盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
ロマ・K・バエルはディザスターを駆る。
赤橙色の装甲を持つモビルスーツコラプスを追う、赤銅色のモビルスーツ。
コックピットの中で、ロマは苦々しい表情を浮かべながらコラプスからの攻撃を回避していく。既に隠し腕ことファウスト・ヌルまで起動しているものの、捌くので精一杯だった。
テイルブレードに幾度となく攻撃を仕掛けているが、上手いことテイルブレードが他のテイルブレードをカバーする。
薬物で錯乱状態とは思えない精密な操作……。
「いや、錯乱状態だからこそ、庇うのかっ……?」
舌打ちをするなり、片手でヘルメットを外して後ろへと放り投げる。
『ちょっ、後ろに投げないでくださいまし!』
「こちらの方がやはり慣れているな……!」
『聞きなさいな!』
いつも通りのチェシャの声を聞くと、どことなく安心感を感じるロマ。
正直に言えば調子に乗るし煽られるし、なんてことは容易に想像がつく故に言えないが、すっかり彼女といるのが当たり前になっているということだろうと自覚する。
もちろん“いるのが当たり前”という感覚であるならば、アズラエルや三人娘、そして目の前の女もまた然り。
故に彼は“想像する日常”を再度続けるために、目の前の彼女にしっかりと意識を向ける。
コラプスは両腕を失っているものの、テイルブレードがある限り戦闘不能にできたとは言い難い。
『艦砲射撃!』
「チィ、射程圏内かっ!」
素早く機体を翻し、セラフィムから放たれたゴットフリートを回避する。
敵艦に近づいているのだから攻撃は飛んできて当然ではあるが、遠慮なしの攻撃にロマは思わず苦笑を零す。
彼女らが自らになんの“警告”もなく攻撃をするとは思えない。思いたくないのかもしれないが、それを鑑みたうえで現実的ではない。
ともなれば、撃たざるを得ない理由がある。と思ったほうが良いだろう。
「人質? えぇいっ、クロトたちに詳しく聞いておくべきだったな……!」
『そんな暇ありませんでしたでしょう!』
「違いないなっ!」
テイルブレードだけで手一杯にも関わらず、さらにセラフィムからの射撃ともなれば捌ききる自信がない。向こうが“わざと外して”くれたとしても、ロマの予想通り“人質がとられている”のだとしたら、わざと外すにも限界があるはずだ。
だが、その余裕が生まれるほど、ハイータの攻撃に隙はない。錯乱していようと、それは変わらないだろう。
だが……。
『大佐! セラフィムはこちらでっ!』
通信でマリュー・ラミアスの声が聞こえる。
「頼んだ……!」
本音を零すのであれば『撃墜しないように』と言いたいところではあったが、さすがにわざわざそれを言うことなどできない。
ナタルが上手いこと撃墜されず撃墜せず戦闘を継続してくれるのを願うのみだ。
それか、こちらが早々にことを終わらせるか。
それができれば今もこんなに苦労はしていないのだが……。
『仕方ありませんわね! ファウスト・ヌルを射出しますわよ!』
「っ……他に方法もないかっ!」
ファウスト・ヌルを隠し腕として接続したまま使う場合と、射出しオールレンジ攻撃兵器として使用するのとではまた違ってくる。主にチェシャに接続されている脳への負担が……だが、ここで使わない選択肢はないだろう。
彼の識る歴史通りにことが進むのであれば、この後に自分の出番はほとんどないはずで……それでなくとも、ハイータを取り戻さなければ……。
「私がここにいる意味がないっ……存在する意義もッ!」
吐き出すように、ロマはそう零した。
『いきますわよ……ディザスター、バトル・ゴー! ですわ!』
「お前はいつも楽しそうだな……!」
有線式オールレンジ兵装、ファウスト・ヌルが射出される。
九本のテイルブレードがディザスターの周囲を囲むように展開されていたが、独自に動く四本の腕はコラプスのテイルブレードを狙い攻撃を始めた。
指先からのビームクロー。あるいは手首部分からのビームガン。
