盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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震える瞳

 

 アーモリーワンの公道を、ジープが走る。

 その運転席にははウィレーム・マクスウェル、そして助手席には先ほど彼と出会った少女、故あって同行することになったマユ・アスカ。

 ピンク色の“最新型の携帯電話”がチラリとポケットから覗いているが、気にしないようにしながらウィルはジープを走らせながら彼女の話に耳を傾ける。

 彼女について、いやその“兄”について気にならないわけでもないウィルではあったが、急に言及などできるはずがないのだが……幸運なことに、彼女の口から自然とその“兄”についての話は出てきた。

 

「それで、おにっ……うちの兄、凄い心配症で、私がいないとホントダメって感じなんです!」

「フッ、良いお兄さんだと思うがね」

 

 風にその金色の髪をなびかせながら、ウィルはサングラスの奥の瞳を細めて笑みを浮かべる。

 彼には彼女が言葉にする“兄への愚痴”が、あまりにも“微笑ましく感じた”からだろう。

 そう感じるだけの理由と、そう感じるだけの“記憶”が彼にはあるからだ。

 

「そんなことないですよっ、過保護だしっ!」

 

 頬を膨らまして不満そうにするマユを横目で見て、ウィルは再び口から笑みを零す。

 

「で、このまま工廠で構わないのか? 君の話を聞く限り、その兄は新造艦なのだろう?」

 

 ウィルの言葉に、マユは素直に頷いた。

 

「はい、少しその……工廠の方ですることがあるので」

「……そうか」

 

 それについて、ウィルはなにもわからないが素直に頷く以外の選択肢もない。

 目的地が同じというぐらいで、彼は彼女とそれについて聞くほどの信頼関係を築いていないと考えているからだ。

 だから、マユが言い辛そうにしているのを察してウィルはなにも言わずに頷くのみ。

 

「人には色々とあるものだ。私にも君にも……」

 

 だが、マユは少し眉を顰めているあたり、少しは聞いてほしかったのかもしれない。

 どうやら彼は女心がわかるタイプでもないのだろう。

 

 一方のマユ・アスカ自身も、自分について少し驚いていた。

 なぜか目の前の相手をやけに信用している自分がいるし、かなり“デリケートな問題”である工廠への用についても、少しは食いついてくれても良いんじゃないかと、不満に思う。

 初めて会ったはずなのだが、街でぶつかった時、やけに懐かしく感じたのも、妙だ。

 

「むぅ、なんなんだろ……」

 

 ひとりごちて、マユは視線をウィルの逆側に向けた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 カガリ・ユラ・アスハは、ザフト兵に囲まれて、アレックスを従えながら、黒い長髪の男と共に“工廠”を歩いていた。

 その男こそが、現プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルである。

 此度、わざわざカガリが彼に極秘会談を申し込んだ理由とは、『彼のオーブ戦の折に流出したオーブの技術と人的資源、その軍事利用の即時停止』だ。

 このことに関してオーブはザフトに再三再四に渡り申し入れているのだが、それについての返答が一切ない。

 それに痺れを切らしたカガリは、火急的すみやかにこの問題に決着をつけるため、現議長ギルバート・デュランダルに直談判をしに、わざわざお忍びでこちらまで足を運んだわけだ。

 

 だが、彼はのらりくらりと問題の答えについてを躱しながら、カガリたちを連れてこの工廠へとやってきた。

 ジンやシグーはもちろん、新型機も並んでいる。

 

 デュランダルは立ち止まり、カガリと視線を交わす。

 

「姫、なにを怖がってらっしゃるのです?」

「っ、その姫というのはやめていただきたい」

 

 すでに話は、オーブの理念、それについてになっている。

 デュランダルもオーブの理念は素晴らしいと感じているからこそ、だがそれには力が必要だと……そしてそれを一番知っているのはカガリたちであると……故に、オーブもまた軍備を整えているのではないかと。

 確かにその通りだった。それを否定はできない。

 

「失礼しましたアスハ代表」

 

 素直に謝罪を挟むが、デュランダルは言葉を続ける。

 

「しかし、その恐れの理由は……大西洋連邦の、ブルーコスモスの圧力ですか?  オーブが我々に条約違反の軍事供与をしていると?」

 

 大西洋連邦からの圧力は確かにある。

 実際にオーブの技術はザフトに渡っていて、ザフトの兵器にそれが転用されているのも事実。

 秘密裏に他国と繋がっているという意味であれば、オーブは前科もある。その相手は大西洋連邦ではあったが……。

 

