盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
アーモリーワン宙域にて、フォースインパルスが相対するのは灰色のモビルアーマーだった。
メビウス・ゼロの後継機であるそのモビルアーマー<エグザス>には、もちろんガンバレルが装備されてあり、その数は変わらず四基ではあるのだが、対PS装甲を想定されたエグザスのガンバレルには二連装ビーム砲と近接用のビームカッターが搭載されている。
さらに、本体には四連装ミサイルと二連装リニアガン。
だが、そのリニアガンは彼女のためなのか、わざわざビーム砲に換装されている。
対PS装甲用仕様、と言ったところだろう。
故に、ただの一撃も受けるわけにはいかず、フォースインパルスのパイロットであるシン・アスカは反撃の糸口も見つけられないままに防戦一方となっていた。
そしてそれは、白いザクファントムことレイ・ザ・バレルが増援に来たとて同様のことである。
四方八方から放たれるビームをかいくぐる防戦一方のインパルスとザクファントム。
だが、追い込んでいるはずのネオはコックピットで顔をしかめていた。
「よく避けるねぇ、いいパイロットだ……!」
本体からのビームを回避するインパルスとザクだったが、次いで二基のガンバレルがインパルスへとビームを放つ。
一方を回避し、一方をシールドで凌ぐも、さらに二基のガンバレルがインパルスへとビームを放ちながら接近していく。
再度ビームを回避するインパルスだが、右脚が僅かに焼かれる。
そして、接近しながらもガンバレルはビームカッターを展開。
「いただきたいところだけど……!」
だが、一方のガンバレルへとザクが投げたトマホークが近づくことに気づき、止める。
そのビームトマホークはガンバレルを掠るだけにとどまるが、おそらく目的は攻撃の停止でそれを成功させられてしまった。
インパルスがビームライフルを放ちガンバレルを攻撃するも、ネオは別のガンバレルのビームカッターを展開しそれを弾くことで撃破を回避。
「ぐ……やるねぇ、白いの……」
だが、次いでガンバレルを使い四方からザクファントムを狙い、ビームカッターを展開したガンバレルがビームライフルを持った右前腕を切り落とす。
それを確認するなり、ガンバレルを一度回収し、ネオはインパルスからのビームライフルをバレルロールで回避した。
再度、ガンバレル四基を展開し、インパルスとザクを囲い込むも、そこで、なにかに気づき顔をしかめる。
「ッ! なに、この不愉快な感覚はっ……!?」
妙な感覚に気を削がれて、ガンバレルのコントロールが疎かになった一瞬、一基のガンバレルをインパルスが撃ち落とす。
それに顔をしかめつつも、ネオはガンバレルのコントロールと目の前の戦闘に集中し直す。
ネオを襲う“妙な感覚”以外にも、彼女が“弱体化している要因”はあるが、それでも……。
「っ……えぇい、気持ち悪い!」
代わりとばかりに、ビームカッターを展開したガンバレル二基が、インパルスの左右の脚を斬り落とす。
◇ ◇ ◇
一方、アーモリーワンより出航したミネルバ。
そのブリッジにはもちろん艦長であるタリア・グラディスと、副長であるアーサー・トライン、オペレーターであるメイリン・ホークやバート・ハイムはもちろん、そこには故あってプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの姿もあった。
宙域を往くミネルバの中、マニュアル通りにミネルバが動けているかの確認を欠かさない。
そして同時に、インパルスとザクの位置確認もだ。
「インディゴ53、マーク22ブラボーに不明艦1、距離150!」
「それが母艦か……」
バート・ハイムの声に、デュランダルが頷く。
「諸元をデータベースに登録、以降対象をボギーワンとする」
タリアの言葉により、ガーティ・ルーはボギーワンというコードネームを与えられた。
誰もその本当の名を知らない。もちろん所属も……。
「同157、マーク80アルファにインパルスとザク、交戦中の模様」
「呼び出せる?」
「駄目です。電波障害激しく通信不能……!」
メイリンの返答に、タリアは顔をしかめながら、矢継ぎ早に声を上げる。
「敵の数は!?」
「一機です。でもこれは…モビルアーマーです!」
その言葉に、タリアは顔を横に振る。
背後で同じくメイリンの言葉を聞いていたギルバート・デュランダルは、タリアのことなど見えるはずもないが、タリアに同意するように頷いた。
