盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題) 作:樽薫る
ミネルバは現在、小惑星とその周囲の岩により身動きが取れないでいた。
「エイブス、レイを出して!」
受話器に叫ぶのは艦長であるタリア。
ボギーワンことガーティ・ルーとの戦闘、追っていたはずがデコイを掴まされ、そのまま背後を取られ、まんまと“敵指揮官”の作戦通りに動いてしまったミネルバ。
小惑星への攻撃により岩のシャワーを浴びてスラスターも破損、正面に落ちてきた岩により進路を塞がれ、正面の岩塊を破壊しようにも、それをすれば再度岩塊を生み出すのが関の山。
頼みの綱のモビルスーツ隊、インパルスとザク、そしてゲイツR二機の計四機はカオス・ガイア・アビスの三機に釘付けにされている。
そして、現在接近しているモビルアーマーとモビルスーツが二機、レイ・ザ・バレルが出撃したものの……。
「これは……そうか、そういうことか……」
一人ごちるウィレーム・マクスウェルの言葉を、誰も拾うことはない。
ウィルの識る“
本来なら敵指揮官───
ならば誰か……? 答えは代わりの誰かだったのだが、その相手をウィルはその“擬きめいた力”でハッキリと理解してしまう。
間違えるはずもない、そしてなぜその答えに至らなかったのか自身を不甲斐無く思うが……。
「そうではない、か……」
答えに至らなかったのではない。その答えに辿りつかぬように無意識下でしてしまっていたのだろう。
そんな状況でもないし、場合によっては“詰み”となっていた可能性すらあるのだが、もはや言っても詮無いことである。
自身の心を完全にコントロールできるならば苦労もない───ウィル自身が一番わかっていたことだ。
「この艦にもうモビルスーツはないのか!」
「パイロットがいません!」
デュランダルの言葉にタリアが強く答えるが……。
「私が出ましょう」
そこで、とうとう“彼”は動き出した。
本来であればどうにでもなるが、これは“本来”とは違うことなのだから当然だろう。
ウィルの感じた通り、“彼が彼女”であるならば、レイ一人でどうにかなる問題ではない。
「う、ウィレーム、大尉っ!?」
立ち上がったウィル自身の発言に、カガリが“あまり親しげでない”ように声をあげる。
だが、彼のサングラスの奥の瞳を視て、彼女は顔をしかめて動かない。一方のアレックスことアスランも、そんな彼を見て想うところがあるという表情をするが、それでも何を言うでもなかった。
そして、ブリッジのクルーたちは当然、訝しげな表情をする。
ギルバート・デュランダルの方を向き、ウィルはサングラスを外し眼を合わせた。
「……タリア」
「危険です。敵はかなりの手練れ……B.A.E.Lの、外部の方を危険に晒すなど!」
「だが、そうも言っていられる状況ではないでしょう?」
タリアにそう言いながら、ウィルは再度サングラスをかけなおす。
「この状態の方が危険だ。それに私は一度ザクを操縦している……あれをお貸しいただければそれで十分です」
「貸すって言ったって……」
艦長であるタリアの迷いも当然なことだ。
おいそれと他国の人間にモビルスーツを貸すことも、戦わせることも、連合に頼ることも……そして、いくらザフトと協力関係に近い状態であるB.A.E.Lの人間であろうと、なにかあっては国際問題になりかねない。
モビルアーマーはザフトレッドであるシンとレイを同時に相手にしてまともにやりあうような異常な相手であるし、得体のしれぬ連合のパイロット一人を追加したところでどれほどやれるか……。
モビルアーマーでモビルスーツのエースとまともにやりあい、むしろ追い込んでくる……それはあの“赤い悪魔”を彷彿とさせる。
最終的にプラントを守った者でもあるが、ザフトにとってはやはり縁起のいい名ではない。
「タリア、彼に任せてみよう」
「っ、議長……!」
なぜそこで彼の後押しをするのか、タリアは理解できないでいた。
「確かに彼の言う通り、このままの方が危険だよ。レイ一人で敵を対処できるか保証もないともなれば、今は一機でも多く戦力が必要なはずだ」
「しかし……」
これがアスラン・ザラならまだ良かった。だがそうではない。
「艦長、長考する時間はないはずです」
「あなたであれば対処は可能だと……?」
