盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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遥かなる渇き

 

 未だ、収まることを知らない戦場。

 そんな戦火を潜り抜けプロヴィデンスがヤキン・ドゥーエ、そしてジェネシス方面へと向かう。

 クルーゼの思惑通り戦場は混沌を極め、新たなる戦いの狼煙を上げるであろうジェネシスは照射準備を進めていた。

 だが、既に連合艦隊と三隻同盟はジェネシスを射程圏へと捉えている。

 

 戦艦の主砲だろうと寄せ付けないほどの防御力を持つジェネシスではあるが、ピースメーカー隊、つまり核部隊の連続核攻撃を受けては流石に持たないのも確かだ。

 故にクルーゼは、ドラグーンを射出してピースメーカー隊の一部を遠距離から破壊。

 

「ハッ、呆気ない。この程度を落とせないか……“優良種”が聞いて呆れるな」

 

 それに対し、先走って核を放ったピースメーカー隊の一部だったが、それらは呆気なくザフトに迎撃され、友軍も巻き込み吹き飛ぶ。

 ピースメーカー隊の全滅こそ成していないものの、クルーゼはこれ以上の攻撃が必要ないと判断し、ドラグーンを回収し次のターゲットを見つけそちらへと向かう。

 ソレとの距離はそれほどもなく、クルーゼをもってすれば接近は容易なことであった。

 

「君の歌は好きだったがね……」

 

 次の目標、エターナルの砲火がプロヴィデンスに集中するが、クルーゼは特に焦る様子もないまま、それらをドラグーンで迎撃。

 

「だが世界は歌のように美しくはない!」

 

 エターナルのブリッジにビームライフルを放つ。

 

「なに?」

 

 しかし、エターナルの前に出たガンバレルダガーがシールドでそれを弾いた。

 少しばかり意外そうな表情を浮かべるなり、すぐに顔をしかめるクルーゼ。

 まさか連合がエターナルを守る行為に出るとは思いもしなかった故、だったが……その思考はすぐに覆された。

 

「フッ……しかし、貴様が邪魔をしてくれるわけか、ロマッ!」

 

 ガンバレルダガーが悪魔のエンブレム……つまり、かつてのロマのエンブレムを付けていることに笑みを零す。

 クルーゼがロマに妙な因縁を感じるのも仕方ないことだ。

 間接的とはいえ、やはり彼が邪魔をしているようなものなのだから……。

 

『そこの艦っ、下がって! こいつは並ではっ』

 

 ガンバレルダガーがエターナルに公共通信で訴えかけるが、遅い。

 ロマはもちろん、エースパイロットたちでさえ完全回避が難しいそのドラグーンでの波状攻撃。

 回避行動を取ろうと即座に四肢はもがれ、バックパックは破壊される。

 

「フッ、意外と呆気ないものだな」

 

 接近し、ガンバレルダガーに大型ビームサーベルを振るう。

 

『いやぁっ! た、大佐ぁっ!』

 

 プロヴィデンスが離れるなり、ガンバレルダガーが爆散。

 他の悪魔のエンブレムを持ったモビルスーツがプロヴィデンスを目標に定めるなり、クルーゼは顔をしかめる。

 落とされる心配こそないが、その数の敵ともなれば面倒ではあろう。

 ドラグーンを警戒してくるのは当然であり、そのぶんエターナルを落とすのも……。

 

「ッ!」

 

 プロヴィデンスを素早く後ろに下げれば、眼前をビームが奔る。

 

『あなたは……っ!』

「君か……キラ君」

 

 迫りくるフリーダム。

 ドラグーンを展開して弾幕を張りフリーダムを牽制しつつ、連合のモビルスーツ部隊(ゴエーティア隊)へと攻撃をするが、コックピットの直撃には至っていない。

 別段気にするでもなく、クルーゼは迫るフリーダムが振るったビームサーベルをシールドで受け止めた。

 

「厄介な奴だよ! 君は!」

『なにを!?』

「在ってはならない存在だというのに……!」

 

