盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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ミネルバ、大地を発つ

 

 アーモリーワン、工廠にて三機のガンダムと対峙するインパルスと赤いザクウォーリア。

 カオスがビームライフルを放つが、ザクはそれを左肩のシールドで弾く。

 素早く手に持ったゲイツRのビームライフルで反撃をかけるも、カオスは飛び上がって回避、さらに撃ったもう一発は隣のアビスに向けたものだが、アビスも肩部シールドでそれを凌いだ。

 

 反対側にいたガイアがビームサーベルを引き抜いて接近をかけてくるも、インパルスがそちらをシールドで受け止める。

 背後の攻防、ザクは左手のビームライフルを右脇から通して背後を撃つ。

 ガイアが急いでインパルスから離れてシールドを構えるも、受け方が悪く体勢を崩しながらも、無理矢理下がったのでインパルスの追い打ちは期待できないだろう。

 いまいち決定打にならず、ザクのコックピットで、ウィルは顔を顰める。

 

 ―――ここで捕獲は無理か……!

 

 膝の上に乗せたマユのことを考えれば、これ以上無茶な機動で戦うのはあんまりなことだ。

 

 ふと、通信機に反応があるので、ウィルは音声だけで通信を開始する。

 現状、サブモニターに気を取られていられるほど余裕もない。

 そして聞こえてくるのは、マユにとっては“聞きなれた”声であり、ウィルにとっては“懐かしい”声。

 

『マユっ! マユなのか!?』

「お兄ちゃん!」

『なんでお前っ、こんな! ていうかなんだよさっきの動きっ!』

 

 立ち止まってなどいられない。

 アビスの胸部にある<カリドゥス複相ビーム砲>が放たれようとするなり、ウィルはザクを即座に飛翔させ、インパルスは遅れて動き出す。

 

『マユっ、下がれ! コイツらは普通じゃないっ、正規兵でもないマユじゃ!』

「喋っている暇はないぞ少年!」

『はぁっ!? 誰だよあんた! おいマユ!?』

 

 会話を続けながらも、反撃にとザクがアビスへとビームライフルを放つ。

 しかし、素直に当たってくれるはずもなくそこからバーニアを吹かして回避するアビス。カオスとガイアがインパルスへと攻撃をしかけているのを理解し、ウィルはそのままアビスにビームライフルをもう一撃───撃つ寸前に、ビームライフルの切っ先を僅かに逸らして、トリガーを引く。

 

「そこだ……!」

「えっ!?」

 

 放たれたビームライフルがアビスの右腕を僅かに焼いた。

 

「チィッ、直撃とはいかんか……!」

『おいあんたっ、マユが怪我したらどうすんだっ!? 下がれっ、妹なんだっ!』

「お兄ちゃんだって危ないじゃんっ! ウィレームさんっ、お願いしますっ!」

『うぃれ、誰だって!? おいマユっ!』

 

 ―――うるせぇ……。

 

 ウィルは内心げんなりするが、実際にインパルスのパイロットである彼の妹を連れ出して危険な目に合わせている自分が反論するわけにもいかない。

 インパルスが地上でガイアと交戦を続けているのを確認し、カオスが空中からそのインパルスを狙っているのも認識する。

 そして、アビスが感情的になっていることを悟るウィルは、バーニアを使ってアビスとカオスの間に入った。

 

「ともかく、ここを凌がねば撤退もなにもないよ。ガンダムのパイロット!」

『くっ、いきなり出てきて偉そうにぃッ!』

 

 彼に噛みつかれるということに、なぜだか妙な“感慨深さ”すら抱きながらも、ウィルはアビスの両肩の三連装ビームが放たれる直前で、回避する。

 

『あっ、スティングッ!』

『なっ、うあぁっ!?』

 

 シールドを使ってなんとか直撃を回避するも、体勢を崩して地上へと落ちるカオス。

 動揺するアビスへと接近しつつ、ビームトマホークを引き抜き振るうが、アビスはビームランスの柄を使ってそれを受け止めた。

 つば競り合いになれば、押し切ることは不可能だろう。

 

「パワー負けしているか……揺れるぞマユっ!」

「だ、大丈夫ですっ!」

「良い子だ……!」

 

