盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
アークエンジェルは、大破したセラフィムの近くを航行していた。
セラフィムから一部の脱出艇が、そのまま問題なくアークエンジェルへと搬入されるのは偏にロマという男のそれまでの積み重ね故であろう。
負傷していたナタル・バジルールは早々に医務室へと運び込まれ、他のクルーはアークエンジェルの応急処置などに協力している。
まだそれほど時間も経っていないのだろう、離れているドミニオンは未だ黒煙をあげていた。
アークエンジェルの傍にはディザスター。
連合の部隊が近づいているという報告もあり、そこに長々といるわけにもいかないので手短に済ませようとロマは“格納庫”にいるマリューに通信を繋ぐ。
サブモニターに映ったマリュー、そして隣にはアズラエル。
その絵面に、思わず目を見開いて驚くも、すぐにいつも通り冷静な表情を顔に張りつけた。
「すまない、マリュー艦長……感謝する」
モニターの中のマリューが、どことなく気まずそうな表情を浮かべるが、それもそうだろう。
今の今まで“無理矢理”とはいえ、戦闘していた相手を受け入れる……いや、それはまだ良い。マリューとて“
だが問題は、隣にいるのがブルーコスモス盟主であるということだ。
それが“嫌”というよりは、緊張している。と言ったほうが正確であろう。
『いえ、その、アズラエル理事から軽く事情は聴きましたが……』
「そうか……理事を頼む。アズラエル理事も人の家で勝手な真似は」
『貴方は親ですか? 人様のホームでは大人しくしてますよ。私これでも政治屋の部類ですよ?』
当然。という風に反論するアズラエルに、ロマは苦笑を浮かべた。
眼が赤いが“それも当然”であり、今更触れることでもない。
『貴方に心配されるいわれはありませんよ。そんなことより、他にも心配事があるでしょう?』
「……ええ」
間を開けてから、頷くロマ。
クロトとシャニ、そしてゴエーティア隊の面々、それにジェネシスも……彼の“識る”歴史通りならばすべてこともなく進むはず……むしろ好転さえしていてもおかしくないが、どこか胸騒ぎが止まない。
離れたドミニオンを見れば、時折小規模の爆発を起こしている。
オルガのカラミティがハイータの捜索へと向かっているようだが……。
『失礼盟主さんっ、おいロマっ』
『ちょ、なんですあなたっ!?』
『ムウ!? あ、アズラエル理事に失礼なことしないっ!』
『失礼って言っただろ!』
突然、マリューとアズラエルの間に割って入ったムウ。
「ムウ、負傷は……」
『クルーゼにやられたっ、アイツ新型の“ガンダム”に乗ってやがったけど、さっきハイータ嬢がやってたのと同じような攻撃をしてきやがるっ』
オールレンジ攻撃、ドラグーン。
ロマが知らないわけがない。
なんなら“使用した”こともある……ゲームで。
ロマはムウが負傷して戻るのも理解していたし、最悪ローエングリンの光に一時的にその存在が消え去ることすらも理解していた故に、罪悪感が心を苛む。
今回に至っては、全力でどうにかしようとしたところでどうにかできたわけでもないが……。
『それにアイツっ、お前の名前も出してたっ……』
「なに……?」
意外な言葉に、ロマは目を細めた。
ロマの記憶が正しければ、ラウ・ル・クルーゼが固執し執着するのはただ二人。ムウ・ラ・フラガとキラ・ヤマト。
クルーゼの中では、この世界は既に終末、破滅へと向かっており、後など無いはずだ。
だからこそ、わざわざ自分へと意識を向けていることに驚いた。
自らと同じように人の欲と業により生まれた素晴らしき存在、キラ・ヤマト。
自らの元となった男に、役立たずと言われて切り捨てられた男、ムウ・ラ・フラガ。
二人を討とうと、二人に討たれようと、それはラウ・ル・クルーゼにとっては……本望である。
