盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
デブリの浮く宙域にて、連合の巨大モビルアーマー<インゲンス>と戦闘を続けるクロト、オルガ、シャニ、そしてディアッカとイザークの五人。
先ほどよりも四方からの弾幕は薄くなったものの、その分本体からの弾幕は激しさを増した様に感じられる。
オルガは“ストライクの胴体”を背負ったカラミティにて、左右に揺れてどうにかビームの雨を回避していくが、他の四機も回避を強いられている故に、攻撃のタイミングを失っていた。
「チィ、こいつ……!」
『えぇい、あっちも必死ってわけね……くそ、飛んでくるのは一つになったってのに!』
γ-グリフェプタンを追加で飲んでから、それほど時間は経っていない。
禁断症状の心配はそれほどないことはオルガも、シャニもクロトも理解しているのだが、そうなると長期戦になった時の問題はそちらではない。
モビルスーツの稼働時間だ。
バッテリー残量を確認しても、このままこの状況が続けば心許ない。
『エネルギー切れがないってのは羨ましいねぇ!』
『言ってる場合か!』
火力から見てインゲンスがニュートロンジャマー・キャンセラーを積んでいるのは誰の目から見ても明らかだった。
エネルギー残量を完全に無視するような怒涛の攻撃。
だからこそ、早々に決着をつける必要がある。
だが、状況が変わるのを理解して、クロトはレイダーを前に出す。
『一か八かやるっきゃないってわけか!』
『ハァン、焦んないでよクロト』
『わかってます、よォ!』
ビームの雨の中、ドラグーンはやはりオルガのアグニを警戒してか、オルガを狙いがちである。
だからこそ、クロトは本体に向かって加速した。
つまり本体から放たれる火力はクロトに集中するわけだが……。
『えぇい、こいつでぇ!』
『無茶すんじゃねぇよ嬢ちゃん!』
デュエルがビームライフル、肩部ミサイル、<
それらがレイダーを追うように、インゲンス本体へと放たれるも、下に装備された四本のユニットを一斉にレイダーに向ける形に横になるインゲンス。
四つのユニットが蕾のようにレイダーの方を向き、ビームを放つ。
ドラグーンと違って大型ビーム砲が一門減ってはいるが、四門が四つ、計十六門のビームがレイダーへと襲い掛かる。
『マジかよぉ!』
急停止と共に、後退。
だが迫るビームすべてを避け切れずに、残った左足を失う。
『くっ!』
「クロトぉ!」
オルガの叫び、レイダーへと次いで迫るビームの雨。
「ちぃっ……うざい!」
レイダーの正面へと出たフォビドゥンが残った片方のゲシュマイディッヒ・パンツァーでそのビームを歪曲させる。
『シャニ!?』
「うぅっ……!」
だが、多数のビームすべてを歪曲させるだけその装甲は大きくもない。
フォビドゥンの両脚部が破壊され、さらに背部ユニットにビームが掠り損傷していく。
しかし、直後フォビドゥンへのビームの雨が弱まる。
「あ?」
あと少しで撃破できるのに……なぜ? 答えは簡単なことだ。
他の攻撃方法で確実に仕留めきるため、だろう。
『シャニぃ!』
突如、自身の方にインゲンス本体からの火閃が集中し、オルガが叫ぶ。
勿論助けろという意味ではなく、自分を攻撃していた“ソレ”が離れたのを理解したからだ。
その瞬間、シャニがモニターにて確認するのは自身を狙うドラグーン。
今のフォビドゥンは既に動けやしない。
「チッ……!」
放たれたビーム砲。
それは真っ直ぐに伸び、フォビドゥンを貫───かない。
『えぇい!』
「なっ!?」
その射撃を、デュエルがシールドで代わりに受けたからだ。
なんとか一撃を耐え凌ぐことができたが、デュエルは使い物にならなくなった盾を捨て、ビームライフルをシヴァを放ちながらそのドラグーンへと一直線に加速する。
デュエルのコックピットで、イザークは眼前のドラグーンが大型ビーム砲を放とうとしているのを理解した。
だが、構わない。
「突っ込む!」
『イザーク!』
ディアッカの叫び。
それでも、イザークは真っ直ぐにドラグーンへと突き進む。
瞬間、放たれたビーム。
そして―――爆発。
『なっ、正気かよアイツ!?』
驚愕するクロトの声に、応える者がいる。
「無論、正気だァ!」
そう、イザークだ。
爆煙の中から現れるのは<