防戦一方であったロマだったが、テイルブレードの隊列やパターンが崩れたことにより、瞳を鋭く細めて視線の先に映るコラプスを見やり、口元に笑みを浮かべる。
「ハイータ……!」
ロマは操縦桿を引きフットペダルを踏み込む。
「逃がさんッ!」
加速したディザスターに、チェシャのファウスト・ヌルをもってしてもカバーしきれないテイルブレードが飛ぶ。
だが、本数が先ほどとは違うからだろう、機体を逸らし回避しながらコラプスまでの距離を詰めるほどの余裕は生まれた。
ある程度の距離まで接近するなり、ロマはディザスターの右腕をコラプスへと向けて、射出させる。
「掴まえたッ!」
放たれた腕はコラプスの左脚を掴む。
「ハイータ!」
『……うぁっ!? その声でっ、喋るなァッ!』
「オレは、ここにいるッ!」
勢いよく回収される腕と共に、コラプスもディザスターへと近づく。
範囲内に入るなり、コラプスの掴んでいない右脚が横薙ぎに振るわれるが、PS装甲に任せてその一撃を受けながら組みついた。
激しく揺れたコックピットだが、構いはしない。
超至近距離、ロマは通信で聞こえるハイータの叫びに顔を顰める。
「これならばテイルブレードは使えないなっ!」
『アハハハッ! ロマくんっ、いま、逝くからっ!』
「ッ!?」
ロマの視界に、モニターに映るのは複数のテイルブレード。
「諸共かっ!?」
『あぁ、これでやっと……』
「ハイータッ!」
視界に入る四つのテイルブレードが四機のファウスト・ヌルに貫かれる。
まだ展開されている五機の内の一機に、空いた左腕を向けて射出するがそれは呆気なく回避され、別のテイルブレードが、射出したディザスターの左腕を貫くも、腕に巻き込まれ共に爆散
残りは四、それらを止める術を今のディザスターが持っているわけもない。
ハイータだけでもなんとか離脱させたいが、今の状況ではそうもいかないだろう。
―――離して私だけ離脱、いや……そんな選択肢はッ!
『なにやってんだよロマァ!』
「ッ!?」
瞬間、放たれた三本のビーム砲がまとめて四つのテイルブレードを破壊。
聞きなれた声、見慣れた機体───カラミティが、そこにはいた。
「オルガ!?」
『チッ、撃っちまった!』
焦るような声。
それを聞き、ロマは急ぎセラフィムの方へと意識を向ける。
◇ ◇ ◇
セラフィムのブリッジでは、カラミティがディザスターを援護した光景がハッキリと見えていた。
アークエンジェルからの攻撃はまだ続く、しかしこの状況で動かない選択肢もない。今ここで、チャンスを逃せばさらに厄介なことになるのは明白だった。
だからこそ、サザーランドの兵二人が混乱している今がチャンスであろう。
だからこそ、一番最初に動いたのは、ナタルだった。
前を向いたまま握っていた拳銃を立ち上がると同時に背後に向けて、お手本のような動作で―――撃つ。
「がっ!」
「なぁっ!?」
一人の兵士の肩を撃ち抜く。
顔をしかめるナタルだが、形式上は味方である相手に先制して銃弾を撃ちこんだのだから当然といえば当然であろう。
もう一人に銃を向けるが、その兵は既にナタルへと銃口を向けていた。
だがそれも、ナタルとしては思惑通りと言ったところだ……。
「っ……!」
一人を行動不能にできたとしても、こうなることは目に見えていた。
覚悟はしていたのだ。だがこうでもしなければ、彼女が生き残るには、他の手は無かったとナタルは結論を出した。
故に……。
「大佐、あとは……」
「だめっ! もうやめて!」
瞬間、飛びだしたのはフレイ・アルスター。
彼女がナタルに銃を向けていた兵へと体当たりをするように掴みかかり、怯ませる。
銃弾がブリッジの天井へとぶつかり跳弾するも、誰にもあたることもなかったが、すぐに蹴り飛ばされたフレイがアズラエルの座っていた椅子にぶつかった。
だがそんな彼女の隣に、手錠をされたままのアズラエル。
「こらっ! なにやってんの!?」