だからこそ理解できなかった。今さら“なんの因縁もないはず”の自分の名を出すということに……。
「ムウ、それは……」
『大佐! 敵機接近してきます!』
「チィッ!」
ミリアリアの声と共に、長話もできないことを理解する。
考察など後で良い。今やるべきことはオルガにハイータの生死の確認をしてもらうことと、自分がそれを守りきることだ。
ハイータの死を確認するまで、ロマは諦めるつもりなどない。
普通であれば撃墜されたと思うところではあるが、“ローエングリンの直撃”を受けて生きていた男が、ロマの目の前にいるのだ。
「話はここまでだっ……」
『あ、ああ、気を付けろよっ!』
ムウの言葉に頷き、視線をアズラエルへと向ける。
『貴方、私のなんですから……』
余計な言葉は必要ないということだろう。ただ、それだけを伝えるアズラエル。
僅かに赤くなった、潤んだ瞳がロマを捉え……赤と青の瞳が、優しく彼女を捉える。
やるべきことも、帰るべき場所もわかっているのだ。なにも迷う必要はない。
「ああ、わかっているよ。ムルタ」
そう応えるなり、通信を切った。
下手に会話を長引かせようものなら後ろ髪引かれることは明白なので、これ以上の会話は不要だ。
ハイータのことについても、まだ心の整理がついていないし、余計な迷いを産むことだけは避けたい……。
サブモニターに映るミリアリアに一声かけて通信を切ろうとしていると。
『なにか手伝えることは!?』
『えっ、フレイ!?』
「フレイが……?」
サブモニターに映ったミリアリア・ハウの隣に、見慣れた赤い髪の少女が顔を出す。
どこか凛々し気なその表情は、彼の“識っていた”彼女ではないが、彼の“知る”彼女だ。
彼女、フレイ・アルスターにも譲れない想いと、叶えたい願いと、やりたいことが……やらなければならないことがある。
『大佐……ロマさん』
「……君は“
『あ、その、ありがとう、ございます』
いつぞやの苦手意識もどこへやら、フレイは少し照れたように笑う。
肉親のいない、天涯孤独のフレイではあるが、彼女はロマに、いつの間にか“兄”のようなイメージを持っていた。
ハイータやナタルは姉、と言ったところだろうか……故に、彼女の目元にも涙の痕がある。
―――愛されてるな、ハイータ。
ロマは軽く笑みを浮かべ頷く。
ミリアリアとフレイが、ハッとした表情を浮かべる。
『大佐! カラミティが間もなく接敵します!』
「っ……援護に行く。アークエンジェルは後方へ!」
フットペダルを踏み込むロマ。
それと共にディザスターは、ドミニオン方面へと加速する。
敵機とカラミティが交戦するより早く、ディザスターなら追いつくことも可能だろう。
「ザフトにこちらを攻撃する余裕があるとも思えんが、連合か?」
ならば、説得の余地はあるだろう。
『おはようございましたわ! 覚・醒! 目を覚ませ私の世界が何者かに侵略されてますわ~!』
「うるせっ……って、チェシャ無事かっ!?」
コラプスを追う際に起きた不調から、ロマは先ほどチェシャの再起動をかけた。
少しばかり時間もかかるので、その間に敵機が接近しようものならアークエンジェルの防衛が手薄になる可能性もあり、いかんせん賭けではあったが……。
『無事も無事ですわよ! まったく勝手に眠らされるなんて! えっちなことする気でしたのね!?』
「んなわけあるか……」
いつも通りのチェシャの声に、少しばかり安心感を抱く。
「だが、その不調。やはり脳波コントロールが原因だな」
『だからと言ってやらないわけにもいかなくってよ』
「……次はどうなるかわからんだろう。あのような状態になっておいて」
『いちいち細かいことを気にしやがる男ですわね!』
なぜ自分がそう言われるのかロマはてんで理解できない。そりゃそうである。
『むっ、敵機モニターに!』
「ああ……ッ、コイツは!?」
モニターに映ったのは、灰色の装甲を持つ―――ガンダム。