「ええ、約束はできませんがお役にはたてるはずです。あの新型三機が相手であれば約束はできますが」
その言葉に、タリアは溜息をついて頷く。
「……わかりました。ですが損傷すればすぐに帰投を」
「ありがとうございます」
不敵な笑みを浮かべて言うウィルは、デュランダルの方を見て軽く頷き合うなり、踵を返せば、思わず苦笑を零した。
カガリはどこか不安そうだし、アスランは複雑な表情をしている。
「アスラン、頼んだ」
小声でそう言うなり、ウィルはブリッジを出ていく。
タリアは再度手元の受話器へと手を伸ばし、ハンガーのエイブスへと繋ぐ。
◇ ◇ ◇
ハンガーへと入ったウィルは、内心でかなり焦っていた。
レイ・ザ・バレルは既に出撃したようだし、ミネルバの方も動きがあるのは肌で感じているのだ。
後者は問題ないのだが、前者の方はかなり不安で、敵機が本当に彼の予想通りの彼女なのだとしたら、現状のミネルバクルーで相手になるはずがない。
しかし逆に、本当に彼女であるならば、先の戦闘でインパルスとザクが無事だったのも甚だ疑問であった。
彼女の異常な強さは、彼が一番よくわかっている。
「しかし、私もつくづくソッチは弱いな……」
見たくないものに無意識下で蓋をして、挙句にこの状況だ。
「捜索はしていたのだがな……」
一人悪態をつきながら、目的のザクへと近づいて、ウィルは顔をしかめた。
「お嬢ちゃん! はやく下りろ!」
「ピンチなんでしょ! 私だってやれます!」
彼が“乗るはず”の赤いザク。そのコックピットに入っている誰かと、整備士……チーフメカニックのマッド・エイブスが言い争っているのを聴きながら、ウィルは無重力下のハンガーを漂い、その装甲に手をつく。
それを見て、エイブスはハッとした表情を浮かべる。
既に話しが通っていることを理解し、頷くとコックピットを覗きこんだ。
「マユ……」
「あ、ウィレームさんっ!」
笑顔を浮かべる彼女に複雑な表情を浮かべつつ、ウィルはサングラスを外すなり胸ポケットに入れる。
「グラディス艦長から許可は頂いた。すまないが機体を借りる」
「っ……ザクならあるはずです! これは私がっ!」
「一度乗った機体でないと不安なのだよ。それに君のような子供が戦場に出るものではない……」
言い聞かすようにそう諭すが、マユは顔を強張らせた。
「子供じゃありません! 私は操縦できるんです! それにみんなが危ないっ、力がないと守りたいものも守れない。それが嫌だから義手の開発協力だけじゃなく“戦闘訓練”まで受けさせてもらってるんです!」
「……兄は知っているのか?」
「っ……で、でもっ」
コックピットに潜り込むと、ウィルはマユの頭を軽く撫でる。
それに“亡き何か”を思い出したのか、安心するような表情を浮かべるマユではあったが、すぐハッとした表情を浮かべて、苦虫を噛み潰したかのような顔をした。
複雑な心境であるのだろうと理解しつつ、ウィルは頷く。
「そういうことは、私のような大人がやることだ……大丈夫さ、機体に傷はつけんよ」
確実に守れるとは言い切れない約束だが、嘘も詭弁も必要だ。大人には特に……。
「だから今は頼む、私の腕は君が良く知っているだろう?」
「……はい」
マユは不服そうではあったが、素直に従いコックピットを出る。
エイブスはホッと一息ついて、出てきたマユの肩に手を置く。
そのままコックピットへと乗り込むウィルは、即座に機体の起動を始めた。
「大尉、出撃のことは艦長から聞きましたが、ノーマルスーツは?」
「必要ない。この方が良いのさ……それに“機動性”は確認済みだ」
その言葉の真意を理解などできるはずもなく、戸惑いながらもエイブスは頷く。
ウィルがコックピットを閉じる直前、不安そうなマユに軽く笑みを浮かべて頷けば、彼女も複雑そうだが笑みを浮かべて頷いた。
コックピットで一人になり、ウィルは深く呼吸をし、震える手を見やり苦笑。
「カッコつけといていつまでもコレとはな……情けない男だ」
そう言いながら、操縦桿を握ればその震えは収まった……至極わかりやすいことである。
ミネルバの状況的にカタパルトデッキは使えず自力で出るしかないが、別段問題ないことだ。
「さて、本当にお前なのか……だとしたら、私は、俺は、喜んでいいのか……?」
自問自答しながらも、そこに辿りついてしまえばやるしかない。
通信機を起動して、サブモニターに『メイリン・ホーク』を確認した。