「だが、そんな事実は無論ない。彼のオーブ防衛戦の折、難民となったオーブの同胞達を我等が温かく迎え入れたことはありましたが……その彼らが、此処で暮らしていくためにその持てる技術を活かそうとするのは仕方のないことではありませんか?」

 

 それもまた事実だ。だが、ことはそう簡単なものでもない。

 人情的なことで言えば、オーブの難民を受け入れてくれたプラントに感謝の気持ちはもちろんあるし、彼らがプラントで働いて行けるために持てる力を使うのは悪くは無いだろう。

 だが、兵器のための技術となると話は変わってくる。

 

「強すぎる力は、また争いを呼ぶっ!」

 

 その強い言葉に、デュランダルは首を横に振った。

 

「いいえ姫、争いがなくならぬから、力が必要なのです」

 

 瞬間―――警報が鳴り響く。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 警報が鳴り響く工廠内へと入っていたジープ。

 

 マユの目的地へと向かっている最中だったためか、だいぶ内部へと入ってきてしまっているし、四方八方はハンガーに囲まれている。

 運転席のウィルが顔をしかめ、隣のマユが混乱するように左右を見回す。

 辺りの整備員たちが焦った様子で走り出している。

 

「な、なにっ!? 警報!?」

「タイミングは“バッチリ(最悪)”だな……」

 

 瞬間、轟音が響き、大地が揺れることにより、周囲はあわつきマユは動揺。

 ウィルは久しく感じていなかった肌の痺れる“戦いの感覚”に、音のした方へと視線を向けつつすぐに動けるように足を座席に上げた。

 続いて、マユもウィルの見ている方を見るが、ハンガーの向こうに黒煙が上がっているのを視認する。

 

 次いで、近くのガレージを貫く緑色の閃光。

 

「マユっ!」

「え、きゃぁっ!?」

 

 ウィルは助手席のマユを抱えて勢いよくジープから飛び降りると、そのまま近場のコンテナの影に隠れる。

 次の瞬間、ハンガーが爆発しその爆風があたりを襲うが、ウィルとマユは背にしたコンテナのおかげでその被害を免れた。

 地面が揺れる感覚は未だ止まない、それどころか音もまた激しくなっていく。

 

「な、なんでっ……こんなっ、ま、また戦争っ!?」

「大丈夫だ。私に任せておけ」

「うぃれーむ、さんっ……」

 

 狼狽え怯えるマユを抱く腕に、そっと力をこめつつ顔をしかめて状況を再度確認する。

 自分一人であれば話は早かったが、今はそうではなく、そうもいかないのは確かで……コンテナからそっと顔をのぞかせるが、乗ってきたジープは横転しているし、あれではもう使い物にならないだろう。

 ハンガーの向こう、道の先に黒い“ガンダム”が見えた。

 それがザフトの新型モビルスーツ、セカンドステージシリーズの一機<ガイア>であると、ウィルは識っている。

 

 ふと、マユがウィルの腕を強く握った。

 

「ウィレームさんっ……」

「なに?」

「大丈夫、です……!」

 

 しっかりと自身の足で立ったマユが、“誰かを思い出す”強い瞳で、頷く。

 それを見て、フッと口元を緩めたウィルが立ち上がってその頭を撫でれば、くすぐったそうにするマユだが、すぐに頷いて……ウィルの手を取る。

 

「ん?」

「こっち!」

 

 マユに手を引かれるままに、コンテナの影から飛びだすなり、すぐ近くのハンガーへと侵入。

 明かりの点いていないハンガー内だが、マユが歩き慣れた様子でウィルの手を引いて行ける理由は一つ……そもそもここが、彼女の目的地であったのだ。

 そして立ち止まったマユの目の前、ウィルの目が徐々に暗闇に慣れ、それを認識するまでに時間は掛からなかった。

 

「なっ、これは……!」

「ザフトの新型機、ザクです……この子はちょっと特殊なんですけど」

 

 暗く影しか認識できないものの、確かにそれはウィルの識る“ザクウォーリア”だった。

 マユがなぜこれを知っていて、なぜ此処に案内をしたのか、ウィルは理解できないでいたが、手を引かれるままにザクウォーリアへと近づき、コックピットへと上がろうとするマユを見て、ようやく頭をハッキリとさせる。

 なにがなにかはわからないという“今まで”無かった感覚……だが、やるべきことはハッキリしていた。

 

「マユ、手を貸す」

「あ、はい!」

 

