盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
連合とザフトの両軍がぶつかり合うヤキン・ドゥーエ周辺宙域。
ここがザフトにとっての最後の砦。
しかし、連合にとっても“後に引けない”戦いになってしまった以上、泥沼と化そうともこの戦いはどちらかが滅びるか、“きっかけ”でもない限り終わりはしないだろう。
さらに、そこには三隻同盟も参戦し……今、その
ジェネシスとプラント、双方に核攻撃を開始する連合と、それらを阻止するために戦うザフト。
三隻同盟はジェネシスの発射とプラントへの核攻撃を阻止に動きだした。
プラント本国へと核弾頭を放っていた連合の部隊、三隻同盟の一部はそれらを迎撃するために戦力の半分をこちらに展開している。
その主力たるフリーダムとジャスティス。核攻撃をするにあたって厄介極まりないそれらを迎撃するため現れたのはゴエーティア隊の主力……その主力を前に、本来であればゴエーティア隊を指揮するべき男、“赤い悪魔”が現れた。
赤銅色の装甲を鈍く輝かせ、
激しい戦闘を繰り広げていたフリーダム、ジャスティスとゴエーティア隊の争いが一瞬だが静寂に包まれる。
だが即座に、シャニはハイータとクロトを撃たせまいと“ディザスター以外”にむけて
フリーダム、ジャスティスが同時にその場から動くが、ディザスターはそのままコラプスと向き合う。
敵意を感じることもなく、自らを撃つこともないと思っていた故にロマは一切の操作をすることもなく、ただそこにいた。
そして、ディザスターをゆっくりとコラプスに接近させていくロマ。
「ハイータ……聞こえるか?」
彼とて“異質な力を持つ者の端くれ”ではある。
故に、彼女が異常なことは理解しているのだ。
だからこうして、通信が届く範囲まで近づき、語りかける。
『ろ、ロマくん……? げ、現実? でも、撃たれたはず……っ』
戸惑うハイータの声、彼女の心が乱れているのは理解していた。
「私はここにいる。そうだろう……?」
『あ、ありえないっ、ロマくんは死んでっ、死んでるっ……私は、確か、見て……っ!? でも、ずっと声、聞こえてっ……!』
薬物的な錯乱のしかただとロマは理解。彼とてブーステッドマンたちに関わってきた人間なのだから、していて当然。
クロトたち以外のブーステッドマンも散々見てきた。
ハイータの言葉からするに、他人からの“刷り込み”により、ハイータ自身がロマの死を間近で見たと思い込み、挙句に幻聴まで聞こえていたのだろうということをロマは察する。
だからこそ不安定で、だからこそありのままにロマの“生”を認められない。
───よくもまぁ、これで戦場に引っ張り出してくれたなっ……!
一人で暴れてくれればいいし、最悪の場合死んでくれても構わない……等と言う思考なのだろうと、ロマは怒りのあまり頭痛すら覚える。
プラントへの核攻撃のこともそうだが、サザーランドには言いたいことだらけだ。
しかし、ここで精神を乱して怒りに身を任せようものなら、余計におかしなことになるだろうことは、特殊な力がなくともわかる。
故にロマは、敵意を向けずに、冷静に、ゆっくりと近づいていく。
「キラ、アスラン……下がっていてくれ、ハイータの視界に入るな」
『えっ……はい』
『ハイータさん……』
アスランは戸惑うような返事をして少し遠ざかると、キラもまたフリーダムをジャスティスの隣まで下げる。
核の光が輝く戦場で、異様な静けさに包まれる。
ハイータに自身が見えるよう、ロマがコックピットを開こうとしたその瞬間───。
『おにーさん!』
「敵意ッ!!?」
―――ディザスターを勢いよく下げる。
刹那、ディザスターとコラプスの間に、向かって右からビームが迸った。
「なんだこの異様なっ……こちらかッ!」
さらに“反対方向”から放たれた攻撃に気づき、そちらを向くなりビームクローを振るい、迫るビームを弾く。
攻撃を放った“自立兵器”が加速していき“本体”に戻るのを見やるなり、ロマは顔をしかめた。
