盟主に気に入られちゃったし三馬鹿が美少女だった(仮題)   作:樽薫る

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地球に墜ちる墓標

 

 大西洋連邦B.A.E.L、その拠点である月面プトレマイオス基地の会議室で、ムルタ・アズラエルはテーブルを叩いた。

 長い金髪がぶわっと宙に浮いてから、ゆっくりと彼女の肩、背にかかる。

 周囲の将校たちはそれぞれ難しい顔をしているが、それも仕方あるまい。

 

「落ち着きたまえアズラエル」

「わかってますよ。ハルバートン提督」

 

 B.A.E.Lを立ち上げた張本人、ということになっているデュエイン・ハルバートンに窘められ、アズラエルは落ち着きを取り戻す。

 こんな公の場で彼女がそこまで感情的になるのも珍しいので、B.A.E.Lの将校たちは彼女の精神安定剤でもあり、パートナーである“彼”の存在を求めるが、周知の通り彼はこの場にはいない。

 円形のテーブルを囲むように座しているアズラエルとデュエイン・ハルバートン、そして将校たち三人は、そのテーブルの中心にあるモニターの映像を見て顔をしかめる。

 

 問題は“ソレ”だった。

 

「すみません。しかしまぁ事態は一刻を争うわけですか……ユニウスセブンが襲撃を受けたということで……“彼”の情報から目は光らせていたんですがね」

「どうやら、彼の予測通りザラ派の仕業ですな」

 

 将校の一人の言葉に、アズラエルは前髪をいじりながら思考する。

 帰投した兵からの映像に、改良されたジンが映った……いや、正確にはジンハイマニューバ。

 

「2型ですか、ずいぶん旧式のマイナー機を引っ張り出してきましたね。コイツを使う傾向的に、脱走兵でしょう。議長がギルバート・デュランダルになってから大人しくなったと聞いていたんですが、地下に隠れてずっと機を伺ってたわけですか、よくあの子もこんな奴らの情報を拾ってきたものです」

 

 だが、問題はそこではない。論点がズレるというのが一番現状においてタイムロスになる。

 問題は、ザラ派がユニウスセブンでよからぬことをしようとしている。という情報を得たのに、そのよからぬことをさせてしまったこと……そしてその対処。

 大西洋連合、月の裏表でブルーコスモス派と睨み合いとなっている現在、下手にベテランパイロット全員を動かすわけにもいかず、だが“彼”からの情報を無視するわけにもいかなかったので、中途半端な結果に終わった。

 

「……まさか、ユニウスセブンを“半分に砕いてもっていく”とは」

 

 モニターにCG映像が映る。

 半分に“割られたユニウスセブン”が、地球へと向かって移動していた。

 警戒していたにも関わらず不意打ちを受け、立て直し戦闘を開始したものの、敵兵の士気と純粋な技量に、あまりにこちら側の部隊の被害が大きかったので隊長は撤退を選択。

 ルーキーを含めた兵たちを生き残らせるには正しい選択ではあったが、いかんせんそのせいで出遅れた感もある。

 

「半分で済んだのが良かったのか悪かったのか……」

 

 ユニウスセブンを占拠し拠点とするつもり、と考え半分は守り切り撤退を判断した隊長は正しい。敵は“半分だけ持っていったので態勢を整えてから出直そう”という発想は悪くはなかった。

 作戦は『ユニウスセブンでテロ組織が計画を企てている』という報告に対する対処なのだ。真っ当に鎮圧を指示されたわけでもない。

 地球に落とそうとするなど考慮していなかったので仕方ないことだ。

 

「だが、そうだな。兵が悪いのではない……我々の想像力不足だ」

「反省は後です。追撃部隊は?」

 

 アズラエルの声に、ハルバートンが頷く。

 

「追撃艦隊を編成したが、間に合うかわからん。こちらも財力やら資源が無限にあるわけではない……君のバックアップがあろうともね」

「わかってますよ。ロゴスのバックアップもありませんし、資産は有限です……しかも“一族”まで警戒する羽目になるし、さっさと誰かが潰してくれませんかねぇ」

 

