盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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開く獄門

 

 ロマ・カインハースト・バエルのジン……ジン・バエルとでも呼称しよう。

 

 敵機のロックが一気に自分に集中すれば、コックピットはけたたましくアラートを鳴らす。

 顔をしかめるでもなく、冷静かつ即座に握ったレバーとフットペダルを操作して加速、射撃の嵐を回避し、固まっているジン三機の方へと円の動きで旋回しながらも接近。

 しようとするが、妙な感覚に前方にはいかずスラスターを効かせて月面方向に加速。

 

「やはりな!」

 

 真っ直ぐに進行していれば、どこからか飛んできたバズーカ<キャットゥス>の餌食になっていただろう。

 急停止からの、急加速で月面を下として上に向かい加速―――ジン三機がジン・バエルの方を向くが、一番早いであろう一機に重斬刀を投げると、それがジンの胴体を貫く。

 両脇にいた二機のジンがアサルトライフルを放つも……。

 

「射線が素直! 甘いなッ!」

 

 射線を見る。三人娘との訓練で散々させられたことだ。

 焦っているのだろう、後退しようとするが―――今更遅い。

 

「視えた!」

 

 素早く、一機のジンに接近して重斬刀でその両腕を切り落とすと、近くにいた串刺しのジンから重斬刀を引き抜き、もう一機のジンのコックピット部分を切り裂く。

 コックピットだけを切り裂く斬撃は、ジンを爆散させることはない。

 両腕が無くなって慌てているジンの両足を切り裂くと、一方の重斬刀を腰にマウントした。

 

「エースは……!」

 

 離れた場所を見れば、ジン・ハイマニューバとメビウス・ゼロが戦闘をしているようだった。

 ロマは知っている。それはムウ・ラ・フラガと“ラウ・ル・クルーゼ”の戦闘であると……今の自分にラウ・ル・クルーゼをどうにかする力はない。それは自覚している故に、そちらには関わらないことにする。

 さすがにその二機の戦闘に“正史”との変化があるとは思えなかったからこそ、だ。

 

 敵意を感じてから、目視で確認。即座に正面のジンを掴んでそちらに向ける。

 ライフルによる攻撃を受け、盾にしているジンが痙攣するように揺れるが……貫通するより早く、ジン・バエルは加速―――目標はライフルを持っている三機のジン。

 おそらく一組三機で動いているのだろう。だからこそ……。

 

「のこのこと、集っていてはなぁっ!」

 

 撃たれる盾にされたジン。一撃が貫通してジン・バエルの装甲がわずかに損傷するが、致命的ではない。

 穴だらけになった盾にしたジンで接近、それと同時にその(ジン)ごと、ライフルを撃つジンを重斬刀で串刺しにした。

 

「ほう……思ったよりは俺も……!」

 

 ふと、敵意を感じモニターを確認。重斬刀を離して月面から反対方向に加速すると、再びキャットゥスが飛んでくる。それが、串刺しにされた二機のジンに直撃、本来ならばジン・バエルに直撃していたものだが、そうなれば串刺しに繋がっている二機のジンは爆発。

 近くにいた一機のジンが巻き込まれ爆散し、もう一機いたジンは無事なものの、パイロットは明らかに動揺している。

 

「バズーカは鬱陶しいが、まずこちらか……!」

 

 ジンのパイロットは突然の誤射のような爆発に動揺していたが、それが命取りだった。

 瞬間、目の前に現れた赤銅色のジン、次の瞬間にはライフルの銃口……僅かな断末魔と共にジンは動きを止める。

 

 やはり、それもバックパックまでは直撃していないのだろう。爆発はしない。

 

「バカとハサミは使いよう……!」

 

 その“風穴の開いた”ジンを掴むと、キャットゥスを持つジンの方を見る。やはり三機、だが二機はライフル。ならばやりようはあると思うやいなや、加速。

 しかし、やけに攻撃が少ないと周囲を確認すれば、メビウス部隊やドレイク級戦艦なども奮闘しているようである。

 