背中には大きな“プラットフォーム”を背負っており、それにいくつも生えている突起は、全て“ドラグーン”。
勿論、ロマは識っている。
その機体を、そしてパイロットは仮面の男、ラウ・ル・クルーゼであることも。
―――
「ガンダムっ!」
『目が二つついててアンテナがありゃなんでもガンダムですの!?』
「チィ、やれるのか……私にっ!?」
チェシャの言葉にツッコむ余裕もないまま、ディザスターをカラミティの前方へと出すなり、プロヴィデンスが放った大型ビームライフルこと<ユーディキウム・ビームライフル>を、右手のビームクローで弾く。
尋常ではないそのプレッシャーに、ロマは顔を顰める。
「ラウ・ル・クルーゼ……!」
背後のカラミティから、通信。
『おい、もう大丈夫なのかよあっち!』
「ある程度はなっ、問題はこちらだ……並ではないッ!」
『お前がそんな言うってことはっ……くそっ! ハイータもまだ探せてねぇってのに!』
左腕を失い、ファウスト・ヌルを使うわけにもいかないディザスターでどの程度までやれるか、睨み合いになるが、このまま先手を打たせるわけにもいかない。
プロヴィデンスに向け徹甲弾を放つが、それは左腕に装備した<
次いでプロヴィデンスはビームサーベルを納めるなり、そのシールドの先端を二機の方へと向ける。
「オルガ!」
『わかってる!』
二機が同時にその場から別方向へと飛べば、プロヴィデンスのシールド左右に装備されたビーム砲が放たれた。
単純な攻撃ばかりだが、ロマは気を抜かない。
プロヴィデンスのパイロット、ラウ・ル・クルーゼのことを鑑みれば当然の話である。
『オラァッ!』
カラミティがシュラークとスキュラをプロヴィデンスに向けて放つが、プロヴィデンスはその間を縫い素早く回避。
しかし、オルガとてその程度の回避は予測していないわけもなく、ケーファー・ツヴァイとトーデスブロックを回避先に放つ。
プロヴィデンスは再び大型ビームサーベルを展開、横薙ぎに振るってそれらを一掃してみせた。
『チィ! こいつゥ!』
「気を付けろオルガッ! ビット攻撃がくるぞ!」
『ハァッ!? なんでわかんだよ、たくっ!』
深く聞かないのは、ロマに一定の理解がある故だろう。
ディザスターをプロヴィデンスへと接近させると、右腕のビームクローを振るう。
後ろに下がるプロヴィデンスへと、振るったビームクローは本来であれば当たる距離でもないが、振るった直後に射出することでリーチをさらに伸ばした。
しかしそれも……。
「凌ぐかッ!」
左腕の盾にて防がれる。
『ハハハァッ! ロマ・カインハースト・バエル! まさか最後の刻を前に、君と逢うことになるとはな!』
「ラウ・ル・クルーゼっ……貴様が私を意識するとはッ!」
プロヴィデンスの11基のドラグーンが展開される。
即座に射出した腕部の回収を行うが、それより早くドラグーンから放たれたビームがワイヤーを焼き切った。
これで左腕どころか右腕も使用不可だ。
『当然だよ! 私は君を討ちたいとすら思っている。思わせられている……!』
ドラグーンの総数は11基だが、大型3、中型2、小型6。さらに砲門は大型ドラグーンに9門、その他に2門ずつという破格の手数。
しかし、それらに狙われながらもディザスターの機動力を活かし、隙間を縫いながら回避しながら、接近を試みる。
「アル・ダ・フラガでも思い出すか……!?」
『そういう人を見透かすような物言い、不愉快だな!』
当てずっぽうで言ってみたロマだが、どうやら図星だったのか、クルーゼは感情をむき出しにしながらビームライフルとビーム砲を放つ。
それらもまた回避するが、攻撃手段もないロマにはどうにもできない。
だからこそ……。
「くっ、チェシャ……!」
『待ってましたわよ、私のあなた!』
ディザスターのツインアイが緑から、赤へと変わる。