咎めるように言うアズラエルだが、そんな彼女へとフレイを突き飛ばした兵は、混乱してかアズラエルでもナタルでもなく、フレイに銃口を向ける。
引き鉄を指が引こうとするその寸前、鈍い音がすると共に、その兵が白目をむいて、気を失う。
そしてそんな兵の後ろには、“レンチ”を振り下ろした女性。
アズラエルは、見知ったその顔にホッと息をつく。
その女は、ロマの専属ともいえる整備士である。
かつてプトレマイオス基地に配属されていた整備士であり、その後にアズラエルお抱えのロマの、お抱えの整備士となった女性。
ナタルがアズラエルの隣へとやってくる。
「大丈夫ですか理事」
「えぇ、どうもご苦労かけまし───ッ」
ナタルが、アズラエルへと飛びかかった。
周囲が驚愕するよりも早く、なにかが弾けるような音がする。
「なんのつもり……っ!?」
ハッとしたアズラエルの視界に映るのは、無重力故に浮き上がる球になった血。
「くっ!」
すぐに視線を動かし確認すれば、最初にナタルが撃った兵が拳銃を片手に持っていた。
即座に他のブリッジクルー数人がその兵を取り押さえるが、アズラエルはそれを確認するなり、無重力下で、近くの椅子を使い器用にナタルと自分の身体を入れ替えた。
ナタルを支えながら、負傷した場所を確認……負傷箇所は肩、銃弾は抜けている。
「う゛ぁっ……!」
「バジルール!」
叫ぶアズラエルに、ナタルが弱弱しく笑みを浮かべる。
「無事、ですか……」
「あ、あなたっ……!」
「ナタルさんっ!? い、いやっ、し、しっかりして! し、止血、止血しないとっ!」
悲痛な表情で顔をしかめるアズラエルとフレイ。
怪我をしたハイータを世話していたこともあって、焦りながらもすぐに止血に動くフレイ。
アズラエルも手を貸そうとした……次の瞬間、セラフィムが激しく揺れた。
「きゃぁっ!?」
次いで数秒もしないうちに、さらに轟音と共に揺れる。
「なっ!? なにが起きた!」
その白いスーツを、ナタルの血で真っ赤に染めながら、アズラエルは叫んだ。
◇ ◇ ◇
錯乱したハイータと共に死するしかないという状況で、予想外の味方。
自らを援護し、コラプスの抵抗の手段を奪うことに手を貸したカラミティ、そしてそのパイロットのオルガ。
彼女の焦るような声に、セラフィムの方へと意識を向けるロマであったが、すぐに別のことに気づく。
黒い戦艦が、セラフィムへと攻撃を開始した。
―――ドミニオン! サザーランド、なぜこちらにッ!?
「マズイっ!」
アークエンジェルをモニターで確認すれば、開いたハッチに“損傷したストライク”が入っていくのが確認できる。
ともなれば、もう“その時”なのだとロマは理解した。
だが、その照準はセラフィムに向けられている。
「ッ!」
『オイオイオイ! マジかよっ!?』
焦るようなオルガの声に、コラプスを離す。すでに攻撃手段など胸部機関砲ぐらいなのだから、構わない。
それよりもセラフィムの方へと……と言う判断だが、状況を理解し焦る理性的なロマよりも、本能的な彼女は早かった。
ロマの耳に入るのはハイータの声。
『わ、私たちのっ、ロマくんの帰る場所っ!!』
「ハイータっ! なにをする!?」
突如動き出したコラプスがディザスターを蹴り飛ばすなり、加速する。
「ハイータ……ッ!?」
突如、妙な感覚。背後からだ。
「チェシャ!?」
『い、いカラ、いきな、サイ、あナタ!』
「ッ!」
後ろ髪を引かれるが、構わずフットペダルを踏み込んでコラプスを追う。
すでにドミニオンのローエングリンは展開されており、その照準はおそらく……セラフィム。
先行するコラプスの速度は“
だが、それでもディザスターは喰らいついていく。
「ハイータっ……! 止まれ、ハイータ……!」
『ッッ! ろ、まくんがっ……みんなのっ、かえる、ばしょっ……!』
薬物の大量投与と刷り込み、さらに現れたロマに錯乱していながらも、それでも“セラフィム”を守るために、ハイータはコラプス真っ直ぐ突っ込ませる。
ブレーキなど存在しないというように、止まる必要などないと言うように……。