十機ほどのストライクダガーを伴いながら迫る“ソレ”は“大型モビルアーマー”であり、ロマの記憶にも存在するもの……。
「ペルグランデ……!?」
『おい知ってるのかよおにーさん!?』
「ロクでもない代物だっ……だがッ!?」
大型モビルアーマー<ペルグランデ>は、中央のコアブロックを中心に上下で三機ずつ、計六機のブロックからなる異形のモビルアーマーであった。
機体上部にある三基の“ドラグーン”、そして下部の三つにはパイロットが搭乗しているニュートロンジャマ―キャンセラーが搭載された核駆動機。
ロマとて“こちら”でしっかりと計画書を見るまで頭から抜けていた“
ただ、それはこの世界でのアズラエルはあまりよくない反応を示したことから、凍結となった計画であった……にも関わらず、今ここに存在する理由は、また別の経緯で生まれたという証拠。
計画書が漏れたか、技術者が漏れたか……どちらにしろ“アズラエル以外の派閥”からと考えて良い。
フリーダムとジャスティスがビームライフルを同時に構えるが、ペルグランデは攻撃を開始。
全体に装備されたビーム兵装による攻撃に、さすがの二人も攻撃より回避を選択せざるをえなくなる。
ロマはディザスターにて素早く攻撃を回避しながら、未だ止まっているコラプスに意識を向けるが、ハッキリとハイータというものを感じない。
「くっ……!」
顔をしかめるロマが、ペルグランデからの砲撃をさらに回避。
だが、すぐに射出された自立兵器ドラグーンに狙われる。それからの砲撃も回避しつつ、さらにペルグランデ周囲に配置されたストライクダガーからの攻撃にも意識を向ける必要があった。
そして、同時に核の光がプラントに近づいていることに気づく。
「キラ! アスラン! プラントの方を頼むっ」
『でもロマさんっ!』
『大佐、一人でこの数はっ』
二人の懸念も当然ではあるが、今ここでプラントを落とされるわけにもいかない。
「なんとかするっ、自らのやるべきことをっ」
そんなロマの指示に、キラが頷く。
『アスラン、ここは僕が残るから君はプラントを!』
『キラ!?』
『ボクのミーティアも腕の方が無いから、君が! どちらにしろこのモビルアーマー部隊を止めないとこっちの防衛も間に合わない!』
今度はアスランがキラの言葉に納得し、頷いた。
ミーティアを装備したジャスティスのコックピットで、アスランは幾度となく戦った友と男を見やる。
ロマも言いたいことはあったが、ここを早々に片す方が先決であると見た。それに
『……ここは任せた! 大佐もご無事で!』
「ああ、君も……」
去るジャスティスを尻目に、フリーダムはペルグランデの方へと向き直る。
キラもコックピットでしっかりとペルグランデを、そしてレイダーとフォビドゥンとコラプスを見やるが……。
『ロマさん……』
「ああ、助かる。しかし……」
『たくっ、うぜぇっ!』
「クロトっ!?」
レイダーが“ペルグランデのドラグーンに”ツォーンを放つ。
しかし、MSの二倍はあろうドラグーンは素早くそれを回避してみせた。
さらにシャニがエクツァーンを撃つが、直撃したところでそれは弾かれた───PS装甲である。
フリーダムのコックピットで混乱するキラ。
同様にロマも少しばかりの混乱を見せた。
「クロト、シャニ……私の味方をッ!?」
『ハァン、私らはいつだって……生き残ることしか考えてないからさ』
『そーいうことっ、だから後のことはおにーさんがなんとかしろよなっ!』
反旗を翻したレイダーとフォビドゥンに、ストライクダガーとペルグランデが攻撃を開始。
かといって、素直にそのような攻撃の直撃を受ける二人でもなく、回避しながら攻撃を開始。
『ロマさん、彼女たちは!?』
「味方で良い。今は……!」
ストライクダガーへと銃口を向けるディザスターが、器用に照準をずらしてビームライフルの腕部を破壊して見せる。
自らがそういう芸当をすることになると思わなかったと、顔を顰めるロマ。
所謂“メインキャラ”ならともかく、よりにもよって見ず知らずの者を相手に、だ。
───私自身の薄っぺらさが透けて見えるようだな……ッ!