 業と欲に塗れた人間たちが生み出した素晴らしき存在、キラ・ヤマト。

 完璧な器から生まれた完璧な存在、あらゆるコーディネーターを凌駕するスーパーコーディネイター。

 クルーゼたちが求められた完璧の体現。

 

「知れば誰もが望むだろう! 君のようになりたいと! 君のようでありたいと!」

 

 放たれたドラグーンの雨を掻い潜るフリーダム。

 両手に持ったビームサーベルで、それらを弾きながらプロヴィデンスへの接近を試みるが、やはり損傷したフリーダムでは無理がある。

 いくらスーパーコーディネーターだろうと、だ。

 

 だが、キラに勝つこともクルーゼにとってはこの世界への復讐と言っても良いことではある。だからこそ、手を抜くつもりはない。全力で仕留める。

 

『僕は、それでも僕はっ……力だけが僕の全てじゃない!』

「それが誰に解る! なにが解る!?」

 

 フリーダムだけでなく、さらに悪魔のエンブレムを抱くエールストライカーを装備した105ダガーが現れる。

 クルーゼは接近してくるその機体にビームライフルを撃つ。

 それをシールド防御するエールダガーだったが、すぐに小型ドラグーンいくつかがその機体をバラバラにし、そのコックピットを狙う。

 

『大佐っ、すみませんっ、うあぁ!』

 

 爆散するエールダガーの爆煙を振り切り、現れるランチャーダガー。

 

「わからぬさ、誰にも!」

『ぐっ……!』

 

 フリーダムは接近できない。

 ランチャーダガーがプロヴィデンスにアグニを向けるが、小型ドラグーンが腕部を撃ち抜き、さらに接近したプロヴィデンスはアグニの銃身をビームサーベルで両断。

 そしてその胴体に蹴りを撃ちこんで距離を取るなり、さらに小型ドラグーンを放ち、そのコックピットを狙い撃ち―――。

 

『させんよッ!』

 

 小型ドラグーンが、徹甲弾の一撃を受けて破壊された。

 

「また貴様なのだな! ───ロマ!」

 

 クルーゼの視界に入る赤銅色のモビルスーツ。

 

 王冠を頂く悪魔のエンブレム。

 

 そして、不愉快な感覚。

 

『ロマさんっ!?』

『大佐ですかっ!』

 

 現れた赤い悪魔、そしてディザスター。

 左足と左腕を失っているかの機体だが、クルーゼは気も抜かず油断しない。彼だけには、負けるわけにはいかない……理屈はわからないが、そう思う。思わされる。

 この“最高の刻”を前にしてそんな風に感情を揺さぶられることこそ不愉快であるのだが、それを解消すると同時にさらなる歓喜を得る方法が、同時に目の前に存在していた。

 

 ロマを討つ。

 

『ゴエーティア隊は下がれっ、コイツは私とキラで!』

 

 ドラグーンをプラットフォームに戻すと、隣り合うディザスターとフリーダムを前に、クルーゼは不敵に笑みを浮かべた。

 これですべてが終わるのだ。

 いくら叫ぼうと、足掻こうと、今更……。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 応急修理を進めていたアークエンジェルだが、のんびりとしていられないのは既に誰もが理解していたとおりのことだった。

 連合部隊の接近、それもドミニオンの援護に来る予定だった者たちであり、もちろんそちらは攻撃をしかけてきた。

 大破したドミニオンを見れば戦意を喪失する可能性も考えてはいたが、そう思惑通りにもいかず……結果としてアガメムノン級一隻とドレイク級二隻を相手取ることになってしまう。

 

 だが、機体が損傷しているといえどイザークとディアッカがいれば大した相手でもなかった。

 ストライクダガー数機がいたところで、焼け石に水。恙なく殲滅。

 

 戦艦の方も、デュエルとバスターに翻弄されたアガメムノン級をアークエンジェルが主砲で沈めてしまえば、ドレイク級二隻はすぐに後方へと下がる。

 停戦を申し入れるわけでもなく“下がっただけ”なのは気になるが……。

 