そのまま背中に装備された二本のビームサーベルを抜き放ち、ドラグーンに肉薄するなり素早くその砲口にサーベルを正確無比に突き刺した。
すぐに動き出そうとするドラグーン。
『逃がすかよぉ!』
放たれるのはバスターの二本の武器が連結された<対装甲散弾砲>。
それがドラグーンの動きを止める。
イザークはそれに対して僅かに動揺するが、すぐに次のトリガーを引いた。
「バァァルカン!」
手放したビームサーベルに放たれた<
そして爆発したビームサーベルは内部からドラグーンを破壊し、行動不能へと追い込む。
「次ィ!」
それに気を緩めるでもなく、イザークは次にインゲンス本体へと向くが、既に手筈は整った。
相手が“ソレ”に気を向けられるほど余裕がないのは先ほどからの戦闘をもって知っている。
だからこそ───気づかない。
「当てろよ足つきぃ!」
瞬間───ローエングリンが放たれた。
陽電子砲がペルグランデのコアユニットへと直撃。
中央のコアユニットに内蔵された核エンジンとニュートロンジャマー・キャンセラーが破壊されれば、もちろんそこは核爆発を起こし、眩い光と共に、装備されていた四つの“有人ユニット”も諸共に消滅する。
それを前に、五機のガンダムのコックピットで、パイロットたちはようやく少しばかり息を吐いた。
相変わらず綺麗な光ではあるのだが、それを言わない程度の礼儀、シャニとて持ち合わせている。
だからこそ、別のことを考えようとするが、既に頭は“別のソレ”で一杯であった。
おそらく、それはクロトとオルガも然り……。
『終わりましたねぇ』
『気ぃ抜くんじゃねぇぞ……こっから、迎えに行かなきゃなんねぇしな』
『だね……おにいさん』
クロト、オルガ、シャニは同時に自らの帰る場所、帰りたい場所を思い起こす。
だが、やはりと言うべきか、そこは“場所”であって“場所”でないのだろう。
帰りたい場所は、いつだって“彼”の傍なのだから……
◇ ◇ ◇
赤いツインアイを輝かせ、ビームのカーテンをすり抜ける“赤い閃光”。
両足も無く、両腕すらないように見えるそのモビルスーツ“ディザスター”のコックピットで、ロマ・K・バエルは異常に血走った赤と青の瞳を見開きながら、ハッキリと灰色の“ガンダム”を見やる
呼吸は荒く、冷や汗が額を伝うが、それに構っていられる余裕もない。さらに無茶な機動により、口の端からは血が伝うが、異常に分泌されたアドレナリンは、その痛みを消し去る。
いや、そもそもこの戦いに参戦する前に、手持ちの薬物全てを摂取した故、なのだろう。
「ラウッ……!」
『ロマさんっ!』
編み出されるビームのカーテンをすり抜けつつ、ロマを案ずる声を出すキラだが、敵対するプロヴィデンス本体の左腕、複合盾から放ったビーム砲を右肩に受ける。
右肩の装甲が吹き飛び、さらにドラグーンがキラを狙うがコックピットへのそれをギリギリで回避。
しかし、左腕が上腕からもっていかれた。
『くっ!』
「キラっ!」
『あれは僕がっ!』
大型ドラグーン二基と小型ドラグーンが二基……すでにそれだけの戦力しかないラウ・ル・クルーゼだが、彼自身の能力の高さは、ロマとて理解している。
だからこそ、ドラグーンがキラの方を向いているとしても油断などしない。
ディザスターの両腕をコントロールしながら、ロマは全力でクルーゼを追い込んでいく。
「ラウ……!」
『フッ、ハハハハッ! だが、貴様には負けてはやらんよロマ!』
「っ……流石の立ち回りだなッ、“
『これも“
ディザスターの射出された右腕からの徹甲弾を受け、怯むプロヴィデンス。
さらに射出された左腕からビームが放たれるも、そちらはビームサーベルで弾いた。
左右の腕がさらにビームクローを展開しながらプロヴィデンスへと迫るが、それらを回避しながら有線ワイヤーを切断しようとするも……ロマもそれをさせまいと腕をコントロールする。
だが、それによりプロヴィデンスの接近を少しずつだが許してしまう。
「ザフトでも指折りのエースになり、その立場に着いた貴様だからできることかっ……ナチュラルでありながらな!」
『奴の力だと言った! 忌わしきっ、あの男のォッ!』
接近したプロヴィデンスが大型ビームサーベルを振るうも、ロマは後ろに下がりギリギリで回避。