 つば競り合いながらも、アビスが両肩を展開する。

 そのままビームで消し飛ばそうという算段だろうが、ウィルはアビスの“武装全て”を理解しているからこそ、既に動き出していた。

 バーニアを僅かに吹かして宙に浮くと、アビスへと蹴りを打ち込みつつ後ろへと下がる。

 さらにビームライフルを撃とうとするが、背後から───殺気。

 

「くっ!」

「きゃぁっ!」

 

 上昇して背後からMA形態で迫っていたガイアを回避。

 そのままであれば両翼の<グリフォン2ビームブレイド>で両断されていたところだっただろう。

 着地するザクが素早くビームライフルを撃つが、ガイアは可変すると同時にシールドで防ぐ。

 

「チィ……!」

「す、すごいっ……」

 

 ガイアが反撃にビームライフルを撃ってくるも、ザクは肩部シールドでそれを弾いた。

 インパルスがそんなザクの背後から、ガイアへと飛びかかる。

 両刃刀エクスカリバーを分裂させたその内片方を持つインパルスが、それを振るいながらガイアへと飛びかかるものの、撤退しようと飛び上がるカオスとアビスと違い、ガイアはそのままインパルスと切り結ぶ。

 

 ───確かここで……!

 

『っ、なんだコイツ!』

 

 だが突如、ガイアが先ほどとまったく違う動き、錯乱するような動きを始め、そのまま空へと飛び上がった。

 それはすなわち、ウィルの予測通りなのだろう。

 ガイアのパイロットである“彼女”に“錯乱するようなナニか”があった。

 

 先ほどザクを起動させたときに、アーモリーワン内が揺れたのも感じ、そして今の撤退行動……。

 

「母艦が来ているか……」

 

 追撃をかけるインパルスを追うのは諦める。

 さすがにこれ以上、マユを連れ回すわけにもいかなければ、追撃をかけるのも自らの役目ではないだろう。

 なりふり構いたくない気持ちもあるが、かといってマユを危険な目に合わせたくもないし、彼女を乗せながらでは自分の本来のポテンシャルも発揮できぬまま討たれる可能性も捨てきれはしない。

 だからこそ、ビームトマホークを納めて空を見上げた。

 

「きたか」

「赤と白のザクっ……ルナさんとレイさんっ!」

 

 パァッ、と顔を明るくさせるマユを見て、ウィルは全身の力を抜く。

 対面で座っていたマユの頭にポンと手を乗せ、撫でる。

 空に上がる赤と白のザクをそのままに、ウィルはザクを歩かせてもう一機の緑色のザクの方へと歩いて近づいた。

 

「マユ、前を向いていいぞ。もう激しく動くこともあるまいよ」

「あ、はい! その、あ、ありがとうございますっ!」

 

 ウィルの言葉に、素直に体勢を変えて前を向くマユだったが、先ほどまではともかく、今は途端に恥ずかしくなってしまったのか赤い顔で俯く。

 一方のウィルは大人なのでそれと言って気にする様子はない……わけもなく、眉を顰めている。このようなことは“何度経験しても”慣れるタイプの人間ではないのだろう。

 左腕を失っている緑色のザクウォーリアの前で止まったウィル。

 

「聞こえるか、そこのザク……」

 

 通信をしかければ、すぐに“聞きなれた声”が帰ってくる。

 

『なっ、大佐!?』

「やはり君たちか……それと大尉だ」

『え、いや、というよりなんですか!? それ!』

 

 緑のザクから聞こえてくる“錯乱するようなアレックス”の声にウィルは思わず笑みを零したのだが、次いで聞こえてくるのは……。

 

『なにやってるんだお前っ!』

「ひゃっ!?」

 

 マユの声が聞こえると共に、声がピタッと止まる。

 

『……女の声。またかバカアニキ!?』

「あに、き……おにいさん?」

 

 すっかり聞きなれた妹分の怒声に、ウィルは肩をすくめつつマユの頭を再度ポンと撫でた。

 

「また、とはなんだ。この工廠に関係のある少女でな、少し手伝ってもらったのさ……危険だったから今は相乗りしているが……」

『とか言ってどうせまた!』

 

