盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
ロマ・K・バエルはディザスターの中、フリーダムが装備したミーティアに取りついた状態で、状況を整理していた。
放たれたジェネシス、方向からしておそらく月面基地でなくプラントを攻撃する連合艦隊を狙ったものだ。
故に、まだ月面基地が無事なのは想像できるが、おそらく次の攻撃は“原作通り”月面基地か……月面基地からの増援の艦隊だ。
射程等から、おそらくセラフィムも、サザーランドの乗るドミニオンも無事と考えて良い。
自分がこうして“裏切ってしまった”ことで、アズラエルの立場が危ういかもしれないが……ともあれ、再攻撃は補給と整備を終えてすぐに行うだろう。指揮権がアズラエルから移っていようと、だ。
そしてサザーランドが指揮するとすれば再び、プラントへの核攻撃とジェネシスへの核攻撃を同時に行うはずだ。
猶予はまだある。
そう確信し、静かに息を吐く。
『ロマさん……』
「ん、ああキラ、すまない……」
エターナル、クサナギ、アークエンジェルの三隻がモニターに映る。
『ロマさんはアークエンジェルに、僕とアスランはエターナルに戻りますから』
「ぐっ……わ、私はアークエンジェル、か」
動揺する。そりゃそうである。
『大丈夫ですよ?』
「いや、しかしな……」
クサナギよりはマシであるが、どうせならエターナルに着艦したほうがまだ良い気もする。
そもそも三隻同盟とは一度交戦しているのだからどこに行っても針のむしろではあるのだが……。
『赤い悪魔も人の目が怖いもんかねぇ、ちょっと意外だな』
「人間そういうものさ……」
ディアッカの声にそう答える。
『まぁ俺がいるんだし大丈夫だと思うぜ』
『ディアッカの言う通り、ほら行くぞ』
「君とはまた立場が違うが、仕方あるまい……」
ディアッカとムウの言葉に素直に頷いて、アークエンジェルにゆっくりと近づいていくディザスター。
フリーダムとジャスティスもエターナルへと戻っていく姿が見えれば、それを少し恨めしそうに見て、ロマは自分に拒否権などない。あるわけもないと、今一度覚悟を決め、通信を繋げる。
「こちらディザスター、ロマ・K・バエルだ……着艦許可を頼む」
『着艦を許可しますわ……た・い・さ?』
「ぐっ……感謝する」
サブモニターに映るマリューがやけに笑顔だが、妙な圧を感じた。
通信を切るも、すぐにムウに『彼氏なんだからなんとかしてくれ』と頼みたくなる……それができれば苦労もしないのだが、などと考えながら懐かしき大天使へと着艦。
ハンガーへと入るなり、ロマは背後に視線を向ける。
「チェシャ、大丈夫か?」
『私はともかく貴方こそ大丈夫ですの? 愛しのあの娘たちとも離ればなれでしてよ』
「仕方あるまいよ。私の未熟さが招いた結果だ」
感情に任せる暇さえもなく、無意識だった。
『……ま、まぁわたくし、あなたのそういうところは、その……良いと思いますわよ?』
「そう言ってもらえると助かる。さて……」
気が重い。何を言われるかわかったものではない。
元々、精神的にはそれほど強い人間ではない故に……。
『大丈夫ですわ。あなた』
「……そう、か?」
『ええ、わたくしが保障しますわ。たぶん歓迎してるからこそ、艦長さんもあの言い方だったんでしょう』
支援AIの機械らしくない物言いに、ロマは頬を綻ばせながらヘルメットを外す。
「お前がそう言うならそうなんだろう……着替えてから出る。お前も大人しくな」
『自己メンテに移りますわ。スリープモードになってますので』
「わかった……おやすみ」
『おやすみなさいませ。あなた』
◇◇◇
撤退した連合、ゴエーティア隊が殿を務めたこともあり被害はジェネシスの一撃を除けば最小限といったところだが……状況は悪い。
第二射により『月基地への攻撃』を予測していた連合は、艦隊に直撃を受けた。
