという選択肢が無いのもまた事実……ザフトが死力を尽くすように、こちらも死力を尽くさぬわけにはいかない。

 

「だが、それを撃たせぬために我々は今ここにいる。そしてあと少し、全力と全霊を持って戦い、守れ! “ピースメーカー隊()”で、奴らを穿つ!」

 

 ディザスターのツインアイが赤く染まり、ウイングバインダーからは四本の腕が翼のように広げられた。

 異形のモビルスーツはザフト軍を躊躇させ、連合軍を奮起させる。

 

「青き清浄なる世界は、すぐそこだ……!」

 

『全軍、攻撃開始!』

 

 旗艦ワシントンからの号令と共に、宇宙(ソラ)を震わせるほどの雄叫びが上がる。

 

 

『青き清浄なる世界のために!』

 

 

 動き出す艦隊、放たれる砲火の中を進むディザスターと、ゴエーティア隊。

 

 

『おにーさん、あんなことまでするんですねぇ』

「仕方あるまいよ。その役割(ロール)を担う立場になってしまったのだから……不本意ではあるがな」

 

 クロトの言葉にそう返すと、同じ部隊の者たちからも声が上がる。

 

『大佐の演説ほど効くものはありませんよ! みんな参っちまってましたから!』

『ホント、大佐の演説素敵でしたっ惚れ直しました!』

『なにがあっても付いていきますよ大佐ぁ!』

 

 男性パイロットからも女性パイロットからもそう言われて、嬉しくないはずもない“ただの青年(ロマ)”ではあったが、それを抑えなくてはならないのも、彼なのだ。

 故に、意味深な微笑を浮かべるのみ。

 

「フッ……世辞を言う」

『お世辞なわけないじゃないですかァ~ロマくんが人気者で私も鼻が高いですよォ~』

『い、イカれ女の後方彼女面ですわ……』

『チェシャちゃん珍しく喋ったと思ったら毒吐くね!?』

 

 ともあれ、だ。現状やるべきことは見えている。

 

「無駄話もここまでだ。帰ってきてから存分にしろ……」

『っと、了解です大佐!』

『や、やってやりますとも!』

 

 ロングダガーのパイロットたちの声が聞こえ、ロマは頷く。

 

『おにーさんもしくじらないでくださいよ~!』

『ハァン……私達じゃ追いつけないし、ほどほどにね』

『さっさと道開いてやっから、さっさと終わらせようぜ』

『アハハッ! 近づく奴は全部灰にしてやりますよッ!』

 

 士気が高いようでなによりだと、ロマはフットペダルに乗せた足に力を込める。

 レバーを握る手に無用に入った力を抜く意識をする。 

 そして、モニターに映る巨大な“ジェネシス”を睨みつける。

 

「これで終わらせる……各機、攻撃を開始しろ。道を開くぞ!」

 

『了解!』

 

 迫るゲイツやジンを前に、ゴエーティア隊が動き出す。

 

 

 

 背水の陣、まさに退路が無い状況であれば嫌でもそうなるのだが、それでも連合艦隊は奮闘する。

 いつあの兵器が撃たれるともしれない状況であろうと、下がっても結局は撃たれるのだから当然と言えば当然ではあるが……。

 それでも、ゴエーティア隊を含めてその士気は今までのそれとは比較にならないほど凄まじいものである。

 しかしそれは、ザフトも同じではあるのだが……。

 

 ディザスターの射出された腕<ファウスト・アングリフ>がゲイツの腹部を貫いた。

 それを即座に回収して足蹴にし腕を引き抜くなり、そこから離脱しジンに放たれたビーム兵器を回避。

 高速移動をしながら、右手に持ったビームライフル<アンフィスバエナ>を放てば攻撃してきたジンと、他のジンを二体同時に撃ち抜く。

 さらに背中のファウスト・ヌルがビームガンにて敵機を貫いた。

 

 コックピットの中で、ロマは顔をしかめる。

 

「くっ、プレッシャー……!」

 

 放たれたビームライフルをビームクローで弾く。

 

「デュエル……!」

 

 ―――イザーク・ジュールかっ!