「なんだ、なにが目的だ……?」

 

 デュエル・アサルトシュラウドのコックピットで、イザークは訝しげな表情を浮かべた。

 

『おいイザーク、油断すんなよ』

「お前に言われなくてもわかっている! だが、妙じゃないか……?」

『まぁそれには概ね同意……って、あぁ?』

 

 ディアッカの声に、イザークも眉を顰めて周囲を確認───そこで、気づく。

 

『敵……え、これ、モビルアーマー……? せ、接近してきます!』

 

 アークエンジェルのオペレーターからの声に、イザークもそれを改めて認識する。

 人型でも戦闘機型でもない、既存のモビルスーツにもモビルアーマーにも当てはまらないトゲトゲとしたヒトデのようなシルエットをした機体。

 白いそれは上下に四本ずつの“トゲ”のようなものを持っており、それぞれに“砲門”が付属していた。

 

『オイオイ、なんだよありゃ……マキビシか?』

 

 ディアッカの緊張感のなさそうな声に、イザークは戸惑いを振り払いいつもの調子を取り戻す。

 彼の言う“マキビシ”がなにかは知らないが、事情はあったものの趣味で日本舞踊をやっている男が言うことだし、言葉の発音からしてもおそらく“日本的”な何かだということは理解する。

 なにはともあれ、問題はモニターに映る白いヒトデ……。

 

「いや、ウニか?」

『お前も余裕あんねぇ』

「ふん、ナチュ……連合のモビルアーマー如きが」

 

 言い終えるよりも早く、モビルアーマーが動き出した。

 下部の突起の一つに装備された砲塔二門がイザークたちの方を向くなり、ビームを放つ。

 素早くそれを避けるバスターと、シールドで凌ぐデュエル。

 

『ッ、くるぞイザーク!』

「チッ!」

 

 連続して放たれるビーム砲。

 さらに上部の突起四つが本体から離れるなり、白いモビルアーマーの周囲に展開し、不規則に動きながらビームを連射する。

 アークエンジェルは距離を取っているおかげで巻き沿えを食うことはそうないと思いたいが、イザークとディアッカにその火砲を回避しながらそちらを気にする余裕もない。

 先の戦艦三隻とストライクダガー数機の比ではなかった。

 

「えぇい、なんだあのモビルアーマーはっ!」

『連合はへんなのばっかつくるねぇ……って砲撃する余裕も───イザーク!』

「なっ!」

 

 気づけば、モビルアーマーの突起の一つが、デュエルの死角に浮遊している。

 メビウス・ゼロやディザスターを相手にしたことがあるのでそういうものがあるのは理解しているのだが、ただ一機で弾幕を放ちながら有線でもなんでもなく、遠距離からそれが可能なモビルアーマー。

 不意をつかれたと言えばそこまでだが、戦場ではそれは死を意味する。

 

「くっ!」

 

 大型ビーム砲二門、ビームガン二門、ビーム砲一門、計五門の砲塔から放たれるビーム。

 即座に動きだし、それらを回避しようとするが、どうしたって無理なもので……ビームガンの一発がデュエルへの直撃コースへと迫る。

 

 だが───そうはならなかった。

 

「なっ!」

『ギリギリセーフってやつ?』

 

 デュエルの目の前に現れた“フォビドゥン”が、残った左のゲシュマイディッヒ・パンツァーでそれを歪曲させていた。

 予想だにしない援護防御に動揺するイザークではあったが、すぐにフォビドゥンの<レールガン(エクツァーン)>に合わせてビームライフルを撃つ。

 だが、標的であった<(ドラグーン)>はそれをゆうに回避し、モビルアーマーの方まで戻る。

 

『チッ、はずした……』

『ですね。たく、またかよアイツ……って一個トゲ増えてるし』

『おいおい、あれと一回やってんなら対処方法、知ってんの?』

 