フォビドゥンがゲシュマイディッヒ・パンツァーでペルグランデからのビームを曲げる。
それが明後日の方向へと飛んでいけば、その先で核の光が輝く。
『ハァン、おにーさんのなに、あんた?』
『えっ、ただの仲間で……』
『おいシャニぃ! 余裕かよ!?』
『だってぇ』
『くそっ、んでオルガがこんな時いねぇかなぁ、まとまらねぇんだよ!』
そんな言葉に、ロマはオルガがいないことに確かな違和感を覚えた。
二機のドラグーンがフリーダムを狙うが、キラはその間を縫うようにどうにか回避。
焼かれた脚部の反応が鈍いことに顔を顰めつつも、ビームサーベルを抜き迫るビームガンを弾く。
フリーダムを狙うドラグーンへと、フォビドゥンとレイダーの二機がフレスベルグとツォーンを撃つが、それらを受け付けない対ビーム加工された装甲。
「対ビームコーティングっ……チィッ!」
さらに、この戦場においてやけに濁りのない、しかしながらごちゃごちゃとした敵意。
まるで癇癪を起した子供が向けるような、不思議な感覚。それに戸惑いながらも、ロマは本能的に機体を動かす。
直後、ディザスターがいた場所に迸るのは───テイルブレード。
「ハイータっ!」
『ハイータさん!?』
『おいハイータっ、おにーさんだって!』
クロトが叫ぶが、ディザスターを追うように放たれるテイルブレードは止まらない。
『あぁっ! こんな幻ばかりっ、さっきからうるせぇんですよ!』
「ハイータっ、えぇぃ!」
『うっそでしょ!? あの女完全にラリってますわよ……っ!』
「わかっている!」
錯乱しているのは、薬物は勿論、彼女のロマほどでもない程度の“感応力”によるものだろう。
原因は、間違いなくそこに鎮座する巨大なモビルアーマー……“巨人”の名を冠する機体、ペルグランデ。
パイロットは三人。外科手術により脳は物理的に繋がっており、“
だが故に、異様なモノを感じてしまう。
さらに目の前で死んだと“刷り込まれた”人物までいるのだから、当然といえば当然なのだ。
不安定なのはわかりきっていたのだから……。
「厄介なッ!」
『ロマくんは死んだんだっ、こっ、これは夢でっ、お、お前を倒せばっ、うぁぁっ! 頭の中を蛇がのたうつみたいなッ! い゛っ……あ゛ぁ゛っ! し、死ねっ、消えろぉっ!』
「話が通じる状態でもないかっ、まさか自らに“こんなこと”が降りかかるとはなっ!」
テイルブレードを回避し、受け流しながらもロマはコラプスが下がっていくのをハッキリと意識する。
目の前の事象から逃げるように下がるコラプスを、追わない選択肢など今のロマにはない。
だからこそ……。
「キラっ、クロト、シャニ!」
この激戦必至である戦場に、彼と彼女らを……。
『行ってください、ここは僕らが……ハイータさんを助けてあげてください!』
『ハァン、いいじゃん白い奴……』
『ってことなんでさっさといってこいよおにーさん!』
一瞬ばかり目をつむり、苦々しい顔を浮かべるロマ。
その心中は自分を罵倒する言葉で埋め尽くされているが、それでも目下やるべきはハイータを追うことだと感覚的に、本能的に判断してしまったのだ。
そして、そんな判断を後押ししてくれる者たちがそこにはいる。
すでにロマの識るところでない戦場で、ロマは識らぬ選択肢を取らざるを得ない。
「すまない!」
離れるコラプスを追うディザスター。
そのコクピットで、ロマは深く深呼吸をする。
『救うなんてできますの!?』
「戦いの中でも人を救う手段が、あると思うか……?」
『あるわけありませんわ、そんなもの!』
尤もな言葉だと、ロマは頷いた。
「だが、やらなければならん……!」
◇ ◇ ◇
戦艦、ドミニオンのブリッジにてウィリアム・サザーランドは一機のストライクダガーからの報告を聞き、凄まじい形相で激しく肘置きを叩いた。
部下たちはビクッと震えるが、それに構っていられる状態でもない。
状況は考えうる最悪の状態であり、プラントへもジェネシスへも、ただの一発たりとも核攻撃は届いていない。