 ロマ自身は決して思いもしないだろうけれど、彼の戦いは確かに味方を奮起させるには十分だった。

 

「こっちはこっちでやるしか、ないかっ!」

 

 盾にしたジンをそのままに左右に揺れながらも加速……第三者から見れば、赤黒い光がジグザグの軌道を描き敵へと接近しているように見えるだろう。そのような軌道の動き、そう視られるものでもない。

 ザフトでもできるものは少ないことだろう。だからこそ、味方はその戦いに奮起し、敵は畏怖する。

 

 盾にしたジンがライフルで傷ついていき、散ったオイルがジン・バエルへと付着していく。

 キャットゥスを確実に回避しつつ、距離が近づくとそのジンを投げつける。

 

「いけッ!」

 

 投げたジンがライフルとバズーカを受けて爆発、爆煙が巻き上がるとザフトのジンたちの視界から、ロマの駆るジン・バエルの姿が消える。

 爆煙から突如、なにかが跳び出してくる。それに向けてジン三機が銃口をそちらに向けるがそれは―――先ほどのジンの頭だ。

 

 正面の爆煙から、重斬刀を持った赤銅色のジンが現れ、キャットゥスを持ったジンの首部分から胴体を突き刺し、重斬刀から手を離す。二機のジンがモノアイを向け、銃口を向けようとするが―――遅い。

 既にジン・バエルはキャットゥスを持っていたジンの腰からライフルを取り出しており、自分の持つライフルももう片手に持っていた。二挺のライフルの銃口が、二機のジンのコックピットに向けられている。

 銃口がジン・バエルに向くよりも速く、トリガーが引かれ―――連射された銃弾がジン二機のコックピット周りを風穴まみれにする。

 

 二機のジンのパイロットが最後に見るのは大量のオイルを身に浴びた赤銅色のジン。

 

「まだだ、まだ終わらんよっ!」

 

 素早く二挺のライフルをマウント。横の二機の持つ重斬刀を引き抜くなりその三機から距離を取れば、二機のジンが爆発。

 初の実戦、感覚は研ぎ澄まされて―――妙な感覚。

 

「なんとぉ!?」

 

 素早く体を翻したジンのすぐ傍を、ミサイルが通り過ぎた。

 そのミサイルが放たれた方向を確認すれば、そちらにはミサイル装備ことD装備のジンがいる。

 だがそのジンが二射目を放とうとした瞬間、メビウス・ゼロがそのジンを撃墜。

 

「ありがたすぎる!」

 

 コックピットの中で、ノーマルスーツも着ないままのロマは息を荒くし、額の汗を袖で拭う。

 

「くそっ……」

 

 さすがに“この集中力”がそうも長く続くはずもない。周囲に気を張っていたこともあり精神が擦り切れそうだ。

 ラウ・ル・クルーゼとムウ・ラ・フラガの戦闘も一区切りがついたようだが、メビウス・ゼロ部隊も大半が撃墜されている。まだ敵にはジンはおろか、ジン・ハイマニューバも存在しているというのにだ。

 ロマは素早く腰の二挺のライフルと、手に持った二本の重斬刀を入れ替え、別のジンから放たれるミサイルをライフルで迎撃する。

 

『聞こえますか?』

「言葉が走った! あ、いや通信か」

『ロマ!』

「はい、聞こえますアズラエル理事」

 

 珍しい声音に、返事を返すロマ。

 

「どうしました……そろそろ全力で撤退したいんで避難用シャトルにでも乗っててほしいんですが」

『避難するのはそっちのようですよ?』

 

 ―――サイクロプスか。

 

『エンデュミオン・クレーターの氷融解用のサイクロプスを暴走させるそうです。大規模な被害が予想されます。帰還してください』

「他の友軍に警告は?」

『ご自ゆ―――』

『アズラエル理事! 内密にしていただかなければ意味がっ』

『私のものを貴方たちの一存で? 冗談はほどほどにしてくれます?』

 

 ―――マジギレじゃないっすか。

 