『General Unilateral Neuro-Link Dispersive Autonomic Maneuver Synthesis System……接続、有線式サブアーム【ファウスト・ヌル】起動』
いつものチェシャらしくもない機械的な声音で機械的なことを言う。
一抹の不安を感じながらも、ロマは彼女のソレを使わざるを得ない状況に顔をしかめつつ、ドラグーンの攻撃を回避していく。
すぐに背中に装備された計4本のファウスト・ヌルが射出され、迎撃のために展開される。
『ハハハッ! おあつらえ向きだな、ロマ!』
「不本意ながらなッ! ラウッ!」
プロヴィデンスへの接近をかけるディザスターへと向けられるドラグーン。
ドラグーンを撃つためにファウスト・ヌルが射撃、そしてビームクローでの斬撃。
お互いに一進一退、ドラグーンもファウスト・ヌルも落ちはしないが、その凄まじいビームの雨の中、踊るような二機の“ガンダム”。
『しかし、存外見ものだったじゃぁないかッ! 終末の扉が開く瞬間というのは……君も含めた人の業が、あれらを撃たせたのだッ! そしてそれが引き鉄となった! 止められないさ、君とて!!』
「止めるつもりさッ……でなければ貴様にニュートロン・ジャマー・キャンセラーの提供など求めるものか!」
『止められると思っていたのか!? 果て無き争いの連鎖を! 核の力を持って!? ハハハハッ! 楽観的だな! その結果がこれか!』
ジェネシス、そして核。
戦争が至るところまで至ったという結果。
世界の終末は目に見えるレベルで迫り、今まさに終わりを迎えようとしている。
ジェネシスが地球へと撃ちこまれると言う形で……。
ロマとてただの一度もジェネシスを撃たせないなど無理なことは理解していた。
ボアズごと焼き払われるということこそ想定していなかったが、それでも追い込まれたザフトがソレを放つのは明白であり、その一撃を持って核を使用し戦争を両者痛み分けの形で終わらすのが理想ではあったのだ。
だが、そうはならなかった。
結果として泥沼の決戦と化し、ジェネシスを破壊し、プラントと地球を守るという目的の達成さえも確実ではない。
「ただ一人の思惑で世界を好きに動かせると思うなッ……!」
『その言葉、そっくり君にお返ししようロマッ!』
「ッ!?」
ディザスターを中心に大型ドラグーンがビームを照射。
展開された<ビームカーテン>だが、普段のロマならば回避もできたことだろうが……揺さぶられ、迷いと動揺を孕んだ彼の反応は遅れ、ディザスターの左足を破壊される。
致命傷こそ回避したものの、機動力への影響は避けられないだろう。
「ッ……私が一人でっ!?」
『君一人で人の業を止められると思ったのだろう!? 結果放たれた! 君の思惑を外れ……核は! プラントへ!』
「ッ!」
『浅はかだったな。人の欲と業を理解していないと見えるッ! 君が思う以上に醜いものだよ、人は!』
どこまでラウ・ル・クルーゼがロマの“計画”を理解していたのかは不明だ。
だがそれでも、彼はロマの思惑について理解があった。否、ロマ・K・バエルならば“こうする”と、感覚で理解してしまった。
それにすら、クルーゼは嫌悪感を抱く。
無論、見透かされたロマも。
『ごちゃごちゃうるっせぇんだよ! オラァッ!』
オルガがカラミティの全武装を一斉射する。
視覚外からの攻撃だが、クルーゼは直撃を回避。だが小型ドラグーンの一基が破壊された。
『チッ、あんだけやって一基かよっ』
『君のような小娘が我々の間に入るものではないなッ……!』
「やめろラウッ!」
そんな言葉で止まるわけもなく、ドラグーンが一斉にカラミティを囲むように迫り、ビームが放たれる。
『くそっ! こいつゥッ!』
なんとか一撃目は回避するオルガだが、それで攻撃が止むわけもない。
一方でクルーゼはカラミティへの攻撃を行いながら、ロマのディザスターへと接近。
ドラグーンを扱いながらその様なまね、並のパイロットができる業ではないだろう。
「オルガッ……えぇいッ!」