プロヴィデンスを前に、だが背後から危険を感じたロマが機体を前へと傾けたが、既に背後へと回り込んでいたドラグーンからの攻撃により右側のテールスラスターとウイングバインダーが破壊された。
さらに距離を詰めるプロヴィデンスだが、突如停止。
向かって上から放たれたバラエーナプラズマ集束ビームを回避。
『ロマさんはやらせないっ!』
『キラくんっ! 君もまた人の業に生まれた存在、だが……成功例だからこそ、そうしているのだろう! 君の影で生まれた“失敗作”は、君をどう思っているかな!?』
『なっ……!』
「惑わされてくれるな、キラ……!」
ことここに至って、“
二人の会話を断ち切る様に、右腕を回収したディザスターがビームクローを展開してプロヴィデンスへと接近しようとするが、ロマもプロヴィデンスを目前に急停止。
それにより眼前に展開されるビームカーテンでの被弾を回避。
そして大きく旋回しながらプロヴィデンスに徹甲弾と胸部機関砲を連射するが、ディザスターに合わせるように機体を下げて避けるクルーゼ。
「だが、貴様は自らと“同じ存在”に、その憎しみを背負わせようとはしなかった……それもまた事実だろうにっ!」
『とことん、気味の悪い男だな、貴様はッ!』
「着せてもらおうか、歯に衣ぐらいはッ!」
右腕のビームクローを展開しながら射出するも、クルーゼはそれを回避。
だが背後から迫る左腕に気づき、プロヴィデンスの身体を僅かに倒してそれもまた回避し、同時に左腕の大型ビームサーベルを振るい、ディザスターの左前腕を破壊。
顔を顰めるロマが、コックピット内で機体のバッテリーが危ういことに気づく。
もう長い戦闘などしていられないだろう。
「掴みとってきたはずだ! 貴様はッ……! その腕で、自分の力でッ! 貴様の……未来をッ!」
『だが、既にないものだ! そしてそれはッ!』
接近するプロヴィデンスが大型ビームサーベルを振るう。
コックピットへの直撃は回避するディザスターだったが、その左腕と背部のウイングバインダー、そしてテールスラスターをまとめて切り裂かれる。
さらに次いで蹴りを受けて吹き飛ぶディザスター。
『遺伝子の力だと言ったァ!』
クルーゼが二つの大型ドラグーンをロマへと飛ばすが、フリーダムが異常な反応速度でその二つをラケルタビームサーベル・アンビデクストラス・ハルバードモードで斬り裂く。
だが、即座に小型ドラグーン二つをフリーダムへと向けるが、ディザスターから放たれた徹甲弾がドラグーンを狙撃、破壊こそされないが、それは射撃の向きを変えるのには十分なものであった。
傾いたドラグーンがフリーダムの頭部を破壊する。
「ラウッ!」
『ロマだとっ!?』
まだ動けることに驚愕しながらも、接近するディザスターへと左腕のビーム砲を放ちつつ後退。
直線での機動性ではディザスターはプロヴィデンスを凌駕する。
損傷しているディザスターではあるが、それはプロヴィデンスも同じことだ。
「遺伝子の力……!? アル・ダ・フラガの力……!? ふざけるなッ!」
放たれたビーム砲を紙一重で回避しつつ、そのビームの隙間を縫ってプロヴィデンスへと接近する。
「それは、お前の力だァッ!」
放たれた右腕が、ビームクローを展開しプロヴィデンスの左腕を貫き奪う。
だが、さらに接近をしようとするも、その直前でバッテリーは底を尽き、ビームクローが消失する。
故にロマは、伸ばした右腕部のワイヤーでプロヴィデンスを―――拘束した。
ようやくプロヴィデンスを掴まえたディザスター。
逆にロマに捉まったクルーゼだったが、驚愕の方向はそちらではなかった。
『なにっ!?』
「お前が努力で勝ち取ったものだっ! お前がこの世界で生きようとして手に入れたもので、力だッ! 遺伝子の力!? そんなもんでたまるかっ! 世界の全てが“アル・ダ・フラガの遺伝子のおかげ”だなんだとほざこうが、オレがんなもん全部否定してやるっ! 全部がお前がした努力だッ! 掴み取ったものだっ!」
ロマ自身、なぜ自分でそんなことを言っているか理解していないのかもしれない。
薬物により蒸発した理性が、想ったことを考えるよりも先に口から吐き出させている。
しかし、それはやはり本音であり、ロマが“
その中には、もちろん
だが、それだけではないだろう。