 最後の方は小声だったので誰にも届かないであろうボヤキ。

 情報には前以上に敏感になり色々と仕入れているのだが、仕入れすぎた情報のせいで不安も増えるのが瑕だが、今更言っても仕方のないことだ。

 懐刀たる“彼”も、持って帰ってくるのはいつも“自分関係以外”の情報。

 ならば“彼”関係の情報はアズラエルや、その私兵であるあの“三馬鹿”を頼るしかあるまい。

 

「っと……ともかく、追撃部隊はなるべく急がせましょう。アーモリーワンへ出した迎えは?」

 

 その声に将校三人の内の一人が、顔をしかめる。

 

「アズラエル……」

「……なんです?」

「いなかったそうだ。アーモリーワンに……彼が」

 

 その言葉に、アズラエルは目を見開く。

 

「そのだね。彼が例の襲撃の被害にあったとも考え難いのと、それとだね事件の時……えっと、そんな怖い顔をしないでいただきたいんだが」

 

 そう言う将校の視線の先のアズラエルは、驚くほど───笑顔だった。

 

「怖い顔なんてまさか、ええ、そんなわけないじゃないですかぁ~♪」

「その笑顔も怖いんだが」

「えぇ~なにかぁ~♪」

 

 将校はこれ以上藪蛇をつつくのをやめる。

 

「なんですか、ええ、仰ってくださいよぉ♪」

「……ザフトの新型機が、正規軍らしくない戦闘機動で戦っていたとか」

 

 ピクリ、とアズラエルの眉が動いた。

 

「そしてその新型なんだが、足取りは新造艦に入って消えたとかなんとか」

 

 アズラエルが俯き、その表情は見えない。

 

「……ユニウスセブン追撃部隊は?」

「か、会議終了と同時に出撃させるつもりだが……いや、しかしそれだけで彼と判断するには」

「今すぐ出してください! それとモビルスーツ隊の隊長、誰です!」

「追撃部隊はエルスマン少佐に任せるが……」

「今すぐ連絡を! バカはいます!」

 

 顔を上げるなり指示を飛ばすアズラエル。

 部屋の端にいた連合兵がビクッと反応し敬礼をするなり、部屋の外へと走り去る。

 ふしゅー、と息を吐くアズラエルを見ていると、その金髪も相まってまるで獅子の鬣のように感じ、将校は今はいない彼を思い出し顔をしかめた。

 普通にしている分には良いアドバイザーではあるのだが、いかんせん“彼”が関わると人が変わる。

 

 別におかしな指示を出すわけでもないし、それ故に誤った判断をするわけでもなく、的確な行動を外さないのでそれでも信用はしているが……。

 むしろ、ハルバートンを含めた将校たちの方が“彼”に関しては判断を誤りそうな時があるぐらいだ。

 

 変な話、過保護が過ぎそうになる。彼の“立場上”仕方ないことなのだが……。

 

「で、なぜそこに大佐……じゃないか、大尉が来ると?」

「勘です」

「ハッキリ言いおった……」

 

 将校がドン引きするが、彼に関することでその勘を外すのを見たことが無いので、スピリチュアル的なことではあるが、信用はする。

 

「……それは、アドバイザーとしての?」

「いえ」

 

 フッ、と口元を綻ばせ、アズラエルは黒々とした笑みを浮かべる。

 

「女の勘ですよ」

 

 ハルバートンは自身の家内を思い出し、噴き出る冷や汗を拭った。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 ザフト新造艦ミネルバ。

 その一室で、カガリ・ユラ・アスハ、アスラン・ザラ、そしてウィレーム・マクスウェルの三人は議長ギルバート・デュランダル、艦長タリア・グラディスと対面していた。

 そういう場に馴染んでしまっている自身に苦笑を零しそうになりながらも、ウィルは大人しく状況を理解する。

 つまり自身は───失敗したのだと。

 

「割れたユニウスセブンが、地球に!?」

 

 そういうことだ。

 この事件を識るウィルはアーモリーワンでことが起こるよりも早く、布石を打っておいたのだが、結果的にこの件に関しては完全に防ぐことはできなかった。

 結局、ユニウスセブンは“何者かのバックアップがあった”のか、半分に割られ、そのまま地球への落下軌道へと誘導されている。

 ウィルは黙ったままいつもの飄々とした表情で、拳を強く握りしめるが、それを誰が気づくことができようか……。

 