『よほど大事と見えるなッ!』
振るわれるビームサーベルを回避するロマへ、流れるようにビームライフルが放たれるが、それも機体を後ろに倒して回避。
ファウスト・ヌルがプロヴィデンスへの攻撃を開始するも、クルーゼは上手く回避する。
双方共に回避という動きの無い戦いだが……故に、オルガの方に向かおうものならば、即座に狙い撃ちされるだろう。
「冗談ではないッ!」
『どうしますの、あナた……ッ!』
「ッ……オルガだ!」
『
ドラグーンを回避していくオルガだったが、その数の追撃に対応しきれるはずもない。
特に重量級の機体であれば殊更難しいことであり、右脚、左腕、シュラークを二門、そして右腕に持っていたトーデスブロックも撃ち抜かれる。
まともな機動はできなくなるカラミティへ、さらにドラグーンが迫る……。
『わりぃっ、ここまでかよっ……』
『覚悟なされるのは早くってよ、オレっ娘ッ!』
オルガへ向けられたドラグーンが、一斉に散開し回避行動に移った。
確実に仕留められるタイミングでのその行動に対し驚愕しながらも、オルガがモニターを確認すれば、ディザスターは未だプロヴィデンスと交戦中……と言っても防戦一方である。
あまりに防戦一方で何事かとも思うが、その理由は攻撃手段であるファウスト・ヌルがオルガの方へと飛ばされているからだった。
ディザスターはプロヴィデンスが振るうビームサーベルを回避。
コックピットの中で、ロマはオルガの方を一瞬確認するが、ボロボロのカラミティへと向けられたドラグーンが一斉に散るのを見た。
しかし、すぐに状況は一転する。
『そういうところがまた、私を苛立たせるのだよッ!』
「そうだろうと思うっ!」
ドラグーンは一斉にファウスト・ヌルの有線ワイヤーをビームで焼き切る。
『やられましタわっ!』
「オルガは囮だろう。理解していたが……っ!」
『わかりやすいものだな。悲しいことと言っても良い!』
「なにを言うッ!」
次いで、ドラグーンが一斉にディザスターを囲むが、やはりそれを紙一重で回避。僅かに肩部が焼かれるが、それほど支障もないはずだ。
だが、抵抗の手段がないロマでは墜とされるのも時間の問題だろう。
覚悟の決め時であることは理解している。抵抗の手段がないわけではない……。
「えぇい……ッ!」
しかし、次の攻撃はなかった。
ディザスターへとビームライフルを向けていたプロヴィデンスが後ろへと下がったからだ。
そして、聞きなれた声がロマの耳に入る。
『ぐぅっ……抹殺ッ!』
そしてそこに奔るのは、大口径ビーム。
「クロトかっ!?」
『あぁ゛ッ、わたしも、いる……けどねっ……!』
クロトの声の後、シャニの声。
先に放たれたツォーンに次いで、さらに放たれたフレスベルグだったが、プロヴィデンスはそれを回避。
現れるレイダーとフォビドゥン、さらにバスターとデュエル、そしてフリーダム。
「ディアッカ! キラもっ!」
『おいおい、アンタがそんなやられるって冗談だろ!?』
「冗談ではないさ……」
デュエル・アサルトシュラウドが一緒にいるところを見ると、無事に和解は済んだと言うことだろうと理解する。
どの機体も大小なり損傷を抱えており、レイダーは左腕と左翼、右脚を失っている。
フォビドゥンは右のゲシュマイディッヒ・パンツァーと右腕、フリーダムは左足と右翼。
バスターとデュエルも欠損部位こそないものの、損傷が見て取れる。
だが、この数を相手にするのはさすがのクルーゼも面倒だと踏んだのか、ドラグーンを回収するなり後ろへと下がる。
『ハハハッ! 君たちも特等席で見ておくと良い。世界の終わり……最後の扉が開く、その時をなぁッ!』
「ラウ・ル・クルーゼ……!」
高笑いをしながら去っていくクルーゼをよそに、ロマは膝を叩く。
結局なにもできなかったことに、そして……。
『お、おいっ、オルガ……大丈夫、かよっ!』