クルーゼの背景を知り、さらにキラの背景も知り、コーディネイターが、ナチュラルがなんなのか理解し、だからこそ……キラが努力したからこそことを成しえたように、遺伝子の力だけで簡単にそれができるなど、あり得ないと理解しているからこそだ。
“
「否定させやしねぇッ! こんなクソッタレな世界でもっ……!」
『理解しているならばなぜ世界を肯定する!? キラ君っ! ロマッ!』
「それでもっ!」
ワイヤーで拘束されるプロヴィデンスにディザスターはそのまま体でぶつかる。
『それでもっ!』
◇ ◇ ◇
ジェネシスの内部の中枢部に、真紅色のモビルスーツ、ジャスティスが突入する。
その背中にファトゥム-00を背負っていないのは、途中で聞き分けのない“じゃじゃ馬娘”を止めるために置いてきた故なのだが……。
アスラン自身、無意識かもしれないが、やはりここで“終わらせる”以外の方法を、自らで無くしてしまいたかったのだろう。
母はかつての血のバレンタインで死に、父も先ほどヤキン・ドゥーエの司令部にて死亡を確認。
ただ一人残されて、自身の戦いの意味も、これからの生きる意味も見失い……。
「ッ……!」
だからこそカガリに『内部でジャスティスを核爆発させる』と宣言した。
手元を操作し、キーパッドを出現させ、自爆コードを入力───。
『アスラン!』
「っ……カガリ!?」
振り切ってきたはずだ。
ジャスティスの到着がもう少し早ければ、核爆発に彼女も巻き込まれていたかもしれない。
なのになぜ戻ってきたのか、叱咤の言葉を口にしようとするが……。
『ダメだ! キラを頼まれただろ、アイツにっ!』
カガリのそんな言葉に、アスランは出撃前のロマとの会話を思い出す。
確かに、アスランは彼に“
それにアスラン自身の無事も……。
ならば、まだあるはずだ……自分にはやることが。やらなければならないことが。
そしてカガリは、自らを叱咤した兄のような男の言葉を思い出す。
あの日のことは忘れていないし、これからも忘れないだろう……だからこそ、目の前の“道”を選ぼうとするアスランに叫ぶのだ。
『逃げるなっ! 生きる方が、戦いだッ!』
◇ ◇ ◇
フリーダムが、眩い光を纏い飛ぶ。
右腕に連結させたラケルタビームサーベルを持ち……真っ直ぐに。
コックピットのキラの見るモニターに映るのは、プロヴィデンスをワイヤーで拘束しているディザスター。
どう攻撃しても、ディザスターへの直撃は免れないだろう。
だが、大丈夫だという確信が持てた。
わからないが、ロマに言われたような気がしたのだ───そのまま往けと。
『それでもっ!』
ロマの声が聞こえた。
思い出すのは、彼と初めて出会った日。否、初めて対話した日。
ここは残酷な世界で、残酷な現実がある。
だが、それでも───。
「それでもっ!」
どうしてか、“
クルーゼの言う通り、それは人の“業”と“欲”による結果で……自らの意思のもとで、そこへと辿りついた。
だが、まだ“結末”ではない。
だからこそ、他の誰でもない。キラには、それがあった。
故にキラの、キラ自身の“業と欲”に従い、飛ぶのだ。
「守りたい世界があるんだ!」
ロマとキラ、二人の言葉がそのまま重なる。
そして、ビームの刃はディザスターの脇を抜け、プロヴィデンスの腹部を───貫く。
「ッ……!」
『キラ、よくやってくれた……ありがとう』
フリーダムがビームサーベルから手を離してディザスターを掴もうとするが、その手は空を切る。
そのコックピットでハッとするキラだったが、ディザスターの“有線ワイヤーから外れた”右手がフリーダムを押しのけていたのだ。
そのまま勢いよくフリーダムはディザスターとプロヴィデンスの二機から離されていく。
逆にバーニアを吹かそうとするが、キラは視線の先のディザスターに……笑みを浮かべるロマを幻視した。
「ロマさぁぁんッ!!」
嗚咽交じりに叫ぶキラだが、次の瞬間───ジェネシスは第三射のためのレーザーをミラーブロックに放つ。
しかし、そのレーザーはミラーブロックに辿りつく前にプロヴィデンスを直撃し、プロヴィデンスが核爆発を起こし、それによりミラーブロックが核の光によって破壊される。
さらにその瞬間、内部でジャスティスは核動力を暴走させ自爆、こちらも同様に核爆発。
それにより、皮肉にもザフトが開発した核の力がジェネシスを破壊したのだった。
◇ ◇ ◇
ジェネシス自身の破滅の光。