 このままでは話が脱線し続けるなと察したウィルは、どこで区切ろうかと考える。

 ウィルとカガリの関係性上、カガリがウィルを相手にがなるなどということは珍しくもない故に、彼自身、それほど焦る様子は見せない。

 それを理解しているからこそ、緑のザクに乗っているアレックスは溜息をついてから、カガリの腕を引く。

 

『少し黙ってていただけますか、状況を整理したいので』

『黙ってろとはなんだ!?』

 

 今度はアレックスとカガリの言い合いとなり、ウィルは膝に乗せたマユがポカンとしているのを見て苦笑い。

 このままではマズイと考えたウィルが、わざとらしい咳払いをして二人はそれに気づいて黙る。

 まず、ウィルとしてはここで“うまく誘導”する必要があるが……。

 

「さて、我々はどうするべきかな……」

『ああ、先ほどデュランダル議長が新造艦へ向かっているのを見ました』

「あ、ミネルバっ! ミネルバに行きましょうウィルさんっ! 新造艦の方です!」

 

 その言葉に、ウィルは素直に頷いた。

 もとより……それが次の目的だ。

 

 本来ならばこうなる前に、色々と決着をつけたくもあったのだが、そうならなかったし、できなかった。

 

「案内を頼む、マユ」

「はいっ! 任せてくださいウィレームさんっ!」

 

 真上にあるウィルの顔を見て、マユは両手をグッと寄せ自信を見せつける。

 

『やらかしたな……』

「君は何を言ってるんだ」

『お前ぇ……』

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 アーモリーワン宙域。

 破壊されたローラシア級二隻の誘爆により、港は全壊していた。

 その二隻の艦を破壊したのは、現行の地球連合軍の主力量産機ことダガーLだが、その装甲は漆黒に染められている。

 ダガーLをテロリストが使っている。と言う可能性もなくはないが……。

 

 現状、その機体を使っているのはテロリストなどではない。

 

 

 一隻のナスカ級が、“ビーム砲”の直撃を受けて沈んだ。

 次いで、ユニウス条約で禁止されたはずのミラージュコロイドステルスで姿を隠していたその“艦”が現れる。

 既存のどの戦艦とも違う型、船体両舷に推進剤予備タンクを装備するそれは───地球連合軍、第81独立機動軍。その非正規特殊部隊『ファントムペイン』の所属する特殊戦闘艦<ガーティ・ルー>。

 此度の強奪事件の実行犯たる三名の“エクステンデッド”、ステラ・ルーシェ、アウル・ニーダ、スティング・オークレーの母艦。

 つまり、この一件は地球連合が裏で糸を引いているということであった。

 

 だが、それを悟られないためにも、ファントムペインがいる。

 

「ナスカ級撃沈!」

「左舷後方よりゲイツ、新たに3!」

 

 ガーティ・ルーの艦橋に、オペレーターたちの声が響く。

 ブリッジに通る大きな声で報告はするが、彼らはモビルスーツの接近に対しても冷静であった。

 それは特殊部隊所属艦のクルーとして特別な訓練を受けたからか、それとも艦長や指揮官に絶対の信頼をもっているからか……。

 

「アンチビーム爆雷発射と同時に加速20%、10秒。1番から4番、スレッジハマー装填、モビルスーツ呼び戻せ!」

 

 艦長であるイアン・リーは指示を飛ばしながら、隣の“女”に視線を向けた。

 作戦が時間通りとはいかないことは理解しているのだが、今回は別だ。

 今作戦に至っては綿密な下調べと計画、そして手回しをしており、挙句にこちらが“地球軍”だと看破されるわけにはいかない。

 この宙域に長居するわけにもいかないのはもちろんだが、失敗=即時撤退という判断が即座に必要になる。

 

 故に、ファントムペイン『ロアノーク隊』司令官である“ネオ・ロアノーク”という“女”に視線を向けていた。

 

「ん~……あの娘たちから連絡は?」

 

 戦場に似つかわしくない間延びするような、おっとりとした声。

 慣れてなければ戦意を削られかねないような優しげなその言葉に、オペレーターは首を横に振る。

 

「まだです」

 

 顎に手を当てながら、少し何かを考える様子を見せるネオ。

 右眼に眼帯をしている故に、彼女の右側にいるオペレーターからは彼女の表情は見えない。

 左側にいたイアン・リーは間を埋める意味でも、口を開く。

 