本命であるジェネシス攻略が邪魔されていないのは救いではあるが、だが好調とも言い難く、防衛網はじわじわと下がってはいるようだが、このままでは次の一撃を許してしまう。
次、月基地を焼き払われるのはこの際“まだまし”ではある……地球を狙われようものなら本当に終わりだ。
サザーランドは思考する。
プラントへの核攻撃さえ無ければ、状況は違ったのかと……防衛部隊を分散させるためにプラントへ攻撃することが、なにか……。
「ッ!」
サザーランドは、真っ直ぐにプラントを見据えながら、顔をしかめて部下に指示を出す。
「……転進! セラフィムへ向かえ! 奴は、ロマ・バエルは来るはずだッ!」
「しかし大佐、セラフィムは別方面に……アークエンジェルの迎撃に出てますよ!?」
セラフィムが間違ってもアークエンジェル側に寝返らぬようにと、サザーランドはアズラエルに部下二人をつけてはいる。
つまりは人質的な意味合い。なにかしようものなら彼女の命はないぞ、という圧もかけた。アズラエルがあの艦において、それなりの人望を得ていると理解して……。
だからこそ、既にあちらに行く必要などないのだろう。
セラフィムが討たれるならばそれで良い、逆もまた然り。
だが、それでもサザーランドは、ジェネシスでもプラントでもなく……
◇ ◇ ◇
三隻同盟でも、クサナギに搭載された部隊はジェネシス攻略を進めていた。
本来であれば三隻同盟はプラント防衛にのみ専念する予定ではあったのだが……現状ではジェネシスへの核攻撃を援護する形になってしまったが、それを“嫌”の一言で片づけられる状態でもない。
故に、キサカとカガリの提案、そしてラクスの承認を得て今ここでザフト防衛隊と戦闘を行っている。
さすがに先までのロマのように堂々と共同作戦といけず、ある程度の距離は離れているが、やはり連合もそうだがオーブの人間たちが、お互いを信用できない故だろう。
ともあれ、背後から撃たれる心配をするよりはよほどいい。
カガリの駆る桜色のストライク、ストライクルージュが右手に持ったビームライフルでジンを撃ち貫く。
「やれる……ッ!」
ストライクルージュはエールストライカーを装備して出撃しており、周囲のM1と連携を取りながら戦う。
もちろんロマが言いつけたことであり、カガリは反対の意思を示すこともなく素直に三機のM1アストレイ、アサギ、マユラ、ジュリの三人と共に戦闘を続けていた。
『カガリ様っ!』
「わかっている!」
マユラの叫ぶような声に返事をするなり、カガリはフットペダルを踏み込み、M1三人娘の連携攻撃を抜けたゲイツへとライフルを撃ちつつ、円の動きで近寄らせまいと牽制。
しかし、そのパイロットもベテランではあるのだろう、三機の連携を抜けてきただけはありその程度、造作もないというように回避しつつ、ストライクルージュへと接近していく。
『姫様こっちへっ、えぇい!』
『ジンなんかが、邪魔をぉっ!』
アサギとジュリの声が聞こえるが、マユラも含めて三人共手が離せる状態ではない。
向けていたビームライフルがゲイツの<
即座にそれを手放しシールドを使ってビームライフルの爆発を凌ぐも、シールドを降ろせば至近距離にゲイツ。
「ッ!?」
既にビームクローの射程圏内、ゲイツが真っ直ぐにその腕を伸ばそうとする───瞬間。
「私だってっ、ここまで、気持ちだけで来たわけじゃないっ!」
感情の爆発と極限状態が、カガリの『SEEDを持つ者』としての力を覚醒させる。
人類種の可能性、キラ、アスランに次ぐ覚醒者。
カガリがフットペダルを強く踏み込む。
「ッ!」
ストライクルージュが後ろへと倒れ、腕を真っ直ぐ伸ばしたゲイツのその一撃を回避───それと共に、縦に回転し、所謂サマーソルトの形でゲイツの頭部を、蹴り飛ばした。
さらにそのまま回転するストライクルージュは、シールドをパージしつつ、左手で右腰部の“柄”を掴む。
「アイツに、今更説教されてたまるか……!」
そして一回転を終えるなり、装備された“9.1メートル対艦刀”を引き抜きゲイツの左腕を斬りおとす。
ゲイツは即座に背後に下がってストライクルージュと距離を取りつつ、右手のビームライフルを撃ちつつ、再度エクステンショナル・アレスターを放った。