広範囲に広がっていた故に被害は20%ほどだが、前回と合わせれば50%の消耗、通常のセオリーでいえば撤退以外に選択肢がないところだが……ことここに至っては撤退という選択肢がない。
さらに言えば“赤い悪魔が裏切った”などという事実がある。
戦艦セラフィムは騒然としている……。
「ウィリアム・サザーランド大佐……なにやってるんですか、あなた?」
セラフィムのブリッジには、ウィリアム・サザーランドがいた。
そしてその正面には、兵たちに銃を向けられた“ムルタ・アズラエル”だ。
「それはこちらの台詞ですよ。ムルタ・アズラエル……」
「……ウチのロマが“アークエンジェル側”に寝返ったとか聞きましたけど、ホントですか?」
「ええ、しっかりとモニターで確認しました。フリーダムと共に撤退する姿を」
艦長席に座るナタルも、オペレーターであるフレイも動けないでいた。
セラフィムとドッキングしたドミニオンから乗り込んできたサザーランドと兵たち、アズラエルが連合兵たちに銃を向けられているという事実、そしてロマが裏切ったという事実……。
それでいてナタルとフレイは、驚愕こそするものの、ロマが裏切ったというのは、別にそれはそれで構わないという思考でもあった。
アークエンジェル側に彼が行く、一種の安心感さえ覚える……アズラエルの処遇を除けば。
「さ、サザーランド大佐、アズラエル理事はっ」
「いや、この作戦が終われば彼女も理事でなくなるさ」
「なっ!?」
「……解任だよ。そういう話が裏で進んでいたようでな」
驚愕するナタルだが、アズラエルは別段驚いていないようだった。
「ジブリール……アイツ、そんなことだろうと思った……」
「ご理解が早い。それに今回の貴女の懐刀たる男の離反、これは責任重大ですな」
「で、どうするつもりで?」
「貴女を拘束させていただきますよ。“繋がっていない”とも言い切れない」
別に構わないと、アズラエルは両手を上げて息を吐く。
「作戦中の独断行動、挙句私が指示した攻撃の妨害と、バエル大佐の罪状は多いことですな。まぁ生きて捕獲されたところで、その異名の大きさから銃殺刑こそないだろうが……」
苦笑するサザーランドに、アズラエルは何を言うでもない。
「嫌いではなかったんですが……」
「そう言う人間ですよ。だからわざわざジェネシスに正面突破で、ボアズも“アレ”が撃たれるまでは核を温存してたんですから……それに、ロマも貴方のこと、嫌いではなかったと思いますけどね」
「……残念なことですよ。アズラエル理事を部屋に、見張りもつけておけ!」
サザーランドが道を譲れば、アズラエルは素直にブリッジから出て行く。
どこかの部屋に軟禁されることになるのだろうことは明白で、ブリッジのクルーたちはどこか不満そうな表情を浮かべるが、それもまた仕方のないことだ。
ブーステッドマンたちもハイータ達もここにいないのは、サザーランドとてこの状況に対する反感を買うと理解しているからだろう。
そして、サザーランドは艦長たるナタルに向き合う。
「……君たちの部隊がなければおそらくあの兵器は攻略できまい。次、地球に撃つつもりならば本当におしまいだ。月基地からの増援を待つ暇などない……早々に戦闘を再開するぞ」
「……はっ!」
敬礼するナタル。
どちらにしろここで反論しても仕方ないし、なによりもアズラエルは理事でなく盟主でもない。ともなれば、まずはこの戦いを終わらす方に集中して、あの兵器を破壊しなくてはならないと言う判断。
それにサザーランドであれば、クロトたちやハイータについてもなにか知っていて、上手く制御できるようにしているやもしれない。
だからこそ従う。それ以外の選択肢などないのだ。
故に今は、雌伏の時。
◇◇◇
アークエンジェルのハンガーから、エターナルへと移動してきたロマ。
状況は一刻を争うものの、連合が動いてザフトと戦闘をしている時でなければこちらも動けない。故に、今は補給と整備に時間を割きつつ、次の戦いについて検討するべきである。