 さすがのロマも、少しばかり動揺する。

 しかし、それ以上にアズラエルがそれほど自分に入れ込んでくれているという喜びもあった。故に、死にもの狂いで生き残らなくてはならない。

 責任は持つ。この歴史に、この世界に、そう誓ったばかりだ。その代わりにやりたいことを自由にやる。それは今を生きる者の特権。

 

『……聞こえますかロマ少尉、戻ってきてください』

「了解、撤退する」

 

 通信を切ると、オープンチャンネルで通信を開始する。

 

「連合、ザフト……両軍に告ぐ。連合はサイクロプスを暴走させることを決定した。マイクロ波加熱によりかなりの被害が予想される。撤退せり」

『ふざけるな! あの悪魔を撃てぇ!』

 

 放たれたミサイル攻撃を迎撃、さらに一機のメビウス・ゼロが接近してくると迎撃に協力する。何事かとも思ったがそれが間接的に知っている相手であり、動揺もする。しかし、それでも厚い厚い仮面を被るのは忘れない。

 通信を繋げば、モニターにはムウ・ラ・フラガ。

 

『おい少尉殿、それは本当か!?』

「嘘をつく理由もあるまいよ……味方は撤退を始めた。我々も撤退しましょう」

『ったく、上は何考えてんだよっ』

「ザフトに制圧さえされなきゃなんでもいいのだろう。本来の目的であれば我々がここで一緒に消え去るんだったんでしょうが」

 

 悪態をつきながら、迎撃を成功させ敵の攻撃が止んだその一瞬で、メビウス・ゼロが加速するのに合わせてジン・バエルも加速。

 残り時間が丁度アズラエルから送られてきたのを確認。あまり余裕はなさそうだと、舌打ちを打つ。

 再びオープンチャンネルで周囲の機体に通信を開始する。

 

「ええぃ、聞け! サイクロプスなんてもんで死にたいか!?」

『あの赤い悪魔を撃てぇ!』

『ザフトの魂を汚す悪魔め!』

『逃がすなァ!』

 

 まるで聞く耳を持たない。

 

 ―――まぁ散々殺しといて撤退しろなんて、都合良いわな。

 

 思考しながらも、加速。背後からの攻撃を回避しつつ、だ。

 先に撤退した部隊に追いついてしまい、そちらが撃破されていくがどうにかできる状態でもない。ムウのメビウス・ゼロが背後にガンバレルを飛ばして牽制するが、未だにジン三機、ジン・ハイマニューバ一機が追ってきている。

 顔をしかめつつ、振り返って二挺のライフルを放つ。

 

「落ちろカトンボ!」

 

 二機のジンとジン・ハイマニューバが回避、だが一機は直撃を受け、当たり所が悪かったのかバックパックが爆発、そのまま機能停止となる。

 その場で停止すると、バーニアを吹かして孤立したジンを狙う。そのジンが足に装備された三連ミサイルを放つも、それらを迎撃せずに目標のジンを中心に円の動きで回避し、振り切る。

 中心のジンがアサルトライフルを撃とうとするが、ジン・バエルは即座にジンの方を向いて止まり―――加速。

 

「早々に片す!」

 

 目標にしていないジンとジン・ハイマニューバがこちらを狙うが未だに攻撃に移っていない。

 ならば今が減らすチャンスだと、正面から放たれるライフルを、機体を左右に振って回避しつつ接近。

 

「飛翔しろ、ジン!」

 

 その加速度を保ったまま、所持していたライフルを放り投げた。

 敵のジンがライフルを放つもそれを右方向に回避。直撃ではないもののライフルの弾丸が装甲を傷つけていく。しかし、致命傷でなければ構いはしないのか、そのまま右手で重斬刀を引き抜き、引き続き加速しながら機体を左右に振って回避。

 

「ええい、ままよ!」

 

 ジンにライフルを撃たれるより早く、片手のライフルを撃ちながら接近するジン・バエル。弾丸の雨がジンのライフルを持つ右腕部を破壊。そしてすれ違いざまに腹部を切り抜ければ―――切り裂かれた部分が小さく爆発を起こし、ジンは動かなくなる。