 

 自身にその銃口を向けるデュエル。

 交戦自体は何度かしているものの、やはり思うところがないわけではない。撃破してはいけないという自制がかかるものの、そんな余裕が今の自分にあるか、だ。

 その隣には青いシグーディープアームズもいた。

 

「くっ、厄介なことだな……!」

『ファウスト・ヌルで一網打尽にしてさしあげますわっ!』

 

 それしかないとは理解しているが……。

 

『そらぁッ! 滅殺!』

『このぉ……!』

 

 二本の高出力ビームがデュエルとシグーディープアームズを襲う。

 すぐに回避行動に移る二機、そしてそれとは別に、ロマの目の前に現れる二機のモビルスーツ。

 レイダーとフォビドゥン。

 

「クロト、シャニっ」

 

『やるよ、あれ! またでっけぇ花火見たいし!』

『お兄さんはオルガたちと、道……作ってよ』

 

 その言葉に、ロマは頷く。

 デュエルとシグーディープアームズを任せてロマは“ルート”を確保するために再びゴエーティア隊本隊と合流するためにディザスターを加速させる。

 戦闘している故に仕方のないことなのだが、当初予定していたルートから外れがちになってきていた。

 特にロマは狙われることも多く、回避行動などを繰り返しながら戦闘していればそうなる。

 

「チェシャ、進行率は?」

『穴が開いているかという意味であれば、40パーセントとかそこらですわ……まぁ連合の他部隊も躍起になってそのルートを開いているようですし、ザフトもこっちが何考えてるかは理解しやがってますわよ』

「ピースメーカー隊の発進を要請する……」

『まだルートが開くまで敵戦力が山ほど残ってますわよ?』

「構わん、核で開く……!」

 

 このままジェネシスを撃たせるわけにはいかない。

 撃たれるのも“仕方のないこと”ではあるが、やはり防げるものは防いでおくに限る。

 それに……。

 

「信号弾を放て、あとはサザーランドが指揮をするはずだ……!」

『あら、あなたってあの方が嫌いなんだと思ってましたわ』

 

 好きではない。勝手にユニウスセブンに核を撃ちこんで、アズラエルの名を落とした者だ。

 だが、それでもアズラエルは有能であることを理解し、自身の傀儡になることも理解し使っている。となればロマとて一緒に仕事をすることも顔を合わせることもそれほど珍しくはなく、それなりに打ち解けはした。だから“嫌いではない”のだ。

 そして、ザフトを“排除する”という点では、目的は同じ。

 

「ピースメーカー隊の指揮など私でなくともできる。頼んだ」

『了解ですわ。あの犬コロも寄ってきますわよ』

 

 そう言いながら、チェシャの主導でディザスターから信号弾が放たれた。

 

 同時に、ディザスターはゴエーティア隊本隊と合流、同時に敵機をビームクローで斬り裂きつつ、ファウスト・ヌルのビームガンで撃ち抜く。

 五機ほどを一瞬で片付けてそうそう、前方から放たれる弾幕を回避。

 赤い閃光、そこから時折放たれるビームがザフトのモビルスーツを貫く。

 

『大佐っ、敵の弾幕濃くって……!』

「目で追ってどうにかなるものでもない。動き回ればそうそう死にはせん……!」

『適当にものを言ってくれますねっ……!?』

 

 そう言いながら、ロマの言う通りにしながら攻撃をするゴエーティア隊。

 クロト、シャニとは別で本隊に残っていたオルガのカラミティが一斉射撃にて固まっていた敵を一掃するなり、ガンバレルダガー三機がそこから敵機を翻弄し、撃破していく。

 105ダガーとロングダガーの精鋭部隊、ゴエーティア隊。

 ほぼ全員が所謂“悪魔憑き”と言われる部隊であり、それだけでも敵機の戦意を削ぐもののはずだが……。

 

「こうなっては意味もそれほどないな……!」

『ワンコ突出してますわ!』

「なに?」

 

『ロマくんの邪魔ぁするなら……死ねェッ!!』

 

 単機突っ込んで敵機の攻撃を回避しながら、九本のテイルブレードを振り回しながら、ビームピストルにて敵機を撃墜していくハイータのコラプス。

 有線であると見抜くなりシグーやゲイツがそこを狙いに行くが、狙いに行けば別のテイルブレードからビームが飛び、さらに貫かれる。

 