わざわざアークエンジェルに顔を出して結局はエターナルへと移動してきたことについて不満はあるが、言える立場でもないのでロマは甘んじてそれを受け入れるのみ。
そして、ロマはサングラスの奥の目を見開いた。
「いやぁ“久しぶり”だね。赤い悪魔」
「……アンドリュー・バルトフェルドに」
「アイシャよ、声だけだったけど」
ロマの識る歴史と違い、そこには彼の恋人でもあるアイシャもいた。バルトフェルドの失った左腕と反対に、右腕を失った状態で……。
ともあれ、そこで異様な動揺を見せるわけにもいかない。
「世話になったよ。君らにも……おかげで昇進した」
「残念ながらそれもパァだねぇ」
バルトフェルドの言葉に苦笑するロマ。
「で、どういう風の吹き回しなんです大佐?」
隣のマリューが少しばかり意地の悪い笑顔を浮かべながら言うもので、ロマは顔をしかめた。
「勝手に動いてしまっただけだ……」
「へぇ、正義感が強いじゃないの」
ディアッカの言葉に、首を左右に振る。
「プラントに撃つのは違うだろう。私は“アレ”を破壊する以外に核を使うつもりなどないよ。ましてや非戦闘員になど……」
「やっぱりロマさんは優しいですね」
「キラ、物事はそう単純ではないよ」
苦言を呈しながらも、ロマは周囲を見渡す。
エターナルのブリッジには主要な面々が集まっていた。艦長であるラクス・クラインは勿論、バルトフェルドにアイシャ、ダゴスタ、キラ、アスラン。
アークエンジェルからはマリュー、ムウ、ディアッカ。
クサナギからはキサカとエリカ・シモンズ……カガリはいない。
「……エルスマンやアスラン・ザラとは違うだろう。私は」
オーブを焼き、メンデルで戦い。挙句、核の号令……ただ一時の感情任せの行動の結果、ここにいるというだけだ。
他の面々も感情任せの行動に過ぎはしないが、それでもロマは自身を許しはしないだろう。
後悔はない。だがそれとはまた違う話だ。
だがそこで、アスランが口を開いた。
「違いなど、ありませんよ」
「アスラン……」
「……今は、やるべきことは一緒だと思っています。バエル大佐」
赤服を纏ったアスランの言葉に、赤き軍服を纏うロマは頷く。
「そうだな。今、私がやるべきと思うことはプラントへの核攻撃の阻止と、“アレ”の破壊だ」
「貴方が同じ目的を持って戦ってくださるというのは、とても心強いことですわ。お噂は耳に入ってきていましたから」
「ラクス・クライン嬢……」
ピンク色の髪を靡かせる少女が、視界に入る。
こうして会うのは初めてで、さすがのロマも緊張というものをしてはいるのだが、それをおくびにも出さないのはアズラエルの側近として生きてきた故か……。
彼女はキラの横に立ち、真っ直ぐとロマを見る。
「ラクスで構いませんわ。バエル大佐」
「そうか……ではラクス嬢、勝手ではあるが、ここからは協力させてもらう……」
その言葉にラクスは頷こうと、するが……キサカが手を上げる。
「しかしだ。そうなれば我々は君の……連合を撃つこともあるだろう。そこは?」
「構わんさ、私も連合と相対する覚悟はある」
もちろん嘘である。いや、半分は本当でもあった。
正直なところ、結局ロマは自分の“仲間”以外に興味はないのだ。別に連合の一般兵が落ちようが、今更……以上の感情はない。
故にゴエーティア隊以外の相手ならば、ほぼ躊躇なく落とすことはできるだろう。
勿論、気持ちのいいことではないが……。
「まぁある程度の賭けには出る。説得もするさ……コーディネイターへの憎悪で動いている者らに通じるかはわからんがな」
「なら大佐は例の兵器、ジェネシスの攻略側に行かなくても良いんですか?」
エリカの言葉に、ロマは首を左右に振った。
「いや、それはもちろんだが……おそらくサザーランド大佐のことだ。先と同様にプラントとジェネシスの両方に核攻撃部隊、ピースメーカー隊を送り込むだろう」
物量任せの二点同時の作戦で防衛網を緩めて、できることなら二つ同時の完全破壊。目指す先はそこだろう……。
故に……。