 小さな爆発だが、おそらくコックピットにまで至ったのであろう。

 

「残り二機か!」

『撤退に専念しろ少尉、いつ起動されるかもわからないんだぞ!』

「ここでコイツを連れてくわけにもいくまいよ!」

 

 ムウの声に荒々しく返し、流れる額の汗をそのままに接近するジンを確認。ライフルを放つが回避して接近をしようとしてくる。ジン・ハイマニューバもジン・バエルにライフルを撃つ。

 息をついて、円を描く様に加速するジン・バエル。ジン・ハイマニューバのライフルを回避しながら、迫るジンへの対応が迫られるも、仕方あるまいと覚悟を決める。

 

「こんなところにノコノコ来るから!」

 

 二機からの攻撃を回避しつつ、ジンに接近するが―――直前で向かって真下に加速。

 ジンの真下を横回転してすり抜けながらも、右脚に斬撃、ライフルでバックパックを破壊。通り抜けると、脚部とウイングスラスターを使って急ブレーキをかけた。

 右脚は切り落とすとまではいかなかったものも使い物にならないだろう。しかし、まだ左足のバーニアも残っているしライフルも握っているので止めを刺そうとするが、ジン・ハイマニューバが接近するのを確認。

 振るわれた重斬刀を重斬刀で受け止めるも、パワーが違う。即座に蹴りを放ってジン・ハイマニューバと距離を取ると、さらに離れるために加速。

 

『ロマ、少尉! 聞こえますか? もう限界のようです……早く!』

「くそっ、了解した! 帰投する!」

『当然です。しなかったら許しませんよ……?』

 

 その言葉に笑みを浮かべて、基地方向へと方向を変える。フットペダルを全力で踏み込んで、すべてのバーニアを点火。その赤黒い閃光、ジン・バエルは最大加速を持って戦場を離脱しようとするも、背後からの反応に顔をしかめた。

 ジン・ハイマニューバ。ここまで本隊と離れてはどうしようもないだろうに……。

 

「意地でも俺を落としにきたか!」

『貴様だけは落とす!』

「オープンで言うことか! つくづく軍人は御しがたい!」

 

 ジン・ハイマニューバは高機動型ジンと言って差し支えない機体だ。その加速度はジンをはるかに凌駕している。追いつかれるのも時間の問題、だが……。

 

 妙な感覚、それと共に通信で彼女の声が聞こえた。

 

『ロマ!』

「南無三ッ!」

 

 

 

 ―――サイクロプスが起動する。

 

 

 

 しかして、すでにその射程圏内から余裕をもって出ていたようで、遥か後方、ロマが中途半端に破壊することになったジンが爆散しているのが確認できた。

 一応は生き残ったロマではあるのだが、それは追ってきていた“敵”も同じことだ。

 迫るジン・ハイマニューバに、ロマは顔をしかめてライフルを手放す。

 

『貴様っ、逃がさぬ! 同胞をやった報いは、受けてもらう!』

「お互い様だろうにっ」

『ジン・ハイマニューバをジンでやれるものかよ。裏切り者のコーディネイターが!』

 

 その言葉に、ロマは口元を歪めた。嘲笑するように、笑みを浮かべる。

 自然とナチュラルを見下すような発言をするから、こうして足元をすくわれるのだと……。

 

「ハッ、俺は……ナチュラルだ!」

『なにっ!?』

 

 瞬間、レバーを操作しフットペダルを踏み込む。

 ジンは真っ直ぐと飛ぶ体勢から突如、両足を前に出しバーニアを吹かす。さらにバックパックのウイングスラスターも前下あたりに向け、前進に使っていたバーニアすべてを突如、逆方向へと向けた。

 

「……ッ!」

 

 急停止したジン・バエル。背後から迫るジン・ハイマニューバが重斬刀を―――突き出す。

 

『……きえ、た?』

 

 理解が追いつかないであろう声が聞こえる。

 ジン・バエルは……ジン・ハイマニューバの後方、後頭部の先の位置。

 