 バスター、デュエルに並ぶフォビドゥンとレイダーの二機。

 攻撃の手は一旦止まり、ドラグーンはモビルアーマーの元へと戻ったが、本体が徐々に近づいてくる。

 遠距離攻撃ができるにも関わらず距離をつめるということは、本体側からの攻撃もなるべく効果的なようにということだろう。

 確実に仕留めにくるということだ。

 

 先にクロトとシャニ、そしてキラが交戦したモビルアーマー<ペルグランデ>をさらに改造し、上下三本だったユニットを四本へと増設している。

 三人の脳を直結させ各パイロットが<X軸・Y軸・Z軸>をそれぞれ担当していたペルグランデはそれで完成していたはずだったが……それはあくまで“拠点防衛用”という意味で、だ。

 そこに本体制御を担当するもう一人を合わせて“拠点攻略用”として、ロマも知らぬそのモビルアーマー<インゲンス>は、完成した。

 

 クロトが先の戦闘を思い出しながら、困ったように笑う。

 

『あ~ビームも実弾も効きにくいけど無敵じゃないよ、なんとかなったし』

『ん、さっきは白い奴と一緒に攻撃して……本体を落とした』

 

 本体、つまり分離しなかった下部だろうとイザークは解釈する。

 

「わかりやすくて何よりだな……!」

 

 イザークは皮肉交じりにそう言いながら、ビームライフルを白いモビルアーマーへと向けた。

 

 程なくして、ビームの雨がイザークたちに降り注ぐ。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ドラグーンがビームを照射し、ビームカーテンを編み出す。

 その間を縫うディザスターと、それらを回避しながらプロヴィデンスへとビームライフルを放つフリーダム。

 迫るビームをビームサーベルで切り払いながら、クルーゼは小型ドラグーンを接近しようとするフリーダムを牽制。

 その間に入ることもできないディザスターことロマではあったが、大型ドラグーンをこうして釘付けにしているだけ意味もあるのだろう。

 

 しかし、それで本人が納得するかは別の話でもあるのだが……。

 

「チィッ……!」

『あなた、私の出番ですわよ!』

「これ以上の負担を強いるかっ!?」

『でなければ私の意味はなんですの!?』

 

 ヒステリックな声をあげるチェシャではあるが、いつも以上に必死な声音であることはロマも理解していた。

 機械に“必死”という言葉を使うのが正しいかはわからないが、それでもそう聞こえるしそう感じる。

 ビームカーテンを抜けて、フリーダムと共にプロヴィデンスへと接近。

 

『これが定めさ! 知りながらも突き進んだ道だろう!』

『なにを!』

 

 プロヴィデンスが小型ドラグーンを放つも、ロマはビームクローでそれを弾き、反対方向からくるものをフリーダムがビームサーベルで弾く。

 だがその隙を狙い、本体であるプロヴィデンスがディザスターへとビームライフルの銃口を向けた。

 そのタイミングでロマが回避することはできない。

 

「くっ、ラウ……!」

 

 さらなるドラグーンがロマを狙うからだ。

 

『アイ・ハブ・コントロール!』

「なにっ!?」

 

 ウイングバインダーに格納された四本の腕部<ファウスト・ヌル>が展開されると、ビームクローを出力して放たれたプロヴィデンスのビームライフルを弾いた。

 チェシャのした“勝手な行動”に顔をしかめるロマだが、ここで文句を言うのは筋違いだと理解している。

 だからこそ……。

 

「背後を頼むっ……!」

『前も横もお任せあれ……ですわ!』

 

 だが、その隠し腕に今更驚くプロヴィデンスでもないのか、再度距離をとりつつドラグーンで攻撃を開始。

 全方位から行われる攻撃を、キラとロマの二人は回避していく。

 “本来”ならば、キラ一人で切り抜けるはずではあるが……今フリーダムは損傷していて、ディザスターも然り、二対一といえど優勢とは言い難い。

 

『正義と信じ、わからぬと逃げ! 知らず! 聞かず!』

 

 ロマは迫る攻撃を必死に回避し、弾きながらも、どこか冷静にクルーゼの言葉を聞き、飲み込む。

 