「ジェネシスの方は放っておこう。君らとしては受け入れがたい気持ちがあるのはわかるが、やはり核を使うのが一番効果的ではある。モビルスーツの殲滅にも役立つしな」
冷静なふりをして物事を語る。
「核攻撃を見逃す、ですか……」
「ラクス嬢、君らがプラントと連合、どちらの味方でもないというのなら必要な判断だ。この状況でジェネシスの核攻撃まで妨害しては、ただのザフト親派と認めるに過ぎんよ。それに引き金を引くのは君らでもない……故に君たちはプラントの防衛を頼む」
「……では、大佐は?」
ラクスの言葉に、ロマは不敵な笑みを浮かべた。
「……動き回るさ。悪魔らしく、すべてかき回す」
◇ ◇ ◇
セラフィムの一室にて、クロト、オルガ、シャニの三人が肩で息をしていた。
そしてその視線の先には、ウィリアム・サザーランド。
三人娘は最近はめっきり味わっていなかったγ-グリフェプタンの禁断症状に、立つのもやっとな状況で抵抗などできようはずもない。故に、睨みつけるぐらいがせいぜいであった。
「君らの部隊長たるバエル大佐は裏切った。勿論、君たち生体CPUにもその危険があることは重々承知であるからに……こちらで手綱を握らせてもらう」
「ちぇっ、変わりませんよぉ、ボクらはなんにもさ……」
「ま、ソレを握ってる奴に従って、殺すだけだわな」
クロトに続きオルガの言葉を聞くと、サザーランドは特に表情を変えるでもなく頷いた。
γ-グリフェプタンを握っていれば生体CPUは裏切れないと理解しているからであり、彼らを貴重で重要な戦力とも思っているからこそ、しっかりと管理をするのだろう。
ともあれ、ウィリアム・サザーランドにとってやはりロマ・K・バエルの部隊はそれほど重要であるという想いがあるのだ。
だからこそ、その裏切りには失望したし驚愕もした。
「核の号令までしておいて、なにを今更躊躇うことがある……」
「ハァ?」
無意識の内に呟いた言葉をシャニが拾うが、サザーランドは反応することも無く、三人娘に背を向けて部屋を出る。
そして、残された三人娘は脱力したかのようにベッドに転がった。
医師兼研究員数人が、手持ちのタブレットに色々と状況やら経過やらを記入しているが、三人娘の知ったことではない。
問題はそこではなく……。
「どうするよ、私ら……」
「オルガがそんなこと言うなんて、珍しいね……」
「殺されるよりは殺す方がマシなんじゃねぇの?」
オルガは片腕を顔に乗せて、ため息をついた。
らしくない自覚はあるからこそ、なのだろう。
「てか、おばさんはどうしたんですかねぇ」
「ハァン、あのおっさんが来たってことはさ……?」
「なるほどな……こりゃオレたちにゃどうしようもねぇか」
自嘲するように笑うオルガを見て、クロトは肩を竦めて、シャニは無表情のまま息を吐く。
どちらにしろ、やることは変わらないのだと……。
◇ ◇ ◇
エターナルのブリッジでのブリーフィングを終え、各々が自らの艦へと戻り始めた。
だが未だエターナルにいたロマは、ハンガーが見える廊下にて……キラとアスランを前に―――頭を下げている。
戸惑うようなキラとアスランだが、ロマはそのままだった。
「頼む……」
「ろ、ロマさんっ!」
「やめてくださいバエル大佐……!」
二人の制止の声に、ようやくロマは頭を上げる。
サングラスは外しており、その青と赤の瞳で二人を見ていた。
「モノの頼み方は心得たつもりだが……」
「そうじゃなくて……」
再び、ロマはサングラスを装着する。
「これは私の死活問題だ。それに彼女たちにとっても……」
「バエル大佐、しかし俺は貴方に頭を下げてもらえるような立場にはありませんよ」
アスランの言葉は、彼自身が“ロマの大切な者をどうしたか”わかっている故の言葉だ。
「……戦争さ、私とて理解している」
恨んだことはある。落としてやろうと思ったことも然り、だが今は違う。
彼らでなければならないことがあり、彼らと共に戦うことになったからこそ、全てを“受け入れる”必要があるのだ。