数言を交わして装備を指示するなり、それをザクにて受け取る。
「ウィレーム・マクスウェル、ザク、出撃する……!」
宣言をするなり、ウィルはフットペダルを踏み込んだ。
◇
レイ・ザ・バレルはザクファントムを駆り、再び灰色のモビルアーマー<エグザス>と相対していた。
だが、素早く放たれたエグザスのガンバレルから放たれたビームが、それらを迎撃。
「ちぃっ……!」
レイはビームライフルでダガーLへと攻撃をしかけるが、さらにガンバレルのビームカッターでそれも凌がれた。
別方向のガンバレルから放たれたビームを、紙一重で回避。
顔をしかめながら、レイは灰色のモビルアーマーを見やる。
「並じゃないっ……味方を守りながら攻撃まで、こんな芸当っ」
ダガーLはミネルバへと近づこうとするが、レイはエグザスの相手だけで手一杯だ。
そしてエグザスはレイの攻撃を凌いでるだけで十分……。
「ギルがっ、議長がいるというのにっ……!」
再度バックパックのミサイルをダガーLに放つが、やはりガンバレル三基がビームにてそれらを迎撃する。
そして残る一基のガンバレルがレイを狙うものの、それはどうにか回避。
だが、エグザス本体がビームを放つ。
「くぅっ……!」
肩部のシールドでそれを凌ぐが、体勢を崩して距離を取る。
だがその分、ダガーL二機との距離は離れてしまい、レイは顔に苛立ちを表した。
エグザスのコックピットでは、ネオ・ロアノークが相も変わらず軍服の胸元を開けた状態でいる。
だが、顔色はあまり良くはないし、呼吸も少しばかり荒い。
迫りくる吐き気と戦いながら、同時に味方を守りつつザフトのエースと戦っているのだから大したものではあるのだが、彼女の本来の力は出せていないのは確かだ。
だが、それでも彼女は気丈に振る舞い、不敵に笑う。
「ハッ、大したもんだねザフトの白い子……パイロットがカワイイ子ならキスでもしてあげたいぐらいだ。けど、できる口が残るもんならねっ!」
放ったガンバレルを、それでも回避し続けるザク。
明らかにその精度や機動速度が遅くなっているが、このまま戦っていれば回避が間に合わなくなるのも時間の問題だし、第一に新造艦を落としてしまえばこちらの勝利。
ネオが横目でモニターのダガーLを確認した、その瞬間……。
「なっ!?」
ダガーLへと迫る“赤い閃光”。
「チィ、もう一機いたとはね……!」
だが、完全な想定外ではない。
ガンバレルを二基、白いザクへと飛ばして牽制しながら、残るガンバレル二基を装備したエグザス本体をそちらへと加速させる。
赤い閃光の正体は───ザク。
ただし手足は濃いピンク色で、報告にあった赤いザク二機の内の“異常な方”ということだ。
アーモリーワンで置いてきたという可能性もあったが、やはり乗っていたらしい。
最初に出さなかったのはなぜか、などと考える必要もないだろう。今はそれどころではない。
「ッ! ……頭に響くんだよ! 赤いのばかりでぇ!」
二基のガンバレルを放つが、赤いザクが動揺した様子はなく、ビームを放ちながら接近させビームカッターでの攻撃をしかけようにも、まるで“識っていたかのように”回避する。
顔をしかめながら、ネオは機体を真っ直ぐに飛ばしつつ、姿勢制御で横に向けた。
ドリフトのように横滑りをしながら飛ぶエグザスがビームを放つが、赤いザクはビームトマホークでそれを弾き、ダガーLに接近。
「これじゃあ!」
味方機を守る動きをしていたネオに諸共に撃つこともできるはずがなかった。
赤いブレイズザクウォーリアのコックピットで、ウィレーム・マクスウェルは目の前のダガーLの胴体にトマホークを振るう。
僅かに背後に下がってそれを回避するダガーLに、少しばかりの感嘆の声を上げた。
「さすが“ファントムペイン”か……!」
即座に背後に下がり、真上から放たれたエグザスのビームを回避。
ウィルはダガーLへと左手のビームライフルを構えてトリガーを引く───直前で、僅かに横にずらす。
「そこか……!」
完全にトリガーが引かれ、放たれたビームは回避したつもりだったダガーLの胴体を貫く。
そのまま素早く離れ爆発から回避するも、次いで一つの敵意を多方向から感じる。
顔をしかめながらも、四方向から放たれたビームを機体の機動性を活かしつつ回避し、その勢いのままデブリへと脚から突撃。
止まったザクの背部、ブレイズウィザードからミサイルを掃射。