『その果ての終局だ! もはや止める術は無い! そして滅ぶ! 人は、滅ぶべくしてなぁ!』

『そんなことっ……そんな貴方の理屈っ!』

『それが人だよ、キラ君!』

『違うっ、人は……』

 

 プロヴィデンスへと接近したフリーダム。

 大型ビームライフルがフリーダムの頭部を狙うものの、フリーダムが横に僅かに逸れてそれを回避しながらビームサーベルを振るう。

 だが、それもプロヴィデンスのシールドで凌がれた。

 

『なにが違う! 何故違う! この憎しみの目と心と、引き金を引く指しか持たぬ者たちの世界で! なにを信じ、なぜ信じる!』

『それしか知らない貴方がっ!』

『知らぬさ! 所詮人は己が知ることしか知らぬ!』

 

 それ故に、お互い理解しようともしないからこうなってきたのだ。

 三隻同盟の者たちや、ハイータとアズラエルたちのようにお互いが歩み寄る機会さえあれば、“理解(知る)”ことができれば、また違ったのだろう。

 だが、そうはならなかった。ならないまま“こんなところ”までやってきた。

 

『うぅっ』

「キラ、奴との戯言はやめろ……!」

 

 フリーダムを背後から狙う小型ドラグーンを、ディザスターが切り裂く。

 プロヴィデンスのコックピットでラウが忌々しげに顔をしかめるが、それもまた当然だろう。

 キラという憎くもあるが愛しくもある自らと同じく人間の欲から生まれた存在。撃たれるのならまた本望とさえ思う相手との戦いを邪魔する“不快な敵”が現れれもすれば……。

 

 ことここに至って、唯一クルーゼが“特別な感情”を向ける相手。

 

『ロマ……!』

「ラウッ……!」

 

 追撃を避けるためにプロヴィデンスが後ろに下がれば、フリーダムのビームサーベルが空ぶる。

 

「キラッ!」

『ぁ、はい!』

 

 だが、キラとロマの行動は早かった。

 素早くお互いの機体を反対に動かし、二機を180度回転させ、フリーダムがプロヴィデンスに背を向け、ディザスターが向き合う形になる。

 そのまま加速した左腕と左脚を失ったディザスターだが、右腕の徹甲弾を連射しながらプロヴィデンスへと接近していく。

 

『チィッ、邪魔ばかりをしてくれる男だよ!』

「都合の良い事実だけを羅列してキラを惑わしてくれるな!」

『幸福に生まれた者にわからぬことさ!』

「否定はせんさ……! だが、決して楽な道ばかりを選んできたつもりもないッ!」

 

 右手のビームクローを展開し切りかかるも、変わらずシールドで凌がれる。

 小型ドラグーンがディザスターの周囲に展開し、その銃口を向けた。

 

 しかし……。

 

『わタクし、ガ、イマ、してよ、あナタ!』

「えぇい!」

 

 射出された四つのファウスト・ヌルがドラグーンへと真っ直ぐ伸びるが、それが素直に当たるわけもない。

 素早く回避した小型ドラグーンを追うファウスト・ヌルではあったが、大型ドラグーンがビームカーテンを展開し、先と同じく有線ワイヤーが焼き切られる。

 

 フリーダムが接近しようとするがビームカーテンに阻まれており、小型ドラグーンは既にディザスターを狙っていた。

 ロマは素早くビームクローを納めると、そのままプロヴィデンスにディザスターを使って体当たりする。

 そしてプロヴィデンスごと加速し、小型ドラグーンからのビームを回避。

 

「中途半端に人類の滅亡を望んでいるからにッ!」

『っ!』

「ことここに至っているからそのようにッ! 貴様が望むのは、滅亡だけではあるまいッ!」

 

 ロマは識っている。

 ラウ・ル・クルーゼが世界の行く末、滅亡と存続の“どちらも望んでいる”ことに……。

 コインだけを投げ、賽を振り……最後は人智の及ばぬ“運命”に世界を委ねた男の心中を……完全ではないにしろ、識っているのだ。

 