これは“戦争だから仕方ない”等と割り切れるほど器が大きい男ではない。
―――それでも、オレは……。
「……それに私も無理を言っているのは理解しているからな」
「バエル大佐……」
「わかりましたロマさん、僕は……」
微笑みを浮かべたキラが頷き、アスランも苦笑しながら頷いた―――その瞬間。
「見つけたぁ!」
「むっ!?」
珍しくロマが明らかな動揺を顔に浮かべたが、既に遅い。
声の主はその金髪を振り乱しながら無重力の中、ロマへと加速してくる。
「カガリっ!?」
「このバカぁっ!」
突っ込んできたカガリが、ロマに弱々しい拳を叩きこむ。
「っ……おいカガリっ、大佐は!」
「わかってるよ! こっちに来てくれたのは素直に嬉しいっ、けどなぁ!」
感情の整理が追いついてないのだろう。
キサカは意外とあっさりと受け入れたようだし、他の面々も然りだ。
……しかし、オーブを襲撃したロマを前に、カガリはそうもいかなかった。
前にアスランと話した時は、素直に状況を受け入れてはいたが、やはり本人を前にして冷静でもいられなかったのだろう。
キラもアスランも、キサカがブリッジにカガリを連れてこなかった理由をなんとなく理解した。
「カガリ、オーブを攻撃したことを『すまない』と言うつもりはないぞ……」
「わかってるよっ、お父様が言ってた……お前が『私達の敵ではない』って、でもぉっ……!」
胸に飛び込んでくるカガリを、ロマはそっと抱きしめてその頭を撫でる。
これまで、“二度の人生”で一度も妹をもったことはないが、やはりその在り方は“妹”を思わせるもので、ロマは弱々しく胸が叩かれるもそれを受け入れながら、キラとアスランに視線を向けた。
当の二人もなにを言うでもなく、困ったように笑うのみ。
「……お前たちを悲しませたことについては謝罪するよ。すまない」
「お父様を、討ったか……?」
つまり、知っているのだろう。ウズミがロマに挑んだと……。
元々死ぬつもりで、トドメがロマに変わったかどうかの話ではあるのだが、それでもロマ自身がそう割り切れはしない。だからこそ、素直に頷く。
そして、彼の最後を思い出す。
「ああ、君らを『頼まれた』よ」
「……っ」
胸の中で泣くカガリに、ロマはなにも言ってやることはできない。
キラがカガリの背に手を置いてロマに苦笑を浮かべた。
思ったほどのトラブルにならずに、安心している気持ちもあるが―――赦されてしまったことに対する、妙な罪悪感もある。
「……大佐、カガリは貴方のことを兄のように」
「アスランお前ぇっ!」
ロマから離れたカガリが、顔を真っ赤にしながらアスランの方へと飛び付いた。
「空気読めよっ!?」
「えっ、だ、ダメだったか!?」
「そんなんだからお前あぶなっかしいんだよっ!」
「えぇっ!?」
苦笑するロマ。
もう幾ばくか状況が落ち着いていたならば、キラとアスランが揃った場に“自身”がいるということに、もう少しばかり昂揚感やらをおぼえたのかもしれないが、そうもいかない。
隣にいるキラの頭を軽く撫でれば、くすぐったそうにしながらも嬉しそうな表情を浮かべる。
「アスラン……」
「え、はい」
名前を呼ばれ驚きながら、そしてカガリの拳を受け流しながらアスランはロマの方を向く。
「……二人を頼む」
驚いたように眼を見開くも、すぐにアスランは頷く。
「ロマさんっ……」
「子ども扱いしてっ」
少し照れくさそうにするキラと、不満そうに頬を膨らますカガリ。
「それと、君も無理してくれるな。キラもカガリも悲しむ」
「はい……それと、大佐も」
「っ……ああ、ありがとう」
◇ ◇ ◇
地球連合軍艦隊が動き出す。
補給と整備を済まし、即座に“ジェネシス”攻略のために動き出した。
ボアズ攻略時より派遣していた増援も合流し、さらに月面基地から増援が向かっている。
核ミサイルもかなりの数の補給が完了し、先の戦いよりもその数は多い。
ボアズ攻略時にその増援を提案したのも、もちろんロマ・K・バエルではあるのだが……。