『うっせーよっ、別になんともねぇ……お前らの方がやべぇだろうが、さっさとアークエンジェルに行って薬もらってこいっ』
『え、なんで、あの白い船……?』
『色々あったんだっての……っ』
アークエンジェルへと向かうレイダーとフォビドゥン、そしてカラミティを見ながら、ロマはディザスターの前腕を失った右腕を、浮いている右前腕に向け、そこから予備ワイヤーを射出し再度回収。
右腕は戻ったのであとは他の腕の回収だ。ファウスト・ヌルにも予備ワイヤーが接続されているが、もう一度クルーゼと戦っても同じことの繰り返しだろう。
それに……。
「チェシャ、無事か?」
『問題ございませんわぁ!』
「……ならいい」
フリーダムがディザスターへと近づく。
『ロマさんっ! あの機体、まさか……』
「クルーゼだ。奴を追う……」
『隊長が……』
デュエルのパイロット、イザーク・ジュールの声に、ロマは眉を顰める。
明確にザフトを裏切ったわけでもないイザークには複雑な心境だろうということは理解しているつもりだ。だからこそ、追撃をさせるわけにも、ザフトと戦闘をさせるわけにもいかない。
そして、連合の部隊が接近の報告は既に受けている故に、こちらを手薄にするわけにもいかないともなれば……。
「ディアッカ、デュエルと共にこちらでアークエンジェルを頼む。連合の部隊が近づいているそうだ」
『はぁ!? あんたはどうするつもりだよ!』
「キラと私でクルーゼを追う。野放しにしておけばエターナルが危ない」
『ラクスたちがっ!?』
ロマとしても、損傷したフリーダムだけにクルーゼを任せるのが危険だということは理解している。
小型ドラグーンが一基損耗した程度で、クルーゼの戦力が明確に変わるとも思えないからだ。それに、“これから”のことを思えば、キラに“勝利”以外の方法でクルーゼと決着をつけられるわけにいかないし、逆に自分だけでもクルーゼには勝てない。
だからこそ、今はキラと協力してエターナルを守り、クルーゼを討つ必要があるのだ。
「頼むディアッカ、そしてデュエルのパイロット……」
『イザーク・ジュールだ』
聞き覚えのある。懐かしい声だった。
こんな時でもなければ、“必殺技”の一つでも言ってもらいたいほどだ。
「……そうか、イザーク。アークエンジェルを頼む」
『約束はできん』
そう言いながらも、クロトたちと共にこちらに来た彼だ。
ある程度の状況は協力してくれるのだろう。
敵が連合と言うのならばなおさら……。
「しかし、それで十分だ……ディアッカも、アークエンジェルとあの三人を頼む」
『はいはい、了解っと……』
気怠そうに言うが、少ない時間ながら彼もロマのことをどことなく理解はしているのだろう。
「それとアズラエル理事も」
『ハァッ!? それは聞いてねぇっておっさん!』
「おっさんという歳でもないよ私は……いくぞキラ!」
『はい!』
キラが損傷したフリーダムの全力をもってエターナルの方へと飛ぶ。
そして、ディザスターは緑色のツインアイを輝かせ、それを追い赤き軌跡を残し宇宙を奔る。
ディザスターのコックピットから見る
深く深呼吸をして、どんどんと離れていくフリーダムを見ながら、ロマは口を開いた。
「チェシャ……」
『ナん、ですの?』
時折ノイズが奔る、たどたどしい機械音声が響く。
「すまん」
『……わたくし、アナタの、支援AIでしテ、よ?』
今更、というチェシャの言葉に、ロマは微笑を浮かべた。
『存分ニ、使ってくれやがり、なさいまセ』
「ああ、そうさせてもらおう」
それだけを返し、一瞬だけ目を伏せたロマは、すぐに鋭い眼を開き。
強く、操縦桿を握りしめた。
◇ ◇ ◇
ヤキン・ドゥーエ宙域で、連合艦隊とザフトの戦闘は未だ激しく続いていた。
防衛線に穴を開けようと連合艦隊も必死ではあるが、それをやりながらも生き残ったピースメーカー隊を死守するのに戦力を割いてしまっていることもあり、いかんせん前線の部隊ばかりが消耗、勢いは当初と比べて随分と衰えている。