「失敗ですかね? 港を潰したといってもあれは軍事工廠です。長引けばこっちが保ちませんよ?」

 

 彼の言っていることも尤もであるのだが、ネオの考えることはそちらではない。

 

「ん……でも失敗するようなら、私だってこんな作戦最初っからやらせませんよ。まぁ断っても無理矢理やらされるんだろうけど……ともかく、私もあの娘たちを信用して向かわせてるんです。となれば不測の事態で時間稼ぎを食らってる……とか?」

「撃墜された可能性は?」

 

 イアンの言葉に、ネオは“そうは言っても”不安定な子供たちに作戦を任せているという不安感もあるのか、苦笑を零しながら立ち上がった。

 絹のような白い長髪がふわっと広がる。

 

 一方のイアンはそんな彼女を見て少し苦い表情を浮かべるものの、すぐに威厳ある表情で前方を見据えた。

 無重力化にて彼女が立ち上がれば、髪だけでなく右腕の袖と左脚の裾がふわっと不規則に浮かび上がる───つまり、そこに手足がないことは明白であろう。

 

「出て時間を稼ぐ。イアンさん、艦を頼みます」

「はっ! 格納庫! エグザス出るぞ! いいか!」

 

 殺伐としたその戦場と、その身体に似つかわしくない明るい笑顔を浮かべたネオへと返事を返し、イアンは次いで彼女の機体の起動準備を急がせる。

 彼女が出るのならば、ある程度の時間はかせげるだろう。

 撤退するとて、そう難しくないはずだと判断して、イアンは新たに指示を飛ばす。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか、だねぇ」

 

 ネオはブリッジを出ると同時にため息を吐いた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 ウィルが操縦するザクウォーリアが、新造艦<ミネルバ>の開いているハッチから格納庫へと入ると、次いでアレックスが操縦するザクも同じく。

 二機が立ったまま立ち止まり、コックピットを開いた。

 マユの赤いザクに乗っているウィルはといえば、膝の上からようやくマユを降ろす。

 

 安堵するようなマユの表情を見て、そっと頭を撫でながら腰を上げた。

 

「怖い思いをさせてすまなかったな」

「い、いえっ! マ、私もいつか……ザフトのパイロットになるんですから、経験になりました!」

「……そうか」

 

 気を遣わせてるとわかっていても、それ以上言うのが野暮だと判断したウィルはマユの頭からそっと手を退けて頷く。

 降りるため昇降用のワイヤーに掴まるウィルと、そんなウィルに正面から掴まるマユ。

 そっと背中に手を添えて落ちないように気を遣いながら、ウィルはワイヤーを下降させていくのだが、ふと気づく。

 

 アレックスとカガリが先に降りており、赤服の女に銃を突きつけられていることに……。

 

 ───なんで先に降りちゃったかなぁ。

 

 などと考えながらも、どちらにしろあまり変わりないので気にしないこととする。

 降りるなり、そっとマユから手を離すと、彼女は少し赤い顔で赤服の女───ルナマリア・ホークへと視線を向けた。

 マユが声をかけるより早く、ルナマリアはマユの存在に気づいてその銃口をカガリたちへと向けたまま目を見開いて驚く。

 

「なんでここにっ、ていうかあのザク……! ッ、離れてマユ!」

 

 彼女に気づいてから、次いでマユのザクウォーリアに気づいた。

 そして隣の男ことウィルに気づくなり、銃口はそちらを向く。

 二人と一人、明らかに銃口を向けるなら二人の方だが……ウィルの見た目を考えれば、それも仕方ないことなのだろう。怪しいのは明らかにそちらだ。

 マユと一緒にいたとはいえ……。

 

「あっ、る、ルナさんっこの人は私を助けてくれてっ」

 

 弁明しようとするマユだが、それはそれ、これはこれだ。

 身元がハッキリとするまで新造艦たるミネルバと新型機たるザクに乗っているのに『はいそうですか』と気を許すわけにもいかない。

 ウィルとてそれを理解しているからこそ、マユから少し距離を取ろうとするが、マユはウィルの右の袖を掴んで離さなかった。

 

「動くな! 何だお前達は。軍の者ではないのに何故その機体に乗っている!」

 

 まずアレックスが、カガリの前に出る。

 