「モビルアーマー一機だからって油断できないわよ。私達ザフトはそれをよく知っているでしょう」
「あ……赤い、悪魔……」
メイリンも、噂で聞いたことはあるからこそ呟く。
戦争を止めた立役者である三隻同盟のことを世界中の人々が知っているのだから、もちろんその“英雄”の一人であった彼もまた、人々は知っているのだ。
プラントを守った“英雄”でありながら、ザフトにとっては“悪魔”であったのも事実。
ザフト軍の中では、“赤い悪魔”について詳しい者も少なくは無い。
「ボギーワンを討つ! ブリッジ遮蔽、進路インディゴデルタ、加速20%、信号弾及びアンチビーム爆雷、発射用意!」
「新造艦……!」
エグザスのコックピットで、ネオ・ロアノークはモニターの光学映像でミネルバを捉えた。
ここから補給なしでの長距離移動と考えれば、ガーティ・ルーを損傷させるわけにもいかない。
インパルスを捕らえることができたなら、すべてが丸く収まるところではあるのだが、相手をしていたからわかるが、黒いダガーLことダークダガーLを出したところで、それほど頼りにはならないだろう。
あの三人、ステラたちを出すことは現状ではまず不可能……戦闘を続ければインパルスとザクを討つことは可能であるだろうが、母艦がやられてしまえば元も子もない。
「欲張りすぎはっ、よくないってことね……!」
ハッ、と好戦的な笑みを浮かべ、ネオはガンバレルを回収して二機から離れるように離脱する。
背後をモニターで確認するも、二機が追撃してくる気配はないどころか、ミネルバからはおそらく帰艦信号と思われる信号弾が出ていた。
ガーティ・ルーへと帰艦しようとするネオが、近づくミネルバから“妙な感覚”、慣れないその不快感に顔をしかめる。
「ッ……なんなのコレ……っ!」
エグザスを収容したガーティ・ルーと、インパルスとザクを収容したミネルバの攻防は続く。
お互いに躍起になるのは仕方のないことだろう。
ザフトなど新型機三機を奪われたのだから……因果応報とはいえ。
攻撃を続けるミネルバは、ガーティ・ルーよりも足は速い。
このまま攻撃しながら追い続ければ、撃破の目途はたつことだろうが、突如としてガーティ・ルーが船体両舷のタンクを切り離す。
それがなにかに気づき、タリアが攻撃の手を止めるようには言ったが、ガーティ・ルーがそれを撃ち誘爆させることにより、ミネルバに激しい衝撃を与えた。
ブリッジはおろか、ミネルバ全体が大きく揺れ、ハンガーでは物が散乱し飛び交う。
ウィルたちがいる重力制御が効いている“士官室”にも、激しい衝撃。
「うぁっ!?」
「なんだっ!」
アレックスが急いでカガリを抱き留める。
ウィルはと言えば、それに先んじてマユを抱えて体勢を低くした。
「きゃあぁっ!?」
「敵の攻撃か……!」
彼はそれが“なにか”わかってはいる。
そしてソレが起きたと言うことは、戦闘が一旦の終了を迎えることも理解していた。
衝撃が収まるなり、ウィルは立ち上がりマユのこともそっと立たせる。
落ち着いたことによりカガリは席に着き、アレックスは先ほどと同様にその背後に立つ。
壁に寄り掛かっていたルナマリアも、なんとか体勢を整えたが、部屋を出て廊下を見回す。
そっと椅子に腰かけるウィルと、その隣に座るマユだったが……彼女はカガリを視界に入れぬように顔を背けていた。
ウィルは顎に手を当て、思考する。
───シン・アスカがオーブを、アスハを恨んでいるならば妹もまた然り、か。
これではトラブルの種が二倍になるなと、少し頭を押さえたウィル。
そうして黙っていれば、すぐに艦内放送がかかり、ミネルバはこのままに『ボギーワンの追撃任務にあたる』ということが発表された。
驚愕するアスランとカガリ、そしてマユではあったが、ウィルは“識っていたかのように”冷静にそれを受け入れる。
次いで、ルナマリアが部屋に設置されていた通信機を使い、タリア・グラディスへとカガリとアレックス、そしてウィレームのことを報告するのだった。
◇ ◇ ◇
ガーティ・ルーの重力コントロールが効いている区画の一部屋……そこは医務室であり、そこに設置されたベッドにて眠っているのは二人の少女、スティングとアウル。
二人の身体にはシリコン製のパッドのようなものがつけられており、繋げられたベッド脇の機器は二人のデータを表示し、研究者たちはそのデータを入念にチェックしていた。
そして、もう一つあるベッドに腰掛けているのはステラ・ルーシェ……ではなく、ネオ・ロアノーク。
「死ぬのこわぃっ、ステラっ、死ぬの……?」