そしてそのままハイータ……コラプスは、ドミニオンにぶつかる寸前でバーニアを使い加速度を極力殺さぬままに体勢を変えると、ローエングリン発射口に右脚部で蹴りを撃ちこみ───同時にディザスターと同じ脚部クローを展開。
突き刺さったクローがその発射口を破壊する。
だが、機体本体の勢い故に右脚部が引き千切れた。
しかして、それも計算通りなのだろう。
もう一方のローエングリン発射口の方へと機体が勢いのまま飛んでいく。
機体本体が回転しながらそちらへと辿りつく直前、ハイータはそれをやけにゆっくりと感じつつ、澄んだクリアな頭で、視界にチラッと映った赤銅色の機体に気づいた。
先ほどと違い、穏やかな心でそれを受け入れた彼女は、日頃の“彼ら”を見守る時と変わりない笑みを浮かべている。
「あ、ロマくん……そんなところに、いたんだ……」
そして、一回転したコラプスは残った左脚部でもう一方のローエングリン発射口に蹴りを撃ちこみクローを展開───破壊。
発射寸前で攻撃を受け、そこは眩く輝く。
その輝きを受ける大破したコラプス。だがコックピットの中で、ハイータは変わらず穏やかであった。
ノイズの走るモニターに映る赤い戦艦と赤銅のモビルスーツ。
そっと手を伸ばして、モニター内の“ディザスター”に触れる。
「ロマくん……」
喜びの笑みを浮かべたハイータの瞳から溢れる涙が、ヘルメットの中で球となり浮く。
最愛の者に、聞こえてはおらずとも、それでも……。
「“あの時”、“私”を見つけてくれて───」
◇ ◇ ◇
「ハイィタァァァッッ!!」
ディザスターのコックピットで叫ぶロマ。
無情にも視線の先にある二つのローエングリン発射口部分は爆発し、一方はコラプスの右脚を巻き込んで、もう一方は“コラプス”本体を巻き込む……。
爆発の規模はとても小さいとは言えず、ドミニオンはほぼ大破。
ロマはディザスターをそのまま加速させ、まだ無事であり射撃体制に入っていたゴットフリート二門をビームクローで斬り裂き、抜ける。
まだドミニオンは轟沈には至っていない……しかし、戦う力は無いだろう。
「ハイータっ……!」
ローエングリン発射口付近をモニターに捉え確認。
徐々に爆煙が晴れていくも、コラプスとドミニオンの残骸ばかりがロマの視界に入っていく。
混乱するロマはまともな思考もできないままに、コックピット内で自らの膝を強く叩いた。
「私は……っ!!」
だが、それでも……。
◇ ◇ ◇
セラフィムのブリッジ。そこから見えるのはローエングリンとゴットフリートを破壊され、黒煙をあげるドミニオン。
今現在、セラフィムは丁度、ドミニオンの真正面を捉える形となっている。
ブリッジは沈黙している。
空気が重い、等と言うよりは、誰もが現状を理解するのに時間がかかっている、のだろう……。
撃たれると思った瞬間、コラプスが特攻、そしてディザスターの攻撃。
先の攻撃ですでにセラフィムに航行機能はほぼ失っており、この艦にこのまま乗っていれば撃たれるのを待つだけだ。
それを理解したからこそ、最も混乱していて然るべきアズラエルだったが、叫ぶ。
「総員退艦っ!」
唖然とするクルーたちを余所に、アズラエルはナタルの拳銃を手に取るなり、彼女をフレイに任せて真上に拳銃を放つ。
跳弾するが、それもまた誰かを傷つけるでもない。
しかし、唖然としていたクルーたちの横っ面を叩くには十分で、クルーたちは一斉にアズラエルの方を向く。
「しかし理事っ!」
「私達もっ」
「私が命令してるんだっ!」
食い下がるクルーに、鋭い眼を向ける。
その眼力に言い淀む彼らではあったが、それでも構わぬというようにアズラエルは、続けて場所を移動した。
やるべきことは一つであり、そこに座るクルーを押しのける。
「君たちはそれに従うのが仕事だろっ! いちいち逆らうなっ!」
確かな怒り、彼女の爆発する感情。
誰も、食い下がることなどできないのは、やはり“彼女たち”の関係性を理解しているから……。