旗艦ワシントンが“消失”した今、旗艦となったドミニオンのブリッジにて、ウィリアム・サザーランドは頭を押さえる。
「心の底から残念だよ。バエル大佐……」
そう言いながらも、その視線の先にあるモニターに映るのはプラント本国とジェネシスの二つ。
同時波状攻撃でのジェネシス崩落、そして可能であればプラントの滅却。状況だけで言えば今にもその二つの目的に手が届きそうで歓喜に震えるところではあるが、やはりジェネシスの脅威というものが目の前にあることにより、その感情の起伏はフラットに抑えられていた。
「定刻です。全艦発進準備完了!」
「発進! ペルグランデ……“
「ペルグランデ、並びにインゲンス、出撃させます……!」
サザーランドの号令に、オペレーターが強く応える。
「青き清浄なる世界のために……!」
その号令と共に、地球軍が動き出す。
◇ ◇ ◇
アークエンジェルのハンガー。
ディザスターのコックピットで赤いノーマルスーツを着たロマは震える手で操縦桿を握る。いつだってそうだ。変わらない。
少し前に“連合の進撃の開始”と共に出撃準備を言い渡され、ロマはそこにいた。
それまでの間にマードックとも会ったし、サイやミリアリア、アーノルド・ノイマンとも然り……。
カガリには『アサギたちも会いたがっている』と言われたがその時間までは取れなかった。
しかし、お互いに生き残れたら会うこともあるだろうとは思う。
『あなた、大丈夫ですの?』
「ああ、起きたかチェシャ……」
相棒の声に、しっかりと意識を向ける。
『まさか、またここから出撃する機会があると思いませんでしたわ』
「私もさ……素直に喜ばしいと思えんのがなんだがな」
『大丈夫ですわ。あの娘たちも、理事も、ワンコだって弱くはないでしょう?』
「……ああ」
彼女の穏やかな声に、少しばかり気持ちも落ち着く。
モニターでハンガー内を見てみれば、ムウとマリューが別れる姿が見えた。
彼もまた、どうにかしてやらなければならないだろう。
……状況は全く変わってしまい。ロマにとっても先が見えないことではあるが。
『全機! 核がプラントに向けられるまで連合は放っておいていい!』
バルトフェルドの声に、ロマは頷きつつ通信を繋げる。
「核を持った別働隊がいるはずだ。そちらに注意を頼む」
『了解した。頼んだぞ赤い悪魔……いや、味方になったのに悪魔、は不吉か?』
「構わんよ」
―――彗星ってガラでもないしな。
『オレンジ25、マーク12、アルファにセラフィムです!』
配置は離脱前の作戦と変わっていない。
『モビルスーツ、発進してください……!』
『全艦、モビルスーツ発進!』
ラクスに次いでバルトフェルドの号令と共に、各艦からモビルスーツが発進していく。
今作戦に至ってはクサナギからM1Aアストレイやストライクルージュもだ。
自らと似たような立場ではある“白いM1Aアストレイ”を見て、そのパイロットとも少しばかり言葉を交わしてみたくも思うが……。
「そのような状況でもないか……」
次々と出撃していくモビルスーツ、そして“ガンダム”。
アークエンジェルからストライクとバスターも既に発進し、残るはディザスター。
『ディザスター、発進どうぞ!』
ミリアリアの声が響く。
『私があなたの翼ですわ……!』
「頼むチェシャ……」
震えの止まった手で操縦桿を握る。
「ロマ・K・バエル、ディザスター……
最後のガンダムが、飛び立つ。
視界に広がる戦火、点いては消える命の灯火。
それは―――わかれゆく
ようやく最終決戦突入です
説明してないとこも多々ありますが、次回あたり判明したりしなかったり
そしてロマ、いろんな人たちと和解(?)ということで
まだこっから地味に長いかも……?
ついでに、ここで生き残れば地獄のデスティニー編が続く
アズにゃんたちはどうなるのか……
そしてちゃっかり出てきたモビルアーマー
それでは、次回もお楽しみいただければと思います