 マユの手助けをしながら横たわるザクへと昇ると、開いているコックピットにマユを先導として乗り込む。

 その狭いコックピットでは……と言いたいところだが、モビルスーツにしては一回りほど大きい気がする。キツくはあるが、誰かが一緒に乗り込むことを想定したような大きさ。

 マユが小さいだけの可能性も考えたが、それともまた違うだろう。

 シートへと腰掛けるマユに合わせるように、機体の操縦桿等が狭まっている。

 

「ま、任せてくださいっ……」

「なぜモビルスーツに、軍人ではないだろう。君は……」

 

 コックピットに少し窮屈そうに入っているウィルではあったが、それを気にすることもなく、マユが手慣れた様子で機体を起動させる様子を見やる。

 各部のスイッチを押していけば、モニタが光る。

 機体の起動画面へと移り、OSが表示された。

 

「試作品で、最新式らしいんですこの義手。それで、これを使わせてもらう代わりに……少し軍に協力してて……」

 

 ウィルは眉を顰めた。

 素直に『子供をそんなことに使うなど』と思いたかったし口にしたい気もしたが、そんな資格が“自分にあるわけない”ことを理解しているから、それを口になどしない。できない。

 だから黙って、手で眉間に触れて寄っている皺をなんとかしようとする。

 

「パワーフロー良好、各部アクティブ……義手とのリンク94%!」

 

 だが、ふと視線を下に向ければ、マユの身体が震えていることに気づく。

 それを見て再び眉を顰めて、少しばかり真上を仰ぎ見て思考するものの、ほんの僅かの間ですぐに“自らやるべきこと”に結論を出し、息を吐いて、強く頷いた。

 そっと、マユの肩に手を置く。

 

 やるべきことは、自らを“偽る”ことではない……少なからず、今は……。

 

「マユ、この機体……その義手が無くても扱えるのか?」

「え、あ、はい。一応、義手や義足でも、普通と変わらず扱えるっていうのがコンセプトのモビルスーツなので……操縦桿とかも可動式でマユ以外の人でも……」

 

 話しながらも、機体の起動準備を終える。

 モニタを見ても、“ビームトマホーク”以外の武装がついているとの表示は無かった。

 逃げることが目的だとしても、“あの三機”が“目立つ”ザクウォーリアを放置するとも思えない。

 

「実戦経験は、ないのだろう?」

「は、はい。でも戦闘訓練……せ、正式には違うんですけど、いつかザフトに入るって話してたらそういうこともさせてもらってたんで……ま、マユだって!」

 

 ウィルは静かに、首を左右に振る。

 

「マユ……」

「え、はい……」

「私が───」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 強奪された機体、ザフトの新型機であるセカンドステージシリーズのガイア、カオス、アビス。

 脱出時の追っ手を封じるため、それらが工廠内を破壊し続ける中、彼らへの攻撃をしかけたのは一機のザクウォーリアだった。

 そのコックピットにはアレックス・ディノとカガリ・ユラ・アスハの二人。

 なんてことはない、戦火の最中にそうする以外の選択肢がなく、アレックスにとってそれが最も安全策だと判断したからだ。

 

 敵がただの脱走兵であったなら問題はなかったかもしれない、初めて扱う機体、敵は“強化人間”であったからに、アレックスはただ一機のモビルスーツに片腕を切断されるというらしくない失態を犯す。

 これでアレックスが乗っていたのが“前大戦”と同じ機体であったなら、こうはならなかっただろうが、所詮はもしもの話である。

 

 だが、左前腕を切断されたザクを援護に現れたのは───新たなガンダム。インパルス。

 

 強奪された三機よりも秘匿されたモビルスーツ。

 インパルスはかの機体ストライクと同様、戦闘によって姿を変える換装型であり、此度は近接戦特化のソードシルエットを装備した赤き姿、ソードインパルスとしてそこに立つ。

 だが、最新鋭機と選ばれた赤服(エリート)であっても、それはあまりに不利な戦いである。

 

「くぅ、こいつらッ!」

 

 インパルスのパイロットであるシン・アスカは、悪態をつきながら次々と鳴らされるアラートに対応して三機からの攻撃を回避していくが、回避することだけで手一杯だった。

 実戦経験もないのだ。当然といえば当然なのだが、戦場でその言い訳は通用しない。

 インパルスの真上から、カオスが脚部のビームクロウを展開して急速落下するが、それをギリギリで回避。

 

 カオスのコックピットにいた長い緑髪の少女、スティング・オークレーは顔をしかめる。

 