 突如として後上方に加速したジン・バエルは、前方に加速していたジン・ハイマニューバには消えたように見えたのだろう。

 コックピット内のロマは凄まじいGによりかき乱された内臓が損傷したのか痛みに顔をしかめており、サングラスも外れている。

 だがその青と赤のオッドアイは輝きを失っていない。腰にマウントされたもう一本の重斬刀を引き抜くと、二本を逆手に持ち、ジン・ハイマニューバへと加速。

 

「そうやって無駄死にを……冗談ではないっ!」

 

 ジン・ハイマニューバの首の横部分から、二本の重斬刀をコックピットに向けて突き刺す。

 突き刺される一瞬だけ、動いたようだが……。

 

 もう―――動くことは無い。

 

「はぁ……はぁっ……」

 

 無音、自身の息使いだけがはっきりと聞こえる。

 初めての実戦だが、おそらく自分はエースになるだけの力はあると、自身のことは低く見積もるタイプであるロマですら確信した。集中力が切れたせいか、ドッと疲労感が押し寄せる。

 これを今後もやらなくてはいけない可能性があるというのは億劫ではあった。

 

 ―――慣れれば多少はマシになるか?

 

 しかしこれならば、もしかしたらやれるかもしれない。自分のやりたいと思うことが……。

 

『少尉殿、聞こえるかい?』

「ええ……他は?」

 

 ムウ・ラ・フラガからの通信と共に、メビウス・ゼロが近づいてくる。

 

『ウチの部隊も俺を除いて二機ほどは残ってるみたいだ』

「それは結構なことで、しかしまぁ……口封じはありますよ」

『少尉殿が言うなら、そうなんだろうな』

 

 アズラエルの腹心のロマが言うのだから、ということだろう。

 

 ロマはコズミック・イラに詳しくはないが、ここらのことは記憶にあった。この後に、この真相を知っている者たちは揃って左遷。ジェラード・ガルシアは“アルテミス”に行くことになる。

 そして、ムウ・ラ・フラガはヘリオポリスへのG兵器テストパイロットの護衛任務。

 

「にしても、サイクロプス、か……」

 

 これが、サイクロプスを“こういう形”で使った初めての例らしい。

 

 ―――ああ、それと、心配をかけるな。

 

「……聞こえますか本部」

『ロマ少尉、無事ですね。追ってきていた敵機は大丈夫ですか?』

「新型ジンならほぼ無事です。たぶんコックピットはミンチよりひでぇっすよ」

『別にそちらはどうでも、追ってきた敵機を撃破して……君は無事なんですよね?』

 

 他にも聞こえる通信でこうも心配されるのは不本意というより、気恥ずかしいものがあるのだろう。ロマはぶり返す痛みに耐えながらも微笑を浮かべる。

 

「……はい、しかしまぁ、あとで医務室に向かいます」

『どこか怪我でもしましたか?』

「大したことはありませんよ。通信切ります」

『はい、ご苦労さまです』

 

 通信が切れると、深く息をついて顔をしかめる。

 

「痛ぇ……」

『やるねぇ少尉』

 

 からかうようなムウの言葉に、眉をひそめつつサングラスをかけなおす。

 

「なんの話ですか……戻りましょう」

『了解、サンキューな。少尉』

「……こちらこそ」

 

 

 

 

 

 

 ジンが格納庫に納められている。脇には二本の重斬刀が突き刺さったジン・ハイマニューバも一緒だ。

 デッキに降りたロマが、深く息をついて上着の胸元を開いていると、前から走ってくる音が聞こえる。驚きながらも、ロマはフッと笑みを浮かべて片手を上げた。

 

「少尉! やりましたね!」

 

 例の整備士の女性、自分より30センチは身長が低いであろうその女性が飛び込んでくる。

 月の重力下では勢いは柔らかく、ロマは整備士を軽く受け止めた。

 

 ―――やっこい。

 