ハイータ・ヤマムラが死んだ。
ムルタ・アズラエルは無意識下で、このまま少しでも立ち止まれば動けないことを理解しているからこそ、だからこそ、間髪入れず行動した。
だがそんな彼女に、フレイが叫ぶ。
「あ、アズラエル理事っ!」
「ッ、黙ってアークエンジェルに行けよ!」
手錠をされたまま、素早くパネルを操作していく。
セラフィムのローエングリンが展開されれば、その照準は当然のことながらドミニオン。
瞳一杯に涙を溜めて、それでも怒れる瞳で黒い天使を睨みつけて……。
「ナタルさんっ!?」
フレイの声、それから誰かがアズラエルに掴みかかる。
弱弱しいその力に、振り返れば、そこにはナタル・バジルール。
だが、彼女は力を振り絞ってアズラエルの横っ面を―――引っ叩いた。
「あ、なっ……私にこんなことして、どうなるかわかって―――」
「貴女は、生きるべき人だっ……私達と、共にっ……」
自棄っぱちになっている冷静でないアズラエルに、ナタルは負傷した身体をそのままに掴みかかる。
アズラエルは眼を見開いてから、瞑った。
瞳に溜まった涙が、球になり宙を漂う。
「わかってますよ……言われなくたって死ぬつもりなんてないっ!」
フレイがやってきてナタルを引き受ける。
アズラエルは再びコントロールパネルの操作を始め、他のクルーも艦の制御などで狙いを確実なものにする手伝いを始めた。
そして、数分もしない内にすべてが終わり、アズラエルはその瞳に黒き堕天使を捉える。
「私たちは勝つんだ……」
「そうさ、いつだって……!」
◇ ◇ ◇
ドミニオンのブリッジにて、艦長席に座るウィリアム・サザーランド。
前のめりになっていた彼だったが、脱力して深く椅子に腰かける形になる。
ブリッジから見えるセラフィムはローエングリンを展開しており、それでなくともすぐ近くにはディザスター……抵抗する手段であるゴットフリートとローエングリンは既に使い物にならない。
「ローエングリン、ゴットフリート共に使用不可っ!」
「インゲンス、到着までまだかかりますっ! このままではっ!」
「総員、退艦せよ」
その言葉に、クルーたちが慌てたようにブリッジから出て行く。
深く椅子に座って、やけに落ち着いたように天井を仰ぎ見るサザーランド。
「ロマ・K・バエル……お前は、すべてのナチュラルの希望になる男なのだ。なのに、なぜ……プラントなど捨て置けばそれで良かったのだ。なぜ裏切ったっ……」
今まで言っていたロマへの評と、まったく違うことを呟くサザーランドだが、それが彼の本心なのかもしれない。
「嫌いなのだな、あのような立場で甘んじる貴様が……」
だから後顧の憂いが無いように、アズラエルを盟主の立場から蹴落とす手伝いをした。
盟主の座をロード・ジブリールに引き継がせ、彼を縛る全てを薙ぎ払い……。
数多の感情、数多の選択肢がサザーランドを狂わせる。
元を正せば、ただ一人の男が狂わした。
今まで存在しえた者たちでも、あれほどの力を持つ者はいなかった。だからこそ“希望”であったのだ。
そしてそんな希望であった者を生かすための選択をしたつもりが、結果的にこうした未来に繋がった。
理性で押さえつけた情動が、数多の選択を間違わせる。
今、ここにいる理由さえそうだ。
大きな希望を見た。
それが崩壊の始まりであったのだろう。
「ロマ・バエル。お前は背負って立ち……戦い、導くべき者だったはずだ……」
副官がサザーランドへと詰め寄る。
「大佐はやく! 我々も退艦をっ……急いでくださいっ!」
だが、既に間に合わない。
プラントを攻撃していた核部隊も、すでに全滅しているだろう。
敗北を冷静に分析しながら、サザーランドは副官へと視線も向けないまま、呟く。
「……私はなにか、間違っていたのか?」
瞬間───ローエングリンの光がドミニオンのブリッジを貫いた。
しっかりクライマックス感が出てきました
ハイータは……とりあえずなにも語るまいということで
たぶんご察しの通り、かも?
では、次回もお楽しみいただければです