「……詳しく聞かせてくれ議長、なぜ?」

「B.A.E.Lからの情報ではジンハイマニューバが確認されたそうです。つまりは」

「ザフト脱走兵か」

 

 その言葉に、眉を顰めて頷くデュランダルであるが、同じくタリアとアスランも顔を顰めていた。

 しかし、それもまた当然であろう。

 道を違えたとはいえ身内の犯行とあっては……。

 

「半分でもあれだけの質量だ、このままでは……っ!」

「今、プラントも全力をあげてこの行為を阻止しようとしています。それと、またもやのアクシデントで姫や大尉には大変申し訳ないのですが、私は間もなく終わる修理を待ってこのミネルバにもユニウスセブンに向かうよう特命を出しました」

 

 その言葉に、カガリもすぐに状況を察した。

 

「無論だ。このままで構わない……それに、なにかできることがあるのなら協力も惜しまない」

「ありがとうございます、姫。お力をお借りしたいことがあれば、こちらから申し上げます」

「ああ、頼む」

 

 次いで、デュランダルがウィルの方へと視線を向ければ、ウィルは言葉を口にするよりも、まず頷く。

 

「私もアスハ代表の意見に同意です。母なる地球にあんなものを落とされてはたまったものではありませんよ」

「すみません。しかし助かりました。B.A.E.Lの方々がユニウスセブン周辺を警戒してくださっていただけていたから早々に対処できるのです。不意打ちなども受けず」

 

 その言葉に、ウィルは苦笑を零して首を横に振る。

 結局は防げていないのだから、ウィルとしてはやはり“失敗”なのだろう。

 ここから次第ではあるが、これでは地球の反プラント感情は昂りかねない……。

 

「難しくはありますが御国元とも直接連絡の取れるよう試みてみます。出迎えの艦とも早急に合流できるよう計らいますので……大尉の方も、おそらく議長経緯でそろそろこの艦にいるということがプトレマイオス基地に伝わると思いますので」

「ああ、すまない」

「世話を掛ける。グラディス艦長、デュランダル議長」

 

 タリアの言葉にカガリは暗い表情で返し、ウィルは相も変わらず飄々とした様子だった。

 彼の言葉に、軽く会釈を返すタリア。

 だが、アスランはそんなウィルの様子にどこか違和感を感じて、眉を顰めた。

 

 

 

 タリアもデュランダルもこの後の対応やらで忙しいのか、今知っている情報だけをウィルたちに伝えるなり、その場で解散。

 

 その後、ウィルはカガリ、アスランと共に、与えられた個室の方へと艦内を歩いていた。

 だが共に歩いているはずのウィルは、カガリとアスランの会話も耳に入っていないまま思考する。

 

「でも、どうすればいいんだ……」

「砕くしかない」

 

 識っている情報からB.A.E.L部隊を動かしたのは問題ないはずで、テロリストたちが熟練している兵であることも見越して、“元ゴエーティア隊”であるパイロットも複数名配置したはずだ……あの巨大なユニウスセブンすべての状況を把握できるわけないとしても、ある程度の異変が起きた時にそれぐらいは対応できるはずだった……。

 

 だが、彼がアーモリーワンへと発った直後に、“ソレ”は起きたのだ。

 プトレマイオス基地と離れたブルーコスモス派の月面基地、ダイダロス基地から艦隊が出撃し、プトレマイオス基地へと接近……それ故に、ユニウスセブンの警戒にあたっていたベテランパイロットたちを呼び戻すはめになった。

 結果、緩くなった警戒網を抜けて“どこから調達してきたのか”掘削機<メテオブレイカー>と推進器<フレアモーター>を設置、ほぼ同時に稼働、あとはB.A.E.Lが撤退するまで時間稼ぎ、それを成功させた。

 

 その裏で“プラントと連合の対立を煽る者(一族)”の暗躍があるが、ウィルがそれを気づくこともない。

 さらに、ウィルはその党首たるマティス()に、イレギュラーの該当者とされているが、自身がそんな認識をされているなどとは、夢にも思ってもいないだろう。

 