エターナル、クサナギと合流したアークエンジェルのブリッジにて、ムルタ・アズラエルはそれを見た。
破壊されたジェネシス、それは戦闘の終わりの合図と言って良いと彼女は確信し、ゆっくりと全身の力を抜き無重力化の流れに身を任せる。
公共通信で響くのは、プラント最高評議会議員アイリーン・カナーバの戦闘停止を求める声だ。
それも───停戦協議に向け、動いているとの報告もついて。
「ロマっ……!」
そうなろうとも、アズラエルの戦いは終わらないだろう。
政治的なことであるならばなおさら、さらに彼女には山ほど戦いが待っているのだ。
だが、そんなことは、今のアズラエルにとってはどうでもいいことだ。
彼が生きてさえいればいい。
対等であり最高であり最愛の、ただ一人のロマ。
瞳に浮かんだ涙を零さぬように目を閉じるが、それ故に零れた涙が一粒───宙を漂う。
◇ ◇ ◇
「ロマさんっ……どうして……!」
右手以外の全てを失ったフリーダム。
最後に“ドラグーン”を使ってキラを引き離したロマのおかげか、機体はその色を失ってもおらず、動くことも未だ可能であった。
だが、それでも動くことなく浮遊するフリーダム。
コックピットを開いて、ハッチの上に立つ。
「なんだろう、光……あ、れは……すと、らいく……」
ストライクルージュが、近づいていた。
コックピットハッチを開いたまま、アスランを乗せてカガリが操縦して、そのままフリーダムの隣へとやってくる。
戦闘停止の声が聞こえ、ようやく全てが終わりに近づいたからか、アスランもカガリもその瞳から涙を零していて……。
「キラ?」
ストライクルージュから降りたカガリとアスランが、フリーダムのハッチに掴まる。
だがキラは、その場で浮遊したまま、暗い顔でその瞳に涙を浮かべた。
「……ロマ、さんがっ」
「大佐がっ!?」
「っ、アイツが! どうしたんだ!?」
キラへと飛び付くカガリと、それを受け止めるキラ。
だが、そんな彼女の背後にキラは“ソレ”を見た。
見間違うはずもない、対面して、隣に立って、何度も視たその姿を……。
「あっ……あぁっ……」
言葉にならない声を発しながら、キラは瞳からポロポロと涙を溢れさせる。
アスランとカガリはそれに気づいてキラの視線の先を辿り……それに気づいた。
そのほとんどが焦げにより黒くなっているが、その四肢を失った機体はところどころに赤銅色の装甲を残している。
その色を見間違うはずもなく、その機体を見間違うはずもない。
彼は───そこにいるのだ。
「大佐……!」
「ば、ばかあにきぃ……!」
涙声で、彼を呼ぶ。
「ッ……ロマさんッ!」
◇ ◇ ◇
四肢を失ったディザスターのコックピット。
真っ暗なそこで、ロマ・K・バエルは静かに弱々しいが、確かに笑みを浮かべる。
全身に激痛が奔り力は入らず、頭の中からも強い痛みが奔っているが、それでも“ここに来ることができた”という喜びは、安堵感はそれらを上回っていた。
因果律を乱しながらも、この結末へと導くに至った。
これで終わりではないが、それでも今のロマにははっきりとそれを判別するだけの余裕はない。
なんとか動く右手を上げるが、それ以上は動きそうもなかった。
薬物で散々に脳と身体を酷使した故の弊害だが、やはりそれも必要な犠牲だとロマは納得している。
嗅覚も一時的か永遠か……失っているようで匂いを感じない。
だがそれも、また理解していたことだ。
「あり、がと、う……」
それは生きている者への言葉か、散って逝った者への言葉か……否、その両方なのだろう。
「ハイータ……チェシャ……」
だが、口から零れる名は、自らのために散って逝った者たちへの……。
「ラウ……」
その言葉を発すと同時に、彼の視線の先、ハッチが音を立ててゆっくりと開かれていく。
真っ暗なコックピットに光が差し込む。
完璧ではない、彼の望んだ未来。
完璧でない彼女たちの生きるべき、生きていく世界。
そして……。
───“オレたちの世界”。
ようやく終わりました
と言っても、次回はエピローグのようなものが入ります
三人娘やアズにゃんが書けてないので……このままじゃキラがヒロインみたいになるので
ついでにロマが生還(?)した経緯とかも軽く
とりあえずおかしなところはないはずで、ないと信じて
次回、エピローグ……お楽しみいただければと思います