呟くように言うステラは、ネオ・ロアノークの膝の上に対面して座っていた。
まるで子供をあやすように、ネオは義手の右手でステラの背中を支え、左手でその頭を撫でる。
穏やかな表情で、ステラの頭に頬を当てて、そっと冷たい義手で背を撫で、暖かな左手で頭を撫で続けながら、諭すように優しい声音でステラを落ち着かせていく。
「大丈夫、ステラは私が守るから……それでステラがみんなを守る……そしたらみんな、死なないから、ね?」
「死なない? 守れば、死なないの?」
「うん、死なないよ」
ステラはネオの背中に手を回して、その軍服を力いっぱい握りしめている。
慣れた様子でそうしているネオと慣れた様子でそんな二人を見る研究者たちは、これまた慣れた様子でステラの腕などに機器から伸びるパッドを取り付けていく。
ステラたち“エクステンデッド”は『ゆりかご』と呼ばれる睡眠カプセルで定期的な“記憶の操作”や調整が必要である。それは旧型ブーステッドマンが持ち合わせていた協調性の無さや凶暴性を改善し、コミュニケーションや連携のとれる安定性ある強化人間、というのが開発のコンセプトだったからだろう。
結果、想定通り改善はされたものの、それとほぼ同時期に、ブーステッドマン達に新たな可能性が発見された
前大戦時の───クロト・ブエル、オルガ・サブナック、シャニ・アンドラスたちであった。
薬物投与を最低限に抑えながら、心理的な支柱や仲間意識による自己の確立と、それによる安定。
故に、そちらの方に舵を取ると言う計画が発案されたが、さらに問題が発生。自意識が強すぎた結果───連合を裏切ると言う可能性が示唆される。
そして、完全にそちらに計画を変更することは中止され、結局はゆりかごを使ったシステムへと相成りつつも、裏切りを凌ぐために『ブロックワード』というものも搭載されたというわけだ。
「ステラ、寝ちゃったか……」
ネオは口元を綻ばせると、抱き着いたまま眠っているステラをそっとベッドに寝かせた。
しかし、本来ならば定期的に『ゆりかご』で調整するはずのエクステンデッドは、こうしてベッドで眠っている……理由など簡単なことだ。
身体機能にそれなりに負担をかけるゆりかごの使用を最大限避けて、損失を避けるため。
ネオはそれを続けて徐々に“ゆりかご離れ”を進めてはいるが、やはり完全に使用しない状態にはもっていけないので、使うこともあるが……。
「さて、後をお願いしますね」
そう言うと、ネオは義足を使って立ち上がる。
戦闘時とは違いしっかりと軍服は首元まで閉めているが、その豊満な胸により胸元ははち切れんばかりだ。
医務室から出た直後、ネオは左手で口元を押さえて片膝をついて蹲った。
周囲に人影もなく、誰も気にした様子はないのだが……。
「新しい義手と義足、ダメだ、これっ……」
生理的嫌悪、相性の悪さが顕著に表れており、戦闘中もそれによりパフォーマンスが下がっていたのは間違いないだろう。
でなければ、新型といえど実戦経験のないルーキーなど早々に落とせていたはずだ。
挙句に、あの不愉快な感覚。
「さっさと外して、ブリッジ行こ……っ」
体調も落ち着いてきたのか立ち上がったネオは、深呼吸をしてから歩き出す。
「“オシリスシステム”も持ってこれたらなぁ……」
◇ ◇ ◇
ミネルバの士官室で、ウィレーム・マクスウェルはソファに腰かけていた。反対側にはカガリ、後ろに立つのはアレックス。
カガリとは反対側のウィルの隣に座るマユは、その雰囲気と自分の場違い感に緊張してソワソワとしているが、未だ立つわけにもいかないので仕方ないことである。
そして彼女の緊張の原因は、テーブルを挟んで向かいに座るギルバート・デュランダル。
「すまないね。民間人である君まで……もう少し我慢していただけるかな?」
「あ、はい! こ、こちらこそすみませんっ!」
デュランダルの言葉に、マユは頭を下げる。
彼女のそんな動作に笑みを浮かべながら片手で『構わない』と意思を示すデュランダルの背後には、艦長であるタリア・グラディスが立っている。
ウィル自身、デュランダルとこうして会うのは初めてではない。
そもそも、ウィルがアーモリーワンへと来た理由が彼との会談にあったのだから……。
「さて、お三方には本当にお詫びの言葉もない。姫やマクスウェル大尉までこのような事態に巻き込んでしまうとは……ですがどうか御理解いただきたい」
デュランダルの言葉……というより声に、不必要に口角が上がるウィルではあったが、誤魔化すように頷く。