カガリはビームライフルを回避しつつ、素早く左腕に握った対艦刀を振るいアンカーを弾き───加速。
一気に距離をつめつつ、空いた右手で背中のビームサーベルを抜刀し、そのままゲイツを袈裟斬り。
「ッ!」
ストライクルージュを素早く別方向へと加速させ、爆散するゲイツから離脱。
「はぁっ、はぁっ……次ッ!」
『カガリ様凄いっ!』
『そんな強いなら最初から本気だしてくださいよっ!』
「うるさい! 最初から本気だ!」
嘘ではないが、突然動きが変わればそう言われるのも詮方ないことだろう。
「いくぞ、ジェネシスを撃たせるわけにはいかないんだからっ」
カガリのその言葉に、アストレイ三人娘が『はーい!』と気の抜けるような返事を返す。
別段緊張してないわけでも気を抜いているわけでもないが、それもまたいつも通りを心がける故なのだろうと、カガリは自分を納得させつつ、対艦刀とビームサーベルを納刀し、シールドを回収。
ジェネシスまではまだ距離がある、だが……。
「オーブを、地球を撃たせるわけには……ッ!」
◇ ◇ ◇
戦艦セラフィムに大口径ビーム砲が掠る。
「くッ、アークエンジェル……っ!」
それだけで艦内は大きく揺れ、その衝撃にブリッジの艦長席に座るナタル・バジルールは顔を顰めた。
視界に映る白い戦艦、アークエンジェルの損傷も決して軽微ではないが、他の友軍艦が破壊されてからこちらの損傷が徐々にアークエンジェルに追いついてきてしまっている。
だが……。
「ちょっとちょっと! なにやってんですか、このままじゃ落ちちゃいますよ?」
近くの座席に座っているアズラエルが、半笑いで煽るような声を上げる。
「あっちの攻撃ばっかり当たってるじゃないですか、ブリッジ直撃なんて勘弁してくださいよぉ?」
顔をしかめてそちらを見るナタルの視界に映るアズラエルは手錠を掛けられており、その背後にはノーマルスーツを着た男性兵士が二人。
どちらも銃を持っており、ウィリアム・サザーランドから送られてきたその二人は、なにかあればその銃口をアズラエルを含め自分たちにも向けるのだろう。
しかし、彼らをブリッジに上げたのはナタルであり、彼らも状況が見えぬ状況を恐れてアズラエルを連れて上がってきた。
アークエンジェルと円を描くような動きで牽制しあいながら、ナタルはアズラエルの背後の男たちの方に視線を向ける。
「カラミティを出撃させれば迎撃可能です。あちらにモビルスーツが戻ってくる前に……出撃させる許可が頂ければそれで終わりますが?」
「へぇ、らしいけど?」
「許可が、いただけますか?」
目を細めてそう言うが、二人の兵はお互いにしかめた顔を見合わせた。
ナタルの言うことは尤もではあるが、ウィリアム・サザーランドから伝えられた言葉では<ブーステッドマン>と<コーディネイターの小娘>、そしてムルタ・アズラエルはロマ・K・バエルを相手にする場合の切札であり、それらを自由にするということはその分、彼に対してのカードが減ることと同義。
故に、すでにクロト・ブエルを解放してしまった今、オルガ・サブナックを解放しては手元にはムルタ・アズラエルのみになる。
彼らは<ロマ・K・バエル>という人間を知らない。
ロマに対する理解が深い人間であれば、その面々を人質に取るならば一人であろうと二人であろうと、彼が止まることには変わりないということを察することができるが、彼らはそうではなかった。
だからこそ、葛藤する。
そして彼らは、ナタルたちに聞こえぬように相談を始めた。
「ナタルさん!」
「っ、なんだ!」
もう少しで最後の一手を打てるところだったが、突然フレイが叫ぶ。
焦るような声もそうだが、呼び方が“艦長”ではなく名前呼びなところからして、かなり混乱しているのは理解でき、故にナタルも強く応えた。
「コラプス、ハイータ中尉がこちらに接近中!」
「なに!?」
この状況でハイータが戻ってきてはならない理由が、セラフィムひいてはナタルにはある……オルガが出撃できそうなこの状況では、あまりにタイミングが悪い。