「目くらまし程度にはな……!」
ダガーLとエグザスを狙ったそれらを、エグザスが四基のガンバレルを使い迎撃。
「だが、私だけに構っていてはな……!」
『そこだッ!』
レイの声と共に、放たれたビームがガンバレル一基を貫く。
そこで、ウィルは少しばかりの疑いを抱いた。
本当に敵が“彼女”であるならば、この程度で済むわけもない。
慣れないモビルスーツをもって御せるほど、彼女は甘い相手ではないし、彼女が本気ならば最高九基の無線兵器すら使って見せる。
だからこそ、疑念がぬぐえない。
「だが、この感覚は確かに……?」
『この声、大尉ですかっ!』
「やぁ、確かレイ・ザ・バレルくんだったな。話は後だ、とりあえずは……!」
残る三基のガンバレルがウィルとレイを狙うも、二人は回避。
だが、回避しながらもフットペダルを踏み込んでウィルは加速し、ダガーLへの接近を試みる。
それでもやらせまいと、ガンバレル二基がレイを狙い、一基と本体で赤いザクを狙うエグザス。
「くっ、良い上官だな……その身を張ってくるとはっ……!」
ガンバレルを扱うモビルアーマー乗りは多数知っているウィル。
だが、その中でもここまでの技量に至るパイロットが幾人いようか……。
「モーガン・シュバリエはB.A.E.Lにいるから違う……誰だっ……やはり本当にハイー」
瞬間───陽電子砲の光が戦場を貫く。
「ミネルバかっ!」
ボロボロのミネルバがモニターに映る。
ブリッジにいる“彼”の助言が功を奏したのだろうということは、見なくてもわかる。否、“
そして、放った陽電子砲は真っ直ぐにガーティ・ルーを……貫かない。
直前で危険を察していち早く回避命令を出した艦長のおかげ、なのだろう。
「くっ……!」
だがそれにいつまでも気を留めているわけにはいかないと、ザクを加速させる。
狙いはダガーLだが、ガンバレルがやはり邪魔をした。
放ったビームライフルがビームカッターに弾かれるも、ウィルは素早くビームトマホークを投擲。
「墜ちろ……!」
そのトマホークは歪曲した軌道を描きながら、ダガーLの脇腹に突き刺さる。
エグザスのコックピットで、ネオは爆散するダガーLを見やり顔をしかめた。
素早く展開していたガンバレル三基を戻すと、そのまま帰艦信号をあげる母艦ガーティ・ルーへと加速。
追撃がないことを理解しつつ、視線の先、モニターには赤と白、二機のザク。
「赤いやつ、今度出会った時は……絶対に墜とす……!」
頭痛と吐き気に耐えつつも、ネオは悪態をつき“仲間を討った敵”を睨みつけた。
◇
ミネルバへと帰投したウィルは、ザクのコックピットの中で深い溜息をついた。
額を流れる汗を袖で拭うなり、ジャケットを脱いでネクタイを緩める。
戦闘時は疑いはしたが、やはりアレは間違いなく自分の求める彼女で間違いないのだろうと、頭の中で整理し、それを噛みしめた……複雑そうな表情で。
嬉しいやら悲しいやら、悔しいやら苛立ちやら、色々とものが煮詰まった感情でいる彼ではあったが、すぐに帰るべき場所を思い出して、もう一度深く息を吐きサングラスをかけた。
コックピットを開けば、人の気配を感じる。
開いたコックピットの脇から出てくるのは……。
「マユ……」
「お疲れさまですウィレームさんっ!」
「いや、すまないな。機体を借りて……おしゃかにしてはいないが、無理はさせたかもしれん」
そう言いながらコックピットから出ると、他にも一人。
「大尉、先ほどはありがとうございました」
「ああいや、礼には及ばんよ」
───レイだけに。
などというつまらないことを考えつつ、ウィルは敬礼をするレイに片手を上げる。
「大尉は、あの機体をご存知でしたか?」
「いや、メビウス・ゼロ系統には似ているが……」
そう言いつつも、新たにインパルスと赤いザクのコックピットから出てきた二人、男女に気づく。
赤いパイロットスーツを着たその二人が自分たちの元へと近づいてくると、男の方はヘルメットを外して妹、マユへと近づいた。
ウィルには気づいていないようだが、家族に身の危険があったらと思えば当然と言えば当然なのだろう。
「なんでマユのザクが出て!」
「落ち着きたまえシン・アスカくん、私だ」
「え?」
女の方、ルナマリア・ホークもヘルメットを外しながら驚いた表情を見せる。
「私が出た。マユのザクを借りてな……」
固まっていたシンだったが、動き出す。
「あ、あんたは一体なんなんだ!?」