『貴様になにがわかる!』

「わかることしかわからんよ!」

 

 プロヴィデンスをデブリにおしつければ、衝撃にクルーゼが呻くが、ロマもまた然り。

 ドラグーンはフリーダムを近寄らせまいとそちらの牽制に割いており、まだロマには到達しない。

 プロヴィデンスの大型ビームライフルでは組み合ったまま使えず、左腕はディザスターの右腕に阻まれて攻撃に使えない。

 故に組み合ったまま、プロヴィデンスが頭部と肩部の機関砲を放ち、ディザスターも胸部機関砲で応戦する。

 

 PS装甲により機体ダメージこそないが、衝撃はコックピットを揺らす。

 

「本当に滅亡だけを望んでいるのであればっ、なぜ自らの二次コピーを引き取るような真似をする!」

『なに!?』

「貴様に理解を示す友人もいるだろうッ!」

『なんなのだ! 貴様はッ!』

 

 転じて生まれし者。未来を知る者。

 そして、因果律を歪める者……荒唐無稽な話だ。

 

「人の欲に翻弄され生み出された者。だが、同情をするつもりはない! 貴様は真っ当に幸福な人生を謳歌するだけのものを手に入れていただろうに!」

『だが私の身体は朽ち果てていくのだよ! それが運命だ!』

「だからそれに絶望してお前は……!」

 

 だが、それにだけではない。それもまた一部に過ぎない。

 

『土足で人に踏み入る行為をしてくれる。だから貴様を殺さねばと感じていたのか……? 私はッ!』

 

 ロマの知るはずの無い言葉の数々に、声を荒げるクルーゼ。

 プロヴィデンスとディザスターが同時に右脚部を振るい、蹴りを放つ。

 吹き飛ぶディザスターだが、その背後に小型ドラグーンが一基。

 プロヴィデンスのコックピットで、笑みを浮かべるでもないクルーゼ。ただ、真っ当に目の前の男の死を見やる。

 

 だが───それは成されることはない。

 

『あナたッ!』

「チェシャッ!?」

 

 その小型ドラグーンが“ワイヤーの接続されていない”ファウスト・ヌルに破壊された。

 

『なんだと!?』

「チェシャ……お前っ」

『つケ、な、サイ、な……けッチャく、を……!』

 

 コックピット内を浮遊するヘルメットを掴むと、ロマはそれを装着する。

 赤と青の瞳で、プロヴィデンスを見やるロマの周囲に、ワイヤーの接続されていない四基のファウスト・ヌルが浮遊していた。

 姉妹機であるコラプスが積んでいるのに、ディザスターが積んでいない道理もない。

 それは“分離式統合制御高速機動兵装群ネットワークシステムドラグーン”である。

 

『ロマさんっ!』

「キラ……!」

 

 並び立つのは手足が欠損するフリーダムとディザスター。

 迎え撃つ五体満足のプロヴィデンス。

 

『もはや止める術はない!』

 

 高笑いするクルーゼ。

 

『そんなこと!』

 

「あるんだよ、それが……」

 

 戦うのは……クルーゼを止めるのは、別に世界のためでもなんでもない。

 ロマ自身、そんな大層な理想を抱える器ではないと理解している故に……。

 

 ただ、目的はいつだって“ソレ”である。

 

 今ここにはいない。だが、だからこその帰るべき場所。

 

 ちっぽけな、守りたい世界のためだ。

 

 

 







徐々にラストとなってきました
アークエンジェル側もなんやかんやで、ロマ側もなんやかんやですね
言葉の防御貫通攻撃するロマとキレるラウ。そりゃキレる

ラウ周りのことはあまり安っぽい言葉で済ましたくないので色々と悩みますね
なんとか更新ペースはそれほど空かないようにしたいとこです

キラきゅんの影が薄くなってますが、ちゃんと出番はあります

Gジェネなら別マップで三機戦わされそう()

では、次回もお楽しみいただければです
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