『アハハッ! 失った手足よりも自由なコラプスならさ!?』

 

 自身よりよほど敵機を撃破しているであろうハイータを尻目に、ロマは苦笑を浮かべつつ、自身接近する敵機を撃ち貫く。

 ファウスト・ヌルと両腕の手首についた射撃武装で敵機を撃ちながらも、ロマはモニターを見た。

 ピースメーカー隊の接近を確認するつもりだったが―――。

 

「なにっ……サザーランドなにをするっ!?」

 

 そのモニターに映るピースメーカー隊の進行先は―――プラント本国だった。

 

『た、大佐! ピースメーカー隊はほぼアチラに向かってますよ!?』

『プラントに核攻撃なんて聞いてませんぜ!』

「チィっ、サザーランドめ……これでは嫌いでないものも嫌いになるっ!」

 

 戸惑うゴエーティア隊。他のジェネシスへの進路を開く部隊とて同じだろう。

 

「こちらよりも防衛が薄いのは事実だがっ」

『なるほど、あちらに撃ちこんで防衛網をあちらにも割かせるおつもりですわね』

 

 チェシャの独り言のような言葉は通信に乗って他の兵にも届く。

 

『で、でもプラント本国に……兵士でもない人らに核を撃ちこむなんて一線を越えてますよ!?』

『い、いやだがプラントならどうせ敵になるんだ、やっちまっても……』

『正気かお前っ!?』

 

「狼狽えるなっ、まず周囲の敵機を撃破……チィッ!」

 

 ゴエーティア隊のロングダガー、止まっているその機体に一機のゲイツが接近するが、加速したディザスターでゲイツを切り裂く。

 さらに接近しようとする敵機をアンフィスバエナで撃ち抜きつつ、そのロングダガーの肩に手を置いた。

 

『た、大佐っ……わ、私たちはどうすればっ……』

「そうか、お前は元はプラントで……いや、我々は“ガンマ線レーザー兵器”を撃破するのが目的だ。いいな?」

『は、はいっ』

 

 震える女性兵士の声に顔をしかめつつ、ロマはそこから加速。

 もう一機のロングダガーがそのロングダガーに近づき、二機でカバーし合いながら戦闘を続ける。

 

 そしてロマはと言えばディザスターを加速させ敵機を撃墜しながらも……理解した。

 

「このプレッシャー……くるッ!」

 

 モニターに閃光を捉え、そして感じる。

 

「オルガ、ここの指揮を任せる!」

『ハァッ!? おいなに言って―――』

「アークエンジェルが……フリーダムとジャスティスが来る!」

『チッ! しょうがねぇ……っぶねぇ! 死ねオラァ!』

 

 ゴエーティア隊から離れて、ディザスターでプラントを攻撃する部隊へと加速する。

 サザーランドの余計な行為のせいで、余計な敵を招いてしまった。

 場合によっては協力関係とまではいかないが、上手いこと使えたかもしれないというのに、だ。

 

「厄介な……!」

『あの砂時計にドカンとやってもなにも解決しなくってよ?』

「理解しているさ、フリーダムとジャスティスに好きにさせてから撤退命令を出す。いや、正確には進路変更の命令だな……サザーランドめ」

 

 加速していく最中、モニターに核の光が映った。

 

「すでに開始しているか、当たっているようには見えないが……」

『しっかりプラントを守ってますわね。やっぱザフトの味方じゃありませんの?』

「さてな、どちらにしろ我々の敵であることには代わりないさ」

 

 さらに加速、そして視界に補助兵装“ミーティア”を装備したフリーダムとジャスティスを捉えるなり、アンフィスバエナの出力を上げる。

 当てようとしても当たるものではない。

 

 故に、射程圏に捉えた瞬間に―――トリガーを引く。

 

『避けられましてよ! ガッデム!』

「構わんさ、倒したいわけでもない。ただ私がいるとわかれば良い」

『貴方、ザフトを滅ぼしたいのかなんなのかはっきりさせた方がよくってよ』

「私はザフトを倒したいだけさ」

 