 ふと、立ち止まったアスランの背にぶつかりそうになり、ウィルは立ち止まる。

 横のカガリから妙な雰囲気を感じてそちらを見れば、彼女の視線の先には……。

 

 ───ここだったか、そういえば。

 

 休憩室のような場所で、ミネルバの正規パイロット三人と、メカニックであるヴィーノ・デュプレとヨウラン・ケント、さらにマユ・アスカが会話をしていた。

 ウィルは聞き逃したが、この前を通ろうとした時、丁度カガリの耳に入ってしまったのだ。

 ヨウランの『しょうがないといえばしょうがない』『不可抗力だろうけど、変なゴタゴタも綺麗に無くなって、案外楽かも』等という言葉が……実際、不謹慎で心無い発言ではある。

 

 ウィルとしても識らずにそんなことを聞けば、苦言ぐらいは呈したくなるものではあるが……。

 

「カガリ……?」

 

 ふと、ここで激情に駆られると思っていた彼女が無言なのに気づく。

 拳を握りしめて、なにも言わずに彼女はそちらを見てから、すぐに歩みを続けようとした。

 思わず、ウィルは微笑を零す。

 

 ───あとで頭でも撫でてやるか、絶対怒られるけど。

 

「あの、すみません……」

 

 ヨウランの声に、カガリが立ち止まる。

 ここで無視して歩き出すのも変な話だからと、そう思ったのだろう。

 ウィルとしてはこの後のことを思うと素直に無視して歩いてしまっても良いと思うのだが、それはあくまでウィルの視点での話だ。

 謝罪する人間を無視していけるほど、カガリは擦れていない。

 その謝罪について『不謹慎だったな、今度から気を付けろ』とでも言っておこうと口を開こうとする。

 

「国民じゃなくて国のピンチだったら、躍起になりますよね。アスハも」

 

 瞬間、空気が張り詰める。

 

「っ、マユっ!」

「あ、そうだったね。偉いんだっけその人、オーブのアスハだもんね」

「いい加減にしろって!」

 

 マユ・アスカがカガリをバカにするようにそう言い放つ。

 シンが止めようと手を伸ばすが、彼女はシンから素早く離れた。

 プラントでの成人にも満たない少女の言葉に、さすがに顔をしかめるカガリだったが、アスランがその前に立つ。

 

「君はオーブがだいぶ嫌いなようだが、いったい何故なんだ? 昔はオーブに居たという話だが、下らない理由で関係ない代表にまで突っかかるというのなら……」

 

 瞬間、マユが立ち止まり、シンがそんなマユに手を伸ばす。

 

「下らない? ……下らないなんて言わせない! 関係ないってのも大間違い! 私たちのパパとママはアスハに殺されたんだ!」

 

 その言葉に、マユを掴まえようとしていたシンが止まった。

 動けなくなったのは、マユの言うことに同意しているからか、それともそんなことを言わせてしまった自身への……。

 だが、その言葉にアスランも動揺する。

 

「国を信じて、あなた達の理想とかってのを信じて、そして最後の最後に、オーブのモビルスーツに殺された……ッ!」

「……ッ!」

「連合が、ロマ・バエルさんが流れ弾から私たちを守ってくれて……ッ! なんでっ、なんでオーブのモビルスーツが私達を撃ったの!?」

 

 カガリの表情が暗いものへと変わるが、ウィルは黙ってサングラスの奥の瞳で怒りに震える少女を見やった。

 すべてのオーブ兵がそうだったわけではない。それに、そこにいたのがロマ・K・バエルだったからこその行動かもしれない。だからこそウィルは思考する。

 その罪は誰のものか、誰が防げなかったのか、ハッキリと口に出して言うべきかという……迷い。

 

「だから私はあなた達を信じない! オーブなんて国も信じない! そんなあんた達の言う綺麗事を信じない! この国の正義を貫くって……あなた達だってあの時、自分達のその言葉で誰が死ぬことになるのかちゃんと考えたのッ!?」

「う、あ……」

 

 カガリの瞳が、助けを求めるようにウィルの方へと向けられる。

 だがそこで、彼女は彼の表情が見たこともない程に苦々しく歪んでいることに気づく。

 いつも顔に感情を出さないウィルがそうした表情をしていれば、カガリ自身も思うところもあるのだろう。視線をマユへと移す。

 