「銃を下ろしてくれ。こちらはオーブ連合首長国代表カガリ・ユラ・アスハ氏だ。俺は随員のアレックス・ディノ……デュランダル議長との会見中騒ぎに巻き込まれ、避難もままならないままこの機体を借りた」

「え、オーブのアスハ……?」

 

 呆然とするルナマリアだが、それもそうだろう。

 さきほどから予想外のことばかりだろうし、挙句にアスハだ。

 銃を降ろすルナマリアではあったが、まだ彼女たちの正体については疑念は拭えていないだろう。

 

「ん……?」

 

 ふと、ウィルが妙な感覚を覚える。

 袖を掴むマユの力が強くなったのを覚えたのと、明確に感じる隣の少女からの───怒り。

 サングラスの奥の視線をマユの方へと向ければ……無意識なのだろう。強い力で袖を握っており、その瞳は怒りが籠った“視た”ことのないものであり、だがそれは、どこかの少年を思い出させるものだった。

 そういうことかと理解し、ウィルは眉を顰める。

 

「“怒れる瞳”、か……」

 

 ウィルの独り言が聞こえたのか、マユがハッとしてからウィルの方を向く。

 

「あ、ご、ごめんなさい! スーツ、皺になっちゃう……」

「構わんさ、どちらにしろ埃まみれだ」

 

 独り言の内容までは理解してないのか、マユは先ほどと同じような表情に戻る。

 ウィルがルナマリアへと視線を向ければ、彼女は冷静さをとりもどしたのか、そのままウィルへ銃口を向けた。

 それに対し隣のマユは少し前に出てウィルを庇うように立つので、ルナマリアは困ったような表情をしながら銃口を上へと向けて、不貞腐れたような声を出す。

 

「……貴方も、そちらの方々の関係者ですか?」

 

 ハッキリ“アスハ代表”と呼ばないのは、まだ疑わしいものがあるからだろう。

 証明などなにもないのだから当然であるが、それに対しウィルにはとっておきがある。

 そっと内ポケットに手を入れると、反射的にルナマリアの指が銃のトリガーにかかり、銃口は再びウィルへと向けられた。

 

「止まれ!」

「落ち着いてくれ、私は身分を明かすものを出そうとしただけだよ。それに暴れるならモビルスーツに乗ったまましているさ」

「っ……出せ」

 

 銃口を向けられたままのウィルは、内心では落ち着かないものの、頷いて懐から手を出す。

 そしてその手にある取り出されたものは、ギルバート・デュランダルから預けられた“許可証”だ。

 彼の立場上、それをもらわなくてはいざと言うときに危険であり、彼にそういった危険が及べば、今度はデュランダル自身も困ったことになる故に。

 ルナマリアが、少しばかり近づき彼の持っていたソレに目を通す。

 

「ウィレーム・マクスウェル……?」

 

 口元に笑みを浮かべたまま、ウィレームはそれを軽く放ってルナマリアに投げ渡せば、ルナマリアはそれをマジマジと見て偽装の疑いがないか確認するが、それらしい痕跡もない。

 そしてウィルは、今ここで言うことではないが、後で言うのも余計な誤解を招くだろうと考え、内心で気が気でないもののそれを口にする。

 ハッキリと、そこの誰にでも聞き取れるように……。

 

「大西洋連邦所属、ウィレーム・マクスウェル大尉だ」

 

 そう言って笑みを浮かべながら、彼は自らの身分を明かした。

 

「え……地球軍!?」

 

 瞬間、数多の銃口がウィルへと向けられる。

 当然のことながら、彼はその場で立って平静を“装う仮面”を付けながら、笑みを浮かべるだけだ。

 カガリが彼に近寄ろうとするが、アレックスは当然ながらそれを止める。

 

「ウィレームさんが、連合……?」

 

 マユは唖然とした表情で、そっと呟いた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 ガイア、アビス、カオスの三機はプラントに穴を開けて宙域へと飛びだした。

 それを追ってインパルスと両肩にシールドを持つザクことザクファントムも追ってはきたが、ようやく追撃を振り切り、三機は母艦であるガーティ・ルーへと帰艦する。

 問題なく着艦しハンガーへと入り込んだガイアではあったが、そのコックピットではステラが涙を流していた。

 怯えた表情で自らの身体を抱きながら……。

 