さすがにサングラスも取っており、その左右の赤と青の瞳をそのままに口を開いた。
「あの部隊についてはなにも?」
「ええ、艦などにもはっきりと何かを示すようなものは何も……しかし、だからこそ我々は一刻も早く、この事態を収拾しなくてはならないのです。取り返しのつかないことになる前に」
その言葉に、次いでカガリが首を縦に振って同意する。
「解ってる。それは当然だ議長。今は何であれ世界を刺激するようなことはあってはならないんだ。絶対に」
「ありがとうございます。姫ならばそう仰って下さると信じておりました」
「私もアスハ代表に同意だ。なにかあればコチラとしても見逃すわけにはいかないさ……疑われやすい立場としてな」
だが、ウィルは知っている。此度の件は大西洋連邦の企みであると……。
「大尉にも後で映像を見て頂きたい……なにかわかることがあるやもしれません」
「そうですね。そうさせていただきましょう」
やはり、思わず口角が上がる。
彼の口から放たれるのは“憧れの声”なのだ……やはり慣れるものではない。
深呼吸をして頷いたウィルに、デュランダルは友好的な笑みを浮かべた。
「よろしければ、まだ時間のあるうちに少し艦内を御覧になって下さい。もちろん大尉も」
「っ、議長……」
タリアが苦言を呈そうとするが、それもそうだろう。
他国の責任者は愚か、ほぼ敵対していると言っていい地球軍の軍人にミネルバの艦内を見せるなど……。
それに驚いたのはカガリとアレックスだけでなく、ウィルもだった。
「一時的とは言え、いわば命をお預けいただくことになるのです。それが盟友としての我が国の相応の誠意かと」
「しかし、その、連合は……」
彼女の言うことは尤もなことではあるが、ギルバート・デュランダルは首を横に振った。
「問題もそうないさ……彼は───“バエル”だよ」
◇ ◇ ◇
ガーティ・ルーのブリッジに、ネオ・ロアノークがいた。
義手と義足はすでに外しており、先ほどよりもスッキリとした表情であるからに、やはり不調の原因はあの義手義足なのだろうと容易に想像はつく。
座席に腰掛けるネオの隣、イアン・リーはネオの方を見る。
「彼女らは問題ないので?」
「ん、概ねは、ゆりかごも使わないで済みましたし……ただ、アウルがステラにブロックワードを使ってしまったようでですね。まぁなんとかなったけれども、ステラはちょっと不安定だからねぇ」
「ですが、何かあるたび、ゆりかごに戻さねばならぬパイロットなどよりはマシかと……それを、ラボは本気で使えると思っているんでしょうかね?」
エクステンデッドについて思うところがあるのか、イアンは顔を顰めてそう言う。
苦笑するネオは、ポニーテールにしていた髪を解いて頭を振る。
「仕方ないですよ。ブーステッドマンよりはマシ、って聞きますけど……」
笑いながらそういうネオに、イアンは眉間にしわを寄せながら頷いた。
色々と知っている自分と、色々と知らない相手だからこそ、想うこともあるのだろう。
ともあれ、今は目の前の任務に集中する他あるまい。
◇ ◇ ◇
ミネルバのハンガー。
次の戦闘に備えて整備兵たちは忙しなく動いており、パイロットであるシンは機体の調整をようやく終えた。
レイはと言えば、タリアに呼び出されてどこかに行ってしまい、代わりに戻ってきたのはルナマリア。
カガリが来ていたことと、随伴のアレックスがアスランかもしれないということを聞いた後、最も大事なことを彼女に聞けば……。
「はぁっ!? 地球軍の大尉!?」
「ちょっ! 声が大きい!」
そりゃ大声も出したくなるというものだ。
唯一の家族である妹を危険な場に連れ出した……いや、マユが工廠に行くのはわかっていたので、むしろ守ってくれたのかもしれないが……だとしても、妹を連れて戦闘していた“妙に偉そうな”相手がよりにもよって連合の軍人である。
ルナマリアが口に人差し指を当てて“黙れ”と伝えて来るので、少しばかり声を潜める努力をしようとするが、やはり口数が減るわけでもない。
「っ……でも、なんで連合のそんな奴が普通にこっち来てるんだよ……てかなんでモビルスーツに、コーディネイターなのか!?」
「知らないわよ。でも、議長と会談があったとかなんとかで」
現状は停戦協定を結んでいるが、未だ冷戦状態であるし軋轢もある。
敵国と言っても過言ではないし、言葉にはしないがやはりボギーワンは地球連合の手の者と思っているクルーだって少なくは無いだろう。
だからこそ、今この状況で連合の軍人が乗り込んでいるということがどれだけ異常なことか……。