 変わらぬ怒りを含んだ瞳が、カガリを射抜く。

 

「なにも解ってない人が……ッ!」

 

 それだけを言うと、マユは走ってカガリの横を通り部屋を出ようとするも……ウィルの前で立ち止まる。

 見上げれば、そこでようやく彼がいることに気づいたのか、ハッと目を見開いてからバツの悪い表情を浮かべると、何を言うでもなくそのまま廊下を走り去る。

 空気は重く、誰かが何を言うわけでもなかったのだが、ただ一人が動く。

 

「え、シン……?」

「す、すみませんでしたっ、妹がっ!」

 

 カガリへと近づいて頭を下げる彼は、おそらくひどい顔をしているのだろう。

 彼も、アスハへの恨みがないわけではないのだから当然だ。

 

「そ、そのっ、や、優しい妹なんです。ただちょっと気持ちが抑えられなくって、きっと、反省してると思うんですっ! 言っちゃったこと、だからどうかっ」

 

 だからカガリは近づいて、シンの肩に手を添えてその頭を上げる。

 

「えっ……?」

「いや、私は、言われて当然なんだろうな。その、君だって……私のこと、アスハのこと、オーブのこと許せないだろうし……家族を、失ったんだもんな」

 

 そんな言葉に、シンは顔をキョトンとさせていた。

 

「すまない。って言うのが正解なのか、わからないんだが……その、悪い。私もなにを言えば良いかわからない。オーブの兵が……あ、ロマを撃とうとして市民を攻撃したって話は、聞いてはいたんだけど、その……いや、やはり本当に、すまない。オーブの、護国の兵が、守るべき民を……」

「……カガリ、少し休もう」

 

 今のカガリではまともな話になるか怪しいと踏んだのだろう、アスランがそう言う。

 

「あ、うん……えっと、シン・アスカ。今度しっかりと話を……」

 

 戸惑いながら頷くシンに、カガリはぎこちない笑みを浮かべてそのまま廊下の先へと消える。

 残された面々、そこにはウィルもいた。

 気づかれぬように深く呼吸し、感情を落ち着ける。

 

「彼女とて父や友人を戦争で亡くしている。なにも解っていないわけではないよ……」

 

 サングラスの奥の瞳を細めて、ウィルはそう呟き、カガリとアスランを追うように少し足早に歩き出す。

 二人に追いつき、そのまま無言で個室の前に辿りつくと、カガリは足取り重く部屋の中へと入った。

 ウィルはそんな後ろ姿を見て、アスランの肩に手を置く。

 

「いつも任せてはいるが、カガリを頼む……大事な妹分だ」

「……はい」

 

 彼の返事に、ウィルは満足そうに笑みを浮かべて頷いた。

 

「大佐は、大丈夫ですか?」

 

 そんな言葉に、訂正のことすら忘れて、ロマは一瞬目を見開いて驚く。

 すっかり“仮面をつける癖”は染みついたと思っていたが、そうでもなかったようだと苦笑を零した。

 彼女の隣にいるならば、その程度の芸当は身に着けておきたいが……あまりそちらの才能はないのかもしれないと、自嘲する。

 首を縦に振ると、ウィルはサングラスを外す。

 

「私は平気さ、それよりもアスラン……泣かすなよ。カガリを」

「えっ! あ、も、もちろんです!」

 

 ───嘘つけ。

 

「なら良い。それでは“後で”な」

「は、はぁ……」

 

 それだけを言うと、ウィルは踵を返して歩き出す。

 

「さて、先に議長への交渉を済ますとしようか」

 

 動いてしまったのなら、あとは全力でやるしかないのだ。

 

 震える手を握りしめつつ、ウィルは艦橋へと向かった。

 

 







ユニウスセブン、ハーフで地球にお届け中
色々と暗躍しようとしたロマですが、さらに暗躍されてた話でした
一族は特に話に絡むこともないのでさらっと流しましたが、どうせすぐに消え去るので問題なし
他にもさらっと重大な情報がまぎれてたりしましたが、次回辺りに

それでは次回もお楽しみいただければです
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