「死んでない……あぁっ……あたしっ、大丈夫っ? 大丈夫よねっ、ステラぁ……」

 

 冷たい鉄の中、震える。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 ミネルバ艦内。

 ルナマリアが先導し、その後を歩くカガリとアレックス。

 さらに背後にウィルとマユが歩いているが、その背後のザフト兵は“いつでも撃てるように”銃をウィルの背中に構えている。

 仕方のないことだが、やはり彼も気が気じゃない。

 

 マユが時たま背後のザフト兵を睨むと、ザフト兵は気まずそうな表情を浮かべる。

 

「この船は避難するのか……プラントの損傷はそんなにひどかったのか?」

 

 艦内に響き渡る艦長である女性の声、それはミネルバ発進の報せであった。

 次いで、オペレーターなのだろう少女の声が響き渡る。

 

『ミネルバ発進。コンディションレッド発令、コンディションレッド発令』

「えっ!?」

 

 驚愕する面々。

 マユがウィルの袖を再び掴むが、ウィルはどこまでも冷静だった。

 まるで知っていたかのように、ただ坦々と聞く。

 

「戦闘に出るのか、この船はっ!?」

 

 アレックスの声に、隣のカガリはハッとしてそちらを見る。

 

「アスラン! ……んんっ! アレックスぅ!」

「え、あす、らん……?」

 

 カガリは確かに成長した。

 それでも、変わらないことがあることをどこか微笑ましく思ったウィルは、小さく笑みを浮かべた。

 

 しかし直後、ウィルの表情が変わり、サングラスの奥のその目を細める。

 真新しいような懐かしいような独特の感覚、ここまで強いなにかを感じた相手は数少ない……。

 プレッシャーに、思わず手に汗が滲む。

 

 ───この感触、キラ? ラウ? いや、違う……。

 

 識るはずの男が、可能性があるはずの“候補”を消しているのは、無意識か、それとも……。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 宙域、アーモリーワンに張り付くように待機している灰色のモビルアーマー<エグザス>。

 コックピットのネオ・ロアノークは軍服のまま、リニアシートに座していた。

 彼女は出撃してからものの三分足らずで周辺のザフト機を全滅させ、現在は三人を待ちつつ敵の追撃がないかを確認するために待機していたところだ。

 

「ふぅ、おかえり……」

 

 くわえていたストローから口を離す。

 飲料水の入ったボトルは無重力のコックピットで浮かび上がるも、彼女は“右手”を使ってボトルを持つなり、それを小さく握り潰しポケットに押し込む。

 

「ほぉ~新型の義手は優秀だねぇ。ま、戦後だし……義手や義足が必要なのは“私だけじゃない”か」

 

 感心しつつ、レーダーで三機の着艦を確認しながら、“左右の脚”でフットペダルを踏み、エグザスをプラントから離脱させる。

 義手である右手と左手を器用に使って、白い長髪をポニーテールに……そして軍服の首元部分から胸の辺りまでのボタンを外していく。

 

「暑っ苦しいなぁ」

 

 胸元を開いた扇情的な姿のまま、ネオは操縦桿を握る。

 彼女には義手など無くとも、もっと“合うシステム”があるのだが、今は無いのだから、コレを使う他あるまい。

 搭載数を考えて、モビルアーマーを選んだのも自分だ。

 

 ふと、二機のモビルスーツ反応を確認。

 

「なるほどねぇ」

 

 彼女らの遅れた理由がよく理解できた。

 

「まったく、しっかり下調べしてよねぇ……四機目なんてさぁ」

 

 加速するエグザスのモニターに映る二機のモビルスーツ。

 

「……さて、その新型も……頂こうかッ!」

 

 その赤き瞳は爛々と輝き、自らの“敵”を捉える。

 

 

 







あまり話は進まなかった気がする……

シンがキレてた気もするけれど、とりあえずセーフ

そしてでましたネオ・ロアノーク……ダリナンダアンタイッタイ
どうなるシンとレイ

ついでにウィルが大西洋連邦所属ということが発覚、ザフト艦でまずいです

原作をなぞりつつ、ウィルは目的のために奔放しつつですね
では、次回をお楽しみいただければです
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