ナタルは苦虫を噛んだような顔をしながら正面を向く。
アークエンジェルからの攻撃はもちろん止まない、こちらも止めるわけにはいかない。
戦わない選択肢は、現状においてはない。
「コラプス……でぃ、ディザスターと交戦を続けつつ接近中!」
「ディザスターだとッ!?」
ナタルがアズラエルの方をわずかに見れば、彼女は先ほどとは違う……どこか穏やかな表情で微笑を浮かべていた。
だが、その背後のサザーランドの兵二人は違う。
険しい表情で持っていた銃の銃口をアズラエルへと向けている。
それに小さな悲鳴をあげるフレイと、ピンと張りつめるブリッジの空気。
「コラプスとコーディネイターの帰還先はドミニオンになっているはずだっ!」
「薬物ガンガンに入れたんでしょぉ? そりゃ冷静に判断できないでしょう、帰巣本能って奴じゃないですかぁ? ま、貴方達にはわかりませんかぁ、このレベルの話は~♪」
「黙れっ!」
アズラエルが間延びするような声でそう言えば、兵が苛立つように叫ぶが、フレイは次いで焦ったような声で声を上げる。
「コラプス、損傷してますっ!」
「一度コラプスを収容し、カラミティでディザスターを迎撃します。よろしいですね?」
「ダメだっ! コーディネイターをそのまま戦わせろっ」
空気感にあてられたのか、彼らもかなり焦ったように言う。
「貴方達はあまり見てないかもしれませんけど、バエルであれば機体を破壊したあと戦艦を落とすぐらいわけありませんよ?」
アズラエルの言葉に、さらに兵は追い詰められていく。
「少なからず、今の内にサブナックをカラミティに乗せてでもおかないと、コラプスが撃破された瞬間こっちもすぐにバァン♪ とやられておしまいですけど───貴方達、理解してます?」
それまで半笑いでどこかバカにしていたように言うアズラエルだったが、最後の言葉だけは真剣な声音。
言っていることは全て事実であると言うように……いや、それ自体は彼らも理解しているのだろう。なんなら彼らの方がロマに怯えているのだ。
そう、彼のカリスマ性についても……だからこそ、ロマの“元仲間”を解放することに躊躇がある……。
「ぐ、ぐぐっ……!」
「お、おい、やっぱり!」
一人の兵がもう一人の肩を掴む。
「少なからずこのままではアークエンジェルにも狙われ続けます!」
「くそっ、わかった! 出撃させろっ、ただし余計なことをしてみろ、お前ら全員道連れだ!」
自棄になり叫ぶ兵に頷くなり、ナタルはもう一人の兵からオルガが監禁されている部屋のパスコードを聞く。
これで、離れた戦場ではレイダーとフォビドゥンが裏切っているなどと報告があればどうなるか、想像もしたくないことではあるが、そうはなっていない―――現状は。
ディザスターとコラプスは目視できる距離にまで近づいてくる。
テイルブレードが飛び交い、ディザスターが二本の腕と、四本の隠し腕でそれらを捌く姿を確認。
「さ、逆賊を撃つ時間ですよ。艦長さん……?」
アズラエルの言葉が後方から聞こえ……ナタルはフッ、と口元を綻ばせた。
ナタルは自分自身、規律に厳しい軍人であろうとしているし、そのつもりだ。
故に、この艦の主導権を握るのは最初から───。
「ゴットフリート照準、ディザスター!」
ならば自分は、仕事を全うするのみだ。
お待たせしました、お待たせしすぎたかもしれません
要所要所はプロット組んであるものの
色々と整理しながら書いてるとどうにもこうにも、最終決戦は特に
書き直したい部分とか書き直してる内にこんなことに……
ハイータ乱心、お薬は用量用法を持って使用しましょう
サザーランドも乱心、原作アズにゃんの皺寄せというかなんというか
ペルグランデは本来の要塞防衛の用途ではないので若干改変して固定砲台感が薄くなってたり
まぁ形はまんまだと思っていただいて大丈夫です
ともあれ、次回はもっと早く更新できると思います
あとアズにゃん女の子にしてるんだからジブリールもジブにゃんにした方が良い気がしてきた今日この頃の私でございます
別にストーリーにそれほど影響ないし()
では、次回もお楽しみいただければです