その連合艦隊を援護するため、三隻同盟のクサナギとエターナル、そして元オーブのMS部隊は前線を往き、とうとうジェネシスを射程距離に捉えた。
当初よりも連合艦隊と物理的距離が近くなってしまったが……邪魔をしなければそれで良いのか、使えるものは使う主義なのか、それともそちらを気にしていられる余裕もないのか……あるいはその全てか……連合艦隊は三隻同盟を撃つでもなく、むしろ足並みをそろえる形で侵攻を続ける。
最前線にいたモビルスーツ部隊が、橋渡し的な役割を果たしていることもあるのだろう。
三隻同盟側としては、むしろやりやすくなったのでありがたいことではあるが……。
「ザフトの敵部隊、増えてんじゃないのかこれ!? 連合も勢いがっ……くそぉ!」
悪態をつくカガリ。
ストライクルージュが加速し、両手に持った9.1メートル対艦刀を振るってジンを切り裂き撃墜。
そんなカガリを討とうとゲイツが接近してくるが、一機のM1アストレイが前に現れた。
『カガリ様、あんまり前にでないでよ!』
「私の方がやれるっ!」
事実だが、護衛役を仰せつかったアストレイ三人娘は気が気でない。
マユラ機がゲイツの振るったビームクローをシールドで凌ぐと、その背後からジュリ機が素早く接近し、ビームサーベルを振るい撃破。
ストライクルージュの傍によるのはアサギ機。
「アイツはいつ戻ってくるんだよっ!」
もちろんロマのことである。
前線を去ってからずいぶん経つが、彼が戻る気配も無ければ、キラやアスラン、ディアッカやムウ、アークエンジェルもまた然りだ。
彼らがいてどうにかなるかはわからないが、ジェネシスの全体がフェイズシフト装甲となっており、並の攻撃程度ではダメージも通らない。
ピースメーカー隊は核攻撃を行おうにも、未だ進路が開いていないこともあり動けないでいる。
『ヤキンに突入してコントロールを潰す!』
ジンを撃破しながら現れた赤い機体、ジャスティス。
「アスラン!?」
『アスランっ、プラントは……』
『あちら側の核部隊はすでに壊滅した。残りはこちらだけだッ! 時間がない、行く!』
ラクスの答えに、アスランは即座に返し、時間が無いと言う風に余計なことも言わずに加速するジャスティス。
そして、それを追うストライクルージュ。
カガリも無意識の内にフットペダルを踏んでいた。
「私も!」
『アスラン、カガリさん!』
「大丈夫だ、任せろ!」
彼を放っておくわけにもいかないと、本能的に思ったということなのだろう。
カガリから言わせれば、彼が強いことは理解していても、やはり“あぶなっかしい”のだ。
『マユラ、ジュリ、私たちも行くわよっ!』
『了解!』
『あーもう、いつまでカガリ様のお守りすればいいのよぉ!』
「これからもよろしくな!」
そう言うカガリに、アストレイを駆る三人娘は困ったような笑みを浮かべ、揃って『はーい』と間延びする返事を返せば、ジャスティスとストライクルージュを追うために加速。
ヤキン・ドゥーエへと向かう五機……その眼前に現れる数機のゲイツとジンだが、カガリたちが攻撃を開始するよりも早く放たれた射撃が、敵モビルスーツを殲滅した。
前に現れて、手信号で『進め』と合図する“悪魔のエンブレム”を抱いたガンバレルダガー。
カガリたちはそれに従い、さらに加速。
悪魔のエンブレムを抱いたモビルスーツ部隊は、カガリたちが抜けた穴を補うように、エターナルとクサナギの周囲に展開した。
ようやくラウが登場
ここからずっとクライマックス感、ラウは最初からクライマックス(中の人感)
とりあえず損傷済みのディザスターとフリーダム……ぅゎ、ぺるぐらんでっょぃ
色々と深掘りしたかったりもっと深く会話させたりしたいとこが多いんですが、最終決戦なので致し方なし
放送時はここらへんでロマ死ぬ説が有力になったよね(存在しない記憶)
では、次回もお楽しみいただければと思います