 鬼神の如く戦い抜いたロマではあるが、やはり彼“らしい”心中のまま、整備士を床に下ろす。

 いかんせん寒気がするが、ふと入口の方を向けば見慣れた金髪の女性―――その背後には三人娘。しまったと頭を押さえるのは『心配してきたのに鼻の下を伸ばしていたから怒っているのだろう』と、それらしい発想に収まる。

 ロマの視線に気づいて、整備士の女性が焦ったような様子をみせた。

 

「えっと……すみません少尉」

「いや、私の不徳の致すところだ……」

 

 軽く床を蹴りつつ、アズラエルと三人娘の元へと向かう。しっかりと整備士も付いてきているようだった。

 ジトー、っとした八つの視線が突き刺さるも、ロマはサングラスの奥の瞳を泳がしつつ、クールに笑って見せる。

 軽く金色の髪をかきあげつつ、息を吐く。

 

「心配をかけました」

「いえ別に、心配なんてしてませんけど?」

 

 ハッキリと言われるが、感じる圧に目を瞑って笑みを浮かべたまま額から汗が流れる。

 チラリと片目を開くとやはりアズラエルは腕を組んでジッとロマの方を見ており、“まったく関係ない”のだが、まるで“浮気現場でも目撃された”気分になった。

 腕を組んでいるアズラエルの胸が強調されている。

 

 ―――おっぱい……ってこういうとこだぞ!

 

「まぁ、良くやってくれました。ロマ」

「……はい」

 

 なんとか許されたらしい、のだがシャニが前に出てきてロマの腕に絡みつく。

 腕にたわわな感触を感じてそれこそ鼻の下が伸びそうになるのだが、大人としてはそこは我慢。今は耐える時……。

 

 ―――この先、たわわがあるぞ。

 

「何考えてるんだ俺は」

「……お兄さん、デレデレしてた」

「してない」

 

 シャニの言葉を無理矢理に真っ向否定しておく。

 隣の整備士が、ロマの肩を軽く叩く。

 

「はい?」

「お約束のキスはまた今度で♪」

 

 特大の爆弾を落として去っていく整備士。残されたロマ、そして四名。

 静かに息をついて困ったように笑うロマに突き刺さる視線。先ほどよりもよほど鋭い……重斬刀より鋭い。しかし非モテ人生を歩んできた男にとってそれは、とても嬉しいことである、のだが……。

 

 ―――なぜ今のタイミングで言った!

 

「……タラシ」

「おにーさん、最低」

「……ん」

 

 オルガ、クロト、シャニの視線が痛い。しかし腕のシャニのたわわは心地いい。頭がバグりそうだった。

 ロマは頭はそれなりに良いと言われて育ってきたものの、こと“そちら”においてはからっきしである。

 いくら“赤い彗星”に憧れていようと“青い青年”止まりが良いところ。つくづく女は御しがたい、とかいうが。コイツは度し難いのである。

 

「……サボテンが、花をつけている」

「はぁ?」

 

 ―――アズにゃん冷たいじゃん。

 

 なにはともあれ、早く医務室に行きたかった。

 

 この胃の痛さは、おそらく先ほどの戦闘のせいだけではないだろうけれど……。

 

 

 

 これが後に―――<赤銅の悪魔王>……そう呼ばれる者の初戦闘の裏側である。

 

 

 





便宜上ジン・バエルと命名してみました
もう出番ない気がするけど!

というかMSの戦闘とか初めて書きましたわ

オリ主の鑑のような初戦闘からの二つ名付き
これに対しての公での扱いとかは次回

オリコーディネイターヒロインはいらないっていう票も多いので間をとって、別の方向で出そうかとも思います。ヒロインってよりまた違う感じですかね

もうちょっと考えてみますので
それでは次回もお楽しみいただけたらと思います


PS
ちなみにアンケートのオリキャラ(コーディネイター娘)ですが
士官学校で一緒だった同期ちゃんを“本格参戦”させる? っていうアンケートです
少し説明不足だったので補足でした

オリキャラ(コーディネイター娘)一人追加、すりゅ?

  • オリキャラはもう充分!
  • すりゅうううううううううううう
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