「ウィレーム・マクスウェル大尉、それ以上でも以下でもないよ」
「そういう話してんじゃないんだよっ!」
「お兄ちゃん! 大尉はミネルバを守ってくれたんだよ!」
マユの一喝に、ハッとするシン。
「あっ……す、すみませんでした」
「いや、気持ちはわからんでもないよ。家族のこともあるだろうに……それに君はオーブの移民、連合を良く思っていなくて当然さ」
「いえ、俺、自分が……」
「気にしなくて良い。ザフトの艦なのだから私は爪弾き者で当然さ。B.A.E.Lと言えどな」
そう言いながら軽くシンの肩を叩けば、少しばかり驚いた表情をしながらも、素直に頷く。
ここまで彼が素直だと調子が狂うというものだが、仕方もあるまい。
ウィルの識る彼とは、歩んできた道が違うのだから……。
「いやでも、艦を守っていただき……ありがとうございました」
「あ、ありがとうございましたっ!」
シンがそう言うと、ルナマリアが続けてそう言う。
「いや、本当にレイくんの援護が関の山だった」
「いえ……あの相手、自分一人ではおそらく艦を守り切ることはできませんでした」
その言葉に嘘偽りはないのだろうということは、ウィルにも理解できた。
ふと、ルナマリアが敬礼を落として疑問を口にする。
「でもザフト製のモビルスーツを扱えるってことは、マクスウェル大尉ってコーディネイターってことですか? B.A.E.Lだし珍しくないって聞きますけど」
「いや、私はナチュラルだよ」
あっさりとした言葉に、シンとマユとルナマリア、レイまでもが驚いたように眼を見開く。と言っても、レイの場合はまた若干違う驚き方に見えるが、ウィルは言及しない。
それに、彼は“ウィルのこと”を知らないようなのだから、今はそれでいいのだ。
知ったところで、“レイはレイ”であり“彼は彼”だ。そして世界への憎しみは彼一人で持っていったのだから……。
ふと、思考が余所にいったことに気づき、ウィルは心の中で苦笑する。
「でも、ナチュラルでもザフト製のモビルスーツに乗れるなんて……」
「君らの中でも有名なのがいただろう」
その言葉に、ルナマリアが気づく。
「……ロマ・K・バエル」
「そう、特殊ではあるが特別でもなんでもない……できる人間はいるのさ」
そう言いながらサングラスの奥の視線を動かし、シンを見て、少し視線を下げてマユを見る。
複雑そうな表情をするシンの内心までは完全に理解できないものの、オーブ解放作戦のことなのだろうことは理解できた。“
だからこそ、マユに戸惑う。
キラキラした表情で自分を見上げるマユ。なぜ片腕を失う原因の一因となった男の話でそれほどキラキラとした表情ができるのか───わからない。
復讐相手として見ても咎められるはずもない相手なのに……。
「大尉! 艦長と議長があちらに、士官室までご案内するそうです」
ふと、エイブスに声をかけられて頷けば、視線の先にはギルバート・デュランダルとタリア・グラディスの二人。
仲睦まじいことであるが、このあともっと仲良くすることをウィルは知っている。
複雑な表情をしながら、ウィルは頭を振った。
「まぁそういうことさ……さて、私は戻るとするよ。議長に挨拶もある」
「はっ!」
レイが再度敬礼をし、遅れてシンとルナマリア、マユまでもが同じく敬礼。
微笑しながら、ザクの装甲を蹴って宙を流れつつ、軽く敬礼で返すウィルが、ネクタイをしめなおしてジャケットを羽織る。
ウィルはアーモリーワンに来るまでに仕込みをした。
悲劇の地、ユニウスセブンに関係する、この後に発生する事件において布石を打っておいたのだ。
必ずとも予測通りにいくとは思わないが、予測通り防げたならばそれで上々……。
「だが、どうなるか……頼むぞ」
呟きながら、残してきた仲間たちのことを想う。
デュランダルとタリアの前に着地すると、軽く頷く。
「ありがとうございました。大佐」
「……私は大尉ですよ。デュランダル議長」
心臓が止まるかと思った。
お待たせしました
ということでウィル、赤いザクで頑張りました
まぁ敵が変わってるので参戦しましたが、ここらもほぼ原作通り
と言いつつ、ウィルがなんかしてたようですが、それも次回
そして水星の魔女が最終回、ネタバレ防止のためまだなにも言わないでおきます
そしてそして劇場版ガンダムSEED FREEDOM!
では、次回もお楽しみいただければと思います