 その言葉に偽りはない。

 なればこそ、コーディネイターの殲滅を目的にするわけでも、プラントの打倒をしたいわけでもない。

 だが、下手にこの先を“識る”からこそ、自らのすべきことのために右往左往しなくてはならなかった。

 

『ま、わたくしは付いていくだけなので構いませんけど……っとやべぇのつけたフリーダムが来ますわっ!』

「見えている……!」

 

 核攻撃が一旦収まった段階で、フリーダムがミーティアユニットの加速力を使い接近してくる。

 

『通信きますわよっ!』

 

『ロマさんっ! なんでこんなことを……!』

 

 キラの声に、不意に口角が上がった。

 

「私とて不本意だがな。これは戦争だよ……上官の出した命令に逆らえる部下たちではない。それにザフトは“アレ”を撃ったのだ。ともなれば兵士たちも躍起になる」

『だからって、撃つのはアレだけでよかったでしょう……!?』

 

 放たれるミーティア側面のビームを回避し、さらにロマは近づいていたゲイツに蹴りを撃ちこみ脚部クローを展開、そのコックピットを刺し貫く。

 

「アレだけを撃つつもりだったが、状況が変わった。あれだけ防衛網を厚くされてはと思ったんだろうな……故にそれを薄くするつもりで核を撃っている。と思いたいが……」

『え……?』

 

 明らかにサザーランド指揮下のモビルスーツ部隊はこちらの方に戦力を割いてきている。

 ジェネシスは止められないと悟って、こちらを撃って戦意を削ぐ目的があるのかあるいは……。

 

「私怨、だな」

『ロマさん、なにをっ……貴方はなにをするつもりなんですッ!』

「私は“アレ”を撃ちたいだけだ。故に邪魔をしてくれるな……!」

『だからって“核弾頭(あんなもの)”、撃たせちゃいけないんです。プラントに!』

「ジェネシスだけを撃つなら、貴様らは私達に協力でもしてくれるのか? 違うだろう。なら……同志になれと言って首を縦にふるわけでもないなら、下がっていれば良い!」

 

 フリーダムから放たれるミサイルとビーム攻撃を全て回避しながら接近しようとするが、即座に急停止。

 

「ぐぅっ!」

『あぁもう無茶な機動しやがりますわねっ!』

 

『キラっ!』

『君までこっちに来ちゃっ』

「アスラン・ザラかっ!」

 

 さらなる猛攻は防ぎきれないだろう。

 一体一でもいずれは撃破されるというのに、キラとアスランの両方を相手にして勝てる自分ではないことぐらい理解している。

 フリーダム、ジャスティスから距離を取ってロマは思考する。

 当初の目的を果たすためにピースメーカー隊へと加速しようとするが、それを阻むようにゲイツとジンからの攻撃。そしてそれを回避。

 

「えぇい、貴様らのためにもなるというに……!」

 

 離れた場所をモニターで確認すれば、すでにプラント防衛にデュエルやシグーディープアームズもやってきていた。

 

「想像より時間を取られた……!」

『第二射目来ますわよっ!』

「チィ! プラントを撃たせるわけには……!」

 

『地球軍はただちに核攻撃を中止してください』

 

『なっ、広域に……!?』

「ラクス・クライン……!」

 

『あなた方は何を撃とうとしているのか本当にお解りですか?』

 

 わかっている。ジェネシスだ。

 と、大見得切って言えるほどの状況でないのはロマとて理解している。今現在、核攻撃の矛先はプラント本国になっているのだから……。

 ラクス・クラインの声もおそらく、現状の連合兵にはほとんど意味のないことだ。

 

 それにこうなればジェネシスの矛先も……。

 

「チィっ、このままでは……!」

 

 ピースメーカー隊から放たれる核攻撃を、ザフト軍と三隻同盟が凌いでいく。

 これで“原作通り”であれば、さほど問題もないだろう。

 しかし、不安要素が拭えないのも事実ではあり……。

 

『マズイっ、さらに広範囲の核攻撃ですわ……!?』

「なっ……そうか広げているからっ」

 