「ま、マユって大丈夫だったか!?」
未だ姿を現さない妹について、ルナマリアの肩を掴んで食い気味に問い詰めるシンではあったが、一瞬だけ面食らうものの、ルナマリアはそんなシンのシスコンっぷりにも慣れているのか、手を軽く振りながら笑って答える。
「大丈夫よ。むしろ懐いてるみたいだったし」
「大丈夫じゃないじゃないかぁ!」
至極当然、シンとしては大丈夫ではないだろう。
連合兵などに懐いてどうする……なによりも、連合はシンとマユがかつて暮らしていたオーブを攻撃し、あの事故を引き起こした者たちでもあるのだ。
オーブを恨んではいるが、連合だって快く受け入れられる相手でもない。
「あ、お兄ちゃん!」
「え、あ……マユっ!」
聞きなれた声にそちらを向けば、“シンにとって”話の中心だったマユが現れる。
エレベーター近くで話していたシンへと、無重力下の中、壁を蹴ってその勢いのまま抱き着き、それを安堵した表情で受け止めるシン。
二人を見て、ルナマリアは肩を竦めて苦笑する。
「相変わらず仲がよろしいことで……」
色々な経緯を聞いたことのあるルナマリアとしては、それも当然だとは理解しているが……。
「大丈夫か!? アイツっ、あの連合のやつになにもされてないか!?」
なにもされてはいないが、なにがあったかはとても話せることではないだろう。
やましい気持ちがお互いになかろうと、とてもじゃないが自分のことを溺愛する兄に、マユは決して何も話さないだろうし、そんなことを赤裸々に話すなど、兄だからこそ以ての外である。
故に、隠そうとしてマユは、思い出して少しばかり赤くなりながらも、眼を逸らして頷く。
「な、なにも……ないよっ……?」
「なにかあった感じじゃないか!?」
ルナマリアは『これはヤバいなー』と感じたが、面白そうなので放っておくことにした。
「くそっ、マユになにしたか聞きだしてやるっ!」
「うぃ、ウィレームさんは紳士的だよっ、マユを助けてくれたしっ……ウィレームさんがいなかったら、マユ……」
「っ……いやまぁ、そう、だろうけど」
妹の言葉に、冷静さを取り戻すシン。少しつまらなさそうにするルナマリア。
確かに妹を助けてくれた相手、実際は見てみなければわからないが、連合であるのにも関わらず、危険だからと妹と相乗りをしながら自らの援護まで行ってくれた相手に、そこまで失礼な先入観を持つのもどうかと思った。
マユがいることもあり、“多少は大人”になる必要があるからこそ、今彼は少し冷静である。
深く息を吸ってから、溜息をつくように吐き出す。
「……ともかく、マユが無事でよかったよ」
「お兄ちゃんっ」
そんな二人に、ルナマリアもさっきとは打って変わってどこか安堵する様子を見せた。
ふと、マユがシンの胸から頭を離して周囲を見渡す。
年頃の娘なのだから、兄とそうしてベタベタとするのに羞恥心を覚えるのは当然のことであるのだが、どこか違うように見えてシンは小首をかしげる。
離れたマユが、エレベーターの前のそこに立つ。
「えっと、ウィレームさんたち、今は艦内を見学してて……あとでハンガーに案内するとか」
つまり、件の男ことウィレームに見られるのが嫌だったのだろう。兄に甘える姿を……。
年相応の彼女の反応に、やはり“そういうこと”だとシンは焦るが、彼女の言葉を反芻して気づく。
とんでもないことに……。
「地球軍の人間をハンガーに!?」
何を考えてるんだ議長は……とは言えないのでそこで黙るシン。
ルナマリアもさすがに驚いているが、むしろそれを聞いて驚かない人間の方がいないだろう。
「あ!」
だがふと、ルナマリアはなにかを思い出したかのようにポンと平手を拳で叩く。
なぜ議長が“大西洋連邦の軍人”にそこまで手厚い対応をするのかようやく納得がいったといったところだろう。
そして、少し遅れてシンもなにかを思い出したのか、あぁ! と声を出してルナマリアと顔を見合わせ頷いた。
「“バエル”!」
二人同時に口に出した言葉に、マユが頷く。
「うん……“Brand-new Advanced Existing Logical alliance”……“
それは一年前、大西洋連邦内で結成された“
ということで徐々に色々明かされつつ、な感じです
たぶん組織名は作った人の趣味
英語は怪しいのであまり気にしない方針で()
そしてネオはデバフされまくりでシンとレイは無事生還
ウィルとミネルバクルーとのやりとりもここから増やしていきたいとこですね
では、次回もお楽しみいただければです