『チィッ、だがこれで!』

 

 次いでカオスがビームライフルをインパルスに放とうとする───が、そうはならない。

 

『っ!』

 

 健在だったハンガーの影から現れるモビルスーツが、そのまま加速しながらカオスへと“ゲイツR”のビームライフルを連射。

 それをシールドで凌ぐカオスではあったが、次にシールドを下げた時には、目の前に迫っている“ザク”。

 驚愕に顔を歪めながら対応しようとするが、遅い。

 

 打ち込まれた───蹴り。

 

『うあぁっ!』

『スティング!? このぉっ!』

 

 吹き飛び、ハンガーに激突し倒れるカオス。

 仲間が不意をつかれやられたことに憤慨したアウル・ニーダが駆るアビスが、蹴りを放ったザクへと両肩部シールドを広げて三連装ビーム砲、計六門を放とうとするが、ザクは構わず接近してくる。

 その“間抜けさ”に笑みを浮かべたまま、アウルは六連のビームを放つが、ザクは“スライディング”するような体勢で地面を滑って回避。

 スラスターとバーニアを精密に使いこなしそれをするパイロットに、アウルは戦慄する暇すらない。

 

 既に、地面と体を並行にしながら滑るザクがビームライフルを構えていたからだ。

 

『なんなんだよコイツっ!』

 

 放たれたビームライフルを、アウルはビームランスをもってどうにか弾くも、そのまま接近したザクから、カオス同様に蹴りを受ける。

 

『うあぁっ!?』

 

 後ろへと勢いよく吹き飛んで倒れるアビス。

 そのザクは、バーニアを使って停止するとそのまま空中に飛び上がり、インパルスと戦闘を行うガイアに向かってビームライフルを連射し、牽制。

 それらを回避し、下がるガイアのコックピットで、ステラ・ルーシェは鋭い眼でザクを睨みつける。

 

『なんなのっ、あれ……!』

 

 インパルスの近くに着地するザクウォーリアだが、それは通常の緑の装甲と違い───胴体は濃い赤、手足は赤というより濃いピンクを纏っていた。

 おあつらえ向きに“指揮官用”ではなく“目印”として“赤いブレードアンテナ”をその頭部に頂く、普通と違うザクウォーリア。

 左手に持ったビームライフルをそのままに、三機に囲まれるように立つインパルスとザク。

 シンは“見知った”そのザクを見やり、動揺して言葉も出ない。

 

 そのザクのコックピットのシートには“ウィレーム・マクスウェル”が座していた。

 マユはといえば、ウィルの操縦に振り回されないようにウィルの膝の上で対面した状態で座り、ぴっしりと彼にしがみついている。

 それだけを見れば“事案”的なことではあるかもしれないが、今の状況で誰が咎められようか。

 

「すごい、こんな……」

「マユ、平気か?」

 

 荒々しい操縦に比べ、穏やかな声音。

 マユは顔を少し離して上げると、ウィルの色違いの瞳を視て、強い表情で頷く。

 先ほどの怯えはもうないようでウィルの服を掴む腕に力を込めた。

 

「大丈夫ですっ、このぐらいっ……」

 

 明らかな強がり、やはり彼自身“いつもの機動”をするわけにもいくまいと気に留めておくことにする。

 

「でも、ウィレームさん……なんでこんな?」

「できてしまうのさ。だからこそ戦わねばならん……マユ、しっかり掴まっていろ。私も気を付けはするが、生きるためには無理をさせてしまう」

「……はい!」

 

 グッと、マユが再度ウィルへとしがみついた。

 今、隣にいる“彼女の兄”に申し訳ない感情が湧き出る気もする。

 しかしステラのことを考えれば“お互い様”と思いたいところであるし……それに、すぐにそんなことを気にする余裕もなくなるだろう。

 

 ウィルは操縦桿を強く握りしめ、フットペダルに乗せた足に力を込める。

 

 

「やってみるさ……!」

 

 

 ―――ステラ、アウル、スティング……ッ!

 

 







運命篇開始早々なので、なるべく早めの投稿です
変なところがなければいいなと思いつつ、とうとう戦闘開始

原作で言うところの1話が終了って感じですが、ここにきてアーモリーワンで戦闘に参加と言う王道
前半はマユがヒロインって感じのムーブをしてますが、ウィルは大人なのでまだ幼い女の子に手を出したりしないのでご安心を


マユとアスハ代表が出会うまで、もうすぐ……


では、次回もお楽しみいただければと思います!
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