 広がった艦隊から放たれたピースメーカー隊、さらにジェネシスに割いている防衛網。

 ロマが識る歴史よりも、プラント本国を防衛する戦力は低下しており、そのぶん防衛網にも空きができる。

 三隻同盟が加わったところで、やれることとやれないことがあるだろう。

 それに地球連合の戦力は“ロマ・K・バエルという男のせい”で、本人が識るものより増強されているのだから……。

 

『このままじゃ抜けますわよ……いえ、抜けた!?』

 

「えぇい! 冗談ではない……!」

 

 偶然、そう……偶然だ。

 偶然にもフリーダムとジャスティスから逃げるように離れ、バスターとストライクたちも離れ、三隻同盟と離れた場所にいたそこで、ザフト軍を倒しながらいたからこそ、そこだったのだ。

 ロマ本人のせいと言えばそうでもあるが、それでも偶然にもそこにいてしまった。

 

 故に……。

 

『ええい邪魔でしてよッ!』

 

 ファウスト・ヌルが展開して周囲の“邪魔する”敵機をチェシャは“自発的”に牽制。

 そしてロマは、ほぼ無意識でアンフィスバエナを“目標”へと構える。

 

 ほぼ条件反射のような、思考を置いて行っての行為、故になんの躊躇もなく───トリガーを引いた。

 

「ッ!」

 

 銃口からビームが放たれてから、少し遅れて理解し、同時にそのビームが“核ミサイル”を貫く。

 

「なっ……」

『やってしまいましたわねぇ』

 

 自らが破壊した核の光を目にして、ロマはコックピット内で自分の膝を叩く。

 

「なにをやってるんだ……オレはっ!」

『……嫌いじゃありませんけど、そういうとこ』

 

 その周囲のザフト機が止まるのも、仕方ないことなのだろう。

 地球軍の、あの“赤い悪魔”が“プラントを守る”という、信じられないものを見たのだから……。

 とはいえ、核攻撃は続いているのだが……。

 

 周囲のザフト軍が下がっていくが、それに意識をやれるロマではない。

 

 

 ―――ここまできてっ、なにをしてる。ムルタたちを守るために戦ってきたのにっ!

 

 

 合理的に考えるのであれば自分はこちらに来るべきではなかった。プラントを撃たせて、さらにジェネシスも撃たせればそれでよかったのだ。

 にも関わらず、こちらに来て、挙句自分になんの利もないことを働いて……。

 まったくもって合理的ではない。

 

『あ……た……』

 

 

 ―――こんなだからオレは、いつまで経ってもフラフラとっ!

 

 

『あなた!? 聞いてまして!?』

「ッ!?」

 

 ハッとするロマ。

 

 周囲に敵機はいたようだが、すでにチェシャがファウスト・ヌルで片付けたようだ。

 戦場でぼうっとするなど信じられない行為だが、自分がそんなことをしてしまうのがさらに信じられない。

 それほど、自らの行いに思うところがあったのだろう。

 

『ザフトが撤退していきますわ。きますわよっ!?』

「あ、ジェネシスか……!?」

『それ以外なにがありますのっ、後悔するのは後で離脱しますわよ!』

 

 連合艦隊の方向に逃げるわけにもいかないと、ロマは理解する。

 確実に自身のした行為は、あちらも捕捉しているだろう。

 そんな最中、声が聞こえた。

 

『ロマさんっ……あれが撃たれますっ!』

「キラっ……!」

『乗ってください! 連合には帰れないでしょう!?』

「……くっ!」

 

 大人しくキラに従いミーティアの背部に乗り掴まる。

 その最高速度は当然ディザスターを超え、そのまま戦場を離脱。

 

 モニターに映る連合艦隊が徐々に小さくなっていき、次の瞬間―――。

 

『きますわっ!』

 

 

 

 ―――“終末の光(ジェネシス)”が、放たれる。

 

 

 







めっちゃ難産、だけどまぁとりあえずプロット通りには進んでます

賛否ありそうなロマの立ち回りです
最終決戦にしてまさかの三隻同盟合流……これも賛否ありそう
どの面下げて会うのか

ともかく、こんな感じで最終決戦一戦目
次の出撃で原作通りラストになることでしょう……原作通りのラストになるかはともかく

月基地に撃つって言ってたのに思い切り連合艦隊に撃ってる説明とかも次回あたり

では、次回もお楽しみいただければと思います
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